コロナ禍で変化したホテル業界のデータ分析の始め方と、分析のポイント

コロナ禍以降、ホテル業界は大きな変革を迎えています。2023年には政府によるマスク不要の呼びかけもあり、コロナ禍は実質終息したといえますが、コロナ禍により私たちのライフスタイルは大きく変わりました。このような状況下で、ホテル業界の存続や成長には、データの利活用が欠かせない要素となっています。

本記事では、ホテルが保有するデータやそれを活用する際のポイントについて詳しく解説。データ分析や、データの利活用に取り組むことで得られる5つのメリットや始め方、実施ポイントについても紹介します。本記事を参考に、今後の戦略策定や業績向上について考えてみましょう。

ホテル業界が保有しているデータと収集方法

ホテル業界は、さまざまな種類のデータを保有しています。たとえば顧客の滞在履歴や予約情報、宿泊料金や支出の推移のような定量的なデータだけでなく、顧客それぞれの利用施設やサービスの好みなどの定性的なデータまで、データの種類はさまざまです。さらに、地域の観光情報や競合他社の動向なども重要なデータとして考えられます。

これらのデータは、ホテルが保有する各種システムから収集するのが一般的です。予約管理システムや顧客情報管理システム、販売管理システムなどが主なデータ源となります。オンライン旅行代理店(OTA)の提供するデータも重要です。

これらのデータは、ホテルの運営やマーケティング戦略の策定に欠かせない、重要な経営資源だといえます。

OTAが提供するデータの問題点

OTA(オンライン旅行代理店)は、ホテル業界において宿泊予約の獲得や管理、宿泊データの分析などを支援する重要なサービスです。しかし、データの収集や分析をOTAが提供するデータに頼ることには、いくつかの問題点も存在します。

たとえば、OTAが提供するデータは顧客の匿名性が高いです。プラン販売数や予約数、属性情報などはわかりますが、顧客の動きまではわかりません。顧客それぞれの属性や行動パターンを十分に把握することが難しく、このデータだけでマーケティングやパーソナライズされたサービスの提供をするには限界があります。

顧客が同時に複数のOTAを利用することや、直接予約を行うこともあるため、OTAから得られるデータだけでは全体像を把握しきれません。

また、一般的にOTAが提供するデータはOTAからホテルへの一方向です。ホテル側からの情報提供やフィードバックは難しく、顧客満足度の向上やリピート率の向上に直接つながる情報を得ることが難しいという課題もあります。

これらの問題点を克服し、より効果的なデータ分析を行うためには、ホテルが自社の課題や目的に合わせてデータ戦略を構築し、複数の情報源を活用することが重要です。特に、直接予約データや顧客からのフィードバックなど、OTA以外のデータを継続的に収集・分析することで、より深い洞察を得ることが可能となります。これにより得られたデータを元に最適な宿泊プランを作成し、OTAに反映するという流れも作れます。

ホテルがデータ分析に取り組む5つのメリット

データ分析は企業の競争力を左右する重要な要素です。ホテルも例外ではなく、データ分析を活用することで、集客やブランディングなどの戦略を立案する際に新たな可能性が生まれます。

ホテルがデータ分析に取り組むメリットは、以下の5つが挙げられます。

  • OTA以外の集客・ブランディング戦略を立案できる
  • リードタイムを長期化する戦略が立てられる
  • 顧客ごとに最適な宿泊プランを提案できる
  • リピート化に向けた適切なアプローチがわかる
  • コンシェルジュサービスのパーソナライズ・顧客体験の向上に役立つ

それぞれの詳細を解説します。自社で取り組みたい部分をイメージしながら、ご確認ください。

OTA以外の集客・ブランディング戦略を立案できる

顧客の嗜好や行動パターンを分析するなど、データ利活用の取り組みを実施することで、OTA以外の集客やブランディング戦略を立てられるようになります。

たとえば、特定の地域や顧客セグメントに焦点を当てたマーケティングキャンペーンを立案したり、独自のメンバーシッププログラムを開発したりなどの施策が考えられます。また、OTA以外のオンラインプラットフォームやSNSを活用したプロモーション活動、コンテンツマーケティングなども効果的です。

これらの施策により、ホテルは自らのブランド価値を高め、より多様な顧客層を獲得できるでしょう。

リードタイムを長期化する戦略が立てられる

データ分析を取り入れることで、リードタイムを長期化する戦略を立てることも可能です。

データ分析により、予約の傾向や需要の変動をより正確に把握し、将来の需要を予測できます。これにより、長期的な予約戦略や価格設定を策定できます。また、需要ピークやオフピーク期間を特定し、リソースの最適な配分も可能です。長期的な予約を促進するためのプロモーションや特典の提供も、データ分析に基づいて効果的に行えます。

データ分析により、ホテルは予約や収益の安定化と増加を実現し、ビジネス持続の可能性を高められるでしょう。

顧客ごとに最適な宿泊プランを提案できる

データ分析によって、顧客の嗜好や行動パターンを把握し、その情報を活用して自社の顧客層に合うプランを提案できます。

たとえば、過去の宿泊履歴や利用頻度、好みのアメニティなどから、顧客セグメントごとに「顧客が喜ぶプラン」をカスタマイズできます。顧客一人ひとりの嗜好やニーズに合わせて、特別なサービスや割引を提供することも可能です。

これにより顧客満足度が高まれば、リピート率や口コミ評価の向上にもつながります。既存の顧客からの売上や利益を最大化できるだけでなく、口コミによる集客も加速され、ホテルの競争力を総合的に高められるでしょう。

リピート化に向けた適切なアプローチがわかる

データ分析を通じて、過去の顧客行動データやフィードバックを分析し、顧客の嗜好やニーズを把握できます。この情報を元に、リピート客を増やすための戦略を立てられます。

たとえば特定の顧客層にターゲティングされたプロモーションや特典を提供したり、顧客の宿泊体験や要望を分析し、個々の顧客に合わせたサービスを提供したりできます。これらの取り組みは顧客満足度を高め、リピート率の向上につながるでしょう。

また、データ分析により顧客の行動パターンや嗜好の変化を把握し、それに合わせてアプローチを調整することもできます。顧客のロイヤリティを高め、ホテルの収益性の向上と安定化が期待できます。

コンシェルジュサービスのパーソナライズ・顧客体験の向上に役立つ

ホテルがデータ分析を導入すると、コンシェルジュサービスのパーソナライズや顧客体験の向上に大きな効果があります。ここまで紹介してきたように、データ分析により顧客の嗜好や好みなどがわかり、顧客それぞれに合ったサービスを提供できるからです。

さらに、データ分析によって顧客が好む施設やアクティビティ、飲食店などの情報を把握できます。これらの情報を活用することで、コンシェルジュサービスを通じて、顧客に適切な情報提供やアドバイスを行えるでしょう。

顧客により満足度の高い宿泊体験を提供することで、ホテルのブランド価値や顧客ロイヤリティが向上し、集客力の強化やリピート率の向上につながります。

ホテルのデータ分析の始め方

データ分析はホテル業界においてもますます重要性を増しています。しかし、データ分析を進める際には様々な専門的な課題が発生しやすかったり、分析結果が実務に活用されず、失敗することも多々あります。

では、ホテルがデータ分析を始める際にはどのようなことに注意したらいいのでしょうか。データの利活用を成功させるためには、「統合的なデータ分析基盤を作る」ことと、「データの民主化を推進する」ことが重要です。それぞれの詳細を解説します。

統合的なデータ分析基盤を構築する

データ分析を始めるには、統合的なデータ分析基盤の構築が欠かせません。部門やグループ企業ごとに異なるシステムが独立して運用されていると、データが分散し、分析に時間と手間がかかります。また、データフォーマットの統一がなされていない場合、データ分析ツールでの利用が難しくなります。

そのためまずはデータの収集や管理、分析のための統合的なデータ分析基盤を作ることが重要です。施設単位やグループ全体でのデータ分析、オープンデータを取り込んだデータ分析など、多角的なデータ分析を行える環境を整えましょう。自社のデータ分析チームを作ったり、専門家の手を借りたりすることで効率的に実施できます。

「データの民主化」を推進する

データ分析を始めるには、データの民主化が重要です。組織内のあらゆる従業員がデータにアクセスし、分析を行えるようにしましょう。マネージャーやフロントスタッフなど、あらゆるレベルの従業員がデータを活用することで、業務プロセスの改善やホスピタリティの向上など、データ分析により得られる成果の幅が広くなります。特に、現場レベルでデータを活用できる環境があると、ホスピタリティを劇的に高められるでしょう。

データの民主化には、適切な教育・トレーニングやツールの提供が不可欠です。顧客情報の検索や抽出がしやすく、どこにどのメニューがあるかわかりやすい、操作性と視認性に優れたBIツールが必要です。

従業員がデータを理解し、使いこなすための教育プログラムも欠かせません。データ分析ツールやダッシュボードを容易に利用できる環境を整備することが求められます。また、データにアクセスする権限の明確化やセキュリティ対策も重要です。

「社内にデータ人材がいないためデータの利活用が進まない」という場合は、データ専門家の研修や実践的なワークショップなどを活用することで、効率的にデータの民主化を進められます。

ホテルのデータ分析を実施するポイント

ホテル業界はリピーター獲得や顧客満足度の向上に役立つ膨大なデータを保有しています。しかし、データをただ集めても意味がありません。必要なデータを収集・分析すること、データ分析を繰り返し実施し精度を高めることが重要です。

最後に、ホテルがデータの利活用を成功させるための2つのポイントを紹介します。

必要なデータを必要な分だけ収集・分析する

ホテルには顧客の年齢や性別などの基本情報だけでなく、さまざまなデータが集まります。たとえば予約の内容や時期から顧客それぞれの好みやライフスタイルを推察したり、ホテルが建つ地域についてのデータを集めたりすることも容易です。

ホテル業界はデータを集めやすいだけに、必要なデータの内容や量を見誤ってしまう可能性が高いことに注意が必要です。

データ分析を成功させるには、必要なデータを必要な分だけ収集・分析しなければなりません。無駄なデータを収集したり、必要のないデータに時間を費やすことは、効率的な分析を妨げます。また、収集したデータが適切でない場合、信頼できる分析結果を得られず誤った結論を導く恐れがあります。

データ分析で価値のある結果を出すためには、分析の目的や仮説を明確にしましょう。目的や仮説に基づいて、どのようなデータが必要かを把握できます。たとえば顧客満足度向上のためには、顧客のフィードバックデータやサービス利用履歴などが必要です。

さらに、収集したデータを適切に整理し、分析の対象となるデータを抽出しましょう。不要なデータやノイズを取り除き、分析の精度を高めるために、データの品質を向上させます。

必要なデータ以外の収集は避けること、収集したデータを精査することで、データの量やノイズを最小限に抑えられます。

データ分析を繰り返し実施し精度を高める

データ分析の精度を高めるためには、効果検証を繰り返すことが重要です。一度だけの分析では、十分な洞察を得ることはできません。何度もデータ分析を実施することで、データ分析のノウハウが蓄積されていきます。継続的にデータを分析し、洞察と知見を深めることで、データをより正確に理解できるようになります。

まずはデータ分析のサイクルを確立しましょう。データの収集・分析を行い、その結果を活用するサイクルを定期的に回すことで、結果を踏まえた改善策の実施が可能です。改善策のレビューも重要です。

データ分析を繰り返し実施する際には、過去の分析結果を踏まえて新たな仮説を立てることが役立ちます。過去のデータや洞察を活用し、新たな視点から分析を行うことで、より深い理解が得られるでしょう。また、異なる分析手法やアプローチを試みることも有益です。複数の方法を試すことで、データの異なる側面を捉えられ、全体像を把握できます。

まとめ

近年、さまざまな業界・業種でデータ分析、データの利活用が注目されています。ホテル業界も例外ではなく、データ分析を集客施策の改善やホスピタリティの向上に役立てている企業は多いです。

しかし、データ分析にはITや統計に関する専門知識が必要というイメージもあり、取り組み始めようとしてもハードルが高いでしょう。ホテルには顧客の基本情報に加え、顧客それぞれの好みや傾向、ホテルの建つ地域の情報など、膨大なデータが集まってきます。データ分析の目的を明確にし、どのようなデータと準備が必要なのかを見極められなければ、データをうまく活用しきれないことに注意が必要です。

まずは自社はどのような課題を抱えているのか、何のためにデータ分析に取り組みたいのかを明確にし、そのうえで必要なデータを特定すること、データ分析を繰り返し実施し少しずつノウハウを蓄積していくことが大切です。

「これからデータ利活用の取り組みを始めたいけれど、何から実施していいかわからない」「データ分析の専門家の知見を取り入れたい」という方は、データ分析の実績豊富な弊社、データビズラボにお気軽にご相談ください。

貴社の課題や状況に合わせて、データ分析の取り組みをご提案させていただきます。

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