デジタルマーケティングのデータ分析に関する15の質問とその答え

この記事では、データ分析のコンサルティングファームである当社がこれまでの体験や実績をもとに、多く寄せられる質問とその回答を纏めました。

デジタルマーケティング領域のデータ分析に有用であれば幸いです。

成果に関する質問

Q1. データ分析によってどのような成果が期待できますか?

  A.広告費用対効果の改善が可能になり、ストレートにPLに効いてくるでしょう。業績に効かなかったらやる意味がありません。

デジタルマーケティングはPLと直結するパフォーマンスを扱うため、多種多様なデータ活用領域がある中でもっとも財務的インパクトが大きいと言えるかもしれません。

なぜなら、以下が可能になるためです。

  1. 有効な広告とそうでない広告の違いが数値で把握できる
  2. 広告の反応をリアルタイムで把握できるので施策を軌道修正しやすくなる

    ビジネスモデル自体がダイレクトマーケティングやデジタルマーケティングが骨格にあればあるほど、デジタルマーケティングがうまくいったときの経済的インパクトは大きくなるでしょう。

    Q2.その他どのような効果がありますか?

      A.判断の”間違いにくさ”、また判断の質・議論の質が上がることで意思決定のスピードが変わります。

    財務的な数値として現れないものとして、判断の質が上がったり、議論の質が上がるのは顕著かもしれません。

    いわゆるKKD(勘と経験と度胸)は重要ですが、KKDのみではなく、「データドリブン」にものごとが進められるようになります。データドリブンな考え方や進め方は以下の記事にも詳細を書いています。

    データドリブンな組織づくりの方法を総ざらい 利点や注意点も解説!

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    データ分析に関する質問

    Q3. どのような分析が可能ですか?

      A.課題次第ではありますが、ざっくり大きく分けて3分類ほどに分けられます。現状把握のシンプルな可視化、予測、最適化です。

    かなり荒くではありますが、例えば以下のような3分類です。

    1. 現状把握のためシンプルな可視化
    2. 予測
    3. 最適化

      可視化のイメージは、デジタル広告に投資した金額やリターンとなる販売数などを、広告媒体別で分けて、チャートで図示するような活動です。

      予測のイメージは、どの広告媒体に、いくら投資すれば、どれくらいのリターンがあるか、数理モデル等を用いて見立てを行うような活動です。

      最適化のイメージは、広告媒体ごとの投資対効果の予測モデルを使って、広告予算の上限の範囲で、媒体Aにはいくら、媒体Bにはいくら、投資することが、最もリターンを大きくなるか、シミュレーションを行い、最も有用な投資パターンを導出する活動です。

      いずれにしても、まず現状把握をシンプルに可視化してみることは非常に重要です。

      どのような複雑で複合的な分析であれ、まず基礎的分析としてシンプルな可視化からデータの探索を始めるのが効率的です。

      Q4. オフライン広告の効果検証は可能ですか?

        A.ABテストが基本です。また、O2O施策やQRコードのような手法が注目されがちですが、いずれにしても定点観測を継続的に行っていくのが王道です。

      広告のデータ分析に関しては、キャンペーンや施策を行うそのタイミングで初めてデータ分析をご依頼頂くケースが多いです。そのタイミングでさえデータ分析を行えばいいと思われている方も多いのですが、実際データ分析は平常時の普段からデータを見ておく必要があります。

      例えば、「来訪者が何人来た」とわかっても、それと比較するものがないとインサイトが出せません。「広告を打つときだけやる」というのはほぼ意味がなく、思いつきでやってはほとんど示唆が出させません。

      しかしこういうお客様は非常に多いのが事実です。いずれにしても効果検証・計測したい場合はまず普段の状態を計測しておくことが重要です。これまでデータを取っていなくても、これから取っていけば良いのです。データ収集の戦略も、データ分析サイクルの重要な一つです。

      Q5. TVCMの効果検証は可能ですか?

        A.TVCMも上記の定点観測を継続的に行っていくという基本は同じです。ファネルの浅い層を狙った認知度調査は調査会社のデータと連携させ、四半期に一度など定点観測していくことがおすすめです。ブランドリフトの分析も出来ます。

      マスをターゲットとした認知度獲得を目的としてTVCMを長らく実施してきたが、その効果検証や結果の分析を行っていない企業は多いです。

      TVCMの効果検証はブランドイメージに対する定性的なアンケート調査が主体にはなりますが、定点観測でデータを確認し理解していくのはオフライン広告の効果検証と同じです。アンケート・サーベイ系のデータで、選考度への寄与率などを計測していきます。アンケートの設問設計が勝負になります。

      当社で過去に行ったTVCMの効果検証のデータ分析ステップの一例です。

      1. アンケート/サーベイを設計し、実施。
      2. TV視聴情報と組み合わせ、CMの認知度改善を計測する。
      3. これにより大規模なA/Bテストを行わなくとも、A/Bテストと同等の分析結果を得られるようにする。
      4. CM視聴回数と認知度のクロスを取ることで、視聴回数と認知度の飽和曲線を描く。
      5. 認知度の飽和曲線からGRPの費用対効果の最大化/TVCM予算の最適化が可能になる。

      広告をTVCMに大きく依存している場合、長らく行っていなかった効果検証を行うことで、TVCMの費用対効果を知り、今後の施策全体の企画などに有効活用する手段とするということはとてもROIの高いことになります。

      ご参考までに、本件に関連する手法、マーケティング・ミックス・モデリングの内容も以下の記事で公開しています。

      各種広告施策の影響度を調べるマーケティングミックスモデリングとは?

      Q6.他社施策の効果検証は可能ですか?

        A.ある程度可能ですし、当社としても行っております。

      特にデジタルマーケティングにおいては自社にある既存のデータに加え、サードパーティデータ、セカンドパーティデータと組み合わせて分析することが競争力にとって非常に重要です。サードパーティデータ、セカンドパーティデータに関してはこちらの記事『データ収集とは?』にも詳しく書いています。

      データ収集の重要性と技術的方法&よくある課題と対応策を解説

      コスト見合いではありますが、可能な限りの公開情報の収集と外部データの購入で、「確実には知ることができないが推定することができる部分」に対し推定することは可能です。このように、ストレートに答えに当たるデータがなくとも、フェルミ推定的思考で確からしい仮説を立て、精度の高いアクションへ繋げられるものです。

      Q7. 広告効果の分析ツールなどを導入した方が効果的ですか?

        A.各種ツール類が存在することはデータ分析を加速させるために重要ですが、選定がそれ以上に重要です。ツール自体はデータ分析の前提となるものです。

      分析テーマに合ったツールが世の中に存在しているので、それを使うのがスタートラインです。

      例えば、「WEBを解析するにはこれ」など、用途に合わせたデファクトスタンダードがあります。当社はツールベンダーではありませんが、仕事をご依頼いただく際はツールが企業に導入されている(もしくはこれからする)ことは前提としており、使わないと勝てないというところがあります。既存のツールでできることをスクラッチでゼロから開発したり、Excelで全て済ませるのは非常に負荷のかかることで、スピードが重要な時代には悪手でしょう。

      また、ツールは、「選ぶ」というところに一つのハードルがあります。クラウドデータ基盤であれ、ETLであれ、各種BIツールであれ、非常に多くのツールが存在し、知見のある人でないと自社にフィットするツールの選定は現実的には厳しいでしょう。

      加えて、ツールは選んで購入するだけでなく、そのツール内の繊細な設定が勝負となることが多く、「ツールに習熟している人」そしてそういった人で構成される「チーム」が必要です。

      Q8.デジタルマーケティングの分析は、クラウドで行うべきですか?

        A. 不確実性への柔軟性と安さで、昨今ではほとんどのケースでクラウドが良いでしょう。

      ある種類の処理の規模が大きくなると、自前でサーバーを買って処理した方がコストが安いケースはあるものの、オンプレの方が安いケースは一部の例外的なケースでしょう。例えばGPUを活用したディープラーニングの処理は、まだまだクラウド利用料が高いので、恒常的に処理するなら、オンプレミスの方が安くなります。防犯のためにずっと動画の解析をしているようなケースだと、安いからオンプレミスを使うという選択をすることもあります。

      とはいえ、クラウドのほうが安いケースが、この10年でどんどん増えており、オンプレの方が安いケースは一部の例外といえるかもしれません。

      会社の思想や世界観(どのように将来を考えるか)によるところが大きいものの、昨今は半年後・一年後がどうなっているのか、どのような課題/要望が出るのかの見通しがあまりに立たない状況なので、不確実性に対して柔軟であるという点からも、クラウドの方が良いと判断するケースがほとんどです。

      Q9.データ分析結果が独り歩きし、拡大解釈などされないためにはどうしたらいいですか?

        A. どこから抽出されたどのような何を使っているかのような、「データの前提」を丁寧に理解することが重要です。

      お客様のデータやレポートを拝見させていただくと、データ分析自体にセレクションバイアスの問題があることが多いです。簡単に言うと、「店に来た人」のみのデータを使い、なんらかの示唆を出そうとしていることが多いですこういったデータで良い結果が出ている、という解釈が組織内で一人歩きしているケースも多いです。そうならないように、データの前提を丁寧に確認し、そのデータで言えることを理解していくことが必要でしょう。

      Q10.データ分析自体の効果検証はどのようにしたら良いですか?

        A. 人件費が一番高いので、現実的にはツールの導入効果は大体のケースにおいてプラスになると思います。そして、ツール導入を最大化するには、ツールを使いこなせるかどうかに勝負がかかっています。

      ツール導入効果は各ツールベンダーなどからよく”○時間かかっていたものを○時間に削減”など説明がありますが、実際は内部コストとしての人の時間つまり人件費が最も高くつくことが多く、ツールの導入効果は大体のケースにおいてプラスになると考えます。また、ツールの導入効果を最大限にできるかどうかはどれくらいツールに習熟している人が活用できるかによる部分が極めて高いです。

      しかしながら、まだあまりアクセス数がないサイトに有償の分析ツールを入れたとしても、Google Analyticsとたいして違わない効果も多いです。そのためデータ分析自体のコストパフォーマンス自体は、自社のサービスやプロダクトの成熟段階によるところも大きいです。
      また、サイトの作りや取り扱う商材にもよりますが、そもそもデータ分析よりも、ユーザインタビューだの動線、デザイン、文言をきちんとやった方が、ROIが高いケースもあるので、よく考えることが必要です。

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      データに関する質問

      Q11. 特別データ収集している訳ではないのですが、データ利活用を始められますか?

        A. もちろん可能です。社内システムに蓄積されたデータでインサイトを得られることは珍しいことではありません。しかし、更に先に活用を進めようとすると副次的に得られるものだけの活用では足りません。

      既存の社内システムに存在するデータをシンプルに可視化することで得られるインサイトはもちろんあります。実際、多くの人がデータをそこまで把握していることはないですから、シンプルな可視化だけでも多くの気づきが得られるケースは多いです。

      しかし、こうしたいわゆるSOR(System of Records:記録を起点としたシステム)のデータはデータから価値を出すことに限界があるケースも多いです。

      そこで、さらに先にインサイトを得ようとすると、SoE(System of Engagement:顧客とのつながり/体験を起点としたシステム)として、既存システムのデータを流用するのではなく目的とテーマにシャープに合わせたデータ構造で収集をする必要がでてきます。こちらがデータ利活用を考えるとスマートなアプローチであり、今後重要になってくるものでしょう。

      Q12. 顧客分析をしたいのですが、年齢と性別くらいしかデータを取得していません。これでは駄目でしょうか?

        A.いいえ、それでも出来ることはあります。

      たとえば会員データ、でもデータに紐づく購買データがあったり、購買にひもづく商品の情報が存在する場合もあるので、紐づけてリッチ化(エンリッチ)し、「こういった年齢・性別の属性が、このような好みである」という程度の示唆であれば出せることはあります。

      しかし、直接的に調査するという手段をとるのも投資対応効果は良いです。「やりたいこととできることがちがう」状態であれば、その差分を埋めるためにはどうすれば良いか?と考えていきます。

      Q13. 社内に様々なデータがありますが、組み合わせて可視化・分析することは可能ですか?

        A.専門的な話をしてしまえば、データの持ち方/データ構造次第です。

      まず既存のデータに対しアセスメント(データの評価)をすることが大切です。真正面から回答すると、データベースの細かい部分の判断をしなければいけないためです。

      Q14.各部署秘伝のExcelシートにデータが分散している。統治に向けてどこから手を付けるべきか?

      実際、私自身は、Excelでデータ分析を行うことや各部署に様々なシートが有る事自体は悪いことだと思っていません。使い慣れたものを否定して全社的にツールを統合しようとすると機動性が落ちたりネガティブな面の影響もあるものです。

      当社はモダンなデータ分析基盤の構築や分析、可視化を専門としますが、お客様によってはExcelとAccessでの提案をすることもあります。

      現状の様々な要素(例えば、社内体制やツールへの習熟度、リソース、社内セキュリティ、予算)に見合わない、階段を3段飛びのようなことをしても、使いこなせなかったり、理解できなかったりしてあまり意味がないからです。モダンなものを使うこと自体が目的でもないからです。

      ですので、現在Excelで行っていることがそもそも統治すべきかどうかの評価は必要です。

      社内の説得に関する質問

      Q15.データに明るくない人が多いですが始められますか?

        A.データに明るくない人が多いのが普通であり、よくありますので大丈夫です。

      厳しいことを言うと、どちらかならば、もちろんデータに明るい人の方が圧倒的に良いです。しかし、現状を嘆くより、これから頑張ることのほうが重要です。

      大きく階段飛ばしで行くのではなく、少しずつ始めていくという原則を守れば大丈夫です。そのコツは、小さくPDCAを回してクイックウィンをしていくということです。

      まとめ

      この記事では、組織の中でのデジタルマーケティング領域にたずさわる方へ向けて、よくある疑問を解決すべく筆をとりました。

      以下の記事、DXに関するよくある質問への回答集では、デジタルマーケティング領域より少し広く、「データ分析プロジェクトや組織内の進め方」に関しても疑問を解決できるような内容になっていますので是非ご覧ください。

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