株式会社NTTドコモ様|データ民主化支援-”アンバサダー(象徴的な人材)”を作ることが鍵-

コンシューマ通信、法人、スマートライフ等幅広い事業など幅広い事業を展開するNTTドコモ様では、DX推進やデータを活用できる人材の育成に積極的に取り組まれています。 

当社はNTTドコモ様が展開する育成プログラムの一環であるミートアップイベントにて講演・ワークショップ支援をさせていただきました。

今回は、NTTドコモ様が現在力を入れて取り組まれているデータ活用人材の育成について、株式会社NTTドコモ東北支社 企画総務部 DX推進担当部長 木村雄基様にデータビズラボ代表永田、吉田の2名よりインタビューさせていただきました。

ヒト・モノ・コトの3つのアプローチでDXを推進

【データビズラボ】具体的に、どのような形でDXを推進をされているのですか。 

地域におけるDX周りの推進役を担うようになって一年半ほどが経ちましたが、現在は「ヒト」「モノ」「コト」の3つにカテゴライズしてDXを進めています。DXと一言でいっても、やるべきことは多種多様です。そのため、体系的に整理することで、DXを推進する側と巻き込まれる組織双方にとって、取り組むべきことがより明確になるのではないかと考えたんです。 

「ヒト」に関しては人材育成全般ですが、スキル面とマインドの面両面を高めるために、全社的に提供されている育成プログラムを現場向けに上手くマッチングさせたり、現場のニーズに合わせて支社独自のコンテンツを提供したりと、工夫しながら取り組んでいます。

私はかつて本社のCoE組織で、人材育成プログラムなどの立ち上げを行っていました。当時、自分が企画して一部立ち上げを行ったプログラムが運用フェーズに入り、今はプログラムが現場に浸透するのか見渡せるポジションにいます。立ち上げた企画が本当に現場に合うのか様子を見ながら、各々のレベルに合わせて適正な研修をマッチングさせることがとても重要だと考えています。 

「モノ」に関しては、ドコモグループやNTTグループ全体で多種多様な数多くのツールを、さまざまな条件下の中で展開している中、これらのツールを効果的に活用できるように、我々が仲介してあげることが必要だと考えています。というのも、本社としてツールのマニュアルや利用条件は明確に提示されているものの、実際に利用するための判断や対応が各組織に任されてしまうと、現場の担当者が「自分がこのツールを使ってもいいのかな」「自分の仕事に合うのかな」など、その都度悩んでしまったり、事務手続きの煩わしさから試すのを躊躇してしまうことが多いのも実情です。

そこで、支社組織にいる私たちにできることはないか考え、仕事とツールが上手くマッチングするようにアドバイスを行っています。ツールの使い方についてもレクチャーをしながら、現場に寄り添ってDXの推進を進めています。

「コト」に関しては、社内外のトレンドに触れる機会や興味を持ち続けてもらえるような機会創出の場づくりを目指して、イベント等を行っています。今回データビズラボさんに支援していただいた、ミートアップイベントもその一環です。社内だけでなく社会で活躍されている方もお招きしながら、講演やワークショップを定期的に開催しています。株式会社NTTドコモ東北支社企画総務部DX推進担当部長・木村雄基

データ文化醸成を成功させるコツは「頼りになる”象徴的な人材”を育てること」

【データビズラボ】木村さんが現在取り組まれている人材育成や組織のデータ文化醸成、民主化などのテーマは多くの企業が課題としているところだと思うのですが、何か成功の秘訣はあるのですか。 

まずは社内で”象徴的な人材”を育成しようとすることが重要だと考えています。例えば研修などの外部講師を招くのは一番手軽な方法で、もちろんそこから始めてもいいと思います。リソースが足りない時はそうせざるを得ないときもあります。しかし、我々は最初から外部に頼るのではなく、まずは社内でアンバサダーと呼ばれる人材を育成しようと考え、現場に近い人から育成を始めていきました。 

具体的な取り組みとしては、数年前から取り組んでいるBIの中核人材育成です。各組織から選出もしくは自主的にエントリーされた方々に対して、BIツールの基礎や現在の環境を最大限に活用するヒントを直接伝授するというアプローチを取りました。事前課題を含むすべての育成カリキュラムを修了したメンバーを、Ambassador(アンバサダー)として認定。アンバサダーが少しずつ増えて交流が生まれると、お互いに刺激を受けながらスキルを磨いたり、自発的に新たなことを探求し始めたりする良い循環も生まれました。 

コミュニティとして拡がりとともにBI利活用が当たり前になっていく一連のプロセスを経験できたことは、私にとってとても刺激的で嬉しい体験でしたし、象徴的に行動してくれる中核人材を育成したあとは、彼らを信じて任せることも大事なのではないかと思います。

CoEの稼働逼迫解消のアプローチ

【データビズラボ】内部で象徴的な人材を育てることから始めようと判断されたのは、何か理由があったのですか。

NTTドコモにすでにスキルの高い人材が揃っていたことが大きな理由です。私がBIツールやデータに興味を持ち始めた頃に、すでにデータやツールを使い倒している方がいました。 

しかし、スキルの高い人材は本社組織に在籍しているケースが多く、各地域の組織からすると身近に頼れる存在がいない状態でした。さらに、本社ですべての地域組織の対応を行っていたため、稼働が追いつかないという課題もありました。 

こうした状況を踏まえて本社だけでなく、地域の組織にも頼れる人材を1〜2名おいた方がいいのではないかと考えたんです。そうすることで、より迅速に課題が解決できることもあると思いますし、中央のCoE組織の負担も減らせると考えて内製化を進めていこうと思いました。

データビズラボ代表・永田

楽しみながら世の中の動きやデータに目を向けてもらうため、外部の力も借りながら外部講師の講演・ワークショップ等も実施 

【データビズラボ】内製化に重点をおいて育成を進めてきたなかで、外部講師を招いた講演なども積極的に行われているのはなぜですか。 

私は本社のCoE組織で4〜5年間育成プロジェクトの立ち上げや運営に携わり、プロジェクトが軌道に乗って更なる浸透を図るという段階で支社へ異動しました。そして、支社で感じたのは、多くの人が目の前の仕事に実直で真面目ということでした。ドコモやNTTグループは規模や事業ジャンルが幅広く、地域の現場組織では社内トレンドに触れる機会すら乏しく、世の中へも目を向けて欲しいと感じました。

外に目を向けて世の中を知ることの重要性を認識し、外部からのサポートも取り入れるようにしています。今回、データビズラボさんにお願いしたのもそういった背景があります。

全員にデータや社会のトレンドを、自分ごと化してほしいんです。そのなかで、一貫して言っている「めんどくさいものでなく楽しくワクワクして取り組める形」を考えています。

▼講演・ワークショップの様子

意見をもらえる機会が増え、関心の高まりを実感 

【データビズラボ】データミートアップ等のイベントを実施する中で、社員の変化を感じることはありますか?

「楽しみにしています」という声を頂くこともありますし、今後へ向けた要望や意見をたくさんいただけるようになったのは非常に良い傾向だと思います。

例えば、キャリア観やマインド面に焦点を当てたテーマが続いた時に、「もう少し、デジタルリテラシーが高まる話を聞きたい」いう意見をいただいたことがあります。これは決して否定的な意見とは捉えておらず、むしろ意欲が高まっている証拠と捉え、フィードバックを次回以降のイベントに活かしたいと思っています。

また、NTTグループ内では「グループシナジー」というキーワードがよく使われていますが、日常業務の中では、NTTグループ各社の社員間での交流チャンスがそれほど多くないという課題もありました。そのため、前回のミートアップイベントからの新たな取り組みとして、地域(北海道・東北)に在住する地場のNTTグループ社員間の交流のきっかけになるよう、複数社にお声がけし、会場での聴講参加やオンライン参加を可能とする形態での開催に至りました。イベントを通して、グループ間のシナジーの広がりに貢献できるのではないかと期待しています。

人事制度が変わり変化を求められるなかで、講演・ワークショップに勇気をもらった社員もいるはず

【データビズラボ】今回の当社が提供する講演・ワークショップではデータ領域のキャリアに関するお話をさせていただきましたが、これを経験した社員の皆様がどのように変化することを期待されていますか? 

ここ1〜2年でNTTグループの人事制度は大きく変わり、年功序列から専門性を重視した制度になりました。次のグレードに昇格するためには、一般的な資格においてどの程度のレベルが必要になるのかといった明確な昇格基準も示しており、みんなが世の中に通用するレベルを意識し始めていると思います。とはいえ、急に変われるものではありません。 

現在は、リスキリングをかけないと理想のキャリア像を掴めないという方もいれば、具体的に勉強を始める方もいるなど、いろんな方が社内に混ざっている状況です。

そのなかで、永田さんの「果敢に外に目を向けよう」という話は非常に刺激的だったと思いますし、「やる気が出た」、「豊富な実践体験に基づく具体的な話が聞けて満足」、という声を多くもらいました。

良い循環を絶やさないために「上手く受け継ぐこと」を意識

 【データビズラボ】お話を聞いていると、中長期的な視点で育成に取り組まれている印象を受けましたが、いかがですか?

必ずしも最初から中長期的な視点でしっかり練られていたとは言えないのが正直なところで、試行錯誤しながら進めてきた結果だと思います。その中で私が意識しているのは、「いかに上手く受け継ぐか」ということです。

私が誰かに影響を与えたとしても、その方が次に受け継いでくれないと続かないわけじゃないですか。ですから、上手く受け継げるような場や情報、環境を作ることを大切にしています。 

今影響力を持つ人がずっと頑張り続けなくても、良い循環が生まれ続けるような仕組みにしていきたいと考えています。

NTTドコモ独自の育成プログラム「docomo DATA X Camp(ドコモデータクロスキャンプ)」「docomo DATA X Camp Select(ドコモデータクロスキャンプセレクト)」

【データビズラボ】社内での育成プログラムの作り方や、内容を詳しく教えてください。 

「docomo DATA X camp」というカリキュラムを作り、実施しています。これは一人称でのデータ活用を目指す本格的なプログラムで、受講期間は最大8ヶ月です。座学や分析ワークショップ、自組織実践プログラムで構成しており、実践に必要となる知識習得、実事業でのデータ活用スキルの獲得、自組織での即実践を8ヶ月で目指します。データ収集に必要な基礎的なSQLや収集したデータを可視化するBI開発、機械学習の要素や任意でPythonの基礎などを一通り学んでいきます。

概要サマリ

  • 座学(2ヶ月):分析ワークショップや実業務で必要となる知識を体系的に習得
  • 分析ワークショップ(3ヶ月):実事業でのデータ活用の実践スキル獲得(現状理解→課題特定→仮説検証→施策立案→実行評価)
  • 自組織実践プログラム(3ヶ月):自組織にて課題形成から実行までを即実践(自組織課題形成→自組織実行→アウトプット)

細かなブラッシュアップを繰り返しながらプログラム運営を継続し、これまで数百名規模で修了生を輩出してきました。しかし、数か月に及ぶ期間を要すること、また網羅的かつやや高度な領域までのスキル習得を目指すという特性から、中には業務ニーズに沿っていない、オーバースペックになっているという方もいらっしゃいます。そこで、新たにできたのが、「クロスキャンプセレクト」です。学習領域を絞った、複数の講座を用意しています。

それから、支社独自の施策として、DX全般のリテラシーを高めるための研修も、全社員に対して用意しています。実は、こちらはデータビズラボ様が発信されているwebコンテンツも参考資料として入れさせていただきながら、プログラムを作成しました(笑)。

研修は全員必須で、2か月間実施しています。スコアもだして現在の自分のレベルを把握できるようにするなど、なるべくインタラクティブな形で進めていけるように工夫しています。 

“やらされるもの”ではなく社員が楽しんで取り組めるもの”にしたい 

【データビズラボ】これほど熱心に研修や民主化、データの推進活動をされている企業さんは、なかなかないと思います。トップの方が育成が重要だと認識されているからこそ、実現できることなのでしょうか。

DX推進やデータ活用に関してトップの強いメッセージがあるのは大きいです。そのなかで、トップの方から一定の信頼をいただいて業務をまかせていただき、さまざまな研修を実施できています。 

皆さん、NTTグループにどんなイメージを持たれているかわかりませんが、おそらくちょっとお堅いイメージではないでしょうか?

【永田】そうかもしれないですね。

最近はそんなことなくて、会社や部署によってはいろんな変化があるんですが、そうは言ってもちょっと事務的だったり、決められたことを淡々とルールに基づいて実直に進める風潮だったり、そんな職場の雰囲気はまだまだある感じがします。

良い面でもあるのですが、一方で少し面白みにかける面もあり、「社員は会社を楽しいものと感じているのだろうか」と少し疑問に感じていました。

特にDXは変化していくことが前提で、ツールや環境もどんどん変わっていきます。そのなかで、どうすればみんなが楽しくワクワクした気持ちでDXに取り組めるのか、考えています。 

例えば、社内イベントや会議一つをとっても「参加しろと言われたから仕方なく来ました」というようなものではなく、何か違った雰囲気が味わえるようなものにしたいと考えています。会議が始まるまでBGMを流しておく、スライドのデザインを変更するなど、何か一つでも良いので変化を加えて従来とは異なる雰囲気を感じてもらえるようにしていきたいと考えています。

データと関わりの浅い部署からデータの世界へ 

【データビズラボ】そもそも木村様は、どのような経緯でデータ関連の業務に携わるようになったのですか。 

私は元々ネットワーク技術系の社員として入社し、ネットワーク設備の保全や建設の工程を管理する建設ライン、携帯電話のエリアを広げるためのエリア展開計画の作成など、ネットワーク系で経験できる業務を幅広く経験しました。その後、次のステップとして支社域の経営企画ラインに異動になり、dポイントの加盟店拡大業務に関わるプロジェクトに携わりました。データを見ながら企業の事業運営状況等を確かめて深堀りしながら戦略づくりをする、、、そんな当時の経験がデータに興味を持つ一つのきっかけだったのかもしれません。

次に異動になったのは、本社のデジタルマーケティング推進組織でした。ここではドコモの会員獲得拡大状況やポイント流通やアクティブ状況などに関して、目標のKPIを達成できているのかモニタリングしながらマネジメントを行う部署に所属していました。モニタリングの裏側の環境整備やダッシュボードの作成、データ活用のためにどのようなツールを使うのか設計段階から携わることもあり、自ずとデータに触れる機会が増えていったんです。

そこから、社外のコミュニティへの参加や情報を積極的に取りに行こうという思いが、芽生えていきました。そして、2020年に社内で新しい組織が立ち上がり、マネージャーとして人材育成をメインで担当することになりました。

社員間の架け橋にもなった「docomo DATA X Camp」 

【データビズラボ】データを活用した業務を担当するにあたって、当初思い描いていたビジョンはありますか?

ドコモでは先進的な技術の研究や開発はもちろん、データ分析の観点でもKaggleで世界を相手に勝負しているような、先端的な技術を有する人材もいるのですが、例えばこうした有スキル者と、ドコモショップなど営業の現場でビジネスを担当するようなメンバーが融合すれば、先進技術を活かしてビジネスをさらに発展させることができるのではないかと考えていました。育成プログラムを通じて既存の事業課題に挑み、ビジネスへの貢献を目指すコンセプトで生まれたのが、現在の育成プログラムです。

例えば、データクロスキャンプに関しては、主に研究開発部門に所属するデータ分析や機械学習を習熟したエキスパートにチューターとして入ってもらい、現場社員の育成を支援しました。

この育成プログラムを通じて社員間の交流も生まれましたし、研究開発系の社員からは「現場のビジネスに貢献できている実感が得られた」とのフィードバックもいただきました。小さな成功体験というか、貢献実感の機会を生むことができてとてもうれしい気持ちになりました。

データビズラボ・吉田(インタビュアー)

データを簡単に使いこなせる人材の裾野拡大を目指す

【データビズラボ】最後に、今後のビジョンについて教えてください。

本社のCoEと現場を、上手くつないでいきたいと考えています。本社のCoEでは、誰もが便利で簡単にアクセスできるものを導入しようという思想で、環境整備に取り組んでいます。 

しかし、デジタルリテラシーの差もありますし、みんながアクセスしやすいものを形にするのは簡単ではありません。上級のスキルを持つ方が活躍できる環境づくりも大事ですが、一方でエントリー層でも当たり前にドコモのデータを活用してビジネスができるような環境整備やツールの導入、スキルアップも必要です。 

今後はデータを簡単に使いこなせる人材の裾野を広げることに注力したいと考えており、その実現のためには、育成プログラムだけに頼らず、気軽で楽しく参加できるコミュニティアプローチを大切にしながら、“小さな成功体験”や“データ活用による貢献実感”を積み重ねていけるような仕掛けや場づくりにチャレンジし続けたいと思います。

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