データサイエンティストは仕事満足度No.1※であり、学生からも転職を考えている社会人からも人気のある職種です。「データサイエンティストになるならまずは資格取得」と考える方が多いでしょう。
そこで本記事では、実務的に役立つデータサイエンティストのおすすめ資格13選をカテゴリ別にご紹介します。資格ごとにどういった能力を証明できるか、どんな方におすすめかなど詳しく解説するので、データサイエンティストの資格に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
※転職サービス「doda」による仕事満足度調査より(20〜59歳のビジネスパーソン1万5,000人が回答)
目次
データサイエンティストにおすすめの資格13選
それでは早速、データサイエンティストにおすすめの資格を5つのカテゴリに分けてご紹介します。
ITリテラシーを身につけられる
ITパスポート
ITパスポートは経済産業省が認定している国家試験であり、取得によって一定のITリテラシー(基礎的な素養)を証明できる資格です。2023年の受験者数は25万人を突破し、過去最高を記録しました。
データサイエンティストを目指す上では「基礎中の基礎」という知識を体系的に学べる資格ですが、データサイエンスに興味はあってもITリテラシーに自信がないという方におすすめです。
資格種類 | 国家試験 |
受験費用 | 7,500円(税込) |
試験方法 | 試験会場でのCBT形式 |
試験日時 | 通年実施 |
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験も経済産業省認定の国家試験であり、ITパスポートよりもレベルの高いITリテラシーが問われる資格です。システム技術者またはシステムユーザーとして知るべき原理・技術について、幅広い知識が求められます。
情報処理技術者試験には「基本」と「応用」の2種類あり、後者の合格率は例年20%前後と比較的難度の高い資格となっています。
システムエンジニア寄りの資格なのでデータサイエンティストで保有している方は少ないですが、「これからデータサイエンスの世界に飛び込みたい」と考えている方にとっては一定のITリテラシーを身につけられる資格としておすすめです。
資格種類 | 国家試験 |
受験費用 | 基本・応用ともに7,500円(税込) |
試験方法 | 試験会場でのCBT形式 |
試験日時 | 通年実施 |
データサイエンスの基礎が学べる
データサイエンティスト検定
データサイエンティスト検定とは、データサイエンティストに求められるビジネス力・データサイエンス力・データエンジニア力を総合的に評価する資格です。取得によって、データサイエンティスト協会が定義している「アシスタント データサイエンティスト(見習いレベル)」のスキル・知識があることを証明できます。
具体的にはデータサイエンティストとしてのビジネスリテラシーと、現場でどう立ち回れば良いかを体系的に学べます。「データサイエンティストのキャリアをスタートしたい」と、就職・転職を本気で考え出した方におすすめの資格です。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 一般 11,000円(税込) 学生 5,500円(税込) |
試験方法 | 試験会場でのCBT四肢択一形式 |
試験日時 | 年2回(春・秋) |
G検定・E資格
G検定・E資格はJDLA(日本ディープラーニング協会)が運営する民間資格です。データサイエンティストとの関わりも深い、AI(人工知能)や機械学習といったスキル・知識を証明できる資格として人気があります。
G検定はその入門資格として、受験資格がなく誰でも受験可能です。一方E資格は、JDLA認定のプログラムを試験日の過去2年以内に終了した方だけが受験できます。データサイエンティストのスキルアップ資格として、AIや機械学習にまで知識範囲を広げたい方におすすめです。
資格種類 | 民間資格 | |
受験費用 | G検定 | E資格 |
一般 13,200円(税込) 学生 5,500円(税込) | 一般 33,300円(税込) 学生 22,000円(税込) | |
試験方法 | オンライン実施 | 指定の試験会場で実施 |
試験日時 | 年5・6回 | 年2回 |
Python3 エンジニア認定 データ分析試験
データサイエンスの現場でもよく利用されるプログラミング言語である、「Python(パイソン)」を使ったデータ分析のスキル・知識が問われる民間資格です。資格取得を目指すことでデータサイエンスについて幅広く学べる上に、実務的な試験内容なのでデータサイエンティストとして一通りのスキル・知識を身につけられます。
受験には一定のプログラミング経験が必要ですが、Pythonはプログラミング初心者にも比較的優しい言語です。Pythonの基礎を固められたら、ステップアップ資格としてぜひチャレンジしてみてください。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 一般 11,000円(税込) 学生 5,500円(税込) |
試験方法 | 試験会場でのCBT形式 |
試験日時 | 通年実施 |
データサイエンス数学ストラテジスト
データサイエンス数学ストラテジストは日本数学検定協会が2021年9月にスタートした、比較的新しい民間資格です。中級・上級に分かれており、中級は数学ⅠAまでの問題、上級は大学初学年レベルの数学問題が出題されます。
データサイエンティストには大学レベルの数学スキル・知識が最低限必要です。他の実務的なデータサイエンス資格の取得に向けて、まずは中級で高校1年レベルの数学をおさらいし、上級で大学1年レベルの数学を身につけるなど段階的な活用をおすすめします。
資格種類 | 民間資格 | |
受験費用 | 中級 | 上級 |
7,000円(税込) | 9,000円(税込) | |
試験方法 | オンラインIBT形式 | |
試験日時 | 通年実施 |
データサイエンス数学ストラテジストの公式サイト
実践的な統計学が学べる
統計検定 統計調査士
統計検定 統計調査士は統計質保証推進協会が実施している民間資格であり、日本統計学会公式認定かつ政府各省庁の後援を得ています。具体的には、公的統計(国の行政機関や地方公共団体などが作成する統計)の基本内容を正確に理解し、それらを適切に利用する能力が備わっているかを評価する資格です。
高校数学のⅠA・ⅡBレベルの数学知識が求められる資格であり、資格取得を目指すことでデータサイエンティストの基礎実務を学ぶことができます。受験資格がないため、「一定の数学知識はありデータサイエンスの実務を学び始めたい」という方におすすめします。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 一般 7,000円(税込) 学生 5,000円(税込) |
試験方法 | 試験会場でのCBT形式 |
試験日時 | 通年 |
統計検定 準1級
上記と同じく、統計質保証推進協会が実施している民間資格です。データサイエンス関連資格の中では難度が高く、大学専門課程レベルの数学知識を求められます。さらに統計学の手法・理論について深い理解が求められ、出題範囲が広いことも資格取得を難しくしている要素です。
本格的な統計スキルを証明できる資格なので、データサイエンティストの中でも資格を所有している方は限られています。データサイエンティストとしてのキャリアをスタートし、「着実にスキル・知識が身についてきた」と実感している方が、次のステップとして取得を目指すと良いでしょう。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 一般 8,000円(税込) 学生 6,000円(税込) |
試験方法 | 試験会場でのCBT形式 |
試験日時 | 通年 |
統計検定 DSエキスパート
上記と同じく、統計質保証推進協会が実施している民間資格です。データサイエンスに関する大学専門課程レベルのスキル・知識を評価する資格として、データサイエンティストの専門スキルを客観的に証明できます。
ちなみにDXエキスパートの下位資格に当たる「DX基礎」「DS発展」を取得すれば、データサイエンティストに欠かせない専門スキルを段階的・体系的に学ぶことが可能です。試験ではPythonを使った実務的な問題も出題されるため、幅広い知識を必要とします。
試験難度としては統計検定 準1級とほぼ同等ですが、データサイエンス寄りの資格なので「データサイエンティストへの就職・転職に有利な資格が欲しい」という方におすすめです。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 一般 8,000円(税込) 学生 6,000円(税込) |
試験方法 | 試験会場でのCBT形式 |
試験日時 | 通年 |
データベースの知識を深められる
オラクルマスター
世界的なデータベース企業の日本法人である、日本オラクルが実施している民間資格です。オラクルデータベースは世界中で利用されており、データサイエンスやシステム開発などさまざまなデータ・IT現場のスタンダード製品となっております。
オラクルマスターは、そのオラクルデータベースの構築・運用・管理・データ活用に関するスキル・知識を客観的に証明できる資格です。データサイエンティストによってはデータベース構築から求められるケースが多いため、データベースの知識を深めるためにおすすめの資格となっています。
資格レベルとはブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナと段階的に分かれており、シルバー以上でオラクルデータベースの実務的なスキル・知識を証明できます。
資格種類 | 民間資格 | |||
受験費用 | ブロンズ | シルバー | ゴールド | プラチナ |
34,300円(税込) | 231,000円(税込) | |||
試験方法 | 試験会場でのCBT形式または監督付きのオンラインIBT形式 | |||
試験日時 | 通年実施 |
グローバルで通用する資格を取得できる
Professional Data Engineer
Professional Data EngineerはGoogleが実施している民間資格です。クラウドコンピューティングであるGoogle Cloudにおいて、データエンジニアリングの基本的なスキル・知識を客観的に証明できる資格として人気があります。
近年ではデータサイエンス基盤をクラウド上で構築するケースが多く、データサイエンティストでも一定のクラウドスキルがないと通用しない時代です。Professional Data Engineerの取得によってデータ処理システムの設計、機械学習モデルの運用化といった能力が評価され、グローバルでも価値の高い資格だと言えます。
ちなみにGoogleの認定資格はすべて取得から2年間の有効期間が設けられています。取得し続けることでクラウドコンピューティングや、データエンジニアリングの持続的な能力が証明されるため、継続的な受験がおすすめです。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 200ドル(税別) |
試験方法 | 試験会場におけるCBT形式またはオンラインIBT形式 |
試験日時 | 通年実施 |
Professional Data Engineerの公式サイト
Certified Analytics Professional(CAP)
CAPは米ACB(分析認定委員会)によって実施されている民間資格です。データサイエンティストとして熟練したスキル・知識を客観的に証明でき、グローバルでも価値の高い資格となっています。
ビジネス課題の理解やデータ分析理論、解析手法など幅広い分野から出題されるのが特徴です。イメージとしては、統計検定 DSエキスパートの英語版に近いと言えます。データサイエンティストとして一定のキャリアを積み、本格的な海外進出を果たしたい方におすすめの資格です。
シリコンバレーを始めとした先進企業が集まる諸外国地域では、データサイエンティストを積極採用する事業会社がほとんどです。コンサルではなく事業会社の専門データサイエンティストとして、ビジネスのより深いところでデータサイエンスを実践したいという方は、ぜひ海外進出を目指してみてください。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 申請料 55ドル(税抜) 受験料 645ドル(税抜) |
試験方法 | 試験会場にて監視付きで実施 |
試験日時 | 通年 |
Certified Analytics Professional(CAP)の公式サイト
Open Certified Data Scientist(Open CDS)
Open CDS)米オープングループが実施している民間資格です。オープングループはさまざまな技術の中立的な標準化と認証開発をリードする団体であり、IBMやインテル、FUJITSUなどが加盟しています。
Open CDSを取得することで、データサイエンティストとしてビジネス課題の理解・解決に向けた実践的なスキル・知識を客観的に証明できます。Open CDSの特徴として、資格取得のためにトレーニングやテストを受ける必要はないことです。
試験は「オープングループ社員との面談」によって行われ、申請書と面談内容を通じてスキル・知識の要件を満たしているかどうかを問われます。定量的に評価する資格ではなく定性的に評価されるのがユニークであり、CAPと合わせて取得するとより有効的な資格です。
資格種類 | 民間資格 |
受験費用 | 1,100〜1,500ドル(税抜) |
試験方法 | オープングループ社員との面談 |
試験日時 | 通年 |
Open Certified Data Scientist(Open CDS)の公式サイト
データサイエンティストに資格は不要?
実は、「データサイエンティストになるための資格」というものは存在しません。さまざまなデータ職・IT職と同じようにデータサイエンティストはオープンな職種であり、資格の有無や学歴に関係なく誰もがデータサイエンティストを目指すことができます。
とはいえ、数学・統計学・解析・プログラミングなどのデータサイエンスに関するスキル・知識は欠かせません。本記事でご紹介しているようなデータサイエンス管理資格を取得することで、データサイエンティストとして必要なスキル・知識を体系的に学習でき、その能力を証明できます。
データサイエンティストの資格を取るメリット
データサイエンティストは資格や学歴がなくても目指せる職種です。では、資格を取得するメリットはどこにあるのでしょうか。
データサイエンスの土台を築ける
1つ目のメリットは、データサイエンスに関するスキル・知識の土台を築けることです。資格取得を目指す過程で、ITリテラシーにはじまり数学・統計・解析などさまざまなスキル・知識に自然と触れ、吸収していけます。
ただし、データサイエンティストの資格を持っているからといって、即戦力として活躍できるデータ人材は稀です。こう言うと「資格は必要なのか?」と一層思うかもしれませんが、データサイエンスの土台をどれだけしっかり築いているかによって、就職・転職後の成長スピードに圧倒的な差が出ます。
だからこそデータサイエンティストの資格を取得し、スキル・知識の土台を築くことには大きなメリットがあるのです。
知識・スキルを身につけた証明になる
データサイエンスに関するスキル・知識を客観的に証明できるのも資格取得のメリットです。近年、日本においてもデータサイエンティストが注目されており、データ人材戦略に力を入れている事業会社も増えています。
しかし、多くの事業会社はデータサイエンティストを含めデータ人材の能力を測るための、独自の尺度を持っていません。そこで着目するのがデータサイエンティストの資格です。データサイエンティストの資格を取得していればそうした事業会社に対して、一定の能力があることをアピールできます。
一方で、データ企業に就職・転職する場合は資格よりも、学士・修士や前職でどれだけデータ分析に触れてきたかなどが求められます。データサイエンティストと一口に言っても、就職・転職したいのが事業会社かデータ企業かによって目指す方向性が異なるので注意してください。
データサイエンティストの資格取得に関する注意点
最後に、データサイエンティストの資格取得にあたっての注意点を3つご紹介します。
資格は就職・転職を保証するものではない
本記事でご紹介した資格を含めたさまざまなデータサイエンティストの資格は、取得によって就職・転職を保証するものではありません。
したがって資格勉強を始める前に「なぜその資格を取得するのか?」という目的を明確にした上で、取得した資格をどう活かすかまで考えながら資格取得を目指してください。
データ企業に入社した後も研鑽が欠かせない
データサイエンティストを目指す方の中には、「資格を取得してデータ企業に就職・転職すればデータサイエンティストになれる」と考える方もいます。
しかし、データ企業に入社したからといって前線で活躍できるわけではありません。入社後も継続的な研鑽を重ねなければ、いつまでもアシスタントレベルで燻ることになります。
資格取得のプラスして英語力を身につけよう
データサイエンティストを本格的に目指すのであれば、資格取得にプラスして英語力も身につけてみましょう。
データサイエンスの前線は欧米諸国であり、データサイエンスに関する最新の情報・論文は英語力がなければ読み解けません。世界的に見ると日本はデータ後進国なので、英語力を身につけ、海外の最新情報・論文からデータサイエンスに関するスキル・知識をどんどんアップデートしていってください。
まとめ
本記事ではデータサイエンティストのおすすめ資格や、資格取得のメリットなどを解説しました。
資格取得は大学のデータサイエンス部での学び直しよりも学習的・時間的な難度が下がるため、今からデータサイエンティストを目指したい文系学部の学生や社会人が体系的なスキル・知識を身につけるためにおすすめです。
しかし前述のように「資格取得=データサイエンティストになれる」わけではないため、目的に応じてどの資格を取得すべきか熟考した上で行動に移しましょう。
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