日本テレビ放送網株式会社様|徹底したアジャイル発想とミッションの共有で”データを見る文化”を醸成

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テレビ局の中でも高視聴率を維持し、地上波放送だけにとらわれない様々なコンテンツを発信している日本テレビ放送網株式会社様(以下日本テレビ)は、全社的なデータ活用文化の醸成に取り組んでいます。

近年、視聴者は地上波放送だけでなくTVerやYouTubeといった新たな媒体に分散し、番組の感想をSNSで発信するなどコンテンツの楽しみ方も変わってきています。そうした背景の中、日本テレビグループ全体のデータ分析基盤を構築する”FACTlyプロジェクト”が発足しました。当社は、本プロジェクトに包括的な支援を提供しています。

今回は、FACTlyプロジェクト発足・推進の経緯やデータ活用で成果を出す秘訣をテーマにプロジェクトの統括・推進役であるデータ戦略部専門副部長の川越様と辻様に、実際にプロジェクトに携わったデータビズラボのメンバーの一部よりインタビューをさせていただきました。

 

日本テレビにおけるデータ活用基盤”FACTlyプロジェクト”の成果

「データ(fact)を元に判断をする環境」の提供と「データを生産する工場(factory)」という2つの意味を込めて、このプロジェクト(データ活用基盤)はFACTly と名付けられました。

本プロジェクトではデータの収集から見える部分(BI/ダッシュボード側)まで広く整備を進めており、社員全員がデータに基づく意思決定を行うための基盤づくりを進めています。

▼プロジェクト過程のアウトプットの一部

この取組・活動で、日本テレビでは、以下のような目に見える成果が出ています。

  • データを見る社員の増加
  • 各部署からの具体的なデータに関する依頼問い合わせ数増加
  • データの自動化による業務フローの改善(Excelでのコピペ作業などの低減)
  • コンテンツの価値を最大化していくために、データを使って定量的な指標を可視化すること
  • 多種多様な分析に耐えうる分析基盤構築
  • 各部署のニーズに応えるスピーディなデータ分析・可視化体制

“FACTly”データ活用基盤構築の成功の秘訣

日本テレビ様はなぜ大きな成果を上げることが出来たのかをデータ戦略部・専門副部長 川越様にインタビューさせていただきました。インタビューで伺ったのは以下の4点です。

  • FACTlyプロジェクトが立ち上がる前の状況
  • 取り組んで苦労したこと・良かったこと
  • 成果を出すために重要なこと
  • 今後の取り組みや今後の課題

取り組む前の状況と背景

 

データがサイロ化され、データが全社統合されていなかった

【データビズラボ】日本テレビ様のデータ活用の問題や課題にはどのようなものがありましたか?

川越様)当時、全社的なデータ統合や蓄積が行われていなかったことです。各部門で必要なデータをそれぞれの各部門が利用するシステムから取得し、Excelで集計を行っていました。その集計されたデータもメールで共有するといった状況でした。

FACTlyプロジェクト開始後、データの蓄積や統合が容易な配信(TVer)のデータやWEB型のデータから着手し、その後コンテンツの指標やCDPなどに順次拡大していきました。中でも各部門で必要なデータ活用を優先度を決めて対応を進めていきました。

データ領域の広く豊富な知見の発信に共感

【データビズラボ】今回データビズラボにご依頼いただいた背景はどのようなものでしょうか?

川越様)データビズラボさんが発信しているオウンドメディアを拝見して、知見が豊富だと感じ、問い合わせしました。一度MTGしただけで、我々が持っていない経験値を持っていると信頼できたことがきっかけです。また、FACTlyプロジェクトに限らずデータ領域の業務推進はアジリティ(機動力)が非常に重要なので、コンパクトなサイズ感の会社にアジリティを期待しました。

辻様)実際一緒にお仕事をしてみて、データビズラボさんは言われたことを作業するだけではなく、主体的に当事者意識をもって提案してくれる方が多い印象です。各部門とのコミュニケーションにとどまらず、抽象的な要望を具体的なダッシュボードに落とし込むスキルに長けていると日々感じております。

FACTlyプロジェクト/データ活用基盤整備に取り組んで苦労したこと・良かったこと

 

データの利用価値をクイックウィンで示すアプローチ

【データビズラボ】苦労した点はどのような部分ですか?

川越様)全社的なDXやデータ活用・改革を行うためには、データの利用価値をきちんと社内に示していく必要があります。

そこで、決してデータリテラシーが高いわけではない方にもわかる解像度で、説明を繰り返しました。しかし、まだ見たことのないデータを伝える難しさ、必要性を理解する難しさから、各部署との協力体制の構築が難航したこともありました。

それに対して、小さくても動くものを作り価値を実感してもらう、クイックウィンのアプローチをとって解決していきました。これにより、双方が納得感を持ってものづくりができる協力体制が徐々に築けてきたと感じています。

社員がデータを見て会話する文化の醸成

【データビズラボ】取り組んで良かったと感じたことは何でしょうか?

辻様)本プロジェクトの成果として、各部門の社員がデータやダッシュボードを見て会話する機会が増えました。データが可視化されたことで、「もっとこんなデータが見たい」「データ活用によって業務改善を行いたい」など新たにご要望をいただくことが増えました。

それら小さな要望の解決の積み重ねで、部としての要望、さらには経営課題のデータでの解決要望も上がってくるようになってきました。これは一重に、社員がデータを見て会話する文化が醸成されてきたと言えるのではと思っております。

データビズラボの具体的支援の一部

  • コンテンツパワーに関する企画設計、可視化
  • ソーシャルデータを使った分析と可視化
  • 地上波、AVOD、SVODなどのモニタリング用BIダッシュボード構築
  • 地上波放送に加えオンデマンドも含めた視聴データの可視化
  • 広告クライアントにお見せする視聴者デモグラフィックの可視化・分析
  • グループ会社の会員の利用状況、財務状況の分析と可視化
  • データ活用における社内カスタマーサクセスチーム(CS)の立ち上げ、コミュニティーの活性、リテラシー向上の活動

    データ活用で成果を出すために重要なこと

     

    データ活用で成果を出すために重要なことをお聞きしました。以下がまとめです。

    成功の秘訣

    • 計画や決定の変更を許容し、素早い決断に繋げる
    • 失敗を恐れずに、チャレンジすることを評価する
    • メンバーへの裁量と権限の付与で当事者意識を上げさせる

      “計画や決定の変更が許容されていることが素早い決断に繋がる” ー 辻様

      【データビズラボ】どのようなチームや思想でプロジェクト推進をされているのか教えて下さい。

      川越様)チーム体制としては、クイックウィンを目指す事業チームとデータ文化を浸透させていくカスタマーサクセスチームがあります。

      プロジェクトの推進にあたっては、各部門にイメージしてもらうために、まずは動くもの(プロトタイプ)を早く作り更なる要望を引き出す、高速な PDCAを意識しています。

      加えて、欲しいダッシュボードを聞くよりも、何を解決したいかに重点をおくコミュニケーションで、課題の本質を追求することを心がけています。

      辻様)高速な PDCA の実現のためには、素早い決断力が求められます。その中で、計画や決定の変更が許容されていることが素早い決断に繋がるポイントだと思っています。

      FACTlyのチーム体制

      FACTlyプロジェクトは「データでみんなをハッピーにする」をビジョンとして、日本テレビの全社的なデータ分析基盤を構築しています。プロジェクト内には以下の代表的なチームがあります。それぞれのチームにおいて”ハッピーにする対象(データの顧客)”が異なります。

      • セールスチーム:スポンサーに広告価値をデータで示すことにより、営業収益向上に向けたデータ活用を目指す
      • コンテンツチーム:視聴者により良いコンテンツを届けるために、コンテンツ価値最大化に向けたデータ活用を目指す
      • CDP チーム:視聴者を%ではなく人として捉える事により、顧客満足度を上げるデータ活用を目指す
      • CSチーム:コミュニティやサポートを通じて、日本テレビのデータ文化の醸成を目指す

      “失敗を恐れずに、チャレンジすることを評価したい”  ー 川越様

      【データビズラボ】社内でどのようなデータが必要とされているのかを把握するためにしたことは何ですか?

      辻様)他部門との密なコミュニケーションと、そこから生まれるひらめきを形にしてみることです。対話を繰り返す中で、課題の本質を追求することを心がけています。さらにそれをどのように解決するのか、自ら考えて形にしてみることに積極的にチャレンジしています。それによって、他部門にも必要なデータが見えてくるという好循環を作り出せていると実感しています。

      例としてあげられるのが、TVerの再生数や広告再生数を可視化し、どのような属性の人が見ていたのかを営業が把握できるダッシュボードを作ったことです

      可視化による新たな気づきに加え、ターゲティングへの利用など収益向上への貢献が評価され、社内のデータ活用を加速するきっかけとなりました。

      川越様)どの部門にどのような分析やデータが必要なのかを全て把握することはできません。その中で声をかけてもらった部門や興味を持ってくれた部門としっかりと対話することを推奨しています。必要性があるのか、効果があるのかという判断も必要ですが、それよりもまずは簡易的なものを作ってみるというチャレンジをしてもらっています。失敗を恐れずに、チャレンジすることを推奨しています。

      メンバーへの裁量と権限の付与で当事者意識を上げさせる

      【データビズラボ】日本テレビさんのメンバーの方は皆様非常に主体的で自律的な方ばかりで驚いています。このような文化をつくる秘訣はありますか?

      川越様)FACTly という名前が良い例ですが、システムに名前を付けてもらいます。FACTlyのサブシステムを各チームが管理しているのですが、このサブシステムにも全て名前が付いています。名前をつけるのは各チームのリーダに想いを込めて付けてもらいました。

      命名は一端にすぎませんが、プロジェクト全体として、常に各メンバーの「当事者意識」を大事にしています。

      チームを作り、チームリーダに裁量と権限を渡すこともその1つです。ビジョンとミッション、バリューを伝えた上で、各人に作りたい世界観を描いてもらう、そんな組織作りを行っています。各リーダーが中長期的な計画を描き、年間の予算を取りに行く、さらにクオーター毎に実施内容を提案し、予算を消化していく。ビジョン、ミッション、バリューという根底の考え方を共通認識として、各チームリーダに裁量と権限を与えて、自走できるようにすることにより主体性が生まれる仕組みにしています。

      辻様)裁量と権限が、モチベーションにも繋がっています。

      自ら描いたデータ活用の世界観だからこそ、実現したい思いも一層高まります。それをチームに共有し方向性を合わせていきます。どのように実現するかはメンバーに託し、メンバー1人1人が当事者意識をもって取り組むのが FACTly のチームビルディングです。

      川越様)私が部員から相談されるときには、メンバーがやりたい事を描いてくるので、より良い案を一緒に考え、改善案を検討するなどフォローすることが多いです。

      辻様)裁量と権限が大きい分、課題に直面することも多々あります。その中で、フォローアップしてもらえる体制はとてもありがたいです。加えて、課題の解決策を一緒になって悩み、考えてくれる、やりたい事の実現に向けて伴走してくれる、データビズラボさんの存在は大きいです。

      川越様)データビズラボさんはビジネスの本質的な課題を発見し、解決に向けて検討してくれる方が多いですよね。だからこそ、案件単位でのお願いをすることよりも、パートナーとして年間を通じて伴走していただいています。結果として、データ文化の醸成という長期課題に対しても、我々が不足している経験値をチームに取り入れることができます。データビズラボさんもチームの一員として、裁量と権限を持って取り組んでいただいています。社員の当事者意識を上げ、データビズラボさんも当事者意識を持って取り組んでいただけるような仕組みを心がけています。

       

      全社員がデータで意思決定を行うこと “みんなのFACTlyにしていきたい” ー川越様

      【データビズラボ】今後の目標について教えてください。

      川越様)以下の3ステップで今後のプロジェクトを進めていく予定です。

      1. まずはデータ戦略部が中心となって中央集権型の分析を確立し、各部門の意思決定にデータが活かせる体制にする
      2. 中央集権の確立後に、各部門が分析できる分散型に移行していく
      3. データ分析業務の7割を各部門が自走できるようにし、残りの3割の高度な分析をデータ戦略部が担っていく

      データ基盤を作る側にとっても自らの想いを形にできる環境があり、利用する側にとっても分析したいものが分析できるという”みんなの FACTly にしていきたい”と思っています。

      柔軟な体制と当事者意識とクイックウィンを

      【データビズラボ】これからデータ活用やデータ活用基盤構築に取り組もうとされる方にアドバイスはありますか?

      川越様)会社の環境や進め方などさまざまだと思いますが、組織、作り手、利用者の観点から次のことを大切にすると良いかもしれません。

      • データ利活用のステージに合わせたアジャイルなチーム体制を構築すること
      • データ活用の推進にあたってビジョン、ミッション、バリューを定義し、各人が当事者意識を持って推進する環境を創ること
      • まずは作ってみることで必要性を判断すること、ユーザ体験を向上させること

      おわりに

      日本テレビの全社的なデータ活用は、一人一人が当事者意識を持ちつつ、「データでみんなをハッピーに」というビジョンに一丸となって向かう姿勢で推進されていました。その背後には、計画や決定の変更を許容する、チャレンジを推奨するカルチャーがあると伺えます。

      今後日本テレビがよりデータ活用を加速させ、全社的にデータドリブンな意思決定を行なうために、データビズラボもチームメンバーとして引き続き貢献して参ります。

      現在日本テレビでは、データエンジニアを募集しています。是非下記リンクより詳細をご覧ください。

      日本テレビ放送網株式会社採用情報ページ

       

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