マスタデータ管理(MDM)とは?適切に運用する重要性とその手法を解説

マスタデータ管理(MDM)は、現代のデジタル経済において重要性を増しています。企業が蓄積する大量のデータの中には、顧客情報、製品データ、在庫情報などの重要な情報が含まれています。しかし、これらのデータを適切に管理せず、一貫性や品質の維持を怠ると、ビジネスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。

マスタデータは、企業の基盤とも言える重要な要素です。顧客データの一貫性を確保することで、優れた顧客サービスを提供し、顧客のニーズに合わせた戦略を展開することができます。

本記事では、マスタデータ管理(MDM)に関して、掘り下げます。

1.マスタデータ管理(MDM)とは何か

マスタデータ管理(MDM)は、組織内の重要なデータを統一的に管理し、データの品質を確保するプロセスです。

マスタデータ管理(MDM)は、マスタデータの品質を確保し、一貫性と正確性を保つことに重点を置いています。データの重複や不整合、誤った情報などが存在すると、組織内の業務プロセスに混乱を引き起こし、信頼性の低い意思決定や効率の低下につながる可能性があります。そのため、マスタデータ管理はデータの統合、整理、クレンジング、バージョン管理、アクセス制御などの手法を使用して、データの品質を向上させることを目指します。

参考:『マスタデータとは?具体例でクイックに解説!』

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2.マスタデータ管理(MDM)を適切に行わない場合に起きること

マスタデータ管理(MDM)が適切に行われない場合起きることとしては、主にデータ品質の問題が多いですが、以下がよく起きる問題です。

データの不整合と重複

マスタデータが分散して管理されていると、データの不整合や重複が生じる可能性があります。例えば、同じ顧客情報が複数のシステムに異なる形式で存在する場合、データの整合性が損なわれ、正確な顧客情報の把握や顧客対応の妨げになります。

データの品質低下

マスタデータの品質管理が欠如すると、データの正確性や完全性が損なわれる可能性があります。誤った情報や欠損したデータが混在していることは多々あります。

データ品質に関しては、以下の記事もご参考にされてください。

データ品質とは?品質評価項目や品質を向上させるための実務的対策を解説

時間とコストの浪費

マスタデータの分散管理や不整合などの問題に対処するために、時間とコストが無駄になる可能性があります。データの修正や統合にかかる手間やリソースが増えることで、業務の効率性が低下し、コストの結果的に割高になっていることは多いです。

セキュリティリスク

マスタデータは、顧客情報や機密情報などの重要なデータを含んでいる場合があります。そのためマスタデータ管理が不適切な場合、データのセキュリティリスクが高まります。データ漏洩や不正アクセスのリスクが増えるため、組織の信頼性や法的コンプライアンスにも影響を与える可能性があります。

3.マスタデータ管理(MDM)の手法とプロセス

マスタデータ管理は、適切な手法とプロセスを適用することで一貫性、信頼性、品質を確保できます。以下に一般的な進め方を紹介します。

Step1 マスタデータの特定と定義

最初に、組織の中でマスタデータとして管理する必要があるデータを特定し、それらのデータの定義を明確にします。例えば、顧客情報や製品情報など、マスタデータとして管理する項目を明確に定義します。

Step2 マスタデータの整合性と一貫性の確保

マスタデータは異なる部門やシステムで共有されるため、整合性と一貫性を確保することが重要です。データの整合性を保つために、データの重複や矛盾を排除し、一貫したデータ形式やルールを適用します。

この作業を行うためには、データガバナンスやデータマネジメントの論点も非常に重要になります。

Step3 マスタデータ管理プロセスの確立

マスタデータは定期的に更新される必要があります。新しいデータの追加や既存データの変更、削除などを適切に管理するためのプロセスを確立します。更新プロセスには、適切な承認フロー、バージョン管理なども含みます。

Step4 マスタデータの品質管理

マスタデータの品質管理は、データの正確性、完全性、一貫性を確保するための取り組みです。データの品質評価、不正確なデータの修正、欠落データの補完などを行い、高品質なマスタデータを維持します。

データ品質に関してはこちらの記事にも実践的なプロセスや概念を解説しています。

データ品質とは?品質評価項目や品質を向上させるための実務的対策を解説

Step5 マスタデータのセキュリティ管理

適切なセキュリティ対策が必要です。アクセス制御や権限管理、データ暗号化、バックアップと復元などのセキュリティ管理手法を適用します。Step4同様、データマネジメントとデータガバナンスの論点になる部分でもあります。

Step6 マスタデータの共有と利活用

マスタデータの共有プロセスやデータストアの構築、APIの提供、組織内普及活動などを通じて、マスタデータの利活用を促進します。

4.マスタデータ管理(MDM)にはデータガバナンスの確立と実践が必要

マスタデータ管理(MDM)のベストプラクティスとして、根幹として重要なのがデータガバナンスです。

データガバナンスの整備がまず重要になるポイントとして以下の通り大きく3つあります。

  • データ品質の確保
  • データセキュリティの確保
  • 法的コンプライアンスの遵守

これらが実践的に運用されていないとマスタデータ管理はうまくまわらないためです。

以下の記事にもデータガバナンスの実務を公開していますのでご参考にしてください。

データガバナンスとはデータマネジメントを監督すること

    5.マスタデータ管理ツールとテクノロジー

    マスタデータ管理ツール

    マスタデータ管理ツールは、マスタデータの作成、更新、削除、品質管理などを行うための専用のソフトウェアです。これにはデータの入力ルールやバリデーション、データの変更履歴の追跡、データ品質の監視などの機能が含まれます。例えば、有名なものでは、以下のようなものがあります。

    • Informatica MDM
    • SAP Master Data Governance
    • IBM InfoSphere MDMなど

    クラウドベースのマスタデータ管理ソリューション

    クラウドベースのマスタデータ管理ソリューションは、インフラストラクチャの管理や保守にかかる負荷を軽減し、柔軟性と拡張性を提供します。主要なクラウドベースのマスタデータ管理ソリューションには、以下のようなものがあります。

    • Salesforce Customer 360 Platform
    • SAP Data Services Cloud
    • Microsoft Azure Data Catalogなど

    この他、データ品質ツールやデータカタログツール、データガバナンスツールなどでマスタデータ管理を支援することがほとんどです。

    6.マスタデータ管理(MDM)のよくある課題と解決策

    マスタデー管理プロセスを実施していく過程で直面するよくある課題とそれに対する解決策を紹介します。

    データの重複と不整合

    マスタデータが複数のシステムやデータソースで管理されている場合、データの重複や不整合が生じることがあります。これにより、データの正確性や一貫性が損なわれます。

    解決策例:データの統合と整合性の確保のために、データ統合ツールやデータクレンジングツールを使用するのがおすすめです。重複データの特定とマージ、不整合データの修正が行います。

    データ品質の低下

    マスタデータは日々変化し、新しいデータが追加されることがあります。そのため、データの品質が低下する可能性があります。例えば、入力ミス、不完全なデータ、非標準のフォーマットなどがあります。

    解決策例: データ品質管理プロセスを導入することで、データの品質を向上させます。データ品質の監視と評価、データクレンジング、データ入力ルールの設定(データガバナンス、データマネジメントに含まれることが多い)などが含まれます。また、データ品質の責任者を任命し、データ品質に対する意識を高めることも重要です。

    データの更新と同期

    マスタデータは変化する可能性があり、複数のシステムやデータソースと同期させる必要があります。しかし、データの更新や同期作業が適切に行われないと、データの不整合や情報の不正確性が生じる可能性があります。

    解決策例: データ更新と同期のために、定期的なデータのバックアップと更新プロセスを確立します。データの変更を追跡し、関連するシステムやデータソースとの同期を保つためのプロセスやツールを導入します。また、変更管理手順を策定し、データの変更を管理することも重要です。

    まとめ

    マスタデータ管理(MDM)は、組織における重要なデータ資産であるマスタデータを効果的に管理し、品質を維持・向上させるための戦略的なアプローチです。

    マスタデータ管理(MDM)の重要性は、データの正確性、一貫性、信頼性を確保し、組織全体でのデータの一元化と共有を実現することにあります。適切なマスタデータ管理戦略とプロセスの導入により、組織はより正確な情報に基づいた意思決定を行い、効率的なビジネスプロセスを実現することができます。継続的な品質管理と改善を通じて、マスタデータ管理(MDM)は組織の成長と競争力の向上に寄与する重要な要素となります。

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