統計検定3級は統計基礎知識を満遍なく問われる検定です。資格難易度としては「易しい部類」に入ります。
しかし、大学で一般教養として少し統計を学んでいても、忘れてしまっている論点は意外に多くあるものです。ですので、基礎と言っても、しっかり理解できていなければ解けないという意味では、一概に易しい試験と言い切れない部分もあります。
データ分析や可視化にたずさわる人は最初から統計検定2級や1級を目指される方も多いと思いますが、以下のキーワードをしっかり他者に説明できなかったりすぐに計算が頭の中に思いつかない場合、一足飛びに2級を受けるのではなくまずは3級を受験して地盤固めと復習を行うのが良いでしょう。
- 乱数
- 相関係数
- 共分散
- 標準偏差
- 全数調査
- 変動係数
- ヒストグラム
- 確率分布
- 幹葉図
この記事では、統計検定3級の実際の難易度、勉強時間の目安、過去問例を紹介しています。
1.統計検定3級の概要
数多くある資格や検定の中では、「簡単、易しい部類」に入るでしょう。
レーダーチャートに表してみると、必要とされる能力はそれぞれ以下のようなイメージです。
統計検定3級合格ラインは100点中70点以上
統計検定3級の合格ラインは7割程度の正答率です。問題は30題前後出題されるので、最低でも20題以上の正解が必要です。
試験時間は60分
試験時間は60分で、他の資格と比較するとコンパクトな部類に入るでしょう。
電卓を持ち込み、計算して回答を算出
問題を解くためには電卓を使用します。公式ページにはこのように記載されています。
電卓の使用について
【持ち込み可能な電卓】
四則演算(+-×÷)や百分率(%)、平方根(√)の計算ができる普通電卓(一般電卓)または事務用電卓
【持ち込み不可の電卓】
上記の電卓を超える計算機能を持つ金融電卓や関数電卓、プログラム電卓、グラフ電卓、電卓機能を持つ携帯端末
※試験会場に持ち込める電卓は1台までとなります。
※試験会場では電卓の貸し出しは行っておりません。
※試験前に電卓の確認を行うことがあります。
一般的に必要となる勉強時間はおおよそ20-30時間前後
統計検定3級合格のために、一般的に必要とされる勉強時間はおおよそ20-30時間前後です。
大学の一般教養などで学習した経験がある方なら復習をさっとするだけで合格することも可能でしょう。
統計データ可視化を成功させる95のチェックリストをダウンロードする
2.勉強方法
統計検定3級に合格するための勉強法のポイントを解説いたします。
2-1.過去問から傾向や難易度を体感する
まず最初に過去問を解いてみましょう。過去問を解いてみることで自分が今持っている知識と最終的に身につけなくてはならない知識のギャップをつかむことができます。
そして、実際に時間も測って時間も体感することが大切です。基本的に、一問2-3分の配分で解くことを意識する必要があります。
実際にこちらから各級4回分ずつ過去問と正解が無料でダウンロードできるので是非トライしてみてください。
2-2.自分の苦手な分野を知る
過去問を解いてできなかったポイントを分析してみてください。自分の苦手な領域を知り、今後の学習計画を立てます。
2-3.苦手な部分は集中的に学習する
自分の苦手な部分は集中的に学習する必要があります。自分の知らなかった単語については特に深く理解するようにしましょう。
具体的な小技としては、過去問冊子の冒頭にまとめられている出題範囲のところにチェックをいれて自分の本当の苦手範囲を確認しましょう。
そして、間違えた問題を数日後にもう一度解いてみるのもオススメです。
当社では、データ分析、統計の記事を数多く発信しています。こちらからご覧になり勉強に役立ててください。
2-4.もう一度過去問を解いてみる
苦手な部分の学習が一段落したら、以前の過去問をまた解いてみましょう。その時点で合格点が十分に取れるようでしたら別の年度の過去問にトライしてみてください。
その過程でまた苦手な部分が新たに見つかれば、1つ1つ潰していきましょう。
2-5.8割ほど解けるようになったら受験
初めて解く過去問で8割以上正解したら、実際に受験してみましょう。
受験方法については第4章で詳しく説明します。
3.統計検定3級の出題範囲
統計検定3級の出題範囲の主なカテゴリーです。この出題範囲の中から、正誤問題、読み取り問題、計算問題などの方式で出題されます。
【頻出】データの種類
データのタイプの違いを理解し、それぞれのデータに適した処理法を理解できているかを問う。
- 量的変数
- 質的変数
- 名義尺度
- 順序尺度
- 間隔尺度
- 比例尺度など
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
質的変数と量的変数についての出題は頻出です。この問題では時間と料金が量的変数です。
以下の記事も、このカテゴリの学習の参考になりますのでご覧ください。
【頻出】標本調査
標本調査の意味と必要性を理解し標本の抽出方法や推定方法について説明することができるかを問う問題。
- 母集団
- 標本
- 乱数表
- 全数調査
- 無作為抽出
- 標本の大きさ
- 国勢調査など
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
標本調査や無作為抽出、国勢調査などについて単純な知識を問う問題が出されます。
例えば「国勢調査」であれば、「日本に住んでいるすべての人を対象に5年に1度行われる全数調査で大正時代ごろから実施されている」程度の知識は最低必要とされます。
実験
実験調査の意味と必要性を理解し,実験の基本的な考え方について,説明することができるかを問う問題。(まれに出題)
- 実験研究
- 観察研究
- 処理群と対照群
【最頻出】統計グラフ
基本的な統計グラフを適切に解釈したり,自ら書いたりすることができるかを問う問題。
- 棒グラフ
- 折れ線グラフ
- 円グラフ
- 帯グラフ
- 積み上げ棒グラフ
- レーダーチャート
- バブルチャート
- ローソク足棒モザイク図
- 散布図(相関図)
- 複合グラフ
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
直感やなんとなくで答えずに確実に根拠を持って回答していきましょう。
【頻出】データの集計
データを適切に集計表に記述すること,また集計表から適切に情報を読み取り、説明することができるかを問う問題。
- 度数分布表
- 度数
- 相対度数
- 累積度数
- 累積相対度数
- 階級
- 階級値
- 度数分布表からの統計量の求め方など
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
度数分布表とヒストグラムを並べる問題がよく出されます。
【最頻出】時系列データ
時系列情報を持つデータをグラフや指標を用いて適切に表現し、それらの情報を適切に読み取ることができるかを問う問題。
- 時系列グラフ
- 指数(指標)
- 移動平均
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
時系列データは1年ごと、1か月ごとなど決まった期間の比較をしなくてはならない問題がよく出てきます。
【最頻出】データの代表値
数値を用いてデータの中心的位置を表現すること,またそれらを用いて適切にデータの特徴を説明することができるかを問う問題。
- 平均値
- 中央値
- 最頻値
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
中央値、平均値などの「基本統計量」についてこちらの記事で詳しく説明しています。
【最頻出】データの散らばり
データの散らばりを,指標を用いて把握し説明することができるかを問う問題。
また、グラフ表現することを通して,散らばりの特徴を把握したり,グループ間の比較を行ったり、はずれた値の処理を考えられるかを問う問題。
※青文字の用語は、クリックするとデータビズラボオウンドメディアの解説記事へ移動します。さらなる学習にお役立てください。
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
このカテゴリでは、計算問題や言葉の定理・定義の理解を問う問題がよく出題されます。
【最頻出】相関と回帰
相関関係と因果関係の区別ができ、記述統計の範囲内での回帰分析の基本事項が理解できているかを問う問題。
- 相関
- 擬相関
- 因果関係最小二乗法
- 回帰係数
- 予測
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
回帰係数や予測についてより正の相関、負の相関について聞かれることが多いです。相関関係と因果関係の違いなど基本的な知識を身につけておくことが大事です。
【最頻出】確率
確率の意味や基本的な法則を理解し,さまざまな事象の確率を求めたり,確率を用いて考察することができるかを問う問題。
- 独立な試行
- 条件付き確率
出題例(統計検定3級2019年6月過去問題より)
確率の計算は正確にできるようにしておきましょう。
例えば、「5C3」「6!」といった式を見たときにピンとこない方は要対策です。
計算が多少複雑になる場合もあるので必ず電卓を持っていきましょう。統計検定は電卓持ち込み可です。
確率分布
確率変数の平均・分散・標準偏差等を用いて、基本的な確率分布の特徴が考察できる。(稀に出題)
- 二項分布
- 正規分布
- 二項分布の正規近似
統計的な推測
標本分布の概念を理解し、区間推定と仮説検定に関する基本的な事項が理解できる。(稀に出題)
- 標本平均・比率の標本分布
- 母平均・母比率の区間推定
- 母平均・母比率の仮説検定
統計検定では出題頻度が少ないので代わりにセンター試験の問題を持ってきました。
平成30年度センター試験数学2B 第5問(3)
4.統計検定3級の受験方法
統計検定3級には2つの受験方法があります。
年2回の紙媒体での受験
まず、紙媒体で受験をする大学受験のような形式です。
こちらの形式の場合6月と11月の年2回開催されていて東京23区と名古屋・福岡会場での実施のみになります。
オンライン受験(CBT方式)
オンラインで受験するCBT方式です。
CBT方式での受験は、開催している会場で平日・土日問わず1年中受験することができます。例えば東京都で受験したい場合、申し込みサイトでは下記のように受験会場が表示されます。(2023年1月17日時点)
この中から会場を選択するとカレンダー型で日程が表示されます。会場ごとに申し込みの方法が違うのでよく確認しながら申し込みを進めましょう。
今すぐ受験したいという方はこちらから会場を確認できます。
5.統計検定3級のおすすめテキスト
統計検定3級にあたり、以下の本を使って学習をすすめるのがおすすめです。
統計検定3級・4級公式問題集
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日本統計学会『統計検定3級・4級公式問題集 2018~2021年』実務教育出版、2021年
日本統計学会が公式に出している過去問題集です。回答だけではなく解法の道筋まで書かれているのでおすすめです。
統計学入門
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東京大学教養学部統計学教室(編)『統計学入門(基礎統計学Ⅰ)』1991年、東京大学出版会
私の大学での統計学の教科書になっていました。今でも統計学の基本を学びたい方は一読する価値があります。
意味がわかる統計学
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石井俊全『意味がわかる統計学』ベレ出版、2012年
こちらも大学の統計学の授業でも使われており、基本的なところが纏められていておすすめです。
さらに発展的な内容を学びたい方には以下の記事にもデータ分析や可視化領域のおすすめ本を紹介しています。
まとめ
社会人になってしばらく経つと、大学で学んだことなどすぐに忘れてしまうものです。
その意味で、全ての人がデータを扱わなければならない今、統計検定3級は学び直しの一つの良い手段・きっかけになるでしょう。
統計検定3級を理解できたら、2級で実践的な知識を身につけていくのがおすすめです。
統計検定2級の学習ロードマップは、こちらの記事で詳しく解説しています。
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