小売業が参考にしたいコンビニ大手3社のデータ分析事例!具体的な分析手法も解説

小売業界において、データ分析はますます重要性を増しています。特にコンビニ業界では、顧客行動の理解や売上向上のため、データ分析を活用する事例が増えています。

本記事では、コンビニ大手3社のデータ分析事例を通じて、具体的な手法やメリットについて解説。また、コンビニが保有するさまざまなデータや、それらを分析する際に必要な要素についても紹介します。

これからのコンビニ業界におけるデータ分析の重要性や展望を知りたい方は、ぜひご一読ください。

コンビニがデータ活用していくメリットと重要性

データ分析は企業の競争力を左右する重要な要素です。コンビニも例外ではなく、データ分析を活用することで顧客の購買行動や嗜好を理解し、それに基づいて仕入れを実施したり、的確なマーケティング施策を展開したりできます。

需要予測による在庫管理の最適化と在庫ロスの削減をしたり、売上データの分析により需要の高い商品を把握し、商品のラインナップやプロモーション戦略の改善につなげることは、収益改善に大きく貢献します。

地域やその店舗の顧客層のもつニーズを特定し、それに合わせたサービスや商品を提供することで、顧客満足度や売上を効果的に高めていけるでしょう。

コンビニが保有しているデータと、分析できる内容

テクノロジーの進化により、コンビニは膨大な量のデータを保有するようになりました。保有しているデータを分析することで、売上アップやコスト削減などのさまざまなメリットを得られます。

では、コンビニはどのようなデータを保有しているのでしょうか。すぐに思いつくのは、POSデータかもしれませんが、その他にもポイントカードのデータ、オープンデータ、WebやSNSのデータ、機器データなど、多くのデータを保有しています。次に、それぞれのデータの詳細と分析できる内容を解説します。

POSデータの分析

コンビニが保有するデータとして、もっともイメージしやすいのがPOSデータです。POSデータには売上高や商品の販売数量、購買時の日時など、売上に関する膨大な情報が含まれています。

POSデータの分析により、需要予測や在庫管理の最適化が可能です。売上のピーク時や特定商品の売れ筋を把握することもでき、販売促進やキャンペーンの効果を評価し、店舗の客層や地域のニーズに合う商品展開やキャンペーンの実施につなげられます。

ポイントカードデータの分析

コンビニは自社独自のポイントカードを提供したり、大手ポイントカードと提携したりしています。このポイントカードには、顧客の購買の履歴や頻度、金額などのデータが含まれています。

ポイントカードデータの分析により、顧客のセグメンテーションや購買傾向の把握が容易になるでしょう。特定の顧客層の好みや嗜好を理解し、ターゲット層に合ったマーケティング施策の展開が可能です。ポイントカードデータを利用して顧客に個別の特典やプロモーションを提供することで、客単価を高めたり来店を促進したりすることもできます。

オープンデータの分析

地域の人口統計情報や天候情報、交通量など、コンビニはさまざまなオープンデータを保有しています。地域の人口統計情報から顧客層の特性や需要傾向を把握したり、天候情報を分析することで季節や天候に応じて需要を予測したり、オープンデータを活用することで地域や季節に応じて店舗運営を最適化できるでしょう。

交通量データは店舗の立地分析や新規出店計画の立案に役立ちます。オープンデータはコンビニの各店舗の運営だけでなく、チェーン全体の経営戦略の立案や各オーナーの多店舗展開の計画など、さまざまなことに役立ちます。

Web・SNSデータの分析

WebサイトやSNS上でのデータも、集客や売上アップを考えるうえで重要です。たとえば顧客のオンライン行動やアクセスパターンを分析することは、チェーン全体のブランディングやマーケティング、ターゲティングなどに役立ちます。

SNSでの投稿やコメント、クリック数などを分析することで、年齢や性別などの属性ごとの興味関心や傾向が見えてくるでしょう。SNS上でのフィードバックやクレームを分析することは、顧客満足度の向上や問題解決につながります。

これらのデータを分析することで、顧客のニーズやトレンドを把握し、新たな商品開発やサービス改善が可能です。

機器データの分析

コンビニはPOSレジや在庫管理システム、監視カメラなど、さまざまな機器データを保有しています。これらのデータからは、店舗運営に役立つさまざまな情報が得られます。

たとえばPOSレジからは商品の売上データが、監視カメラからは店内の動線情報が把握できます。機器データの分析により、販売動向や顧客の行動パターンを把握し、店舗運営の最適化が可能です。

また、これらのデータは機器の保守・運用の効率化や人件費削減にも役立ちます。売上アップと経費削減の両方に役立つデータを活用することで、効果的に利益率を高めていけるでしょう。

コンビニ3社のデータ分析事例

コンビニはデータ分析に比較的早い段階で取り組んできた業界です。店舗数が多く、不特定多数の利用客がいるため、集まるデータも膨大です。そんなコンビニ業界では、他業界とは一線を画すデータ活用が行われています。

コンビニではどのようにデータの分析・活用が行われているのか、大手3社の事例を紹介します。

セブンイレブン|POSデータのリアルタイム集計

セブンイレブンは全店舗のPOSデータを収集・分析し、チェーン全体の状況をリアルタイムに把握できる基盤「セブンセントラル」の構築に取り組んでいます。各店舗のPOSデータを集め、分析用に加工・整形したうえで、加盟店や現場社員、本部社員、取引先など、データ分析ニーズに応じて構築したデータマートに保存されます。各データへのアクセスには多段階認証が必要で、誰がいつ何のデータにアクセスしたのかまで把握でき、巨大なチェーンでありながら強固なセキュリティが確保されています。

セブンイレブンにはデータ活用のシステムはあったものの、従来はシステムごとにデータと業務ロジックが結びついていて、他の目的でデータを取り出すことが難しかったといいます。データと業務ロジックを切り離すことで、目的や課題解決につながるデータ活用を可能にしました。

参考:セブン‐イレブン、2万1000店舗のPOSデータをリアルタイムで収集分析するデータ基盤「セブンセントラル」を構築 | IT Leaders

ファミリーマート|コンビニCRMの構築

ファミリーマートはPOSレジ導入以降、データの収集・分析と活用に積極的に取り組んできました。たとえば「ファミマTカード」は不特定多数の利用客がいるファミリーマートにおいて、顧客最適な提案をするためのデータ収集に役立てられてきました。会員情報に紐づいた購買情報を取得し、利用客の行動を深く分析できるよう、ファミマTカードは改善を重ねてきました。

会員情報を活用することで、ファミリーマートは顧客それぞれの過去の買い物データから好みを分析できる「コンビニCRM」を構築します。これにより、たとえば頻繁にビールを購入している利用客に対して、レジでビールの新商品のサンプリングを提供するようなことが可能になりました。

ファミリーマートのコンビニCRMは、このような販促活動だけでなく、「顧客の声を生かした商品開発」にも活かされています。単なる購買履歴からは「どのような属性の人が、どの店でどんな商品をどのくらい購入したのか」という定量的なデータしか得られません。そこで、購入客のレシートにアンケートサイトに誘導するQRコードを印字することで、先述の定量的なデータと、新たに得られた定性的なデータを結び付け、より深い洞察が可能になります。「回答のお礼としてTポイント進呈」のように、回答率を高める仕組み作りにも、ファミマTカードが役立っています。

参考:ファミマの「デジタルマーケティング戦略」、役員に聞いたファミペイの絶大効果 |FinTech Journal

ローソン|予防保守とデータの民主化を実現

ローソンはコンビニ店舗にある多様な機器の予防保守とデータの民主化を目的に、データ分析を取り入れました。予防保守とは機器が壊れてから修理するのではなく、壊れる前にその前兆を察知し、適切な処置を施すことで故障を未然に防ぐ考え方です。ローソンは1店舗につき20~30種類の電子機器があり、これらが故障した際は、全国140箇所ある保守拠点から担当者がすぐに修理にかけつけます。

しかし、この仕組みには待機人員や部品在庫を常に確保する必要があり、相当なコストがかかります。このコストを削減するための発想が予防保守であり、そのために必要なのが機器の稼働状況や外部要因などのデータです。

また、ローソンはデータ分析を全社的に浸透させる「データ民主化」の取り組みにも積極的です。コンビニ業界はPOSレジやポイントカードの導入など、データ分析に比較的早くから取り組んできました。データの分析・活用により、仕入れや商品開発を改善してきた業界です。

しかし、データの分析・活用が社会に広く浸透したこれからの時代では、データ分析を必要とする部門はさらに拡大されていくでしょう。そのために、たとえばWordやExcelなどと同じように、多くの人が「たしなみ」としてデータを扱えることが理想です。予防保守だけでなく、このような「高いレベルでのデータの民主化」を目的に、ローソンはデータ分析ツールの導入や体制作りに取り組んでいます。

参考:お客様導入事例 株式会社ローソン様 | KI導入事例 | キーエンス

これからのコンビニでのデータ分析に必要なもの

コンビニのデータ利活用の取り組みは、フランチャイズ本部、オーナーなどの経営層はもちろん、各店舗レベルで実施していくことが重要です

最後に、コンビニ運営でデータ利活用を成功させるために必要な2つのことを紹介します

POSデータ以外のデータ収集基盤

データ分析を始めるには、統合的なデータ収集基盤が必要です。POSデータだけでなく、地域のオープンデータやWeb・SNSのデータなど、幅広いデータを収集・分析するための基盤を整えましょう。

POSデータだけではコンビニの全体像を把握することはできません。ほかのデータと照らし合わせ、多角的に分析することで、POSデータから得られる洞察も変わってきます。

店舗単位・フランチャイズオーナー単位ではなく、チェーン全体でデータの収集・分析のための統合的なデータ基盤を構築しましょう。データの収集・分析のためのシステムが店舗ごと・オーナーごとに異なると、店舗間・オーナー間の格差が大きくなります。本部に集まるデータの品質やフォーマットもバラバラになり、データの整理・加工にかかる負担が大きくなります。

店舗レベルでデータ人材を確保する

データ分析を店舗運営に役立てるためには、店舗レベルで適切なデータ人材を確保することが必要です。特にPOSデータ、天候や交通量などに関するオープンデータは、店舗ごとに分析する必要があります。これらのデータを分析できる人材を、店舗レベルで確保しなければなりません。

各店舗のデータを適切に収集・分析するためにも、店舗レベルでの人材確保は重要です。

ただ、データ分析の高度なスキルを持つ人材をすべての店舗に配置するのは難しいでしょう。ノーコードでデータの整理・加工・分析ができるBIツールを導入すること、各ツールの操作やデータ分析に関するトレーニングを本部主導で提供することが大切です。

まとめ

近年、さまざまな業界・業種でデータ分析が注目されています。小売業界も例外ではなく、特に不特定多数の利用客がおり膨大なデータが集まるコンビニでは、先進的なデータ分析・活用が行われています。店舗・現場レベルでのデータ分析に積極的なチェーンも多いです。

ただ、データ分析にはITや統計に関する知識が必要です。最近はノーコードで扱えるBIツールやデータ分析に関するサービスも増えてきていますが、チェーンの規模が巨大であるため店舗レベルでのデータの民主化は簡単ではありません。

まずは事例を参考に、データ分析で何ができるのか、自社のどのような課題を解決したいのかを考えてみましょう。そのうえで、データ分析基盤の構築や、店舗全体でデータを利活用していくというデータ文化の醸成を進めることで、データを根拠にした店舗運営を実現できます。

「これからデータ分析の取り組みを始めたいけれど、何から実施していいかわからない」「データ分析の専門家の知見を取り入れたい」という方は、データ分析の実績豊富な弊社、データビズラボにお気軽にご相談ください。

貴社の課題や状況に合わせて、データ分析の取り組みをご提案させていただきます。

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