RFM分析は自社顧客を適切なセグメントに分類できる顧客分析手法です。顧客が具体的に何を買ったのかという情報がなくても、合計購買金額や購買頻度など購買履歴のデータを使って分析できます。本稿では、以下のようなRFM分析に関するよくある疑問にお答えします。
- RFM分析とはどのような分析手法なのか?
- RFM分析を行う際に、どのようなステップがあるのか?
- RFM分析とはどんな場面で活用できるのか?
本記事は、RFM分析を理解し、実際の業務に役立つことに絞って解説しています。
目次
1.RFM分析とは
RFM分析とは、「R・F・M3つの指標を用いて顧客をグルーピングする」分析手法です。
具体的には、こちらの図が示している3つの指標で顧客をランクづけします。ランクづけによって、それぞれの顧客のセグメントを決定していきます。
1-1.RFM分析の各指標の意味
・Recency(直近購買時期)
直近購買時期(R):商品を購入してからどのくらいの期間が経っているかを表す指標
・Frequency(購買頻度)
購買頻度(F):顧客が何回商品を購入したかを表す指標
・Monetary(購買金額)
購買金額(M):顧客が今まで使った合計金額を表す指標
1-2.指標による顧客の分類
RFM分析によって顧客を分類し、効率的なマーケティング施策を考えることができます。以下のグループは特に代表的です。
- 新規顧客
- 優良顧客
- 休眠顧客
- 安定顧客
- 非優良顧客
R・F・M全ての指標において水準が高い顧客は優良顧客といわれます。言い換えると「頻繁に来店し、累計の購買金額も高額で直近にも来店履歴がある」顧客であるといえます。
その反対に、R・F・M全ての指標において水準が低い顧客は非優良顧客といわれます。
東京都内にチェーン展開しているとあるカフェの顧客をRFM分析してみましょう。このカフェチェーン店は平均的に1杯400円程度の飲食物を提供しており、半年単位で顧客のデータを管理しています。このお店における各指標のランク分けの基準は以下の表になります。
この表の顧客を具体化した顧客Aと顧客Bという2人のペルソナのR・F・M指標は以下のようになります。
顧客Aと顧客Bの指標を比較してみると、全ての指標において顧客Aの方が高く、ランクの基準に振り分けるとランクAに当てはまることが分かります。以上から、顧客Bより、顧客Aが「優良顧客」に近いと考えられます。顧客BがランクCに当てはまりますので、「非優良顧客」に近いと考えられます。
2.RFM分析の活用シーン
RFM分析はセグメント分けした顧客の特性別にアクションを変えられることから、以下の場面で活用されています。
2-1.手元にある情報が少ないとき
購入した商品名や顧客の個人情報といった詳細なデータがなくても分析できます。POSデータが扱いづらい場合や、店舗管理者にデータ分析の知見がない場合にも簡単に実装できるのがRFM分析の強みです。
2-2.最適なマーケティング施策を実施したいとき
RFM分析によって優良顧客、非優良顧客、新規顧客、離反顧客などに分類し、これまでの施策と照らし合わせることによって効率のいいアプローチができるようになります。
具体的には、以下のような取り組みができます。
- 非優良顧客や離反顧客への無意味なプロモーションを止める
- 非優良顧客や離反顧客の原因究明を行い、新規顧客へのアプローチ方法を変える
- 優良顧客への謝恩イベントを企画して維持に努める
- 新規顧客のうち優良顧客になる見込みがあるグループを抽出する
2-3.顧客の状態を把握し、経営に役立てたいとき
RFM分析によって売上の増減要因を掘り下げて考えることができ、経営に役立てる示唆を得ることができます。
例えば売り上げが上がっている場合、以下の要因がRFM分析から推測できます。
- 優良顧客がより高頻度で高価格な購買をしてくれている
- 離反顧客の割合が減り、リピーターが増えている
- メディアで話題になったため新規顧客が爆増している
3.RFM分析を行うステップ
RFM分析を行い、適切な施策を打つまでのプロセスを4つのステップで示しました。
Step1.分析の目的を明確する
顧客分析によって売り上げをアップしたい場合、目的をはっきりさせてRFM分析を行うことでターゲットに適切なマーケティング施策を打つことができます。ここで「何を分析すべきか」の方向性が定まればスムーズに分析から施策の改善までを行うことができます。
今回は「直近に購買(R)があり、来店回数(F)が多く、購買価格(M)も高い」優良顧客のグループをRFM分析によって抽出し、施策を考えていきたいと思います。
Step2.顧客購買データを用意する
次に必要なデータを用意しましょう。RFM分析には「顧客名」「R(直近購買日)」、「M(購買金額)」の3つのデータが必要です。下図は時間順に並んでいる顧客購買データのサンプルです。必ずしも顧客の名前がわかる必要はなく顧客IDやカード番号など1人1人を識別できるものであればよいでしょう。
Step3.グループ分けを行う
必要なデータを収集できたら、エクセルでまとめ、R・F・Mの3つの指標それぞれにグループ分けする基準を設けます。ランクの分け方は、集計期間や、扱う製品やサービスなどよって違ってきますので、現状に合わせて考えましょう。今回は以下のように基準を設定しました。
分析対象のRFMそれぞれにランクを割り振ると以下の表になります。ヒートマップ形式で色分けすると一目で優良顧客を把握することができます。
上図のようにRFM分析の3項目を5ランクで分けた場合、「5×5×5」で125グループになってしまいます。実際には125通りのアプローチを行うことは不可能なので、目的に合わせてグループを統合したり注目するグループを抽出したりする必要があります。
Step4.グループごとに適切な施策を考える
Excelではフィルタリング機能を使って対象のグループを抽出するのがオススメです。
先ほど定めた「直近で来店回数が多いのに、購買金額が少ない顧客」を抽出したい場合、フィルタリングによって「R>3、F>3、M>3」というグループを抜き出すことができます。各指標のランク付けから、分析したいセグメントを抽出します。
このセグメントは優良顧客で、ファンやアンバサダーに近いと考えられます。優良顧客のロイヤルティを高め、ファン層やアンバサダーとしての役割をしてもらえるような施策としては以下が考えられます。
- 優良顧客限定の新商品を早く入手できる特別イベント
- ゴールド会員など、ハイクラスな会員限定のサービス
今回の分析対象としたセグメント以外にも、RFM分析によって導き出すことができる代表的なペルソナを4タイプ示したので是非実際に分析する際の参考にしてください。
顧客グループ
R・F・M全ての指標が高い優良顧客
下記のペルソナはとあるレディースファッションブレンド店の顧客(女性)です。
- R:直近に来店している
- F:月1の頻度で来店・購入
- M:平均より高い
Rが低く、FとMが高い休眠顧客と離反顧客
下記のペルソナはとある美容室の顧客(男性)です。
- R:直近来店していない
- F:リピーターだった
- M:毎回利用する金額は変わらなかったが、累計で考えると大きな金額になる
Rが高い新規顧客
下記のペルソナはとあるスーパーマーケットの顧客です。
- R:直近で来店
- F:一回のみでしたが、これから通う顧客になる可能性がある
- M:2日間や3日間の食料品を購入された可能性がある
R・F・M全ての指標が低い非優良顧客
下記のペルソナはとある通販サイトの顧客です。
- R:かなり前である
- F:一回のみの来店
- M:比較的金額が低いと考えられる
4.RFM分析が適切ではない3つの場面
RFM分析は顧客を複数の指標を使ってグルーピングする分析手法なので、商品の性質や分析に求められることによっては適さない場合もあります。また、シンプルな手法であるため複雑なグループ分けをしたい場合には異なる手法をオススメします。
以下の場面にはRFM分析では応えることができません。
- リピーターの割合が極端に低い、葬儀や結婚・出産などのサービスが分析対象である場合
- 購入頻度や購入金額とは異なる軸で顧客をグループ分けしたい
- 顧客の購買行動を予測したい
4-1.購入頻度が極端に低い
結婚や葬儀などのサービスは特殊な場合を除いてリピーターが存在していないのでRFMの指標による顧客のグループ分けをする意味があまりありません。
購入頻度が低くてもリピーターが存在する自動車や家電などの商品の場合でも、RFM分析では離反顧客や休眠顧客の判断をつけられないという注意点があります。ただ、毎回同じ販売店・自動車ブランドで購入している顧客を優良顧客として把握しておくためにはRFM分析による分析結果が役に立ちます。
4-2.様々な軸でグループ分けしたい
購入している商品カテゴリや性別、収入、年齢などでの分析をしたい場合には、RFM分析の結果と併用する形でデータを見るのがオススメです。RFM分析は対象セグメントに追加の情報があればさらに深く掘り下げて分析していくことができます。データとして保有していれば、Excelのフィルタリング機能を使うことで優良顧客のうち「30代の男性で、よくジャケットを購入している年収700万円以上の人物」を簡単に抜き出せます。
既存の優良顧客をそれらの軸で分析することで、新規にターゲットにする層を決めたり新商品のコンセプトをペルソナの特性から導いたりすることができるでしょう。
4-3.購買行動を予測したい
ただグルーピングするだけでなく、対象セグメントの顧客の購買を予測したい場合にはRFM分析では力不足です。
複数のクラスターに顧客を分割してそれぞれの購買傾向から将来的な需要を予測するCTB分析や、複数の変数から1つの目的変数の数値を予測する重回帰分析など、予測によく使用される分析手法を用いるのが適切です。
5.まとめ
RFM分析とは、顧客分析を行う際に頻繁に使用される分析手法です。一方で、どのようなデータ分析手法にも言えることですが分析の自由度には限界があります。自社が取り扱ってる製品やサービスの特性、またその顧客層の特徴に応じて、RFM分析+αの分析を行うことで、より精度の高い分析結果を得られるでしょう。
RFM分析等の精度の高いデータ分析をご検討の場合はデータビズラボへお問い合わせください。
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RFM分析以外のデータ分析手法をわかりやすく解説した記事もございますので、是非こちらもご覧ください。
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