データスチュワードとは?仕事内容から採用・育成するメリットまで徹底解説

現代のビジネス環境では、日々の業務で蓄積されるデータを活かすことに重点を置く企業や団体が増えています。これらのデータは、新しいビジネス戦略や製品・サービスの開発に活用される重要な「資産」となっています。その結果、企業や団体ではデータの管理を専門的に行う責任者が求められるようになりました。この専門職は「データスチュワード」と呼ばれ、近年多くの注目を集めています。それに伴い、データスチュワードを採用しようとする企業の数も増加傾向です。

本記事では、データスチュワードの業務に興味がある方に向けて、データスチュワードの概要や仕事内容、必要な知識やスキル、データスチュワードを採用するメリット、育成方法などについて解説します。

1.データスチュワードとは?

データスチュワードとは、企業や団体の資産であるデータの管理を行う責任者にあたる職種です。英語の「steward」には「執事」や「管財人」の意味があり、データスチュワードもまた、データという貴重な資産を責任を持って扱う役割を果たします。非営利団体であり、世界中に支部を持つDAMAData Management Association International)が作成したデータマネジメントの知識体系であるDMBOKData Management Body Of Knowledge)では、「他者を代表して組織のデータ(資産)を管理する人物」としてデータスチュワードを定義しています。

現代社会において、データは戦略決定の中心となり、データマネジメントは事業の成功を左右します。そのため、データスチュワードの存在は企業や団体にとって重要と言えます。

実際のところは、「データスチュワード」という役職や肩書きを持っている人はあまりいないですが、結果的にデータスチュワードの仕事を担っている人は多くいらっしゃいます。

参考:『データマネジメント知識体系ガイド(DMBOK)とは何か?』

データスチュワードの種類

データスチュワードの役割は、各企業の業務に応じて異なります。企業や団体によっては、役割別にデータスチュワードのポジションがあるケースもあります。以下では、データスチュワードの種類について解説します。現場レベルでは、こちらの種類までは意識しなくても問題ありません。

ビジネスデータスチュワード

この職種は、企業や団体の業務用の重要データの管理を担当する責任者です。企業内でデータを利用する部署と技術チームとの間の調整役として、ビジネスニーズと技術要件のギャップを埋める役割も担います。また、データマネジメントについての教育やデータドリブンの意思決定を提唱することもあります。

テクニカルデータスチュワード

アプリケーションやデータベース、ETL(抽出、変換、読み込み)などの専門知識を活用してデータマネジメントを行う職種です。データの収集や分析、分類などを担うこともあります。また、定期的にデータを集約し、経営層や取締役会に報告するためのレポートを作成する業務を行うケースもあります。

プロジェクトデータスチュワード

特定のプロジェクト内でデータマネジメントを専門的に行う担当者です。ビジネスデータスチュワードがすべてのプロジェクトに直接関わることが難しいため、プロジェクトデータスチュワードがビジネスデータスチュワードからの指示や情報を受け取ります。

その内容をもとにして、プロジェクト内でデータマネジメントを行います。プロジェクト内でデータ関連の問題が生じた場合や新しいデータマネジメントが必要になった際には、詳細をビジネスデータスチュワードに報告し、適切な対応を求めます。

オペレーショナルデータスチュワード

オペレーショナルデータスチュワードは、ビジネスデータスチュワードのサポートを担う職種です。主な業務は、ビジネスデータの操作を担当し、データ品質の問題やその他の異常のチェックなどを行います。データの品質に関する問題を発見した場合には、ビジネスデータスチュワードに問題を報告する役割を行います。

参考:『データドリブン経営とは?わかりやすく解説』

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2.データスチュワードの仕事内容

データスチュワードは、企業の重要なデータ資産を責任を持って管理し、その効果的な活用を担う職種です。主な仕事内容は、データガバナンスの実施やメタデータの作成や管理、データの品質管理などがあります。以下では、データスチュワードの仕事内容について解説します。

データガバナンスの実施

主な仕事内容のひとつは、データガバナンスの計画と実施です。データガバナンスとは、データの所有権、一貫性、および品質を管理し、企業全体でのデータの適切な活用を促進する活動を指します。これには、企業内のルールを定め、その遵守状況の監視やガイドラインの作成と社内への周知などが含まれます。また、データ利用に関する問題が生じた場合は、チーフデータオフィサー(CDO)など上層部に報告し、適切な対応を促します。

参考:『データガバナンスとはデータマネジメントを監督すること』

メタデータの作成や管理

メタデータの作成と管理を行い、組織内でのデータ利用の支援も仕事内容のひとつです。メタデータは、データ自体ではなく、データを説明する属性や関連情報を指します。例えば、「デジタル写真」のデータに関して、「撮影者の名前、撮影日時、カメラの設定、撮影場所の座標」などの情報を含めることがメタデータの一例になります。

参考:『メタデータとは?具体例を用いてわかりやすく意味を解説』

データの品質管理

データの品質管理も重要な仕事になります。データの正確さや一貫性、完全性、そして信頼性といった品質を高水準に保つことが重要です。そのため、組織内のデータ資産を監視し、データ品質や利用における問題点がないかを常にチェックします。問題が発見された場合は、それらを解決するための措置を講じることも重要な責務です。高品質のデータは信頼性の高いデータ分析と効果的な意思決定のために、必須の要素になります。

参考:『データ品質とは?品質評価項目や品質を向上させるための実務的対策を解説』

データの安全性とプライバシーの管理

データアクセスに関するポリシーとプロセスを管理し、データの安全性とプライバシーを守ることも仕事内容に含まれます。さらに、社内の従業員を指導し、データを正確に使用するためのスキルを向上させることも、この職種の業務の一部です。

データ利用のルール作成

データの使用に関するルールの立案と、データ利用のルールの文書化も重要な仕事です。ルール作成には、データ品質の維持に関する基準だけでなく、データを扱う際の業務ルールや手順も含まれます。この業務を通じて、データの適切な解釈が行われ、結果的にデータの効果的な活用が促進されます。また、必要に応じて、データ利用のルールの改訂も行います。

データライフサイクルの管理

データの生成からその廃棄に至るまでのデータライフサイクルの管理は、この職種にとって重要なことです。データライフサイクルは、データの作成からその削除に至るまでの一連のプロセスを指す用語です。具体的にはデータの作成から保存、利用、共有、長期保管、そして破棄というステージに分けられます。効果的なデータ活用には、データライフサイクルとデータの流れを正確に理解し、活用するデータを適切に選定することが必須です。

3.データスチュワードに向いている人

データスチュワードという職種には、どのような人が向いているのでしょうか。この職種に向いている人は、細部への気配りができる人や問題解決能力が高い人、誠実かつ信頼性が高い人が挙げられます。以下では、これらのデータスチュワードに向いている人について、詳しく解説します。

細部への気配りができる

データマネジメントをするためには、細部に対する鋭い注意力が重要です。この職種では、データの正確さや一貫性に対して持続的な集中力を保ち、微細なデータ要素やその相互関係に対して敏感である必要があります。そのため、細かいことにも気を配ることができる、緻密な性格の人が向いています。

問題解決能力が高い

データの問題を見極め、戦略的かつ論理的な思考で解決策を見出す能力も求められます。これは、データの品質向上や管理工程の改善に取り組むことが職務の一環であるためです。そのため、積極的にコミュニケーションを行い、同時に論理的に考えることができる人が向いていると言えます。

誠実かつ信頼できる人

あらゆる職種に共通する必須の特質として、誠実さと信頼性が挙げられます。特にこの職種では、データの機密性とセキュリティに対する高い意識を持ち、責任感をもって業務を行う能力が必要です。企業のデータマネジメントと保護において責任を果たせるような、高度な誠実性と信頼性を備えた人物が求められます。

4.データスチュワードに求められる知識やスキル

データスチュワードとして活躍するためには、さまざまな知識やスキルが求められます。この職種では、まず基本となるデータ管理の専門知識が必須です。加えて、関連するビジネス分野の専門知識も重要とされます。さらに、コミュニケーションスキルと分析スキルも、職務を遂行する上で欠かせない要素です。以下では、データスチュワードに求められる知識やスキルについて解説します。

データマネジメントに関する専門知識

メタデータの生成やデータ品質のチェックなどが業務に含まれるため、データマネジメントに関する専門的な知識が求められます。また、データライフサイクルやデータガバナンスに関する理解も重要です。そのほかにも、データ分析やデータモデリング、データベース管理システムなどの知識が求められます。 

関連するビジネス分野の専門知識

データマネジメントをするためには、関連するビジネス分野の専門知識も必要です。これには、特定の業界の慣習や業務フローに関する深い理解や、データガバナンスに関する知識などがあります。理由としては、業界固有の規制や標準に精通していることが、効果的なデータマネジメントを実施する上で大きな助けとなるからです。

コミュニケーションスキル

データマネジメントの現場では、データに関する情報を社内の他の関係者に正確に伝達し、自身の見解を明確に伝えることが重要です。また、社内の関係者との円滑な関係を構築するためにも、コミュニケーションスキルと高度な説明スキルが求められます。

分析スキル

データマネジメントをするためには、データを詳細に分析し、重要な情報を抽出する能力も必要です。その理由は、業務内でデータを正確に評価し、潜在的な問題やパターンを特定するなどを実施するためです。

参考:『知識ゼロから始めるデータ分析入門』

5.データスチュワードを採用するメリット

企業や団体などでデータスチュワードを採用することで、さまざまメリットがあります。具体的には、データの品質向上やデータ管理の統合ができること、リスクマネジメントやコンプライアンスの遵守などができることなどが挙げられます。以下では、データスチュワードを採用するメリットについて解説します。

データの品質向上

データの一貫性や信頼性、完全性が保たれ、企業が保有するデータの品質が高まることは大きな利点です。結果として、企業は信頼できるデータをもとにした正確な意思決定が行えます。データ分析の根幹を形成し、組織全体の生産性の向上に重要な役割を果たせるは、企業にとっては経営面でもプラスとなるでしょう。

データ管理の統合ができる

データ管理に関するポリシーとプロセスを統合し、さまざまな部署やチームが共通の基準でデータを扱うことが保証される効果があります。これは、企業のデータ管理に一貫性をもたらす上で極めて重要です。その結果、企業の整合性と信頼性が大きく高まります。

リスクマネジメントができる

リスクマネジメントを効果的にできることも、企業や団体にとっては強みとなります。データに関連するリスクを特定し、それらを最小化する戦略を決定できるため、データ関連の潜在的リスクを効率的に回避し、セキュリティを強化することが可能になります。

コンプライアンスを遵守できる

データに関連する法規制の遵守を保証する役割を果たせるため、企業や団体は法的なリスクや社会的制裁を避けることができます。コンプライアンスを遵守するためには、データ関連のコンプライアンス要件を明確にし、企業内でコンプライアンスが守られるように監督するなどが行われます。

データ利用・活用の促進

データを組織の目標や戦略に効率的に統合し、データ活用を促進する取り組みが行われることも、企業経営に大きな効果をもたらします。データの意味と背景を深く理解し、企業内でのデータの適切な使用を支援する役割は、データの利用や活用が活発に行われることにつながります。企業内の関係者にデータ利用の手法やそのメリットが啓発されることは、データ主導の意思決定の促進とビジネス成果の最大化に貢献します。

参考:『データ活用とは?初心者にわかりやすく解説!』

データ関連のコストを最適化できる

データライフサイクル全体にわたるコストの最適化ができる点は、コスト削減以外にも大きな利点と言えます。データライフサイクルの各段階で発生するコストを適切に管理することで、企業はデータ管理をより効率的に行えます。それにより、データ関連のコスト削減とリソースの最適な配分を実現できます。

6.社内でデータスチュワードを育成するには?

社内でデータスチュワードを育成するには、データスチュワードの仕事に向いた人材を選び、選んだ人材を教育することが重要です。そのためには、基礎知識の学習やメンター制度の活用、そして実務経験を通じた研修が含まれます。以下では、データスチュワードを育成する方法について解説します。

基礎知識の学習

データスチュワードとして選ばれた候補者には、データマネジメントの基本原則やデータガバナンス、データ分析に関する知識などを教育します。データ管理に関する基礎知識と関連スキルの習得は、データマネジメント業務への理解を深める上で効果的です。また、自主的に学習できるように、サポートをするといいでしょう。

メンター制度の活用

メンター制度とは、経験豊かな先輩社員が若手社員とペアを組み、キャリア形成や業務に関する課題の解決を個別にサポートするシステムです。既にデータ管理を行っている先輩社員がメンターとなり、直接の指導のもと、業界特有のデータ管理方法を教えます。個別指導やパーソナライズされたアドバイスにより、実践的なスキルを効果的に身につけることができます。

実務経験を通じた研修

最終段階として、実際のプロジェクトに参加することで、データマネジメントとデータガバナンスのスキルを実地で向上させます。現場での経験を積むことにより、データ管理における実際の課題を理解し、現実的な解決策を提案する能力を身につけます。このようにして、データマネジメント業務担当者としての成長を促進します。

7.まとめ

本記事では、データスチュワードの概要や仕事内容、必要な知識やスキル、データスチュワードを採用するメリット、育成方法などについて解説してきました。データスチュワードは、企業にとって貴重なデータ資産を扱う重要な職務を担っています。データスチュワードを採用することにより、データ品質の向上、リスクマネジメントの強化、データ関連コストの最適化など、多くのメリットを得られます。社内のデータを適切に管理・活用したい場合は、データスチュワードの導入をおすすめします。

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