SQLは、データベースを操作するためのプログラミング言語であり、データ分析、ウェブ開発、データベース管理など、幅広い分野で使用されています。しかし、SQLという言葉を聞いたことがあるだけで、その具体的な機能や用途について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、「SQLとは」をテーマに、SQLの基本的な概念から、種類、使用方法まで、幅広く解説します。SQLがどのようにデータを扱い、それがどのように私たちの生活や仕事に影響を与えているかを理解していただければと思います。
1.SQLとは?
“SQL”とは?
SQLは、Structured Query Languageの略で、リレーショナルデータベースを操作するための言語です。SQLは、その高い柔軟性とパワフルな機能により、さまざまなデータベース管理システム(DBMS)で広く採用されています。
“データベース”とは?
データベースは「関連する情報を効率的に管理し、照会や操作を行うためのデータの集まり」です。
データベースは大量のデータを格納、検索、更新、削除などの操作を行うことができます。また、データを整理して管理することで、データの重複を避け、データの一貫性と整合性を保つことが可能となります。
データベースを管理するためのソフトウェアをデータベース管理システム(DBMS)と呼びます。DBMSはデータベースの作成、クエリ(問い合わせ)、更新、管理などを行うためのツールを提供します。DBMSの中にはリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)と呼ばれるものもあり、これはデータを関連性のあるテーブルの集合として組織化する方式を採用しています。SQL(Structured Query Language)は、このようなリレーショナルデータベースを操作するための標準的な言語です。
※リレーショナルデータベース
リレーショナルデータベース(Relational Database)は、情報を表(テーブル)の形で整理し、これらのテーブル間の関係(リレーション)を通じてデータを管理するタイプのデータベースシステムです。この概念は1970年代初頭にエドガー・F・コッドによって提唱されました。
各テーブルは行(レコード)と列(フィールド)で構成されます。行は個々のデータ項目(たとえば、顧客や製品)を表し、列はそのデータ項目の属性(たとえば、名前や価格)を表します。
リレーショナルデータベースはその効率性と柔軟性から、金融、ヘルスケア、小売、教育、政府機関など多くの業界で広く使用されています。が含まれます。
※主なリレーショナルデータベース管理システム
リレーショナルデータベース管理システムを使用する場合、オープンソースあるいは商用の製品を使用するケースが多いです。近年はAWSなどクラウド上でもこれらのリソースを使用できるようになってきています。
- MySQL
- オープンソースのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)であり、非常に人気があります。ウェブアプリケーションやオンラインシステムなどの様々な用途で使用されています。
- SQLとmySQLは混同されがちですが、両者の関係を端的に表すなら「SQLは言語で、MySQLはその言語を使用するデータベースシステム」です。
- PosgreSQL
- オープンソースのRDBMSであり、高度なデータベース機能と拡張性を提供しています。データの整合性やセキュリティに重点を置いたシステムです。
- Microsoft SQL Server
- マイクロソフトが開発・提供している商用のRDBMSです。Windows環境で広く利用されており、企業のデータベースニーズをサポートしています。
- Oracle Database
- オラクルが開発・提供している商用のRDBMSで、非常に高いパフォーマンスと拡張性を持っています。大規模なエンタープライズシステムで利用されることが多いです。
- SQLite
- SQLiteはオープンソースの組み込み型データベースエンジンであり、非常に軽量かつパフォーマンスが高いです。モバイルアプリや組み込みシステムなどでよく使用されます。
“クエリ”とは?
“クエリ”という言葉は、データベースから情報を取得するための要求や命令を指します。一般的にはデータベースクエリ言語であるSQL(Structured Query Language)の文脈で使用されます。
SQLクエリは、特定の条件に基づいてデータを検索したり、新たなデータを追加したり、既存のデータを更新したり、データを削除したりするために使用されます。
例えば
というSQLクエリを実行することで、「Employees」テーブルから30歳以上のすべてのレコードを取得することができます。
一部のデータベースシステムでは、クエリはプログラムで自動的に生成されることもありますが、データベース管理者やデータ分析者が手動で書くことが多いです。クエリによって、単純なデータの検索から複数のテーブル間での複雑なジョイン操作まで、非常に幅広いデータベースの操作が可能です。
SQLの歴史
SQL(Structured Query Language)は、現在、データベース管理の主要な手段として広く認知されていますが、その起源は約50年前、情報技術(IT)の黎明期にさかのぼります。
- 1970年代
SQLの歴史は、1970年にIBMのエドガー・F・コッド博士が提唱したリレーショナルデータベースモデルに始まります。これは、データを整理し、操作する新たな方法を提供しました。この新モデルに基づき、IBMの研究者であるドナルド・D・チェンバリンとレイモンド・F・ボイスが、このリレーショナルモデルに基づく新たなクエリ言語、当初は「SEQUEL」と呼ばれていたものを開発しました。
- 1980年代
SEQUELはすぐにSQLと名前を変え、その人気が急速に広がりました。1986年と1987年には、アメリカ国家規格協会(ANSI)と国際標準化機構(ISO)がSQLを公式な標準として認定しました。
- 1990年代
1990年代は、マイクロソフトとオラクルがリリースしたMicrosoft SQL ServerとOracle Databaseといった商用RDBMSが市場を席巻した時期であり、この2つのシステムはいずれもSQLを中心に据えていました。また、この時期にはオープンソースのRDBMSであるMySQLやPostgreSQLも登場し、SQLの普及に大いに貢献しました。
- 2000年代から現在
2000年代に入ると、ビッグデータとインターネットの台頭により、従来のリレーショナルデータベースとSQLだけでは対応できない新たな課題が現れました。しかし、NoSQLデータベースやNewSQLデータベースが登場した一方で、SQLはその普遍性と強力なデータ操作能力を保持し続け、今日まで広く使われています。
2.SQLの3種類の言語
SQLには、大きく分けて3種類の言語があります。ここでいう言語とは、用途に応じて振り分けられたSQL構文のグループのことです。それぞれの言語を使い分けることで、データベースを柔軟に操作することができます。
データ操作言語(Data Manipulation Language, DML)
DMLはSQLの中でも最も基本的な部分であり、データの検索、挿入、更新、削除などのデータ操作を行うために使用されます。代表的なDMLコマンドには、SELECT(検索)、INSERT(挿入)、UPDATE(更新)、DELETE(削除)などがあります。
データ定義言語(Data Definition Language, DDL)
DDLはデータベースの構造を定義し、管理するために使用されます。テーブルの作成、削除、変更、制約の設定など、データベースオブジェクトの作成と変更に関連する操作を実行します。代表的なDDLコマンドには、CREATE(作成)、ALTER(変更)、DROP(削除)などがあります。
データ制御言語(Data Control Language, DCL)
DCLはデータベースのセキュリティとアクセス制御に関連する操作を行うために使用されます。ユーザーの作成、削除、権限の設定、トランザクションの管理など、データベースへのアクセスとセキュリティの制御に関連する操作を実行します。代表的なDCLコマンドには、GRANT(権限付与)、REVOKE(権限剥奪)などがあります。
3.SQLはどんな用途で使用される?
データベースは主に、
- アプリケーション・システム上のデータの管理
- データ分析
の2種類の用途で使用されます。この2つの用途において、SQLがどのような役割を担っているかを知ることで、SQLの価値が理解できると思います。
アプリケーション・システム上のデータの管理
SQLはアプリケーション・システム内のプログラム上で、データベースを操作する際に用いられます。例えば、私たちは日々利用しているアプリケーション上の入力フォームに名前や住所の情報を入力しています。これらの情報はデータベースに格納され、必要に応じてデータの検索・抽出・更新を行っています。これらの処理はSQLクエリを含むプログラムによって行われていることが多いです。ほとんどのアプリケーションは、ユーザーのデータを管理しています。アプリケーションの多くは収集したユーザーのデータを直接的にサービスに利用していますし、そうでないサービスも間接的にサービスの改善にデータを利用しています。これらのデータはSQLを介してデータベース上で管理されています。
データ分析
また、データ分析にもSQLは用いられます。データ分析は、DWH(データウェアハウス)上で一か所に集約・保管されているデータを利用して行われることが多いです。頻繁に使用されるDWHサービスとして、Google Cloud BigqueryやAmazon Redshiftなどがあげられますが、これらのDWHはSQLを用いて操作します。データ分析者はDWH上のデータの抽出や集計を行って、自らが意図する形にデータを加工した上でデータを取り出します。そして、各データをクロス集計表やチャートに落とし込み、傾向の把握や比較などを行います。近年ではGUIでデータプレパレーションを行うツールがリリースされていますが、SQLを用いてデータ加工・抽出を行う手法がビジネスデータ分析の主流です。
4.SQLをなぜ学ぶべきか
以下のような理由からSQLを学ぶことは重要視されており、求人市場においてもデータ分析・ソフトウェア開発・データベース管理など、多くの職種でSQLスキルの需要は高まっています。
データベース運用に必須のスキルである
SQL(Structured Query Language)はデータベース内でデータの検索や抽出、並び替え、削除などを行うなどの操作をするためのツールであるため、SQLはデータベース運用に必須のスキルです。
データベースを操作できなければ業務におけるデータ利活用ができず、データに基づいたビジネスの意思決定や戦略策定ができない状況に陥ります。そのため、SQLを学ぶことで、データベースの重要性を認識し、その操作の適切なスキルを持つことで、現代のデータドリブンなビジネス環境でデータ活用を行えるようになる必要があります。具体的にはデータベースの開発・設計・管理・運用、またデータ基盤の設計・構築・運用といった業務を遂行する際にSQLは必須です。そのためデータを扱う業務を行うのであればSQLの学習も必須となるということです。
参考:『データ分析とは?目的や重要性、メリット、手法までを徹底解説!』
学習を通して、データベースの基本概念を理解できる
また、SQLを学習することでデータベースの基本概念を理解するためにも役立ちます。例えば、データの整合性、エンティティ、リレーションシップ、主キー、外部キーなどの重要な概念を理解することができます。これらの概念を理解することで、データベースを含むシステム構成を定義しやすくなります。
5.SQLの学習リソース
重要度が高まっているSQLですが、SQLの学習には、以下のようなリソースと学習方法をおすすめします。
オンラインコース
オンラインプラットフォーム(Udemy、Coursera、edXなど)では、SQLの基礎から応用までをカバーしたコースが提供されています。有料のものもありますが、多くの場合、リーズナブルな価格で購入できます。実践的な演習やプロジェクトが組み込まれているコースを選ぶと、より実践的な学習ができます。
Udemyでは、以下のようなものもあります。
https://www.udemy.com/course/3sqlmysql/
https://www.udemy.com/course/sql_for_data_analytics/
書籍
SQL学習に当たって、おすすめの書籍を3冊紹介します。
- スッキリわかるSQL入門 第3版 ドリル256問付き! (スッキリわかる入門シリーズ)
SQLに触れたことがないという初学者の方は、真っ先に手に取るべき一冊です。この書籍にある256のドリルをやり切ることができれば、業務で使うSQL構文は一通りマスターしたと言えるでしょう。
- 達人に学ぶSQL徹底指南書 第2版 初級者で終わりたくないあなたへ
基本的なSQL構文はマスターし、よりSQL力を高めたいエンジニアの方に非常におすすめの一冊です。SQLクエリを書く上でのベストプラクティスが手厚く説明されており、”初級者で終わりたくないあなたへ”のキャッチコピーの通り、読者のSQL力を格段に引き上げてくれます。SQLクエリだけでなく、リレーショナルデータベースの概念の理解にも非常に役立つ一冊で、データベースの学習という観点でもおすすめの一冊です。
- ビッグデータ分析・活用のためのSQLレシピ
実務で頻繁にSQLを用いたデータ分析作業を行うデータサイエンティスト/アナリスト、マーケターにおすすめの1冊です。Web解析を中心に、データ分析の実践で使うSQLテクニックを詰め込んでおり、データベース上のデータを分析する際には手元に置いておきたい一冊となっています。
データベース管理システムの公式ドキュメント
より詳細な情報や参考資料を得るために、データベース管理システム(例:MySQL、PostgreSQL、Microsoft SQL Server)の公式ドキュメントを参照することも有用です。公式ドキュメントには、SQLの文法や機能、ベストプラクティスなどが記載されています。
プロジェクトや課題
学んだSQLの知識を実際のデータベースに適用するために、自身でプロジェクトや課題を作成してみましょう。
例えば、仮想のデータベースを作成してクエリを実行したり、実世界のデータを使用して分析を行ったりすることで、実践的な経験を積むことができます。重要なのは、理論だけでなく実践も重視することです。
SQLの文法やクエリの作成方法を学びながら、実際のデータベースに対してクエリを実行し、データの操作や分析を行ってみてください。実践を通じて、より深い理解とスキルを磨くことができます。
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