「うちの会社のデジタル化、具体的にどうやっていくか、考えなきゃなぁ」と思っている方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。これは、そういう方向けの記事です。
- デジタル戦略立案
- データ活用基盤
- データ分析の実務/教育
- 社内推進体制の構築
そこでこの記事では、組織を動かすデジタル化の第一歩いわば”第0フェーズ”とも言える行動提案を具体的に解説し、組織の中でアクションまで導けるよう解説します。
1.デジタル化とは?
デジタル化とは、適切なデジタル技術を選択し活用することで、多くの収益を上げ企業の持続可能性を上げることです。
もう少し具体的に説明すると、「自社のビジネスモデルや環境に合ったデジタル基盤、デジタル技術を通じて、地理的制約や時間的制約を超え、コストを大幅に削減したり売上を上げることに寄与するもの」です。
コロナ禍において、感染者情報を医療機関から保健所、都道府県にファックスで送信し手動集計であることから人為的ミスが多数発生したという背景からも、「デジタル化」を推し進めなければならない、と多くのメディアで言われ、その問題が語られてきました。
Gartner Techonologyでは、「デジタル化」を以下のように定義しています。
Digitalization is the use of digital technologies to change a business model and provide new revenue and value-producing opportunities; it is the process of moving to a digital business.
【和訳】デジタル化は、ビジネルモデルを変革し、新たな利益創出や価値提供を起こすためにデジタル技術を活用すること。それはつまりデジタルビジネスへ遷移するプロセスである。
実際デジタル化という言葉は、単に部分的な解決を狙ったソリューションのことではなく、ビジネスモデルという大局的な部分へ影響を与えものとされています。
1-1.人や文脈によって多種多様でゆらぎのある「デジタル化」の意味
ビジネス全体がデジタルを前提としていることが「デジタル化」の本質的な意味ではありますが、実際人や文脈によって「デジタル化」は多種多様に使われます。
パッと思いつくだけで下記のようなケースがあります。
- ペーパレス化のことを指しているケース
- 情報そのものデジタル化のことを指しているケース
- オンライン化&クラウド化を指しているケース
- オンラインサービス(予約やデリバリー)を使うことを指しているケース
- ツールやプロダクトを使うこと・導入することを指しているケース
- 今あるデータを分析したり、活用しようとしているケース
- 組織としての大局的なデジタル化を指しているケース
上記は全くMECEではなく、且つゆらぎはありますが、昨今の言葉の使われ方として大事なところは外していないかと考えます。このように分けることで、課題と注意点の解像度をさらに上げ、できる限り適切な行動を選択できるものと考えます。
1-2.日本語の「デジタル化」と英語のDigitization(デジタイゼーション)の違い
「デジタル化」と同時に登場したり、混同されがちな言葉に「デジタイゼーション」があります。
具体的な違いは以下のとおりです。
- デジタル化:組織を上げた、デジタル技術を活用したビジネスモデルに変換し収益を最大にすること
- デジタイゼーション:情報のアナログからデジタルへの変換(日本語では、「電子化」と呼ばれることも多い)
つまり、デジタイゼーションはあくまでも情報そのもののデジタル化を指すのに対し、「デジタル化」は本来組織全体、ビジネス全体がデジタル技術や活用が基盤にあることを指すことが多いです。
本のいわゆる”自炊”(物理本をPDF化すること)は、デジタイゼーションのわかりやすい例ですね。
手紙やFAXからメール、も広義的にはこちらの例に入るでしょう。
加えて、以下のように整理することもできます。
- デジタル化:組織に焦点
- デジタイゼーション:情報そのものに焦点
デジタル化は何か一つのツールのことであると把握される方もいらっしゃいますが、ツールに限ったことではありません。デジタル技術を前提としたビジネスモデルや組織という概念を作り上げるすべてと言っても過言ではないでしょう。
とにかく、デジタル技術を通じて収益性の高い顧客行動を考えていけば、それはデジタル化の第一歩を踏んでいるということでもあります。
本記事でお伝えするデジタル化も、いわゆる「組織やビジネスがデジタル前提となること」という位置付けで「デジタル化」の解説を続けていきます。
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2.デジタル化の流れ
デジタル化を進める上で、やらなければらならないことの全体像を理解するには、下記の4つの要素で把握するのが近道です。
- デジタル戦略立案
- データ活用基盤
- データ分析の実務/教育
- 社内推進体制
この柱は、デジタル技術やデータを理解し、実際に組織が動き出し、データや技術を活用し、意識せずともデジタルやデータを活用するようになる一連のステップのことです。この中でもデジタル戦略は全ての基盤となります。
こちらに関しては、以下の記事でも組織文化醸成の詳細を掲載しているので、ご参考にしてくだい。
また、下記の記事にはデジタル化を進めるにあたり各論点の戦術的アプローチを詳しく解説しています。
STEP1.デジタル戦略立案
組織のビジョンと合わせて戦略を形作るステップです。「データをどう活用していくか」「どのようなデジタル技術が課題を解決するか」「経営判断するためにどのようなデータが必要なのか」「そもそも組織のビジョンに合っているのか」「そもそもデジタルで解決すべき課題なのか」ということを精緻に言語化する最も上流のプロセスです。
この戦略設計が正しく出来ていないと、戦術レベルではどうにもならず全ての投資が無駄になります。
このステップでは、戦略を構築する副産物として、例えば以下のようなことが決まって行きます。
- 経営層のコミットメント
- データアーキテクチャー
- 予算
- プロジェクト体制と役割定義
- 人材
また、今企業にあるデータは分析や活用に使えないことが多く、データの状態の最低限クイックなレビューもこの段階でしたほうが良いです。
戦略形成にあたり、下記のようなことも効果的です。
先行企業の視察
こちらは外部専門家の力を借りないと難しいものの一つではあります。しかし、経営層/シニアマネジメントが最も生々しく”自分ごと”として考えてもらえる最速の手でもあります。国内だけでなく海外の企業視察もします。経営層やシニアマネジメントが、「成功企業がどのような状況においてどのような課題があり、どうやって解決してきたかを理解する」ことは、長期戦となるデジタル化のエネルギーになります。
自身だけで事例を聞いたり視察をすると、「XX社もこのツールを使っているから我が社にも導入しよう!」と安易に考えがちです。先行企業は自社の状況やフェーズとは異なるものであり、事例はあくまで事例です。だからこそ外部専門家が伴走し、自社の状況に置き換え解釈・翻訳し、視察の質を高めることがです。なかば「リアルタイム・セカンドオピニオン」の形で、経営層/シニアマネジメントの情報濃度が高め理解にブーストをかけます。
海外まで足を運ぶのは実際ハードルが高いです。視察の経験の一部代替となるのがですので、カンファレンスになったりもするでしょう。
経営層/シニアマネジメントワークショップ
デジタル化には、経営層/シニアマネジメントのコミットメントが必須です。しかし、現実的には何にコミットすれば良いのかわからない、という企業も多いです。そこで、組織で細かいことを実行する前のインプットとして、役員の方向けに下記のような研修を数日〜一週間かけて行なっています。これらを先に行なっておくことで、「総論OKであるが各論反対で進まない」という状態を大方防ぐことが出来、多くの人がストレスに感じているであろう「自分が知りたいことをどのように依頼すれば良いのか」という時に役立つ”共通言語”を組織内で作ることもできます。
解釈できなければ正しい経営判断や意思決定も出来ません。
- しる
- 経営レベルでのデータの使い方、解釈の仕方を学びます。 自社同業界の海外事例、国内事例を使って、「データを見る意味」「データ以外の部分に思いを馳せる意味」を知ります。
- 日々の悩みや経営課題に対してどのようにデータを使って解決ができるのか、データではわからないことは何なのかを理解します。同業界の事例や業務プロセスでの適用例などを学ぶことで、自社に当てはめた時の姿を想像できます。言わば、AS-ISに対して、TO-BEを見させる作業です。
- みる
- 実際のデータにアクセスし、どのようなデータがありどのようなデータがないのかを理解します。現在の課題をベースに、「どのようなデータがあればどのようなことができるのか」加えて「今後収集すべきデータ」を具体的にイメージしていただきます。
- つかう
- ご自身の統括部門に便益のあるデータ分析のスプリント的なワークショップを行います。
- わかる
- データの解釈力を上げ、分析者やデータを実務的に扱う方へのへのリクエストの仕方を理解します。
DXワークショップ
そもそもデジタル化とは何かを自分の業界、自社の業務に合わせて”自分ごと”で考えてもらうためのワークショップです。外部専門家やITコンサルを使うにしろ使わないにしろ、まずはデジタル化を進めるマインドを持つことが大切であり、こういったワークショップはそのマインドを醸成することを目的とします。
当社の製造業における過去事例では下記のようなDXワークショップの例があります。
DAY1 | DAY2 |
1.デジタル化を理解する | 1.データの民主化 |
2.海外/国内他社事例 | 2.DAY1フィードバック |
3.ワークショップ | 3.アイデアをアクションにつなげるために |
STEP2.データ活用基盤構築
キーワードとしては、DMP、データマネジメント、データプラットフォーム、データガバナンスという言葉で語られる領域です。この基盤を業界最低限にするところまでは、スピードをあげて実行していくのが重要です。
経済産業省よりDXレポートが出され、「2025の崖」というキーワードが広く知られるようになりましたが、まずは現在のデータやデータベースを支える現在の基盤が現代的であるかを評価し、目指す方向に向かった適切なデータが取得できる基盤が存在しているか・それがすぐに出せる状態かを確認・理解することが第一歩です。この意味で、データプラットフォームの論点も重要です。以下の記事が参考になるものと思います。
また、「チャットソフトはダメ」「クラウドはダメ」「資料はファイルサーバーだけで」で終わると全てが終わってしまいデジタル戦略は水の泡になります。ここで終わってしまう場合、ITセキュリティやIT方針としての考え方が30-40年前のまま止まっている(時代や技術に合わせて全くアップデートせず放置しているものをそのまま使っている)ケースがほとんどです。セキュリティ確認シートも現代に合わせてアップデートしていく攻めの姿勢が重要です。
この論点では、下記のデータマネジメントの記事もご参考になるかと思います。
STEP3.データ分析の実務/教育
一つ一つの具体的課題にリーチするようなデータ分析の実務やその周辺の教育部分です。
具体的には、以下のようなマーケティングミックスモデリングなどの、「一つ一つの課題を解決していく際にどうしたら良いか」という分析戦略もこちらに入ります。
データ分析の実務力を引き上げるものとしては、以下の観点で継続的に学習し引き上げていくのがおすすめです。
自己学習支援
その後のインプット座学がスムーズに進むよう最初の羅針盤を形成する支援とも言えます。最初の段階で正しい方角を示すことがキモになります。
インプット(座学)
座学的な講義も重要です。最近ではデータリテラシーという言葉でくくられますが、データを扱う上で必要な知識として下記のような座学講義があります。これらを高度に融合することを目指します。
- 課題設定力
- 課題解決力
- ビジネスドメイン経験、知見
- 統計に対する力・分析力
- ツールへの習熟度
- 視覚化のスキル
一つ一つ見ていきましょう。
課題設定力
課題”解決”力はよく引き合いに出されますが、個人的には課題設定力の方がクリティカルに重要です。なぜなら、課題自体が間違っていたら解かなくても良い課題を解決するのに時間を使うことになるからです。間違った問いを解こうとしては、いくらデータを使っても無駄になってしまうためです。デジタル化のデータリテラシーの文脈では最も重要と考えます。
課題解決力
課題が適切に設定できれば、解決力の出番です。これが重要な理由は、デジタル化の文脈では、例えば以下のような問いが出現するからです。
- 仮説は正しいか?
- 現在のデータからは何が言えて、何が言えないのか?(データの問題と解釈の問題、分析力の問題を切り分ける)
- データからの示唆の精度はどの程度と言えるか?
このあたりは分析を進めていく上で非常に重要です。データになっていないものに思いを馳せながら、データをうまくしなやかに活用していかなければなりません。当社でも「データ分析のためのクリティカルシンキング」というトレーニングコースを提供していますが、いわゆるロジカルシンキング、クリティカルシンキングの領域です。
ロジカルシンキング自体万能ではありませんが、そもそもの最低限の基礎力はデータ分析の文脈では必須でしょう。
統計・分析に対する力
基礎的なレベルでかなりの割合のビジネスの課題が解決しますので、基礎的な統計力は必要です。何が「基礎的」であるかというと、それぞれの統計指標はどういう意味なのか、どういう限界があるのか、を理解しているということです。経営層やシニアマネジメントが盲目的に全てを平均値で判断したり、「決定木って何?」という状態では、基盤構築に高額な投資しても何も変わらないからです。
初学者の方に参考になるデータ分析スタートガイドを以下の記事でまとめています。
ツールへの習熟
ここでいう「ツール」は様々です。Excel、SQLの力もツールですし、RやPython,各種BIツールをどれだけ使いこなせるかということもあるでしょう。
デジタル化の文脈で出会う方たちは、ツールの会話になると「ツールは手段だから。目的こそが大事だから。」と言う方も多いです。それはある意味で正しいのですが、ツールへの習熟や活用力がなければそもそも精度の高い目的など出てきません。ツールは購入・導入するのは簡単ですが、課題に合わせて使いこなすレベルまでいくのは大変です。ツールをバカにせず、習熟して活用レベルまで持っていって初めて示唆を得られる余裕が出てきます。
当社では、下記の記事のようなExploratoryやTableauを扱っています。
視覚化のスキル
データから得られた情報や知見を効果的に共有するという観点で非常に重要です。なぜなら、行なった分析を瞬時に理解したり、深い洞察を他人に伝えたりするのは視覚化の力があってこそだからです。
データ視覚化は分析者が分析過程で行う探索的分析と呼ばれる場面にも効果を発揮します。しかしデジタル化の文脈ではいかに相手に正しく効果的に伝えるかというところでデータ視覚化のパワーが必要になります。下記の記事も視覚化(データビジュアライゼーション)の詳細をまとめており、参考にしていただけるものと思います。
東京大学の数理・データサイエンス・AIリテラシーレベルのモデルカリキュラムの中で、「リテラシーレベルの基礎」としても、「データを説明する力」としてデータ視覚化領域に触れられています。
出典:数理・データサイエンス・AI (リテラシーレベル) モデルカリキュラム ~ データ思考の涵養 ~
行なった分析をどのように他の人に伝え、共有し、「知」にしていくには視覚化(データビジュアライゼーション)の力が必要です。
拙著『データ視覚化のデザイン』にはこの観点を掘り下げた内容、詳細も記載していますのでご参考にされてください。
STEP4.社内推進
組織で「デジタル化」を進める上では、外部専門家の力を借りるにしろ借りないにしろ、組織内でデジタル化の組織能力、いわば”デジタル戦闘力”を醸成することが必須です。なぜならこれがなければデジタル化が自己目的化してしまうためです。「なるべくデジタル化しよう」的な発想を起点にデジタル化が進めばプロジェクトはうまくいかなくなります。それを回避するため社内推進チームを作り、研修プログラムなどを継続的に行い意識づけをしている企業があります。
3.デジタル化成功の二つのカギ
デジタル化を成功させるためには2つのカギが欠かせません。これらの前提を徹底するからこそ効果的で継続的に効果を出すことができるものです。
それぞれ見ていきましょう。
①経営層/シニアマネジメントのコミットメント
1つ目のカギは、経営層やシニアマネジメントのコミットメントです。
過去の記事にも記載していますが、組織のデジタル化においては経営層のコミットメントが特に必要不可欠です。理由は以下です。
組織のデジタル化は重要だが緊急性が高いものではないから
そもそもデータを活用すること自体が「重要ではあるが明日会社のお財布がどうにかなってしまう」というような緊急性の高いものではなく、且つ成果がでるまでに時間がかかることであり、後回しになりがちです。だからこそ、経営層/シニアマネジメントの推進力がないと、途中でぽしゃってしまう可能性が高いのです。
お金も時間もかかる取り組みだから
組織としてのデジタル化、つまりデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、結果が出るまでにはお金も時間もかかります。
ですので、そもそも短期最適化だけを考えている会社や短期ROIを追うことに焦点のある会社は、現実的には成功はほぼ難しいです。結果がすぐ出ないとお金が勿体無いという考え方や、小さく初めて育てるところまで待てなかったりするためです。
不可視的な仕事は経営層から支援されなければ継続できないから
下記の記事では、デジタルトランスフォーメーションの戦略、体制、人材などに関する具体的なアプローチについて記載しています。
②デジタル投資予算に対するマインドチェンジ
2つ目のカギは、デジタル投資予算に対するマインドチェンジです。
以下は、デジタル関連投資(ICT)のOECDの統計です。アメリカ、イギリス、フランスと日本を比較すると大きく乖離があるのが理解できるでしょう。
▼各国のICT投資の推移比較
国内企業はデジタル化に関しかなりの遅れをとっているのは事実です。しかし、遅れているから全て何をやってもダメというわけではなく、後進の利益がとれるものでもあります。その意味で、競合内でデジタル化が進めば自社が遅れれば遅れるほどこの利益は獲得できなくなるため、今から頭一つ抜けるのは時間が勝負になります。スピードに拍車をかけるのがデジタル投資へのになります。
4.企業が進めるデジタル化の成功事例
デジタル化を推進すると、実際にどのような成果を得られるのか、一般公開されている情報への解釈に加え当社で担当させて頂いたクライアント様の成功事例も交えながら紹介します。ぜひ参考にしてください。
数多くの具体的な事例に触れることで、インスピレーションが湧いたり、自社に適用できるアイデアを思いつけるはずです。
4-1.Audi:伝統的なショールームのスタイルからデジタル体験の創造で売上60%以上アップ
Audiは伝統的なショールームという物理的な空間にテクノロジーを導入しました。ショールームに導入したマルチタッチテーブルやタブレットでの提案、蓄電(パワーウォール)などです。
マルチタッチテーブル
出典:Audi City
パワーウォール(システムの稼働状況や電力の状況などもアプリでモニターする)
出典:Audi City
売上アップの背景には、こういったデジタル体験の洗練化により販売のコンサルテーションの効率化が行われ、データがたまりやすくなります。それにより必然的に、一人一人の顧客に刺さるような提案がされ、顧客への体験価値が広がったものと考えます。
4-2.GE:リアルタイムのエネルギーマネジメントでコスト削減と電力効率アップを実現
GEのエネルギーマネジメントは川上から川下までをカバーし、データの取得の仕方、どのようにデータをガバナンスするか、ネットワーク、アナリティクスにどう使うかまで一貫して考えられていて、デジタルトランスフォーメーションを実現している好例です。
組織でのリアルタイムデータの全体像とその要素
出典:Advanced Energy Management System
ここまで川上から川下まで電力や風力などのエネルギーに関しデジタルトランスフォーメーションを推し進め、基盤からアナリティクスなどの活用まで持っていけている例はないでしょう。この全体像から、強固なデータ活用基盤を整え、リアルタイムでの分析を行うことでもっとも効率的な電力消費を実現し、最適な電力の調達、貯留の予測ができているものと考えます。
エネルギーの効率性や効果性をモニタリングするダッシュボード
出典:Advanced Energy Management System
4-3.Disney:リストバンドでよりパーソナライズされた顧客体験を創出
マジックバンドとは、ICチップが内蔵されたシリコン製のリストバンドです。ICチップには一人一人の情報が入っており、園内の様々な場所で利用するものです。ICチップの中に一人一人の情報が(マイディズニーエクスペリエンスの情報)が入っていてディズニーワールド内の様々な場所で利用します。
ディズニーのマジックバンド
出典:Disney Parks
ディズニーはこのリストバンドのプロジェクトに必要なインフラ構築・従業員への研修などで10億ドルの投資を行なっています。全ての行動のデジタル化で最高の顧客体験を実現させ、さらなる顧客エンゲージメントを獲得しているのでしょう。ざっくりと平均化した情報ではなく顧客一人一人のデータがとれていることは一人一人の属性や行動を分析でき、顧客体験の設計にあたりとても大きな価値を出しているはずです。
4-4.広告代理店:デジタルクリエイティブ広告
具体的なクリエイティブ広告を見ながらデジタル広告(静止画・動画)の効果指標(インプレッション、CVR、コストなど)を瞬時に理解でき、さらにリアルタイム性を担保しながら当事者でクリエイティブの効果について議論できるものが必要であるというオーダーを頂きました。
こちらも、デジタル/データを使った示唆という点での例です。
事例/大手広告代理店:クリエイティブ広告ダッシュボード構築支援(AWS(Redshift/S3)&Tableau Extensions API)
4-5.製造業:(ピープルアナリティクス /HRTech)
機械学習のアプローチで満足度調査をしたものです。
今回、全国的に新型コロナウィルスによるテレワーク・在宅勤務になったことを受け、迅速に組織や従業員の状況を把握しようとされたIT部のみなさまとのインタビュー事例がこちらです。
アンケート結果を機械学習とそのビジュアライズによって分析することで、短時間でアンケート結果の勘所をつかみ、ダッシュボードを作成することを実施しました。結果として、アンケートの実施から改善施策検討までのリードタイムを大幅に削減することができ、高い評価を得ることが出来ました。
5.成功事例から見るデジタル化の利点
弊社クライアントの成功事例や一般公開されている事例からデジタル化に取り組んだ場合にどのような成果が得られるか、少しイメージが沸いたのではないでしょうか。ここではもう少し具体的にデジタル化の取り組みによって得られるメリットを4つ紹介していきます。
5-1.売上成長や収益率の改善
デジタル技術を使うことで地理的制約や時間的制約がなくなることから生産性が上がり、トップライン成長や収益率の改善が期待できます。
Forrester Research 社によるとデジタルを活用しデータから得たインサイトを出発点をして行動している組織は、世界のGDP成長率の7倍以上のスピードで成長しているという示唆も出ています。
出典:Insights-Driven Businesses Are Stealing Your Customers
5-2.顧客理解の促進
顧客が何を求めているかを理解することは製品やサービスをより良いものにするために非常に重要です。カスタマージャーニーの精緻化やデジタルマーケティングなどを促進します。
デジタル化により技術やデータ活用が進めれば精度の高い意見やフィードバックを製品やサービスに落とし込むことが出来継続的に改善をし続ける体制を構築することが出来ます。
5-3.精度の高い意思決定
意思決定という言葉はよくデータ活用やデジタル化の文脈では言われるところではあります。しかし、データ自体が答えを持っていたり、唯一の回答を出してくれるものではありません。
しかし、同じ判断をするにしても、意思決定や判断の補助として有効活用できるものは沢山あります。データやデジタルの力を使うことで示唆のロジック、エビデンスの強さは段違いになるでしょう。
6.まとめ
組織のデジタル化を成功させるにあたっては多くの知識や経験が必要ですが、最低限の観点に絞って解説してきました。
国内企業はデジタル化に関しかなりの遅れをとっているのは事実です。しかし、だからといって諦めるのではなく後進としての利益もとっていけるはずです。成功している事例を学び、紐解き、自社のボトルネックを解明しうまく適用していけば、活路は開けるものと感じます。
しかし、競合内でデジタル化が進めば自社が遅れれば遅れるほどこの利益は獲得できなくなるため、今から頭一つ抜けるのは時間が勝負になります。
精度の高いデジタル戦略によって経営力を上げる本腰を入れましょう。
DXの推進をご検討中であれば、ぜひ一度データビズラボへお問い合わせください。
DX推進のコンサルティングやその他ニーズに合わせた様々なサービス等をご提案させていただきます。
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