1969年の開局から半世紀以上、地域に根ざして数多くの愛されるコンテンツを発信し続けている中京テレビ放送様では、社内のデータ可視化、データドリブンな意思決定を実現する社内文化の醸成に積極的に取り組まれています。
当社は、中京テレビ放送様のデータ分析基盤の構築を支援させていただきました。
今回は、中京テレビ放送様が現在力を入れて取り組みされている、データ分析基盤の構築やデータ文化醸成について、技術DX推進局 ICT推進グループ ICT推進部長 兼 DX推進部長 北折政樹様と、主任 山本卓也様にインタビューさせていただきました。
(写真左から、中京テレビ放送株式会社 技術DX推進局 ICT推進グループ主任 山本卓也様、 ICT推進部長 兼 DX推進部長 北折政樹様、データビズラボ株式会社 代表取締役 永田ゆかり)
1.中京テレビ様のデータ領域に関するお取り組み
複数プラットフォームへの配信による「視聴率」以外のデータ分析指標への対応
ーー中京テレビ様はデータビズラボと、データ基盤の構築・可視化を実施しています。データ可視化の取り組みを実施する背景やきっかけにはどのようなものがありましたか?
(北折様)テレビ局では「視聴率」を指標にし、できあがったシステムを利用して集計や分析を行っています。
近年、テレビ局のコンテンツがテレビ放送以外の複数のプラットフォームへの配信等に増えていった事により、コンテンツを評価するために見るべき項目が非常に増えてきました。しかし、一箇所でこれらデータを見る場所が作られていなかったため、それぞれのプラットフォームのダッシュボードで確認して、自分たちなりの集計を手作業で実施していました。
その集計だけで時間と労力がかかり、例えば先週の状況を月曜日の朝会議で共有するために会議前に急いでレポートを作成する、といったような状況が続いていました。そのため、配信関連では、結果を集計するところまでとなり、分析までなかなか手が回せない状態でした。
そのため、まずはシステム的にデータを集計し、ひとつのダッシュボードで必要なデータを見る事ができる環境を作る事により、分析のほうに力を割けるようにしたいという想いでデータ分析基盤の構築に入りました。
中京テレビ放送株式会社 技術DX推進局 ICT推進部長 兼 DX推進部長 北折政樹様
データ基盤の構築による、社内メンバーのメリットを提示して協力を得る
ーーデータ分析基盤の構築を実施する前、社内のデータ可視化や利活用への温度感はどのような感じでしたか?
(北折様)社内から、データ活用基盤のニーズがすごくあった、というわけではないのですが、課題としては持っていた状況です。業務を楽にしたいという思いはありつつも、どうすればよいか分からない状態だったのかと思います。
ーーデータ利活用の取り組みの実施時には、熱意がある方がいても社内からの協力がなく進められないケースもありますが、中京テレビ様はスムーズに進めている印象です。社内への協力体制を得るために意識していることはございますか?
(北折様)「データを収集する」「データを活用していく」といった入り口ではなく、「仕事を楽にする」というアプローチを実施しました。
自分たちの仕事が楽になるのであれば、協力してくれますよね。社内に対しては、各現場で手間がかかっているものを、自動化し、楽できる状況を実現していく為に協力をしてください、ということを伝えました。
中京テレビ放送株式会社 技術DX推進局 ICT推進グループ 主任 山本卓也様
2.テレビ局のデータ分析基盤・可視化・利活用などの現状
ーーテレビ局といえば「視聴率」が広く知られている指標です。その他どのようなデータを収集・分析しているのでしょうか。
(北折様)視聴率以外ではSNS調査、市場調査でアンケートなどを実施しています。
編成部門の方々をはじめ、それぞれの部署で定点観測している指標や、番組を立ち上げる際にヒットするのかどうかを確認したりなど、様々な指標で実施していました。
ーー現在、視聴者からの反応として計測している指標はどのようなものがありますか?
(北折様)配信では、視聴数を確認しています。本来であれば属性データも入れるべきだと思っていますが、まだ収集できておりません。
Xのリポスト数をはじめ、SNSの反応などの指標は様々あり、どのような投稿が伸びて、コンテンツの視聴に繋がるかなどは、まだ把握しかねているところがあります。
把握している傾向に対しては、同じような施策をして想定した結果が返ってきているものもありますが、まだ把握していない要素もあると思うので、それを探していくことも今後取り組みたい内容です。
また、プラットフォームによって得られる情報も異なるので、その点をどうデータ基盤に反映させるのかも検討していきたいと思っています。
ーーテレビ局・メディア業界だからこそ重視していることはありますか?
(北折様)データの鮮度は大切にしています。できるだけ、配信した次の日にはデータが見れるようなスピード感を重視しています。
3.データビズラボへのご依頼経緯について
熱量と、メディア業界での実績が決め手
ーーデータビズラボへのご依頼の経緯や、決め手になったものは何ですか?
(北折様)まずは社長の永田さんの熱量が非常に高かったことです。空気感や、提案型で支援を実施いただいている様子に熱量を感じました。
また、メディア領域に実績があったことも大きな決め手です。メディア業界で使っている言葉は、独特なものもあるため、最初にこの辺りのレクチャーが少なく済むと思いました。
4.中京テレビ様のデータ領域に関する変化と今後のビジョン
まずは作業効率・生産性を上げて次のフェーズに。スモールステップで確実に推進する
ーーデータ可視化を実施してから、社内で変化は見られましたか?
(北折様)今はまだ構築途中ではありますが、まずはこれまで手間をかけて集計していた作業がなくなるということが一番嬉しいと感じています。
従来では人と時間を使って見るべき数字を手作業で集計していましたが、徐々に番組や各指標の数字を自動で取得・集計できるようになって来ました。その結果、一部領域では週報などのレポートをBIツールで再現し、完全に自動化することができています。
BIツール(Amazon Quick Sight)で作成したレポート画面
集計作業が楽になると、少しステップアップして「分析したい」などのニーズが出てくるようになってきたところです。
ーーまずは集計作業を楽にすることで、次のステップに進める環境を整えているのですね。実際にどのような分析を行っていますか?
(北折様)視聴率の分析や、収益との関係性を分析したりしています。視聴率や配信結果をかけ合わせて、コンテンツの内容を検討したりしています。
これまでも現場ではそのような分析は実施していたのですが、有名な出演者が出ることで数字がはねたりなどの影響が大きかったので、今後はそれ以外の指標やKPIとなる軸のようなものを見つけていくことが課題です。
ーー今後のデータ領域に関するビジョンを教えて下さい。
(山本様)現場が自分たちで必要なダッシュボードを作れるようになることがゴールです。その前段階として、まずは見てもらえるダッシュボードを作成することを目的にしていました。
現場で必要とされている内容は、ICT推進チームではわからないこともあります。より現場で活用できるものとするため、それぞれの部署に担当を設定し、社内横断プロジェクトとして実施しました。
相手の立場にあわせた「データの利活用で得られるメリット」を提示しコミットする
ーーコンテンツ配信以外の部分でもデータの可視化は実施する予定でしょうか?
(北折様)全社的に実施する予定です。
例えば経理部門にて、各部門の予算消費予定などを可視化し、単純に可視化するだけではなくアラートを出すなどアクションを促せる施策まで実施できればと思っています。
営業部門でもすでに取得しているデータはあるので、それらをダッシュボード化したいと思っています。
その他人事情報など、すでに製造業を始め多くの業界が実施されていることではあると思いますが、そのような内容を実施できればと思っています。
ーー営業やマーケティングはデータを持っていることが多く、データ可視化を進めやすいですが、バックオフィスや間接部門は進めにくい企業が多い印象です。縦割りでデータが取りづらい企業も多い中、中京テレビ様は、広いスコープで実施していますが、そのポイントなどは何がございますか?
(北折様)当社は縦割りでデータが取りづらいなどはないので比較的進めやすい状況です。また、社風的に新しい試みに前向きな人が多いので進めやすいのではないかと思います。
(永田)個別最適化していくと、その後全社的にデータの掛け合わせに苦労することが多いです。最初から全社で活用することを前提にデータ分析基盤をつくることは、その後、データのクリーニングなどのコストも少なく対応できるので、理想的ですね。
ーーデータの取り扱い権限などは、社内でどうお考えになられていますか?
(北折様)各部門が持っているデータをオープンにすることに抵抗はないと感じています。
ーーデータに対する知見がある方が多いように感じますが、そのために教育など実施しておりますか?
(北折様)現在は個人努力に頼っているところがあり、どのように学んでいくべきなのか迷うことが多いです。
最終的なゴールである、現場部門が自分たちで必要なダッシュボードが作れるところを目指して、今後は、教育やトレーニング、レクチャー、ワークショップなど、会社として実施していきたいです。
ーーデータ分析基盤を構築する際には、ROIやコスト感、いつペイするのかなど定量的な結果を求められている企業が多い中、中京テレビ様では、成果はどのように測定されていますか?
(北折様)定量的な目標より、「データを元に話せるようになる」という定性的な目標を重視しています。 「データを使って、上司に説明できるようになるのはいつくらいなのか」というのは意識しています。
また、評価制度にも、データに関する内容が含まれています。
ーーデータ分析の推進もスムーズに進んでいる印象ですが、チームメンバーであったり、技術的なことであったり、成功のコツなどはございますか?
(山本様)入口のハードルを下げることを意識しています。データ活用の最終的なゴールは、データを使って意思決定することではありますが、最初からそこを目指すのは難しいです。
まずは、「普段の作業が楽になる」というところから、データに慣れてもらうことから始めました。
(北折様)それに加えて、フルレンジで説明し、コミットしていくことです。
上層部から、中間層、現場それぞれの立場で求めている内容を説明していきます。
例えば、データドリブン、DXの推進に課題があるのであればそれを解消するということを伝え、現場の作業に課題があるのであればそれを解消することを伝えています。
(データビズラボ)それぞれの立場に合わせてデータ利活用のメリットを提示しコミットしていく姿勢は、他の企業様のデータ利活用推進にも参考になると思います。お話いただき、ありがとうございました。
おわりに
中京テレビ様のデータ基盤構築の取り組みは、「自分たちで必要なダッシュボードを現場で作れるようになり、データドリブンを実現させる」をゴールとしながらも、まずは「データ集計を自動化させ、業務効率化を叶える」ことからスモールステップで確実に推進していることが、成功のポイントだといえるのではないでしょうか。
一歩ずつ確実に進めながらも、部分最適化するのではなく、全社的にデータを活用していく前提で進めているため、今後さらに強固で発展的なデータ分析基盤の構築から利活用が推進できると強く感じました。
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