アパレル企業がデータ分析促進でやるべき4つのこと|よくある課題と分析ステップも解説

アパレル企業を取り巻く環境はここ20年で大きく変化しました。外資系ファストファッションブランドの参入やECサイト運営、技術トレンドの変化などによって一層の競争力が求められています。

コロナ禍においては日頃からデータ活用に積極的なアパレル企業とそうでないアパレル企業とで、明暗が大きく分かれました。今や、「アパレル企業はデータ分析をやって当たり前」と言われる時代です。

そこで本記事では、アパレル企業がデータ分析促進のためにやるべき4つのことと、よくある課題について解説します。アパレル企業のデータ分析に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

アパレル企業が抱えている7つのデータ分析課題

それではまず、多くのアパレル企業が抱えている7つのデータ分析課題を整理していきます。

販売・顧客データが店舗やエリアごとに分断されている

アパレル企業のデータ活用で中心となるのは、やはり販売データと顧客データの2つです。これらのデータを収集・統合し、さまざまな角度から分析をすれば素晴らしいインサイト(洞察)を発見できる可能性が大いにあります。

一方で、販売データと顧客データのほとんどが店舗やエリアごとにローカル管理されており、これを収集・統合する仕組みがありません。データ分析を促進しようにも、データが分断されているため十分なデータを集められない課題は、多くのアパレル企業が抱えていることでしょう。

サプライチェーン全体でデータを共有する仕組みがない

データの分断はサプライチェーン全体にも及んでいます。アパレル企業のサプライチェーンは複雑化しているケースが多く、サプライチェーンの下流から上流へと段階的にデータを共有する仕組みを持っていません。

サプライチェーン全体でデータが分断されていると需要予測は難しく、在庫の適正化がかなわず商品ロスを生む大きな原因となっています。

トレンド予測ができず売れ筋商品の欠品が多い(≒機会損失が多い)

需要予測と同じく、トレンド予測を正確に行えていないアパレル企業も多いでしょう。多くのアパレル企業は過去の慣例と経営層の勘、さらに業界全体の流れに依存しています。

データを根拠としてトレンド予測が行えず、売れ筋商品の欠品が続くことで多額の機会損失を生んでしまっています。

勘に頼った収益性判断やレイアウト改善で売上を最大化できていない

顧客の購買プロセスがリアル・デジタルを往復するようになった現代ビジネスにおいて、頼って店舗の収益性を判断するのは危険です。

たとえば売上高の低い店舗でも、ブランディング戦略に優れグループ全体の利益に貢献しているケースがあります。こうした店舗は収益性が高いと呼べますが、その事実に気づかず切り捨ててしまうとグループ全体の利益を下げる原因となります。

同じく勘に頼ったレイアウト改善は、顧客ニーズを的確に捉えることができません。「なぜ売上が上がったのか(下がったのか)」の要因分析も行えず、 常に場当たり的な店舗運営を強いられてしまいます。

リアル・デジタルで一貫性のあるサービスを提供できていない

ECサイトを運営するのが当たり前の時代になり、オンラインの顧客接点を持たないアパレル企業はほとんどありません。公式のSNSアカウントを利用し、情報発信しているアパレル企業も多いです。

しかし、リアル・デジタルで一貫性のあるサービスを提供できているアパレル企業は限られています。「リアルからデジタル」「デジタルからリアル」といった顧客の流れを正しく把握し、顧客の購買プロセス上に適切な導線を設けて、一貫性のあるサービスを提供できるかどうかが競争力を左右します。

ブランドごとの個別最適化が進みグループとしてデータ活用が進まない

複数のブランドを運営しているアパレル企業では、ブランドごとに個別最適化が進んでしまったという課題もあります。ブランドごとに固有のIT環境・文化が生まれており、グループとしてのデータ活用が一向に進みません。

グループ全体のデータを収集・統合し、分析を行えばさまざまなインサイトを発見するきっかけになります。そのためブランドごとの個別最適化は、アパレル企業にとってDX(デジタル・トランスフォーメーション)やイノベーション創出を妨げる大きな原因となっています。

マーケティング施策が売上・利益に与える影響を可視化できていない

従来のアパレル企業のマーケティング施策といえば、雑誌掲載や広告出稿が一般的でした。現代ではデジタル広告、SNS運用、ECサイトなど多種多様化しており、マーケティング施策ごとに売上・利益に与える影響を可視化することが難しくなっています。

複数のマーケティング施策を展開しているアパレル企業では、施策同士が複雑に作用し合っています。最終的なコンバージョン(商品購入)といった施策だけを評価してしまうと、顧客の購買プロセスの中で接点を持った施策を正しく評価できません。

その結果、コンバージョンが高いマーケティング施策に集中投資をしても、ROI(投資対効果)が向上しないという問題が起きてしまうのです。

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アパレル企業のデータ分析促進でやるべき4つのこと

前述したアパレル企業が抱えているデータ分析課題を解決するために、段階的にやるべきことが4つあります。

店舗管理のデジタル化とITツールの統合

店舗・ブランドごとに販売データや顧客データが分断されている環境では、データ分析が一向に進みません。まずは店舗管理のデジタル化を行い、さらにITツールの統合を行いましょう。

具体的には、異なる店舗・ブランドでもフィットする販売管理システムや顧客管理システムを選定・導入します。店舗・ブランドごとに異なるITツールを導入しているアパレル企業では、ETL(データの抽出・変換・保管)ツールで店舗・ブランドごとのITツールを変えないまま、データ分析基盤を整えるという選択肢もあります。

クラウド移行と統合データベースの構築

オンプレミス(物理環境)でシステムを構築しているアパレル企業は、クラウドへの移行と統合データベースの構築を検討してみてください。クラウドには次のようなメリットがあります。

  • 柔軟性・拡張性が大幅にアップする
  • 保守・運用にかかる負荷を軽減できる
  • セキュリティ対策・BCPになる
  • 安全なリモートアクセスを実現できる

情報システム部門の負担を大きく軽減するだけでなく、デジタル戦略を推進する環境が手に入るのはクラウドならではの特徴です。移行と同時に統合データベースを構築すれば、店舗・ブランドを横断したデータ分析環境を作ることができます。

BIツールによるインサイトの素早い発見

データ分析基盤を整えられたら、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなどのデータ分析ツールを導入しインサイトの素早い発見を促しましょう。BIツールを使って部門ごとに特化したダッシュボード(自動レポート画面)を構築すれば、経営層だけでなく店舗レベルのデータ活用が進みます。

ただしBIツールの導入・構築は難度の高い作業です。データ分析支援に長けたパートナーを探し、専門家のサポートを受けながら推進することをおすすめします。

<データビズラボのBI支援事例>

データ分析人材の育成または獲得

アパレル企業のデータ分析やDXをさらに加速させるためにも、データ分析人材の育成または獲得を目指しましょう。

データ人材と聞くと「データサイエンティスト」をイメージする方が多いでしょう。実際はデータアナリストやビジネストランスレーター、CDO(最高データ責任者)などさまざまなデータ分析職が存在します。AI技術者も広義にはデータ人材です。

データ分析やDXを促進するにはまずデジタル戦略を中長期的に策定し、それに対してデータ人材を適材適所で配置するのが重要です。こうした「データ人材戦略」においても、データ分析支援に長けた専門家のサポートを受けることをおすすめします。

<データビズラボのデータ人材支援事例>

アパレル企業のデータ分析は「やれることから」

アパレル企業のデータ分析促進でやるべき4つのことをご覧になり、「具体的にどこから手をつければ良いのか」と新たな疑問が生まれた方も多いと思います。

しかし難しく考える必要はありません。アパレル企業のデータ分析は「やれることから始める」がとても大切です。具体的にご説明します。

簡単なデータ分析機能から始めてみる

まず、データ分析を行うにはその素材となるデータが必要です。そのため、ITツールをまだ導入していないアパレル企業では、生産性向上につながるようなITツールを選定・導入しましょう。

クラウドPOSレジや顧客管理ソフトなどさまざまなITツールが存在するので、現状の経営課題から最適なITツールを選んでみてください。このとき、簡易的でもデータ分析機能を備えたITツールを選びましょう。売上データなどをエクセルで管理してきた場合は、エクセルデータをインポートできるITツールもおすすめです。

ITツールを導入できたら日々利用し、販売・顧客・在庫といったデータを蓄積していきます。導入初期は使い方に迷ったり苦労したりすることも多いですが、「分析のための素材(データ)集め」とゲーム感覚で考えると、わくわくした気持ちでITツールを利用できるのでぜひ意識してみてください。

ある程度データが蓄積されたら、いよいよITツールに備わっているデータ分析機能を使ってみましょう。多くのデータ分析機能は蓄積されたデータを自動で分析し、レポーティングしてくれるので特別なスキルは不要です。

出力されたレポートを見て、「これは新しい発見だ」と思うこともあれば「こんなの当たり前のことだ」と思うこともあります。後者の場合はがっかりする気持ちもあるでしょう。しかし実際は、どちらもデータ分析において重要なインサイト(洞察)です。

データ分析を繰り返す中で「当たり前のこと」の中にも微妙な違いがあることに気付き、そこから新しい発見が生まれるケースも多々あります。データ分析の現場では、新しいインサイトを得るよりも当たり前のインサイを得る方が重要なケースも往々にしてあるのです。

まずはデータ分析のスタートラインに立ちましょう

ITツールに備わっている分析機能だとしても、利用すればデータ分析のスタートラインに立てます。その後はどういったデータ活用やDXを推進したいかといった構想を膨らませ、少しずつ実現していくことが大切です。

データ活用やDXの構想実現にあたっては、迷わず専門家を頼ってみてください。大企業であってもデータ戦略が社内で完結するケースは極めて稀であり、やはり専門家のデータ分析支援が欠かせません。

我々データビズラボのようなデータ分析支援の専門家は「クライアント企業のデータ戦略」の立案・実行を、コンサルティングを通じて全力でサポートするために存在しています。

まとめ

本記事ではアパレル企業がデータ分析促進のためにやるべき4つのことや、よくある課題について解説しました。

アパレル商品の消費動向は年代・性別によって大きく異なります。たとえば、20代は店舗に展示されている商品(実物)を必ず確認する消費者が多いのに対し、40代では「商品(実物)を確認しなくても不安はない」という消費者の割合が多い傾向です。

出典:アパレル業界調査<前編>|大日本印刷株式会社

こうした消費動向の違いに加えて、リアル・デジタルと異なる領域に及んでいる購買プロセスがアパレル企業のデータ分析難度を高めています。一方で、中長期的なデジタル戦略の立案とそれに即したデータ分析基盤の構築、データ人材の育成・獲得を実現できれば、ビジネスに非常に大きなインパクトを生み出せるのがアパレル企業の利点です。

この機会に簡易的な分析機能を使ってデータ分析のスタートラインに立ったり、その後の構想を広げてみたりしてみましょう。本記事が多くのアパレル企業にとって、「データ分析のある未来」を考えるきっかけになれば幸いです。

データ分析のサポートを必要とされる場合は、ぜひデータ分析支援の専門家であるデータビズラボにお問い合わせください。

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