昨今、様々なところで「データサイエンティストが不足している」という声を耳にするなど、データサイエンス領域における人材需要が大きな高まりを見せています。
そのような中で現在、海外はもちろんのこと、日本各地でデータサイエンスを学べる専門のコースを設置する大学が増えています。「大学でデータサイエンスを学びたいけど、どの大学が自分に合っているのか分からない」「文系でもデータサイエンスを学べるのか知りたい」「データサイエンスを学びたいけど、将来役に立つのか不安」とお悩みの方に、今回は「データサイエンスが学べるおすすめの大学」をご紹介します。
データサイエンス教育を展開している大学は国内に数多くありますが、この記事では、私自身がその学習スタイルや独自のプログラムなどに特にオリジナリティがあると感じた大学をピックアップしています。
1.データサイエンスで学べる3つのこと
データサイエンスという言葉は知っているものの、「具体的にデータサイエンスが学べる大学で何を勉強するのか想像がつかない」という方は多いのではないでしょうか。
データサイエンス教育を推進している多くの大学が文理融合型カリキュラムを採用しているため、その科目内容は多岐に渡りますが、データサイエンス教育を通して学べる具体的な内容は以下が主なものです。
1-1.数学・統計学
データサイエンスを学ぶにあたって数学や統計学の知識は欠かせません。
具体的な学習領域に関しては、線形代数・確率・統計などを始めとする基礎数学、ビジネスにおける問題解決のための経営数学、ばらつきのあるデータから規則性を見出す数理統計学、データマイニング等で用いられる多変量解析などが挙げられます。
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1-2.情報学・データ処理・分析・解析
ここでは、情報セキュリティーに関する諸知識や、膨大な量のデータ(ビックデータ)を扱うための解析手法の基礎、RやPython等のプログラミング言語を用いて行う機械学習(マシーンラーニング)・深層学習(ディープラーニング)、時系列解析やネットワーク分析といった高度な分析手法まで体系的に学べます。
1-3.専門分野
最後に、データサイエンスを学ぶ際には自らの専門分野を持つことが重視されます。ビジネス、環境、医療、経済、国際関係、教育など、個人個人が興味のあるテーマの知見を深め、それらの知識とデータサイエンスを組み合わせることで、価値創造・問題解決を図っていくことが必要とされます。
2.データサイエンスが学べる日本の国公立大学
2-1. 北海道大学
引用:北海道大学「大学案内」
北海道大学は学部教育、大学院教育(修士)、大学院教育(博士)の3つのレベルでデータサイエンス教育を展開しており、文部科学省が認める「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」拠点大学の1つに選定されている大学になります。同大学では学部を問わず1年生全員に情報科目を必修化しているのが大きな特徴です。データサイエンスを学ぶ上で最適な環境が設けられているので、本格的にデータサイエンスを学びたい学生におすすめの大学となります。
参考:文部科学省「数理及びデータサイエンスに係る教育強化の拠点校の選定について」
2-2. 滋賀大学 データサイエンス学部
引用:朝日新聞eduA「滋賀大学 データサイエンス学部 蓄積されたビッグデータ、分析・解析でビジネスに」
滋賀大学は、2017年に日本初となるデータサイエンス学部を設置した大学になります。
学部長はスタンフォード大学で統計学の博士号を取得している統計学者の竹村彰通教授、教授陣には大阪ガスのデータ分析専門チームで活躍していた河本薫教授を控えているほど、データサイエンス教育に力を入れています。今年2021年に同大学は、記念すべきデータサイエンス学部の第一期生の内定就職先公表されました。以下は、滋賀大学公式ページからの引用です。
速報では情報通信や、IT、コンサルタントなど情報産業系(NECソリューションイノベータ、NTTドコモ、ソフトバンク、中電シーティーアイ、フューチャー、マクロミル等)への就職が約4割。デジタルトランスフォーメーションに取り組む製造業系(花王、京セラ、KOKUSAI ELECTRIC、島津製作所、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、帝人、三菱重工業等)、日本航空や西日本旅客鉄道、SMBC信託銀行やトヨタファイナンス等が約3割に、滋賀大学大学院データサイエンス研究科博士前期課程等への進学が約2割と、データサイエンス学部の特徴が表れた幅広い進路となっております。
以上の発表から分かるように、滋賀大学のデータサイエンス学部の就活状況は業界を問わないものとなっております。
「データサイエンス学部の具体的な就職実績がないと就活の際に不安だ」と思う学生はぜひ滋賀大学を目指してみても良いかもしれません。
2-3. 横浜市立大学 データサイエンス学部
引用:横浜市立大学「大学案内」
横浜市立大学は、2018年にデータサイエンス学部を設置して以降、2019年の志望倍率が4倍超にまで跳ね上がったほどデータサイエンス教育で人気の大学になります。
2021年の最新のデータによると、データサイエンス学部は全学部の中でもトップの人気度となっています。特徴としては、徹底した英語教育と文理融合型カリキュラムになります。これからの将来、海外での就職も視野に入れたい学生にとって大きな魅力を持つ大学と言えるでしょう。
2-4. 東京大学
東京大学は、実はデータサイエンス教育において国内を牽引している大学のうちの一つとして知られています。
東京大学が提供するデータサイエンス関連の講義は約180を超え、同大学院独自の「データサイエンティスト育成講座」は人気を博している。このような大学の動きに応じて、東大生の就職先としてデータサイエンティストを選択する割合は近年上昇傾向にあり、これからもその勢いは伸び続けることが予測されます。豊富なデータサイエンス講義を用意している環境でデータサイエンティストとしてのキャリアを目指したい方は東京大学を検討してみても良いかもしれません。
参考:FNNプライムオンライン「データサイエンティストが東大生の就職先で人気…どんな仕事?“東大の養成講座”で学ぶ能力」
2-5. 広島大学 工学部 情報科学部
引用:広島大学「アクセス」
続いてご紹介するのが、広島大学工学部情報学部になります。当大学における学習プログラムはハーバード大学統計学部のカリキュラムを参考に編成しているため、質の高いデータサイエンス教育が受けられることが大きな特徴です。また、同大学はAI(人工知能)やデータサイエンスの分野で、地元企業や行政機関との共同研究や社員・職員教育を進める拠点を開設するなど、積極的なデータサインエンス推進に力を入れています。
3.データサイエンスが学べる日本の私立大学
3-1. 武蔵野大学 データサイエンス学部
武蔵野大学は、全国で3番目にデータサイエンス学部を設置したことで知られる、いま最も勢いのある大学です。当大学はデータサイエンス学部を構える大学の総称であるMUSYC(武蔵野大学、滋賀大学、横浜市立大学)のうちの1つであり、近年志願者数が増加しています。以下、図を参照。
引用:AERE dot.「大学選びに異変あり データサイエンス3大学「MUSYC」人気急騰! 2/4」
武蔵野大学データサイエンス学部の特徴としては、実践的なイシュー志向・解決型データサイエンスを実現する学びの展開が挙げられます。以下は、武蔵野大学公式ページからの引用です。
学生は、1年次後半から卒業まで行われる「未来創造プロジェクト(PJ)」を通じて、研究グループ・企業との共同研究や官公庁との委託研究に携わるなど、実課題の解決に向けた実践的な学修を行います。さらに共同研究を通じて、データとその分析を社会に活かすための視点・考え方・手法を身に付けて、国際的に活躍できるデータサイエンティストになるためのスキルを学びます。
机上の学習よりも、実践的な課題解決に興味がある学生はぜひ武蔵野大学を検討してみてもいいかもしれません。
3-2. 中央大学 理工学部 ビジネスデータサイエンス学部
引用:Index Consulting 「中央大学後楽園キャンパス 第二号館建設プロジェクト」
中央大学は、2021年4月にMARCH初となる理工学部ビジネスデータサイエンス学科を創設した大学です。その特徴は、徹底された問題解決型学習プログラム(PBL)を通して、データサイエンティストに求められる3つのスキルである「ビジネス力」「データサイエンス力」「データプログラミング力」を養う独自のプログラム提供にあります。
また、全学的な取り組みとして、データサイエンス教育を理系文系問わずに行われていることも大きな特徴の1つです。
3-3. 東京理科大学 工学部 情報工学科
東京理科大学は、2019年から研究推進機構の下に「データサイエンスセンター」を設置した大学になります。当センターにおいては、国内外との連携を密に図りグローバルな視点からSDGs実現に貢献していくという目標を打ち立てています。特徴としては、データサイエンスを学部横断型プログラムとして打ち立てており、全学部的なデータサイエンス教育を提供している点にあります。当大学はデータサイエンスにおける大学院教育も充実しており、AI人材の育成に力を注いでおります。将来、AI関連の仕事をしてみたいという方はぜひ東京理科大学を検討してみても良いかもしれません。
3-4. 立正大学 データサイエンス学部
立正大学はMUSYCに続く、日本で4番目にデータサイエンス学部を創設した大学になります。当大学は、「キャリアにつながるデータサイエンス」をコンセプトに、現在総務省統計委員会の委員長を務める北村行信教授を筆頭として、実践的な教育プログラムを提供しています。
実際に専門基礎科目群の授業「データサイエンティストの世界」では、データアナリストや金融アナリスト、AI研究者、スポーツアナリストなど幅広い舞台で活躍しているデータサイエンティストの授業を受講できます。将来の働き方を具体的にイメージしたい学生におすすめの大学となっております。
3-5. 武蔵大学
武蔵大学は、グローバル・データサイエンスコースという英語に特化した新学科を社会学部の中に設置している大学です。
特色としては、文系ならではの社会学的な知見から、深い洞察力と発想力をデータサインエンスの領域に応用し課題解決や価値創造を行うことです。
「データサイエンスに興味はあるものの、文系の自分には難しいかも」と思う学生にまさにピッタリな大学といえます。以下は、武蔵大学公式ページからの引用です。
「グローバル・データサイエンスコース(GDS)」は、新しい時代の世界共通語である「データ」と「英語」両方をしっかりと身につけるコースです。4年間の学びを通じて、広い社会学的な視野と高度な社会科学的スキルを持ち、データサイエンスにも対応できる人材。そして、英語によるコミュニケーションが図れ、グローバルな視点を持つ人材へと成長することができます。
3-6. 早稲田大学
引用:マナビジョン「早稲田大学/大学トップ(願書請求・出願)」
早稲田大学は2021年4月より、約50,000人の同大学における全学生にデータ向けたデータ科学教育の展開を始動した大学になります。それに伴い同大学は、独自の「データ科学認定制度」を創設し、学生の早熟度に合わせた体形的なデータサイエンス教育を提供しています。同大学におけるデータ科学認定制度の取得は、自身のキャリアの可能性を広げることにも繋がるため、将来データサイエンティストを目指す学生には大きな資格となるでしょう。
引用:早稲田大学「全学生対象Data Science認定制度開始」
4.【海外】データサイエンスが学べる海外の大学
データサイエンス教育は現在、欧米を始めとする先進諸カ国内で急激に発展しつつあります。
特にアメリカでは、既にデータサイエンスをリモート環境で学ぶための学習プログラムが充実しており、MITやハーバード大学を筆頭に数々の大学がオンラインにてデータサイエンス講座を開いています。また、これらの大学が提供する学習プログラムの中には世界中のどこからでもデータサイエンス修士課程を修業できるカリキュラムも多く展開されているため、データサイエンスを学びたい方の多くがリモートにてデータサイエンスの授業を履修しています。
今回は、そんなデータサイエンス教育が整った海外の大学について現在アメリカの大学で統計学を学んでいる私が紹介いたします。
4-1.エディンバラ大学(イギリス)
引用:The University of Edinburgh「International applicants」
最初にご紹介するのが、イギリスの名門エディンバラ大学になります。
当大学は、2015年にイギリス政府が設立したAI・データサイエンス分野を推進するためのアラン・チューリング研究所と連携している大学であり、そのコネクションの強さが大きな特徴の一つになっています。事実、2017年には中国の巨大通信メーカーであるFUAWEIと5Gネットワークに関する共同研究をスタートを始め、英国放送協会(BBC)やイギリス内の7つの大学との研究パートナーシップを築いております。
参考:HUAWEI「Huawei and University of Edinburgh to Research Potential of AI Robotics Systems Operating Over 5G Networks」
BBC「BBC and UK universities launch major partnership to unlock potential of data」
AMP「AI開発競争で米中追う英国の秘策「アラン・チューリング研究所」が果たす役割」
4-2.カリフォルニア州立大学バークレー校(アメリカ)
引用:Berkeley News「UC wins North America’s largest open access publishing agreement」
カリフォルニア州立大学バークレー校は、アメリカで最も豊富なデータサイエンス教育を行なっている大学のうちの1つです。
キャンパスはApple, Tesla, Google等を含む有名IT企業が集まるシリコンバレーの側に位置しているため、データサイエンスのスペシャリストと交流する機会が多いのも大きな魅力の一つです。また、同大学におけるデータサインスの講義は、2015年より毎シーズン役1000人以上もの学生が受講するほど人気であり、edXにて無料公開されているため興味のある方はぜひ一度授業の様子を覗いてみるのも良いかもしれません。
参考:Berkeley News 「Berkeley offers its fastest-growing course – data science – online, for free」
4-3.ジョンズ・ホプキンズ大学(アメリカ)
引用:Johns Hopkins University School of Medicine「Application Process」
ジョンズ・ホプキンズ大学は近年新型コロナウイルスへの調査報告や研究論文等で実績をあげている世界屈指の有名医学部を有する大学になります。
そんなジョンズ・ホプキンズ大学ではデータサイエンス教育を実践的に取り入れており、新型コロナウイルス感染拡大防止のための解析を実際に行うなど、自らの強みである医療とデータサイエンスを組み合わせた学習プログラムを提供している大学になります。以下は、実際の新型コロナウイルスに関する研究です。
4-4.メルボルン大学(オーストラリア)
引用:Tokyo Institute of Technology「Partner universities: The University of Melbourne」
メルボルン大学は、オーストラリアでITやビジネスの領域に関して最も評価を受けている大学の1つです。
同大学はオーストラリアで初めてコンピュータを設置した大学で知られている通り、コンピューターサイエンスに非常に力を入れています。メルボルン大学では、データサイエンス領域に関するコースが4種類用意してあるので、コンピューターサイエンスに重きを置いたビックデータ分析等に興味がある方は進学の1つの選択肢として検討しみても良いかもしれません。
参考:The University of Melbourne「Top 10 Master of Data Science Colleges in Australia」
オーストラリア留学センター「全豪No.1評価 メルボルン大学IT・コンピューター系コースの紹介」
5.まとめ
今回は、データサイエンスが学べる大学についてご紹介しました。
前述の通り、データサイエンス教育は日本ではまだまだ発展途上の段階にありますが、国内の大学の多くがデータサイエンス教育推進に向けて動きを見せています。理系のイメージが強いデータサイエンスですが、文系ならではのアプローチでデータサイエンス教育を実施している大学も数多くありますので、ぜひ自身の理想や目的に合った大学選びをすると良いでしょう。
今回の記事が皆さんの参考になれますことを願っています。
弊社では本記事の他、データサイエンスや統計に関する記事をいくつも紹介しています。興味がある方はぜひこちらからご一読ください。
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