保険のデータ分析|ビッグデータで得られる可能性とデータ民主化の重要性について

保有しているデータの利活用を検討している保険会社は多いものの、具体的に活用しきれていないと感じている企業が多いのではないのでしょうか。ChatGPTやAIツールの活躍など、業界を問わずビッグデータを活用したサービスが続々と登場している現代において、サービスの品質・顧客満足度、さらには業績の向上のため、保険業界も自社が保有するデータの活用が不可欠となっています。

データを活用することで、保険業界は今後どのように変化を遂げていくのでしょうか。本記事では、保険業界がビッグデータで得られる可能性や、データ民主化の重要性について解説します。

保険会社が保有しているデータとは

保険会社が保有しているデータは多岐に渡ります。契約者の個人情報や保険金の支払い履歴などの情報に加えて、生命保険会社であれば健康診断や医療レセプト、介護レセプトなど健康・医療・介護に関するデータも保有しています。損害保険会社であれば、車両や不動産の情報、事故データなどが挙げられます。

こうした情報は保険会社の営業やコンサルタント、コンタクトセンターなどが顧客と接した際に得られます。これに加えて、現在はSNSやチャットボット、自社アプリなどデジタル上の接点からもデータを得られるようになっているため、保険会社は実に多種多様なデータを豊富に保有しているといえるでしょう。

保険業界×ビッグデータの可能性

保険業界で保有しているビッグデータは、商品開発からマーケティングまで、幅広い分野で活用できる可能性があります。現在、保険業界は過渡期にあり、激動の時代を生き抜くにはデータの利活用が必須です。顧客起点で新たな商品を開発したり、アプローチをしたりすることが求められています。ビッグデータを活用した新たな手法や保険業界での自社のあり方を検討してみるタイミングです。

保険会社がデータの利活用をするメリットには、以下のような5つのメリットがあります。

  • 審査時のリスク評価の精度向上
  • パーソナライズされた保険商品の提供
  • マーケティング施策の正しい評価と改善
  • 組み込み型保険商品の独自開発と提供
  • 代理店とのデータ共有による販売促進

それぞれの詳細を解説します。

審査時のリスク評価の精度向上

生命保険に加入する際、保険会社は被保険者のリスクを判定するために審査を行います。審査項目は大きく「健康状態」「職業」「道徳的観点」の3つに分けられ、各項目の基準を満たしている場合に審査が通り、保険への加入が認められます。

保有しているデータから過去のリスク発生の傾向を分析し、それを審査に用いることができれば、被保険者の怪我・事故による入院や手術の可能性や病気などで死亡する可能性など、リスク評価がより正確に行えるようになります。保険会社としてリスクを避けられる他、データ分析が自動で行えるようになれば、審査業務の効率化にも繋がります。

パーソナライズされた保険商品の提供

今後、世の中のさまざまなサービスは自動化・パーソナライズ化されると予想されています。保険業界も例外ではありません。保険業界で保有しているデータを活用すれば、パーソナライズされた保険商品の提供が可能となります。

例えば、保険業界のうち損害保険分野では「パーソナライズ動画」の活用が進んでいます。顧客が必要としている情報をデータ分析により絞り込み、ニーズの高い商品を提供する仕組みです。顧客の求めている保険商品を提示することで、顧客満足度の向上も期待できます。

マーケティング施策の正しい評価と改善

保険業界で保有するビッグデータを用いれば顧客のニーズを把握することができるので、それに応じたマーケティング施策を考えやすくなります。実施したマーケティング施策によって得られた成果もデータで詳細にわかるため、施策を改善し、より効果の出やすいマーケティングの打ち手を考えることも可能になるでしょう。

保険業界におけるマーケティングのうち、今後重要となってくるのはデジタルマーケティングの分野だと言われています。保険への加入を検討している消費者のうち特に若い世代はインターネット上で情報を収集する特徴があります。各保険会社の商品を比較した後、インターネット経由で申し込みをする行動が一般的になりつつある現在、従来のマーケティング方法を見直し、消費者起点でデジタルマーケティングを実施する重要性が高まりつつあります。

データを分析してデジタルマーケティングの対象を洗い出し、効果が出やすい有効な施策を実施しましょう。マーケティング施策実施後は再度データを分析し、施策改善に役立てることも可能です。

組み込み型保険商品の独自開発と提供

パートナー企業の商品やサービスに保険商品を組み込んで提供する「組み込み型保険(エンベデッド・インシュアランス)」。従来の販売手法であるプッシュ型とは異なり、シームレスな方法で保険商品を提供できる、近年保険業界で注目されている手法です。

こうした組み込み型保険商品を独自に開発する際に、保険業界のビッグデータを活用できます。例えば、組み込み型は損害保険の方が相性が良いと言われています。旅行時の傷害保険やキャンセル保険などが良い例です。

一方で、生命保険においては組み込み型保険の開発はあまり進んでいません。データ活用により商品を開発・提供すれば、これまでリーチできていない消費者との接点ができ、新たな収益の獲得にも繋がるでしょう。

代理店とのデータ共有による販売促進

保険会社と被保険者を繋ぐ役割を持っている保険代理店。今でこそトラブルが起きた際のサポートや保険見直し・受付などを行う印象が強いですが、保険商品を販売することが代理店の本来の役割です。保険会社にとって、代理店と密に連携ができているかどうかは、収益や業績にも関わる重要なポイントです。

保険会社が所有しているデータを整理・分析して、定期的に共有することができれば、代理店によるアップセル・クロスセルが期待できます。例えば、火災保険には加入しているけれど、地震保険には加入していない被保険者の情報を抽出し、加入を促すこともできます。効率的かつ適切なアプローチが可能となるでしょう。

保険業界のデータ分析を阻む「社内体制」の課題

保険業界が保有するデータの利活用は、競争優位性を確保する戦略の柱になり得ます。そのために解決しなければならない課題が、社内体制の見直しです。

保険会社は多くの場合、社内に複数の部門が存在しています。例えば、営業部門・金融部門・保険金部門・商品開発部門・DX部門などがあります。保有しているデータが複数部門にまたがって別々のシステムで管理されており、データの統一が難しいことが課題として挙げられます。

そうした社内体制であることに加えて、部門ごとにデータ管理のルールが異なることも課題です。情報共有を行う社内体制が整えられていなかったり、データ活用の文化が醸成されていないために、豊富なデータを利活用しきれていない企業がほとんどです。

保険業界に求められる「データの民主化」とは

保険業界で保有する膨大なデータを社内で活用する際にクリアしなければならない課題のひとつが「データの民主化」です。データの民主化とは、従業員や関係者が必要な情報にアクセスし、理解・活用できるようにすることです。

前述したように保険業界で扱われているデータは多岐にわたります。その全てに全従業員がアクセスし、活用することは非常に難易度が高く、すぐに実現するのは難しいでしょう。民主化を進めるには、まず売上の統計や契約情報など、社内に存在する様々なデータを一箇所に統合させ、社員が自由に閲覧したり、扱ったりできる分析環境を整えることが大切です。

その際に必要なのが、データ分析の専門家以外も気軽に使えるデータ分析ツールの導入です。特に、必要なデータを短時間で抽出し、簡単な分析ができるツールがあると、社内におけるデータの民主化が大幅に進みます。

そうしたツールを用いて、どのようなデータを閲覧できるのか、利用できるのかを従業員に啓蒙していくことも大切です。社内で扱える保険に関するデータの例を提示することで、従業員自ら必要な情報を探しに行ったり、ツール上での表示をリクエストしたりと、データの活用に対して主体的な動きも見られるようになります。

データビズラボの支援事例|三井住友海上火災保険様

データビズラボでは、保険業界のデータ利活用の支援も実施しています。

自動車保険・火災保険・損害保険など、多様な保険商品を取り扱う三井住友海上火災保険は、社内でのデータ利活用に関して積極的に取り組んでいる企業様です。

同社は、元々分析ツールは導入していたものの使いこなせるユーザーが社内にほとんどいないことに課題を感じていました。ツールを導入しただけではデータの利活用は推進されないことから、社内推進の活動を開始。既存のノウハウがないことから、業界についての理解や知見のあるデータビズラボにコンサルティングを依頼してくださり、共に社内推進プロジェクトに取り組むこととなりました。

具体的な支援内容は、データ分析基礎講座動画コンテンツの提供や週に1回のダッシュボードレビュースプリントと必要なデータの検証と評価、分析ソフトウェア「Tableau」の基礎研修、月に1回の社内ユーザー会です。ツールを使いこなせる人がいないという課題を解決するため、ツールの有効性を伝えると同時に、ツールを使える人材へと育成する取り組みも実施しています。

その結果、ツールに対するエンゲージメントの向上や安心してスキル習得に取り組める環境づくりなどに成功しています。従業員一人ひとりがデータを有効活用していくという課題はまだあるものの、データの利活用を行うにあたって第一歩となる取り組みになったことは間違いありません。

詳細:三井住友海上火災保険様|「データ活用文化醸成」に向けた継続的な社内推進と分析スキルアップへの取り組み

このように、データ活用文化を醸成していく取り組みは、弊社のようなデータ利活用の専門家と二人三脚で進めていただくと効率的に実施できます。自社のデータ利活用に関する課題が明確な場合は、カスタマイズした研修を実施させていただきます。

まとめ

少子高齢化が進んでいる日本において、保険業界の中でも特に生命保険は苦戦が続いている状況です。収益を確保するには、若い世代に保険に加入してもらう必要がありますが、従来の保険商品や営業活動に対して好印象を持っている若年層は少ないため、商品開発やマーケティング施策の面で大きな改革が必要です。

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