
ビッグデータ時代において社内におけるデータ利活用を推進している企業は増えています。その中で社員1人1人が常にデータを観測し、実際の業務に落とし込むまでに至っていない、データ分析の文化が社内に育まれないといったお悩みをよくお聞きします。
BIツールで構築するダッシュボードは、日々のKPIや日常的な経営指標をデータによって可視化するものです。ダッシュボードを導入することで、普段の業務から社員が自分から進んで主要な指標を観測し、具体的なアクションにつなげていくようになります。
本記事ではそんなダッシュボードについて以下の観点から詳しく解説します。
- ダッシュボードを構築するために必要なBIツールとは
- そもそもダッシュボードとはどんなものか
- ダッシュボードで何ができるのか
- ダッシュボードを導入することで得られるプラスの効果とは
弊社ではダッシュボードを構築するBIツールの1つであるTableauに関して豊富な知見を有しており、様々な企業様の導入を支援させていただいております。本記事をお読みいただき、ダッシュボード構築にご興味をお持ちいただいた方は是非ご覧ください。
目次
1.ダッシュボードとは、多くの情報を一つにした画面のこと
ダッシュボードとは、データを見て理解を促進させるための視覚的な表現で、様々なデータの集計、その他情報が詰まったものが一つの画面にまとまっています。地図やクロス集計表、グラフなどによって構成され、大きく分けて以下の2種類があります。
- 探索型のダッシュボード:中立的。日々のKPIを確認したり日常的な経営指標をモニタリングしたりする。
- 説明型ダッシュボード:明確にある意見を伝えるためにストーリーの構成要素としてデータを使う。
企業のデータ利活用の文脈で出てくるダッシュボードは探索型が多いでしょう。説明型のダッシュボードはコンペやTableau Publicのギャラリーなどで見ることができます。
イメージとしては下記のようなものが代表的です。
▼会社の売り上げ、コストなどを把握するダッシュボード例
ダッシュボードは、普段馴染みのあるマイクロソフト製品ではなく、BIツール(BIプラットフォーム)と呼ばれるツールを使用して構築することが多いです。
BIツールは多くのデータベースや様々な形式のファイルとつなぐことができる拡張性を持っており、データの前処理から集計、グラフの作成、レイアウトの調整まで1つのツール内で完結させることができます。さらに、社内にダッシュボードを公開して利用状況をモニタリングすることもできるため、こうした一連の流れをBIシステムとも呼んでいます。
モダンなBIツールの種類やそれらの選び方は、以下の記事に詳細を公開しています。是非参考にして下さい。BIツール(BIプラットフォーム)は既存システムとの相性やデータとの相性もあり、また細部への技術的チューニングが必要になりますので、安易に選択しないことが重要です。
また、無料のものもあります。BIシステムを構築する際にはその後の運用や保守、セキュリティの観点も踏まえ、ライセンスは無料だけどうまく活用できないという事態にならないように注意しましょう。
2.ダッシュボード構築・導入・運用を行うことで得られる5つの大きなメリット
レポートや報告書でこれまでやってきたものの、それらをダッシュボード化しようと考える企業は以下のような効果を見込むことが多いです。
2-1.自社のKPI(経営指標)が共通理解になり、生産性が上がる
会社の重要な指標である「売上」一つとっても、誰がいつどのデータを見たのかによって数字は異なりますし、各部署では「売上」の定義が異なることも多いです。そのため会議で議論を収拾するのは大変です。
これを解決するのがダッシュボードです。
ダッシュボードには、同じ定義・同じタイミングの数字での会議・議論を実現できる価値があります。
2-2.データをリアルタイムに見て理解できる
レポートではなく「ダッシュボード」という言葉を使うとき、そこにはデータがリアルタイムに可視化されていることが暗黙的に含まれています。
この「リアルタイム」というのはどの程度、という疑問もあるでしょう。この問いに対しては、一般的には日次、スピードの早い商材を扱っている場合やデータによっては分次、時間単位のこともあります。
データの鮮度の観点で要件を整理する必要があります。つまり、課題に対して適切な更新頻度を定義する必要があるということです。
2-3.情報を一元的に把握可能にする
会社経営自体は多くの機能・部署が連携しています。
例えば、「製造業」と言っても、品質管理、商品管理、IT部、人事部、カスタマーセンターなど機能は多岐に渡ります。それらの数ある部署や機能のKPIとなる重要指標を一元的に管理し経営視点のビューで把握・モニタリング出来るようにしているのがダッシュボードです。
2-4.他者と共有できる
ダッシュボードは、他者とデータや示唆を共有することに大きな価値があります。データやデータから生み出された発見を、即座に他者と共有できるようになります。
2-5.仕組み化・システム化によるレポート作業工数の大幅な削減
「ダッシュボード」という時、従来のExcelによる手入力レポートを置き換えたいという動機で構築されようという場合も多いです。
手入力・手打ち・コピペで毎日、毎月作成していた手間が一気に省け、属人性も排除でき、生産性を大幅にアップできるものです。
3.BIツールで構築したダッシュボードでできること
一般的に、以下の機能が実装されています。そのダッシュボードによって様々な機能がありますが、以下はBIツールで構築したダッシュボードにおいて一般的なものになります。
- レポーティング
- 定時レポート出力
- ドリルダウン分析
- コネクター機能
- シミュレーションや予測
各種データソースとのコネクター機能
BIツールは例えば以下のようなデータプラットフォームと接続が可能です。これにより、データ分析や可視化が立体的に実現できます。これらのデータソースが更新されるたびにダッシュボード画面も連動させることができ、リアルタイム性を持たせられます。
- Google Analytics
- Salesforce
- MAツール
- Excel
- Googleスプレッドシート
- Python
- R
ドリルダウン分析
一年から四半期、四半期から月次、など粒度の階層を下げてデータを見ていくことをドリルダウン分析と言います。一般的なダッシュボードは、このドリルダウンが可能になります。
KPI指標の計算を実装・フィルターによる比較
BIツールでは集計したい指標を実装し、簡単に可視化することが可能です。一度実装すれば、都度都度人間が計算しなくても、データソースが更新されるごとにルーティン的に集計してくれます。加えて、フィルターを追加することで部署や店舗、顧客区分などの属性ごとに比較を行うこともできます。
シミュレーションや予測
データから得られた情報をもとに論理的に予測し、予算編成や業績の予想などに役立てられます。
レポーティング
ダッシュボードに表示されているデータやグラフを出力し、レポートを作成できます。PowerpointやCSV,Excelなどへの出力も可能です。
ダッシュボードとよく比較される言葉に、「レポート」があります。一般的には、以下のように使い分けられています。
【ダッシュボード】
- データにリアルタイム性(少なくとも日次)があることが前提
- 視覚的に効果的な表現が使われる
- BIツールやブラウザ画面を前提とすることが多い
【レポート】
- 人間がテキストで文章を作ったもの
- 会議資料として人がまとめたもの
- データはリアルタイムではなく、鮮度が低い
- ExcelやPowerpoint、ドキュメント類へ情報を手動転記であることが多い
上記のことから、ダッシュボードが必要とされる理由は、データを素早く見て素早く判断する必要があるシーンがどのような領域でも多くなってきたことがあるでしょう。
定時レポート出力
決まった時間に定期的にレポートを生成するものです。
4.ダッシュボードを導入する際の注意点と対応策
多くのメリットや役割のあるダッシュボードですが、そんなダッシュボードにも導入の際の注意点があります。それらを対応策とともに解説します。
4-1.導入(作成)後放置されないよう運用体制を整備する
ダッシュボードは作成・構築の最中は誰しもが頑張るのですが、その後の運用が出来なければ形骸化してしまうことも多いものです。
作られたダッシュボードが放置されないためには大きく分けて二つのポイントが必要です。
- 純粋にモノをアップデートしていく
- モノを使ってもらえるようにしていく
純粋にモノをアップデートするとは、例えばダッシュボードの改修、新たなデータへの接続、環境や組織の変化による新たな情報設計です。2点目の使ってもらえるようにしていくとは、使い方の説明会や継続的なフォローアップ機会の構築です。
以下のような内容を知っていると、そのような機会の際にスムーズです。
これらはテクニカルで専門的な経験や知識を要することが多く、経験のある人でチームや体制を整備するかコンサルティング会社が支援をしていない状態ですと「使いこなせずよくわからなくて放置される」という状態になりがちです。事前にどの部署/人が何を担当するのかを調整しましょう。
こちらのポイントに関しては、以下のDXの記事にも詳細とを記載しています。
4-2.変化する前提で構築する
ダッシュボードを作成すると、様々に載せたい数字や見たい軸が出てきます。
しかし、組織の成長や部署、プロジェクトの進捗とともに、ダッシュボードは変わりゆくものです。見る指標も変わっていきます。今全てを完璧に決めなければいけないと考え思考や企画に時間をかけるより、ざっくりでも具体的なものを作成し始めた方が良いアイデアも湧き、組織内での意見も活発に出てくるものです。
昨今の分析ツールや可視化ツールは変更にも強く、非常に柔軟です。ですので、頭を唸らせて全てを決定してから何かを行うという発想よりも、「とりあえず作ってみる」というのがポイントです。
こうしたBI活用は戦略的に行う必要があり、一度導入した後でも見直すものです。こちらの事例ではそうした戦略策定支援を行いました。是非ご覧ください。
まとめ
ダッシュボードを使って様々な指標を多角的に見ることができるようになります。重要なのは自社のビジネスや規模感に適切なツールを選択し、賢く運用していくことです。ダッシュボードの数字自体に意味はなく、その数字が何を意味しているのかを考えることが非常に重要です。
本記事をお読みいただいた次のステップとして『データ視覚化/ダッシュボードデザインを成功させるための95のチェックリスト』を手に取っていただけると具体的にダッシュボードを使用するイメージが具体化されると思います。
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