データ品質とは?品質評価項目や品質を向上させるための実務的対策を解説

データ品質がビジネスの成功においていかに重要かをご存知ですか?データは企業の基盤であり、意思決定や戦略立案に欠かせない要素です。しかし、品質の低いデータは信頼性の欠如や効率の低下を引き起こし、ビジネス全体に深刻な影響を与える可能性があります。

本記事では、データ品質の重要性と改善のための効果的な方法について詳しく探っていきます。データ品質の基準や評価方法、一貫性の維持に関するベストプラクティスなど、実践的なアプローチを紹介します。

さらに、データ品質の低下がもたらすリスクついてふれ、組織がデータ品質に真剣に取り組むことで得られる利点や競争上の優位性についても解説します。

データ品質の向上は、企業の競争力を高めるために必要不可欠です。ぜひ、本記事を参考にしてデータ品質の重要性を理解し、ビジネスの成功に向けた一歩を踏み出してください。

また、データ分析そのものについては以下の記事をご参照ください。

データ分析とは?目的や重要性などデータ分析の基礎知識を解説

1.データ品質とは?

データは現代のビジネスにおいて不可欠な資産となっています。しかし、そのデータが正確で信頼性があり、使いやすい形式であることは極めて重要です。ここで登場するのが「データ品質」という概念です。

データ品質とは、データがその目的に適しており、正確性、完全性、一貫性、信頼性などの要素に基づいて高い基準を満たしている状態のことを指します。つまり、データ品質が高いとは、データが正確であり、使いやすく、ビジネス上の意思決定や活動において信頼性を持って活用できる状態を指すのです。

データ品質の重要性は計り知れません。品質の低いデータは、情報の不一致や矛盾、間違った分析結果をもたらし、誤った意思決定や予測に繋がる可能性があります。さらに、顧客満足度の低下や信頼性の喪失などのリスクをもたらすことも考えられます。

データ品質の向上には、いくつかの重要な要素が存在します。まず、データの正確性と一貫性を保証するための適切なデータ入力やデータクレンジングのプロセスが必要です。また、データ品質の監視と評価、エラーの特定と修正、データの標準化と命名規則の確立なども重要な手法です。

総じて言えることは、データ品質はビジネスの基盤であり、優れたデータ品質は競争上の優位性を生み出す要素となります。

また、データ品質は、データマネジメント活動の中で語られることが多いです。こちらの記事もぜひ合わせて参考にされてください。

データマネジメントとは?導入のメリットや実践的な進め方を解説

データ品質の評価項目

データ品質の評価は、国際基準のひとつ「ISO/IEC 25012(データ品質の評価)」をベースに考えることがあります。日本政府が提供している評価基準は15種類が存在しますが、どの業界でもよく重要になることが多い項目を示します。

参考:データ品質管理ガイドブック

完全性(Completeness)

データ品質の完全性は、データが正確かつ完全な状態であることを指します。つまり、データが欠損しておらず、必要な情報が全て含まれていることを意味します。例えば、顧客情報のデータベースにおいて、連絡先情報が欠損していたり、必要な項目が不足している場合、顧客とのコミュニケーションやセグメンテーションの正確性に影響を与えます。

正確性(Accuracy)

データが真実を正確に反映しているかどうかを評価します。つまり、データが現実世界の事実に基づいていて、誤った情報や不正確な値が含まれていない状態を指します。

一貫性(Consistency)

データが相互に整合性を持っているかどうかを評価します。評価方法には、データ間の矛盾や食い違いを特定し、一貫性の高いデータの割合を評価する指標を使用することがあります。

一意性(Uniqueness)

データが重複していないかどうかを評価します。評価方法には、重複したレコードやフィールドの存在を特定し、一意性の高いデータの割合を評価する指標を使用することがあります。

適時性(Timeliness)

データが必要な時点で利用可能であるかどうかを評価します。評価方法には、データの更新頻度や遅延時間などを評価する指標を使用することがあります。

データマネジメントを推進するデータビズラボの研修資料をダウンロードする

2.品質の高いデータと低いデータの具体例

結局のところ品質が高いデータ、低いデータは具体的にどのようなデータかのイメージをもっていただくため以下に一般的な具体例を示します。

品質の低いデータの具体例

不正確なデータ

誤った情報や間違った値が含まれるデータ。入力ミスや不正確なデータエントリーで起こります。 例: 顧客の住所に誤った郵便番号が入力されている。

不完全なデータ

欠損や不足があるデータ。 例: 顧客の連絡先情報に電話番号が欠けている。

矛盾したデータ

矛盾した情報が含まれるデータ。データの不適切な統合やシステムの不具合で起こることも多いです。 例: 顧客の購入履歴に同じ商品が複数の金額で記録されている。

古いデータ

最新の情報ではなく、過去の情報が含まれるデータ。 例: 在庫数量が現在の在庫状況と合っていない。

品質の高いデータの具体例

正確なデータ

正確な情報や正しい値が含まれるデータ。 例: 顧客の住所や連絡先情報が正確に入力されている。

完全なデータ

欠損や不足がなく、必要な情報がすべて含まれるデータ。 例: 顧客の連絡先情報に電話番号やメールアドレスが完全に入力されている。

一貫性のあるデータ

矛盾や衝突がなく、データ間の整合性が保たれているデータ。 例: 顧客の購入履歴と在庫数量が整合しており、商品の重複や価格の不一致がない。

最新のデータ

最新の情報が反映されており、時系列に即したデータ。 例: 在庫数量が現在の在庫状況と合っており、最新の販売や入荷情報が反映されている。

3.データ品質の管理を怠るリスク

データ品質の管理を怠ることにはいくつかの重要なリスクが存在します。以下にいくつかの主なリスクを挙げます。これらのリスクを回避するためには、適切なデータ品質管理のフレームワークやプロセスを確立し、データ品質の監視、評価、改善を継続的に行うことが重要です。

不正確な意思決定

データ品質が低い場合、誤った情報や不完全なデータに基づいて意思決定が行われる可能性があります。わかりやすい例でいえば、誤集計です。不正確なデータに基づく意思決定は、ビジネス戦略の誤りや効率の低下を引き起こす可能性があります。

信頼性の欠如

データ品質の低さは、データの信頼性に関する問題を引き起こす可能性があります。顧客やパートナーの信頼を損なうことになり、ビジネスの信用や評判に悪影響を与える可能性があります。

業務プロセスの効率低下

データ品質の低さは、業務プロセスの効率を低下させる可能性があります。不正確なデータや欠損したデータに対処するために時間とリソースを費やす必要が生じ、作業の遅延や生産性の低下を引き起こす可能性があります。

顧客満足度の低下

 データ品質の低さは、顧客満足度に直接的な影響を与えることがあります。不正確な顧客データや重複した情報がある場合、顧客へのサービスのパーソナライズや効果的なコミュニケーションが困難になり、顧客満足度の低下につながる可能性があります。

法的コンプライアンス違反

データ品質の低さは、法的コンプライアンスに関連するリスクを引き起こす可能性があります。データ保護やプライバシーに関する規制に違反するデータの収集や処理は、法的な問題や罰則を引き起こす可能性があります。

4.データ品質を上げる具体策

データ品質の向上には状況に応じてさまざまな打ち手がありますが、以下に具体的なアクションを示します。

データ入力の検証

データ入力時に必要なフィールドが入力されているかを確認する検証ルールを設定します。入力漏れや欠損を防ぐため、必須フィールドやデータのフォーマットを検証します。

データ品質ルールの適用

データ品質ルールを定義し、データの完全性を保証します。これには、データ項目の完全性を確認するためのルールや、外部キー制約を使用してデータの整合性を確保するルールなどが含まれます。

データ品質監査と修正

定期的にデータ品質監査を実施し、データの完全性を評価します。欠損データや不正確なデータを特定し、必要な修正を行います。これには、データのクレンジングやマージング、外部データの追加などの手法が活用されます。

データ品質のトレースとトラッキング

データ品質の変更や修正を追跡し、履歴情報を保持します。これにより、データの変更に伴う品質の変化を把握し、必要な場合には元の状態に戻すことができます。

データ品質教育とトレーニング

従業員に対してデータ品質に関する教育とトレーニングを提供し、正確なデータ入力の重要性やデータ品質の基準についての理解を深めます。

データ品質モニタリングとレポーティング

データ品質のモニタリングを行い、問題が発生した場合には早期に検知し対応する仕組みを確立します。定期的なレポートやダッシュボードを活用して、データ品質の状態を可視化し、問題のトレンドや傾向を把握します。

データ品質の責任とガバナンスの確立

データ品質に関する責任を明確にし、適切なデータガバナンスのフレームワークを構築します。データ品質を担当するチームや役割を明確化し、データ品質の管理と監督を行います。

データ重複の排除

データベースやデータウェアハウスにおいて、重複したデータを特定し、適切な処理を行います。例えば、一意の識別子を設定したり、データマッチングの手法を使用したりします。

データ入力の制約

データの入力時に制約を設けることで、重複データや不正確なデータの発生を防ぎます。例えば、一意性制約やデータ検証ルールを設定することで、重複したデータや不正な形式のデータを排除します。

データ統合と一貫性の確保

異なるデータソースからのデータ統合時に、一意性を確保するための適切な処理を行います。データ統合の際には、マージやデータマッチング手法を使用し、重複データを特定し、統合したデータの一貫性を確保します。

参考:『データ分析までの最短ルートを作り出す データ統合の進め方を図解』

マスタデータ管理

マスタデータ管理(Master Data Management, MDM)を導入し、データの一意性を担保します。マスタデータ管理では、重要なデータ項目やエンティティについて一元的に管理し、一意性を維持します。

リアルタイムデータ処理

データをリアルタイムで処理し、迅速な情報更新を実現します。リアルタイムデータ処理システムやストリーミングデータ処理プラットフォームを導入することで、データの適時性を向上させることができます。

参考:日経フォーラム可視化経営イベント登壇『意外と知られていない、リアルタイム可視化の威力』

データ品質プロセスの最適化

データ品質管理プロセスの見直しと改善を行います。適時なデータ更新を確保するためのプロセスを構築し、データ品質の担当者や関係者とのコラボレーションを強化します。

SLA(Service Level Agreement)の設定

データ供給元やデータ利用者との間で、適時なデータ提供やデータ更新に関するSLAを設定します。これにより、データの適時性に対する期待値を明確化し、適時なデータの提供と更新を確保します。

5.データ品質の評価方法

データ品質の評価方法は、組織や業界のニーズに応じて異なる場合があります。以下に一般的に使用されるいくつかのデータ品質評価方法を示します。データ品質領域を含む、データマネジメントのプロジェクトを行う場合、状況に応じて適切な評価方法を選択し、データ品質の目標や要件に合わせて評価プロセスを設計することが重要です。評価結果に基づいて、データ品質の改善や問題の解決に向けたアクションを実施することで、データ品質の向上を実現できます。以下に、一般的な手法を示します。

データプロファイリング

データセットの特性や統計的な要素を分析し、データ品質の潜在的な問題を特定します。データの型、範囲、一意性、欠損値、異常値などをプロファイリングして評価します。

データプロファイリングには、データの特性や品質を分析するためのツールを使うのも便利です。データプロファイリングツールを使用することで、データの欠損や不正確な値、一貫性の欠如などの問題を特定することができます。また、データの異常値や重複レコードなども検出することができます。

ツールの具体例としては、以下のようなものがあります。

  • Talend Data Profiler
  • Informatica Data Quality 
  • IBM InfoSphere Information Analyzer

ルールベースの評価

事前に定義されたルールや基準に基づいてデータを評価します。例えば、特定のフィールドが必須であること、データの範囲が特定の値域に収まることなどを検証します。

データ品質尺度の使用

データ品質を数値化する尺度や指標を使用して評価します。例えば、データの完全性、一貫性、正確性などの尺度を定義し、それに基づいてデータ品質を評価します。

こちらに便利なのがETLツールです。ETLツールは、Extract(抽出)、Transform(変換)、Load(読み込み)の3つのプロセスを自動的に実行するためのツールです。EETLツールを使うことで、不正確な値や不完全なデータを自動的に除去し、データの品質を向上させることができます。

具体例としては、以下のようなものがあります。

  • Oracle Data Integrator  
  • IBM InfoSphere DataStage
  • Alteryx
  • Talend Data Preparation

データ監査

データの流れや処理プロセスを評価し、データ品質の問題やリスクを特定します。データの入力元や変換手順、データの保管やアクセス制御などを監査して評価します。この作業に関しては、データ品質ダッシュボードを構築すると便利です。データ品質に関する情報をリアルタイムで把握し、問題を素早く解決することができます。BIツールなどで行います。

具体例としては、以下のようなものがあります。

  • Tableau 
  • PowerBI
  • SAS

          まとめ

          データ品質の評価には、さまざまな評価基準やメトリックスが使用されます。これには、データの正確性、一貫性、完全性、一意性、時機性などが含まれます。これらの評価基準を使用して、データ品質の問題点を特定し、改善のためのアクションを実施することが重要です。

          データ品質の向上は一度きりのプロセスではなく、持続的な取り組みが必要です。定期的なデータ品質の監視、改善アクションの実施、トレンド分析などを通じて、データ品質の持続的な向上を実現しましょう。

          データの管理・活用でお困りの場合はデータビズラボへお問い合わせください。
          データビズラボでは状況やニーズに合わせた様々なサポートをご提供いたします。

          データビズラボへ問い合わせする

          コメント

          お問い合わせ

          サービスに関するご質問や講演依頼など、お気軽にお問い合わせください。2営業日以内にお返事いたします。

          ビジネスの成果にこだわるデータ分析支援
          データ分析/活用にお困りの方はお気軽にお問い合わせください
          ビジネスの成果にこだわるデータ分析支援
          データ分析/活用にお困りの方は
          お気軽にお問い合わせください
          お役立ち資料