カスタマーインサイトを簡単に理解できる代表的な10個の事例

B2Cのビジネスにおいて、消費者の心を掴む商品やプロモーションの企画は1つの重要なゴールと言えます。多様化する消費者の購買行動とニーズをとらえるためには、彼らに対する深い理解が必要です。「カスタマーインサイト」は、消費者の購買行動とニーズを深く理解するための概念ではありますが、抽象的であり理解に躓くマーケターの方が多くいます。本記事では、インサイトの概念と具体的な事例を示すことで、わかりやすくインサイトを解説します。

インサイトとは

インサイトとは、”ある現象の原因を、その背景や文脈に基づき解釈を加え理解すること”です。特に、マーケティングにおけるインサイトとは、「カスタマー・消費者・コンシューマーインサイト」とも呼ばれ、「消費者の購買行動のきっかけとなる心の本音」を指す。このインサイトを理解することができれば、このインサイトを刺激するような商品・サービス・プロモーションをマーケットに投入し、ビジネスを成功に導くことができます。

このカスタマーインサイトは、「心の本音」であり、潜在的なニーズを表しているとも言えます。潜在的なニーズなので、競合する他社が知りえない独自の商品やサービスを企画することができ、その意味でもこのインサイトを理解することは非常に重要です。

カスタマーインサイトとニーズの違い

どちらも、「消費者が求めるものを言語化した」ものですが、ニーズは「消費者本人が理解している自身の欲求」であり、カスタマーインサイトは「消費者本人が他人に説明できない自身の行動に対する本音」と表現することができます。この2つは、表にすると以下のような違いがあります。

なお、ニーズの中でも「潜在ニーズ」というものがあります。所説がありますが、「直接的に把握することができないニーズ」という意味では「カスタマーインサイト」に近い概念と考えて構いません。

ニーズ

 

カスタマーインサイト

消費者本人が理解している自身の欲求

意味

消費者本人が他人に説明できない自身の行動に対する本音

表面的:消費者の欲求を素直に表現。

消費者への
理解の深さ

真相心理:消費者の欲求と世の中の制約の間の葛藤を内包したものを表現。

できる。

消費者自身から
直接聞けるか?

自身の本音に気づいていない、または、本音を他人に説明することに恥ずかしさや戸惑いがあるため、消費者から直接聞くことができない。

インタビュー・アンケートで、
消費者に直接的に聞く。

把握の仕方

事象観察、消費者への共感、
それらの解釈
によって得られる。

競合他社も容易に把握することができ、
競争優位性は低い

競争優位性

容易に入手することができないため、
競争優位性がある。

カスタマーインサイトを得るためには、消費者とマーケット構造に対する観察と深い理解が必要です。対象となる商材やターゲットとなるカスタマーの属性により着目すべき観点は異なります。そこで、本記事では、様々な商材におけるインサイトの事例を紹介します。

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カスタマーインサイトを理解することが、なぜ重要なのか?

「顧客視点」での企画を考えるマーケターにとって、カスタマーインサイトは重要な考え方です。モノや情報があふれた現在において、自社の商品やサービスを認知して選んでもらうためには、他社や他商材との差別化が必要です。表層的なニーズだけをとらえた企画では差別化は難しく、「顧客自身が気づいていなかったニーズ:カスタマーインサイト」が重要となります。

新たな価値を提供する商品/サービスの開発するため

コモディティ化した商品があふれる現代において、革新的な商品や開発をすることは困難を極めます。表面的なニーズをとらえた企画は既視感があり、すでにマーケットには類似した商品が出ていることがよくあります。カスタマーインサイトは、商品開発において新たな視点を提供します。カスタマーインサイトは、「顧客すら気づいていなかったニーズ」であり、カスタマーインサイトに基づいた新商品は、彼らの期待を超えるような価値を提供することができるようになります。

人の印象に残るマーケティング・プロモーション企画をするため

一般的に、1日に人が目にする広告は、4000~10,000件と言われています(link)。バナー広告やリスティング広告、動画内に流れる広告など様々ありますが、一般的にはそのほとんどは、無視または認知すらされていません。その中で、ターゲットとなる顧客に対して印象に残る広告を提供するためには、顧客に対して「共感と自身との関連性(Relevancy)」を短い時間で伝えるメッセージが重要です。この短く共感性を高いメッセージを提供するためにより具体的な顧客の経験価値に立脚したカスタマーインサイトを用いることができます。

カスタマーインサイトをしみじみ理解できる事例 – 10選

マクドナルド / クォーターパウンダー

既成概念/
行動に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

マクドナルドでは、野菜も食べられないし、味付けが濃く、ちょっと脂っこくて健康に悪そう

健康に悪いから食べたくない。

不健康かも知れないけど、あのハンバーガーとフライドポテトを食べているときのちょっとした罪悪感がたまらない。

「クォーターパウンダー」:マクドナルドのコア層に向け、背徳感をあおる高カロリー商品を提供。

参考:Wikipedia クォーターパウンダー

カリフォルニア牛乳協会 / Got Milkキャンペーン

既成概念/
行動に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

牛乳は子供の飲み物。カルシウムや栄養豊富だと、わかっていても、わざわざ飲む必要は無い。

栄養を摂取するために牛乳を飲む。

甘く口がぱさぱさするような食べ物、例えば、クッキーやカステラに最も相性の良い飲み物は、牛乳である。

クッキーやケーキ売り場で、「牛乳買った?(Got Milk?)」キャンペーンを展開。

参考:Wikipedia Got Milk Campaign

SUBARU / Eyesight

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

自動車の運転と交通事故は隣り合わせ。安全に配慮した車が欲しいが、機能が複雑でわかりにくく、どのメーカーの車が安全なのか、わからない。新しい機能は、複雑である。先進技術だってシンプルに簡単に使いたい。Subaru アイサイト、「ぶつからないクルマ」というシンプルなメッセージで商品を訴求。

参考:Wikipedia SUBARU Eyesight

日清食品 / カップヌードルプロ

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

カップ麺は、手軽に食事ができることがメリットなので、安くて高カロリーであるべき。カップ麺は健康に悪い。食事に気を使っていつもカロリーや脂質・タンパク質の量を意識しながら食事をしているけど、ちょっと食傷気味。たまには、罪悪感なく、ジャンキーな食事を罪悪感なく味わいたい。「カップヌードルプロ」:カップヌードルの味をそのままに、糖質を抑え、タンパク質を増量した。

参考:カップヌードル「カプヌのプロ リピーター続出 篇」

ソニー・コンピュータエンタテインメント / Playstation 4

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

テレビゲームは、子供の遊び道具。大人がゲーム機を購入して遊んでいる、というのは、恥ずかしいこと。ゲームは、子供のためのもの。ゲームをする、というのは、自分ができなかったことをゲームの中で疑似体験すること。単なる「子供の遊び」の枠を超えた娯楽なのだ。「PS4」
『できないことが、できるって、最高だ。』キャンペーン

参考:Playstation.blog 山田孝之が、人を超えて超人化。PS4®新TVCM「できないことが、できるって、最高だ。2017」篇を公開!

大戸屋

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

定食屋は、男性サラリーマンが通う場所。女性が一人で入るのは、恥ずかしく勇気が必要。定食屋は、男性が行くところ。女性一人でお店に入るところや、食事している姿を他人にできるだけ見られたくない。「大戸屋」
店舗を地下や2階に配置し、女性でも来店しやすい、という点を訴求。

参考:大戸屋

ハーゲンダッツ

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

アイスクリームは、子供が食べるもの。カラフルな色で、味わいもシンプルで、価格も、50円から100円程度)大人が食べるものではない。アイスクリームは、子供の食べ物大人が、デザートやご褒美として楽しむことができる濃厚で上品なアイスクリームが欲しい。「ハーゲンダッツ」
『大人のための高級アイスクリーム』

参考:Why Häagen-Dazs? 食べたくなる7つの理由 

NewsPicks

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

ニュースは、事実が客観的に報じられているべき。ニュースは、客観的で執筆者の個人的意見は含まれるべきではない。ニュースに対する自分の意見が、他人と違うと自分がグループから浮いた存在になりそうで怖い。理解を深めるためにも、オピニオンリーダーの意見を参考にしてから、自分の意見を持ちたい。「NewsPicks」
ニュース記事と自分が共感できるオピニオンリーダの意見の両方を一緒に読むことができるサービスの提供

参考:NewsPicks

P&G / アリエール

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

洗濯物がきれいになる、とは「汚れがなくなる」こと。しかし、普段生活していても目に見えるような汚れはほとんどないし、メーカーごとの洗剤の違いがわからない。目に見える汚れが落ちることが、きれいになる、ということ。目に見える汚れは、落ちたことを確認できる。しかし、洗濯しても残る悪臭がある、ということは、洗濯をしても、目に見えない菌が残っているのでは?「アリエール 除菌プラス」
除菌もできる洗濯洗剤は、アリエールだけ。

参考:P&G アリエール 除菌プラス

花王 / キュキュット

既成概念/
欲求に対する障壁

葛藤

インサイト

ブランドからの価値提供

家族の食器を洗うのは、重労働。台所に積まれた山盛りの食器を見るとうんざり。皿洗いは、重労働で嫌いな家事。皿洗いを始める前の台所に積まれた皿の山にはうんざりする。だけど、一枚ずつ皿が洗われて、油汚れがきれいに取れた瞬間に、ちょっとした達成感を感じる。「キュキュット」
濃密な泡でパッと洗えてキュッと消える実感を伝える商品とプロモーションの提供。

参考:Zakzak 花王「キュキュット」 高い洗浄力、泡立ちと泡切れを両立(2015.01.27)

まとめ

カスタマーインサイトとは、消費者の本音であり、自身の欲求と世の中の前提の間の葛藤が表現されています。この葛藤を適切に捉え、そこに対して提案する商品やプロモーションは、消費者にとって大きな価値を提供することができます。消費者のインサイトを理解するための第一歩として、自分自身の消費行動について、自身も気づいていない『インサイト』を考えてみませんか?

データビズラボでは、消費行動のデータ分析やアンケートから分析によりカスタマーインサイトを導くご支援をさせていただいております。
状況やニーズに合わせた様々なサポートをご提供いたしますのでぜひお問い合わせください。

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