データの民主化とは?手順、メリット、重要性をわかりやすく解説

データの民主化は、データへのアクセスと利用が広く開放され、多様な関係者に共有されることです。

近年、データの価値と重要性がますます浮き彫りになっています。ビッグデータの増加、技術の進歩、そしてデジタル化の進展により、我々は膨大な量のデータを生成し、保有するようになりました。しかし、これまでデータへのアクセスや利用は、一部の専門家や組織に限られていました。

そこで注目されているのが、「データの民主化」です。この記事では、データ民主化の重要性、背景、利点、課題、そして将来展望について詳しく探っていきます。

1.データ民主化とは?

データ民主化(Data Democratization)とは、企業や組織におけるデータの利用と理解を、特定のデータ専門家やアナリストだけでなく、全ての人々に可能とする概念です。つまり、どんな役職の人も、必要なデータにアクセスし、それを理解し、活用することができる状態を指します。

このようなアプローチは、組織全体の意思決定プロセスを改善するとともに、より効率的で知識豊富な働き方を可能にします。データに基づいて意思決定を行うことで、精確かつ客観的な判断が可能となり、組織全体の生産性や業績の向上につながるとされています。

ただし、データ民主化を実現するためには、データアクセスの管理、データセキュリティ、プライバシー保護、そして適切なデータ解釈と利用を可能にするための教育やトレーニングが重要となります。

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2.データ民主化が必要な理由

全ての人々がデータにアクセスし、それを利用・理解・活用することができる状態を目指すことがデータの民主化ですが、データ民主化が重要とされるようになった主な理由は以下があります。

意思決定の質の向上

データに基づいた意思決定は一貫性があり、精度が高くなる可能性があります。各レベルの従業員が直接データにアクセスし、自分たちの仕事に関連する重要な意思決定に活用できるようになります。自分の役割や責任に応じて必要なデータにアクセスできるため、情報に基づいた意思決定や業務の効率化が可能となります。

時間と労力の節約

データが一部の専門家だけの手に集中していると、他の従業員が必要な情報を得るためには、その専門家に依存しなければなりません。これは時間と労力の浪費を招きます。データ民主化により、皆が必要なデータにすぐにアクセスできる世界をつくることで、企業全体の生産性が向上します。

これを後押ししたのがセルフサービス型BIでしょう。これにより、従業員はデータを活用して問題の発見や解決に貢献することができます。

※セルフサービス型BIとは?

従業員が自身でデータを探索し、分析できるデータ分析ツールやプラットフォーム。昨今のBIツールに関して、「セルフサービスBI」と言うことも多い。

データ民主化が進むと、BIツールの活用も進みます。詳細はこちらもご参考にされてください。

ダッシュボードとは?意味から導入するプロセス、ツールの比較まで徹底解説

情報の透明性アップ

データへの広範なアクセスは、組織の透明性を高め、従業員が組織の目標と進行状況を理解しやすくします。組織全体の信頼性と一体感を高める役割を果たします。

また、部門やチーム間でデータを共有し、情報の透明性が高まります。情報の重複や非効率性も減らすことができます。

データからの洞察の共有とコラボレーション

データの民主化により、従業員は自身の洞察や発見を他のチームや部門と共有し、コラボレーションを図ることができます。組織全体でデータドリブン型の意思決定とイノベーションを推進することが可能となります。

3.データの民主化におけるもっとも大きなメリットはイノベーション

データの民主化により、従業員や関係者がデータにアクセスできると、自身のアイデアや洞察を活かしたデータ分析や可視化が進む土壌ができます。

従業員や関係者がデータにアクセスし、自由に利用できる環境が整うことで、異なる視点や専門知識を持つ人々がデータを分析可能になります。

例えば、以下のようなポイントでその恩恵を感じられることが多いです。

アイデアの創出

従業員や関係者がデータにアクセスできる環境にあると、新たなアイデアや視点が生まれやすくなります。データの民主化により、組織内の異なる部門や役割の人々がデータを活用し、創造的な問題解決や革新的なアイデアの発掘が行われやすくなります。営業データと顧客フィードバックにアクセスできる範囲が広まると、組織内の従業員はこれらのデータを活用して、新たな市場チャンスや顧客のニーズに対するアイデアを考えることもできるでしょう。

新製品やサービスの開発

データの民主化により、組織内の従業員がデータを活用して新たな製品やサービスの開発に取り組むことができます。例えば、顧客の行動データや市場トレンドの情報にアクセスできることで、顧客ニーズに合わせた製品やサービスの開発が進められます。さらに、異なる部門間でデータを共有し、情報を結びつけることで、より革新的な製品やサービスのコンセプトが生まれる可能性があります。

プロセスの最適化と効率化

データの民主化により、組織内の従業員がデータを分析し、業務プロセスの改善や効率化に貢献できます。例えば、生産データや品質データにアクセスできることで、生産ラインの効率化や品質向上のための改善策が見つかる可能性があります。従業員が自らデータにアクセスし、問題やボトルネックを特定し、改善策を実装することで、プロセスの最適化が進むことがあります。

4.データの民主化を進めるための手順

ビジョンと目標の設定

データの民主化のビジョンと目標を明確に定義します。具体的な成果や効果を明確にし、関係者やステークホルダーが共有することが重要です。

データガバナンスの整備

組織内でデータの管理とガバナンスを行うためのフレームワークです。データの所有者や責任者を明確にし、データの品質管理、セキュリティ対策、アクセス制御などを定義します。データガバナンスフレームワークはデータの民主化を支援し、組織全体でのデータの活用と信頼性の確保を促進します。

以下の記事では、データガバナンスの実践をお伝えしています。

データガバナンスとはデータマネジメントを監督すること

参考:データ品質とは?品質評価項目や品質を向上させるための実務的対策を解説』

データプラットフォームとツールの整備

データの収集、保存、分析、可視化に必要なインフラストラクチャーやツールを整備します。クラウドベースのデータプラットフォームや分析ツールの活用など、適切な技術的な基盤を整えます。

データプラットフォームに関しては、詳細を以下の記事でも紹介しています

参考:『データプラットフォームとは?導入に向けて組織が知るべき基礎知識』
参考:『DMP(データマネジメントプラットフォーム)とは?わかりやすく解説』

データリテラシー教育

データの民主化を実現するためには、従業員や関係者のデータリテラシーを向上させる教育プログラムが重要です。データの解釈や分析の基礎、データツールやテクノロジーの使用方法などについてのトレーニングや教育を提供します。データリテラシーの向上はデータの民主化を支える基盤となります。

参考:「データリテラシー」組織における必要性と、鍛え方を教えます。』

5.データ民主化の課題と解決策

データの民主化にはいくつかの課題が存在しますが、以下によくある課題とそれに対する解決策を示します。

データセキュリティとプライバシーの保護

データの民主化は、データのアクセスや共有を広げることを意味しますが、セキュリティやプライバシーのリスクも伴います。解決策としては、以下の点に注意する必要があります。

データアクセスの制御

データへのアクセスは、必要な範囲でのみ許可されるべきです。アクセス権限の明確化や適切な認証・認可プロセスの実施が重要です。

データの匿名化や擬似化

個人情報を特定できないようにデータを処理する手法を採用することで、プライバシーの保護を強化します。

セキュリティ対策の強化 

データの保管などにおいて、適切なセキュリティ対策を実施することが重要です。暗号化やファイヤウォールなどの技術的な手段を用いることが一般的です。

上記のような事柄を解決したり、ルールをつくるのが、データマネジメントやデータガバナンスです。

参考:『データマネジメントとは?実践前に知っておくべき最低限の基礎知識』

データ品質の確保

データの民主化により、多くの人々がデータにアクセスするため、データ品質や信頼性の維持が課題となります。以下の解決策が考えられます。

参考:データ品質とは?品質評価項目や品質を向上させるための実務的対策を解説』

データ品質管理の強化

データ品質の基準やガイドラインを策定し、データの正確性、完全性、整合性を維持するためのプロセスやツールを導入します。

データガバナンスの確立

データガバナンスの枠組みを構築し、データの所有者や責任者を明確にし、データの管理、品質管理、変更管理などを適切に行います。

スキルと教育の不足

データの民主化を実現するためには、従業員や関係者に適切なデータスキルや知識が求められます。以下の解決策が考えられます。

参考:『データ人材・デジタル人材育成支援(研修・トレーニング)』

データスキルの向上

データリテラシーのトレーニングやデータ分析ツールのトレーニングなど、従業員のデータスキルを向上させる取り組みを行います。

内部教育プログラムの導入

組織内でのデータの活用やデータの解釈に関する教育プログラムを導入し、従業員のデータに対する理解を深めます。

文化と組織の変革(チェンジマネジメント)

データの民主化は組織文化やプロセスの変革を必要とするため、組織全体の変革への対応が求められます。課題としては、社内の抵抗や様々な調整が挙げられます。これに対する具体的な解決策としては、以下があるでしょう。

リーダーシップの関与

データに基づいた意思決定を促進するために、組織のリーダーシップ層(経営層や管理職)がデータドリブンなカルチャーを醸成する役割を果たします。

コミュニケーションと関与の促進

データの民主化に関する情報や進捗状況の共有、従業員の意見やフィードバックの収集を積極的に行い、組織全体の関与を促します。

まとめ

データの民主化は、社会とビジネスに革新的な変化をもたらす重要なトレンドです。データのオープン化や共有、アクセスの民主化により、より多くの人々がデータにアクセスし、それを活用することが可能となります。

ビジネスにおいては、イノベーションの促進と顧客中心のアプローチが重要な変化となります。データの民主化により、ビジネスは多様なデータにアクセスし、新たなビジネスモデルやサービスの創出が可能となります。顧客データの活用によって、個別化されたサービスやカスタマーエクスペリエンスの向上が実現され、顧客満足度とロイヤルティが向上します。

しかしながら、データの民主化にはセキュリティやプライバシーの保護、データ品質の確保、スキルと教育の不足、文化と組織の変革といった課題も存在します。これらの課題に対しては、適切なセキュリティ対策やデータガバナンスの確立、データリテラシーの向上など、継続的な取り組みが必要です。

データの民主化を進めることで、より包括的で効果的な社会とビジネス環境が構築されます。組織や社会は柔軟性を持ちながら、データの民主化を推進し、持続可能な発展に向けた努力を続けることが重要です。

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