データリネージとは?データリネージの意味やメリット、重要性、主なツールなどを解説

 現在、多くの企業がデータ活用を強化しており、その中でデータ品質の向上と管理が重要な課題となっています。その際に、重要となるのが「データリネージ」という概念です。「リネージ(Lineage)」という言葉は英語で「血統」という意味があります。
データリネージでは、データの変遷を追跡することに重点が置かれており、ビジネスのデータ活用において重要です。そのため、データを効果的に活用したい企業にとっては、データリネージに関する知識が必要になります。
本記事では、データリネージについて詳しく知りたい方に向けて、データリネージの意味やメリット、重要性、データリネージが活用される主な業界、データリネージツールの一例などについて解説します。

データリネージとは

データリネージとは、データの生成源からその最終利用点までの流れを追い記録する仕組みです。データリネージでは、データの出所やカテゴリー、フォーマット、処理技術、及び利用方法などが総合的に追跡されます。このシステムは、データの品質と信頼性を向上させるために役立ちます。さらに、品質が劣るデータの根本原因を特定し、それを改善する策を立てるのにも有効です。また、データの出所の信憑性をチェックしてそれを強化するのにも役立ちます。

また、データリネージは、データが関連する法規準拠の基準を満たしているかどうかを検証し、コンプライアンスを保持するための重要な役割を担います。ビジネスの重要な意思決定や法的な規制の遵守に至るまで、データリネージは組織全体のデータ管理と品質保証において中心的な役割を果たします。 

参考:『データとは?基礎知識から種類まで徹底解説』 

 

▼GCPにおけるデータリネージ

【参照:https://cloud.google.com/data-fusion/docs/tutorials/lineage?hl=ja

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データリネージのメリット

データリネージを行うことには、主に3つのメリットがあります。まず、異常なデータに対処しやすくなることが挙げられます。また、データ分析の信頼性向上もメリットです。さらに、データパイプラインの構築にかかる手間を省くことができます。以下では、これらのデータリネージのメリットについて解説します。

異常なデータに対処しやすくなる

データ分析を行う際、データの異常や欠落が発生することがあります。これは、会社の様々な部門からデータウェアハウスにデータを統合する過程での起きることが多いです。具体的には、データの形式変更やカラム名の変更、元のデータの削除などがあります。

これらの問題を解決するためには、どの段階で問題が生じたかを特定する必要があります。しかし、複雑なデータ処理を経ると特定が難しくなります。そのような場合でも、データリネージを適切に行っていれば、問題の原因を簡単に特定し、解決が可能になります。

参考:『データウェアハウス(DWH)とは?具体例を用いて解説!』

データ分析の信頼性向上

データ分析を使用する際、分析の正確性と元のデータへの信頼性が重要です。元データが曖昧で加工過程が不透明な場合、分析結果への信頼は損なわれます。しかし、データリネージがしっかりしていれば、分析結果が信頼できるデータに基づいていることが保証されます。それにより、データがどのように処理されてきたかを明確に説明することが可能になります。

参考:『データ分析とは?目的や重要性などデータ分析の基礎知識を解説』

データパイプライン構築の手間が省ける

データ分析をする際には、不必要なデータの削除やデータの加工をするケースがよくあります。しかし、この加工済みのデータは、別のデータ分析では使えないことがあります。通常、データ分析を行う場合は、データパイプラインの構築が必要です。
しかし、ETL(データの抽出、変換、格納)の各段階でデータの加工内容をきちんと管理していれば、既存のデータパイプラインを部分的に修正するだけで再利用ができます。これにより、新しいデータパイプラインの構築にかかる手間やコストを削減可能です。

ビジネスにおけるデータリネージの重要性

現代のビジネス環境では、データリネージの存在がますます重要になっています。主な理由としては、データの信頼性と透明性の向上があります。また、法規制遵守のためのデータ追跡のためにも重要です。さらにビジネス上の意思決定にも役立ちます。以下では、これらのデータリネージの重要性について解説します。

データの信頼性と透明性の向上

データリネージの重要性は、データの信頼性と透明性を高めることにあります。データリネージによって、データの正確性や完全性が保証され、誤りがあった場合にはその特定と修正がより容易になります。
この透明性は、企業内外での信頼構築に欠かせない要素で、データ管理の質を大幅に向上させます。エラーの特定や修正プロセスが明確になることで、企業全体の業務効率とビジネスの成果が向上します。 

法規制遵守のためのデータ追跡

法規制遵守を目的としたデータ追跡において、データリネージは極めて重要です。特に金融やヘルスケアのような厳格な規制が存在する業界では、データリネージは規制遵守のために必須の仕組みとなります。
例えば、EU一般データ保護規則(GDPR)やアメリカの医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)、バーゼル銀行監督委員会の規制第239号(BCBS239)といった法規制は、データリネージを用いることで、より効率的かつ正確に対応することが可能です。
データリネージは、データがどのように収集や保存、共有されたかを明確にし、規制要件に対する遵守状況を追跡・確認することを容易にします。これにより、企業は法的リスクを最小限に抑え、コンプライアンスを確実に保つことができます。 

参考:『データガバナンスとはデータマネジメントを監督すること』

ビジネス上の意思決定

ビジネスにおける意思決定プロセスでは、データリネージが重要な役割を果たします。正確なデータ追跡によって、企業はより信頼性の高い情報に基づいた決定を行うことができます。データリネージは、データの出所や履歴を明確にすることで、不確実性を減少させ、ビジネス上のリスクを効果的に管理します。

例えば、マーケティング戦略や製品開発の決定を行う際に、データリネージによって提供される詳細な情報は、より正確な市場分析や消費者の傾向の理解を可能にします。これにより、企業は無駄な投資を避け、競争上の優位性を維持するための効果的な戦略を策定することができます。

参考:『データドリブン経営とは?わかりやすく解説』

データリネージが活用される主な業界

データリネージは、特に金融、ヘルスケア、ITの各業界で広く活用されています。金融業界では、取引の透明性と整合性を保つために重要な役割を果たし、ヘルスケア業界では、患者データの安全性と正確性を確保するために重要です。また、IT業界では、データの統合や移行プロセスの効率化と正確性の向上に貢献しています。以下では、これらのデータリネージが活用される業界について解説します。

金融業界

金融業界では、データリネージが極めて重要です。データリネージは取引の透明性を保証し、金融犯罪の防止と法規制の遵守に大きく貢献します。データの詳細な追跡により、不正取引や詐欺を未然に防ぐことができ、リスク管理を強化します。

この透明性は顧客や投資家の信頼を築くのにも大切な要素です。金融機関が信頼される存在であり続けるためには、取引データの精確な追跡と分析が欠かせません。データリネージの適切な実装によって、金融機関は不正行為を防ぎ、規制遵守を実現し、顧客の信頼を確固たるものにします。

ヘルスケア業界

ヘルスケア業界において、データリネージは患者の情報の安全性と正確性を確保するため重要です。患者の診断データや治療内容の詳細な追跡により、医療ミスの可能性を大幅に減らし、治療の効果を高めることができます。さらに、患者の個人情報のセキュリティとプライバシーを守るためにも重要な役割を果たします。

データリネージを活用することで、医療機関は患者データを正確に管理し、最適な医療サービスを提供できます。また、患者データの適切な扱いは、患者と医療機関との信頼関係を強化し、全体的な医療クオリティの向上に寄与します。

IT業界

IT業界において、データリネージはデータの統合や移行プロジェクトで中心的な役割を果たします。特に、大規模なデータベースの統合やクラウド移行時には、データの整合性を維持し、プロセスの透明性を向上させることが必要です。プロセスの透明性の向上により、システムの効率性とセキュリティが大きく改善されます。

データリネージによる追跡と管理は、データの安全性を確保し、システムの整合性を保つために重要な要素となっています。その結果、ITプロジェクトはより効果的かつ安全に運営され、信頼性の高いシステム構築が可能になります。

データリネージ機能を搭載したツール

データリネージを成功させるためには、適切なツールと技術の選択が欠かせません。データリネージ機能を持つツールには、オープンソースのソフトウェアから商用ソフトウェアまで幅広い選択肢があります。

 Apache Atlas

Apache Atlasオープンソースのツールでデータカタログの構築に用いられ、データの管理を容易にします。

Informatica

データ統合ソリューションであるInformaticaでは、データの連携・統合、マスターデータの管理、データの抽出・加工が可能です。

Talend

TalendはInfomaticaと同様にデータ統合・データ整合性やAPI統合など、データを一元管理できるプラットフォームです。

参考:『データカタログとは?必要な理由、作成手順、管理方法までを解説!』

まとめ

本記事では、データリネージの意味やメリット、重要性、データリネージが活用される主な業界、データリネージツールの一例などについて解説してきました。データリネージは、データの生成源からその最終利用点までの流れを追い記録する仕組みです。

データリネージを活用することで、データの信頼性と透明性が向上します。それにより、GDPRやHIPAAなどの法規制遵守のためのデータ追跡やビジネス上の意思決定などに役立ちます。データリネージを含め、データ活用に関するお悩みがある企業担当者の方は、弊社データビズラボにご相談ください。

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