データマネジメントとは、データを資源として組織内で管理し、データの潜在能力を引き出すものです。
当社では、その潜在能力を引き出す中小規模〜大規模なデータマネジメント(データマート設計・構築、実装、データカタログの戦略他)の豊富な実績があり、その知見やノウハウをこの記事で紹介します。
この記事は、特に次のような悩みを持つ人に役立ちます。
- 自分たちのデータマネジメントに自信がない
- データをどのように扱うべきか方針が決まらない
- どうやってデータを使って成果を出せばいいかわからない
- 自分の考えるデータマネジメントが正しいか自信がない
「データマネジメント」という用語はよく耳にしますが、使われ方が多岐にわたるため、その意味するところがあいまいになりがちです。しかし、この記事では、できるだけ簡単に説明するよう心がけています。最後まで読めば、データマネジメントの基本を理解し、あなたの会社でそれを実行するための準備ができるでしょう。
目次
1.データマネジメントとは?
データマネジメントとは、「データをビジネスで継続的に活用出来るような状態にし続けること」です。
例えば以下のような悩みを解決するのに、データマネジメントは必須になります。
- データが分散していて適切な経営判断ができない
- データ分析にかかる時間がかかりすぎて迅速に現状を把握できない
- 全社員がデータから判断する習慣がない
- 部門の責任者としてデータを把握しなければならないが、いつでも見られる状態になっていない
- 財務データの項目の表記がバラバラで数値が正確でない場合が多く、正確な投資計画を立てるのが難しい
- 前週の売上データが欲しいが前月までのデータしかないので、次週の営業計画を立てるのが難しい
- GDPRやデータプライバシー保護法、コンプライアンスに対応しなければならない
- データサイロを解消したい
上記のようなことを実現するために、「データを常に最新の状態にする」「組織が保有するデータにアクセスしやすい環境にする」ことが必要になり、それらを支えるのがデータマネジメントです。
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2.データマネジメントを構成する要素
1章で述べた「データマネジメントが行われている状態」にするには、様々な観点で整備をしていく必要があります。ここでは、それらの要素を簡素化して表形式でまとめたものが下記です。
要素 | 説明 |
データガバナンス | 組織で取り組むデータマネジメントについて決めた運用体制・運用ルール・責任者などを定期的に見直していくこと |
データアーキテクチャー | 組織として「保有するデータをどのように蓄積しビジネスで活用するか」を設計する領域 |
データモデリング&デザイン | データの構造化と組織化を行うためのプロセスや手法に関連する領域 |
データストレージとオペレーション | データの保存、管理、アクセス、保護など、データストレージに関連する領域 |
データセキュリティ | データを機密性、完全性、可用性の観点から保護するための対策や手法 |
データ統合と相互運用性 | 組織が取り扱う複数のデータを紐づけて統合する仕組みをつくること |
ドキュメントとコンテンツ管理 | データマネジメントに関わる計画書やシステム仕様書やコンテンツを管理すること |
参照データとマスタデータ | 参照データはデータの分類や補完に使用され、一貫した分析や報告を支援するもの マスタデータは組織全体で共有される中心的なデータであり、他のデータ要素やシステムとの整合性を確保するもの |
データウェアハウスとビジネスインテリジェンス | データの集約、分析、報告に関連する領域 |
メタデータ | 組織が保有する、データの説明書(メタデータ)を管理すること |
データ品質 | ビジネス利用に適した状態にデータの品質を保つこと |
3.データマネジメントの3つの大きなメリット
データマネジメントを行う事が「データ活用を継続的に行う事ができるか否か」を決定付けます。というのも、データマネジメントにより、正しく正確なデータを使いたいタイミングで活用する事が実現する為です。
データマネジメントを行うことによるメリットは主に以下の3点があります。
- 共通の正しいデータを利用して素早い意思決定ができる
- データ作成の手間を減らし、分析業務に集中できる
- 障害対応にかかる時間を減らすことができる
これらによってデータ活用を継続的に行うことができます。
3-1.共通の正しいデータを全員で利用し素早い意思決定ができる
1つ目のメリットは、業務で必要なデータを正しく整理されている状態で活用できるので、素早い意思決定が可能となります。
仮にデータマネジメントがなされていないと、次のような問題が発生しデータを活用した意思決定までの時間が掛かってしまいます。
- 「XXのデータが欲しい」となってもそのデータをまとめるのに1週間かかる
- データが纏ったとしても、部署によって扱うデータの定義がバラバラで数値が異なるので確認が必要
一方、データマネジメントにより「必要なデータを整理された正しい状態に保っておく」事が出来れば、各自の業務で欲しい情報を直ぐに得ることが出来ます。
3-2 データ作成の手間を削減し分析業務に集中できる
2つ目のメリットは、必要なデータが整理された状態であれば、データを手作業で整形する手間を省き分析業務を効率的に出来ます。
従業員・部署によっては、記録したり入力するデータの表記が異なるケースがあります。その場合は、手作業で表記を統一する手間がありましたが、マスタデータに基づきデータを紐付け、表記を自動で揃える仕組みを構築していればその手間は削減が可能です。
データマネジメントがしっかりしていれば、分析にかかる全体の業務工数が当初の10分の1以下になるということはよくある話です。
3-3.障害対応に掛かる時間を削減する事ができる
3つ目のメリットは、データが欠損した、数値に異常があるなどのデータにまつわる障害時に迅速に対処することが出来ます。
データを使用する上で障害をゼロにすることは困難です。しかし、適切なデータマネジメントにより障害時に迅速に対処し障害の影響範囲を最小限に止めることが可能となります。
仮にデータマネジメントがなされていないと、以下のような問題が生じます。
- データの管理をしていなかったので、障害に影響されるデータとされないデータの区別が付かず、一旦サービスを全て止めて調査しなければならない
- どんなデータがあるか把握していないので、障害が発生する度にゼロから調査をしなければならない
このように、障害対応に多くのリソースを割かざるを得ず大きな損失になってしまうのでデータマネジメントは重要です。
4.データマネジメントの導入をおすすめする企業の特徴
データマネジメントはどの業界でも重要なものですが、ここでは特にデータマネジメントが重要になる企業の特徴を紹介します。
特徴1.大量のデータを扱う企業
企業が日々生成あるいは取得するデータの量が膨大であればあるほど、効率的なデータマネジメントシステムの必要性が高まります。データが増えることで、データの整理、検索、分析、保管の複雑さが増加し、これらを効率的に管理することがビジネスのスピードと品質に直結します。代表的な業界としては、以下があるでしょう。
テクノロジー/IT業界: ビッグデータ、クラウドサービス、ソーシャルメディアプラットフォーム、検索エンジンなどを提供する企業は、膨大な量のユーザーデータを生成し、処理しています。IoT(Internet of Things)デバイスの普及により、データ量はさらに増加しています。
金融業界: 銀行、保険会社、証券取引所などは、取引記録、顧客データ、市場データなど、巨大なデータセットを扱っています。高度なデータマネジメントが必要な業界の一つです。
ヘルスケア業界: 電子健康記録(EHR)、医療画像データ、遺伝子データ、臨床試験のデータなど、患者の詳細な医療情報を含むデータを大量に生成しています。個人の健康データは非常に繊細であり、プライバシーの保護とセキュリティも重視されます。
特徴2.データの種類や質の複雑性が高い企業
データの種類や質が複雑性が高い企業は通常、大量のデータを扱い、そのデータが多様であり、さまざまなソースから得られる企業です。具体的な例は以下の通りです。
テクノロジー企業: GoogleやFacebookのような大手テクノロジー企業は、検索クエリ、ユーザーの行動データ、広告データなど膨大で多様なデータセットを処理します。
金融機関: 銀行や投資会社は、取引データ、市場データ、クレジットリスクデータなど、非常に複雑なデータを扱っています。
Eコマース企業: AmazonなどのEコマースプラットフォームは、顧客の購買データ、製品データ、物流データなど、様々な種類のデータを扱います。
通信会社: 通信データ、顧客利用データ、ネットワークトラフィックデータなど、巨大なデータセットを処理し、サービスの最適化や顧客体験の向上に活用します。
5.データマネジメントを進めるための準備
データマネジメントをこれから進めていく時に、まず取り組んでおきたいことをご紹介します。
3章からも分かるように、データマネジメントを出来る状態にするには組織として様々なことに取り組む必要があります。取り組みを始めた次の日からデータマネジメントが出来るということは殆どありません。
しかし、どのようなデータマネジメントにするのであれ、最初に取り組んでおきたいこととしては以下4点が挙げられます。
- 現状どのデータがどのように活用されているか整理する
- 今後どのようにデータが活用されて欲しいかの流れを整理する
- データマネジメントを進める方針についての経営層の合意を得る
- 小規模でデータマネジメントを始める
以下で、それぞれの取り組みについて解説します。
5-1.プロジェクト組成(役割と責任の明確化)
データマネジメントのプロセスには、さまざまなタスク、職務、スキルがあります。
リソースが限られている小規模な組織では、個々の作業者が複数の役割を担当することもあります。しかし、一般的にデータマネジメントの専門家には、データアーキテクト、データベース管理者(DBA)、データベース開発者、データガバナンスマネージャー、データスチュワード、データエンジニアなどが、アナリティクスチームと協力してデータパイプラインを構築し、分析のためのデータを準備したり、データマネジメントのプロジェクトを進めます。
また、全社的なデータマネジメントプロジェクトにおいてはトップマネジメントのコミットメントが重要です。CDO(Chief Data/Digital Officer)/CIO(Chief Information Officer)/DMO(Data Management Officer)と呼ばれる職責がこちらにあたるでしょう。このポイントに関しては、以下の記事でも詳細を解説しています。
5-2. 現状どのデータがどのように活用されているか整理する
まず、現状自分の組織がデータを「どれを取集し」「どこに蓄積し」「どのように活用しているか」を把握しましょう。
現状を把握し「今何が出来ているか・出来ていないか」を明確にするのは、これからデータマネジメントを進めていく上で大切です。もし、「どんなデータがあるのか」を把握しないままデータマネジメントの取り組みを進めてしまうと、導入したツールや仕組みには適さないという事態も起こり得ます。
こうした不測の事態を避けるためにも、今自分たちはどんなデータをどのように使っているのかは把握しておくべきです。社内の各部署や各スタッフに地道に話を聞いて周り、以下のような「データの流れ」の図を作成する事をオススメします。
5-3.将来データがどのように管理され活用されて欲しいかを整理する
次に、データを管理する取り組みによりデータを継続的に活用されているのは、どのような状態か整理します。
組織によってデータマネジメントによって実現したいことは多種多様です。ですので、「自分たちの組織ではデータがどのように管理され活用されていて欲しいか」を考えることは大切です。理想の姿が明確になっていないと、ツールを選定する時に基準が分からず困惑したり、導入した仕組みが思ったものと異なる、ということがあります。
データマネジメントによりデータ活用を実現させる為にも、以下のような「理想とするデータの流れ」の図を作成することが重要です。
この作業は、前述の「現状把握」とセットで考えると進めやすいでしょう。また、図を作成するにあたり以下の観点を明確にしながら進めることをお勧めします。
- どのデータを収集し、どこに蓄積するか
- 蓄積したデータはどこで(利用者・部署など)どのように使用されて、どんなメリットがあるのか
以上の点が明確になっていると、「どのデータが足りないか」「どの機能が足りないか」など課題点が把握でき効率的にデータマネジメントを進めることが可能となります。
5-4.データマネジメントを進める方針について経営層の合意を得る
3つ目は、経営層の合意を得ることです。これにより、データマネジメントを全社で進めることの後押しになるでしょう。
データマネジメントの最終的なゴールは、全社での達成です。その為には、様々な部署を巻き込んでいく必要があります。経営層の合意があれば、「データマネジメントは経営課題である」という大義名分の元で取り組みが進めやすくなるはずです。
経営層の合意を得る為の具体的な方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
また、データマネジメントを扱う際によく出てくる疑問に関してはこちらの記事も参考になるかと思います。
6.データマネジメントの実践的な進め方
データマネジメントの進め方は組織の具体的なニーズや目標に合わせてカスタマイズされるべきですが、以下に、”はじめて”データマネジメントを基礎から始める場合の実践的な進め方の一例を紹介します。
手順1: “基本的な”データガバナンスルールの策定
複雑なポリシーを一から作るのではなく、データの取り扱いに関する基本的なルールを設定します。どのようなデータを保持し、どのようにして安全に保つか、誰がデータにアクセスできるのかなど、簡単なガイドラインから始めます。
手順2: 簡単なデータマネジメントシステムもしくは仕組みの導入
データの管理を容易にするため、クラウドサービスやシンプルな仕組みを導入します。最初は無料または低コストのツールを利用しても良いでしょう。
手順3: データ利用のモニタリングと評価
データがどのように使用されているかをモニタリングし、データマネジメントプロセスの効果を評価します。データを基にした意思決定が改善されているかどうかも含めて確認しましょう。
手順4: 継続的な教育と改善
データマネジメントに関する知識を組織内で共有し、従業員にトレーニングを提供します。また、プロセスの改善点を定期的に見直し、ビジネスの成長とともにデータマネジメント戦略を進化させましょう。
7.データマネジメントに関するよくある質問と回答
Q1.データマネジメントを学ぶ上でおすすめの書籍はなんですか?
A.データマネジメント知識体系ガイド 第二版 (DMBOK2)がおすすめです。
多様なシステムを含む分散型のデータ環境を持つ組織では、適切に設計されたデータマネジメント戦略が重要です。データベースやその他のデータプラットフォームは数多く存在するため、データアーキテクチャの設計や技術選定には慎重なアプローチが必要です。
DAMAは、データマネジメントの機能と手法に関する標準的な見解を定義するための参考書「DAMA-DMBOK: Data Management Body of Knowledge」を発行しています。一般的にDMBOKと呼ばれるこの書籍は、2009年に初版が発行され、2017年にはDMBOK2第2版がリリースされました。
DMBOKでは論点が整理された形で、データマネジメントの活動がまとまっています。
▼データマネジメントの知識領域を定義するDAMAホイール図
引用:『DAMA Japan』
Q2.データマネジメントを進めるためにどんなスキルがあると良いでしょうか?
A.データマネジメントを効果的に進めるためには、技術的スキルとビジネススキルの両方が重要です。以下に、データマネジメントに役立つ主なスキルを分けて列挙します。
※一人に以下のスキルが全て備わっている必要もなく、多くの一般的なプロジェクトでは、異なるスキルを持ったメンバーが集まってスタートします。
技術的スキル
データモデリングとデータベース設計
データがどのように収集、整理、アクセスされるかを決定する基礎です。リレーショナルデータベース設計の原則を理解し、データの関連性を適切にモデル化する能力などです。
SQL
データアプリケーションやシステムは、データにアクセスして操作するためにSQL(Structured Query Language)に依存しています。データの抽出、更新、削除を行い、レポートや分析に必要な情報を得るためには、SQLを効率的に使用できる能力が不可欠です。
データ分析・可視化
収集したデータから有用な洞察を得るためには、データ活用側の知見という意味でえ、データ分析・可視化スキルが重要です。
ビジネススキル
コミュニケーションスキル
データマネジメントでは、複雑なデータや分析結果を理解しやすい形で伝える能力が求められます。技術的な詳細をビジネス上の利害関係者に明確に説明するには、コミュニケーションスキルが必要です。技術的な詳細を非技術者にも理解しやすく説明する能力です。
プロジェクトマネジメントスキル
データマネジメントプロジェクトを成功に導くには、計画立案、リソースの割り当て、タイムラインの管理、リスクの評価といったプロジェクトマネジメントの技術が重要です。ただし、メンバーレベルであれば、必要ないかもしれません。
問題解決スキル
データに関連する課題に対する創造的で実用的な解決策を見つける能力です。こちらも非常に重要です。
8.データマネジメントを進めるならデータビズラボとの伴走がおすすめ
データマネジメントのプロジェクトは多種多様なスキルセットが必要であるため社内メンバーだけの遂行は現実的には難しいです。
これからデータマネジメントを進めようとされているなら、当社データビズラボとの伴走がおすすめです。
8-1.専門知識と実績
データの専門家としての豊富な経験と成功事例を保有しています。これにより、様々な業界やビジネスニーズに合わせたカスタムソリューションを提供することが可能です。
以下は、データ分析・可視化について公開できる実績の一例です。実績一覧はこちらをご覧ください。この他にもお伝えできる事例は多数ございますので、お気軽にお問い合わせください。
データ分析基盤構築とデータカルチャーの融合で更なる競争力獲得を目指し、 | 徹底したアジャイル発想とミッションの共有で”データを見る文化”醸成を目指し、 | 優れた予測アルゴリズムの価値をデータ可視化で具現化。 |
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8-2.データマネジメントプロジェクト遂行に必要となる広範囲なデータ経験
データマネジメントにはデータの上流から下流まで、広範囲なデータの経験が必要です。当社では、データ分析、ビジュアライゼーションに至るまで、データに関わるあらゆるニーズに対応して参りました。
これにより、一貫したサービスを通じてデータの価値を最大限に引き出すことができます。
8-3.最新技術の活用
AI、機械学習、ビッグデータ技術など、最先端のテクノロジーを駆使してデータマネジメントの効率化と精度向上を図ります。
9.まとめ
データマネジメントは、データ活用やデジタルトランスフォーメーションの推進を支える重要な取り組みです。
私たちはどうしても「どんなツールを使うか」「どんなデータを集めるか」といった手段に注目しがちですが、最も重要であるのは「データを継続的に活用できる仕組み」を作っていくことです。
確かにデータマネジメントがされている状態にするにはやるべきことが多くあり、一筋縄ではいきません。しかし、「継続的なデータ利活用」の為には避けられない道です。本記事で紹介した内容を踏まえて、真摯にデータマネジメントに向き合っていけば必ず道は開けると信じています。
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当社では、データ分析/視覚化/データ基盤コンサルティング・PoC支援に加え、ビジュアルアナリティクス、ダッシュボードレビュー研修、役員・管理職向け研修などのトレーニングを提供しています。組織に根付くデータ活用戦略立案の伴走をしています。