「デジタル化」のかけ声のもと、ITツールの導入やデータ活用を進める企業が年々増加しています。日経グループが行ったアンケート調査によれば、「DXを推進している」と回答した企業は2020年から2022年にかけて22.5%増加しました(日経クロステック、国内674社の「デジタル化実態調査2022年版」を発表|日経BPより)。
一方で「どこから手をつければ良いのわからない」と、デジタル化に足踏みをしている企業も少なくありません。そこで本記事では、デジタル化の意義や類語との違いをおさらいしながら、デジタル化に向けたステップ・具体案をご紹介します。
デジタル難民企業として社会に取り残されないよう、本記事を通じて「今やるべきデジタル化」を明確にしていただければ幸いです。
目次
デジタル化とはアナログからの脱却
そもそもデジタル化とは、アナログのまま行われている業務からの脱却です。
デジタル化に足踏みをしている企業の多くは、デジタル化の定義を難しく捉えてしまっている傾向があります。近年では「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」などさまざまなデジタル用語が登場しているため、「高度なデジタル技術を用いないとデジタル化にならない」といった認識が浸透してしまったのでしょう。
しかし、実際のところデジタル化の定義はシンプルなものであり、企業ごとの状況に合わせて「やれるところからデジタル化する」という姿勢がとても大切です。
2つのデジタル化について
デジタル化についてもう少し掘り下げてご説明します。
デジタル化には「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」と呼ばれる、2つの細かい定義があります。それぞれの違いは下記のとおりです。
デジタイゼーション | 紙の資料をデータ化したりオンライン会議を導入したり、アナログ業務から脱却すること。 |
デジタライゼーション | AIやIoTを活用し、データ収集とリアルタイム処理を通じて製品・サービスに新しい付加価値を生むこと。 |
デジタイゼーションとデジタライゼーションを通じて、企業の組織文化やビジネスモデルなどインパクトの大きなデジタル化へと至るのがDXです(詳しくは後述します)。
デジタル化に際し、どこから手をつければ良いのかわからないという企業はまずデジタイゼーションから始めましょう。
DXの大指針となる「DXの羅針盤-よくある19の質問に回答」をダウンロードする
デジタル化と労働生産性の関係について
デジタル化を推進するとさまざまなメリットが企業にもたらされます。その最たるものが「労働生産性の向上」です。
労働生産性が向上すれば人材コストが相対的に下がり、時間という資源を最大限活用できるようになります。これにより新たなビジネスチャンスの創出や顧客満足度の向上など、さまざまな事業戦略に注力できるようになるでしょう。
デジタル化と労働生産性の関係を表すデータ
デジタル化と労働生産性に関する興味深いデータをご紹介します。
デジタル競争力国際ランキング | 労働生産性国際ランキング※ | |
---|---|---|
1 | オランダ | 18位 |
2 | シンガポール | 3位 |
3 | デンマーク | 12位 |
4 | スイス | 5位 |
5 | 韓国 | 36位 |
6 | スウェーデン | 14位 |
7 | フィンランド | 21位 |
8 | 台湾 | – |
9 | 香港 | 11位 |
10 | カナダ | 26位 |
11 | アラブ首長国連邦 | 17位 |
12 | イスラエル | 2位 |
31 | 日本 | 43位 |
※就業者1人当たりのGDP(GDP per person employed)
上記はIMD(国際経営開発研究所)とWorld Bank(世界銀行)がそれぞれ公表している、デジタル競争力と労働生産性の国際ランキングを比較したものです。
このデータを見て分かるように、デジタル競争力と労働生産性には一定の相関性があると考えられます。
国単位から企業単位に置き換えて考えても同じことが言えるでしょう。明確なデータはないものの、デジタル競争力が高い企業ほど労働生産性が高く、経営資源を有効活用している傾向が強いです。
企業がデジタル競争力と労働生産性を高めるには、「やれるところからデジタル化する」のがやはり重要です。デジタル化を小さく始め、そこでの成功体験を流用していくことで、組織全体のデジタル化へと発展させられます。
<参考データ>
World Digital Competitiveness Ranking 2023|IMD
GDP per person employed (constant 2017 PPP $)|World Bank Open Data
デジタル化とIT化・DXの違い
デジタル化と並んでよく聞くデジタル用語が「IT化」や「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」です。それぞれの言葉の違いを整理してみましょう。
IT化:ビジネスプロセスの効率化
IT化とは従来のアナログ業務に対し、IT(情報技術)を用いてビジネスプロセスを効率化する取り組みのことです。
デジタル化が、デジタイゼーションやデジタライゼーションも含めた広義的な言葉なのに対し、IT化は「ITツールを用いた取り組み」という狭義的な意味を持っています。
たとえばクラウド会計ソフトを導入して毎日の仕訳作業を自動化したり、POSレジを導入して売上データの収集・分析を行えるようにしたりと、比較的小規模なデジタル化を指します。
前述したデジタイゼーションを単に「IT化」と呼ぶこともあるので、「IT化=デジタイゼーション」と捉えても問題ありません。
DX:ビジネスモデルや組織の変革
DXとは前述したデジタイゼーションとデジタライゼーションを突きつめ、業務や製品・サービスだけでなく、ビジネスモデルそのものや企業文化にまでデジタル変革を生む取り組みのことです。
デジタル化とDXの違いは「インパクトの大きさ」にあると言えます。デジタル化の影響力は業務プロセスや製品・サービスなど限定的なのに対し、DXの影響力は企業とそのエコシステム(組織・文化・従業員・顧客・投資家・市場)にまで及びます。
しかし、「影響力が強くないとDXではないのか」ということではありません。DXは一意の定義を持ったデジタル戦略ではなく、企業ごとにそれぞれのDXが存在します。
たとえばある酒造会社ではデータ解析を用いて、杜氏(酒造りの責任者)の技術を一般社員に継承しています。これ自体はデジタル化の範囲ですが、高品質な商品の安定的供給に繋がり、現在ではデータを用いて海外醸造所の建設までビジネスを拡大しています。
最初の一歩は小さなものでも、企業課題の解決と将来性を見据えたデジタル化に取り組めば、いずれ企業とエコシステムまで巻き込むDXに成長します。
DXについての詳しい解説は以下の記事で行っております。本記事と合わせて参考にしてみてください。
デジタルトランスフォーメーションの講演を200回以上やってきた私が受けたよくある19の質問に回答します
デジタル化を進める5つのステップ
デジタル化を進める際の基本は以下の5ステップです。
- 経営課題・業務課題を洗い出す
- デジタル化の必要性を検討する
- デジタル化の目的・目標を明確にする
- デジタル化の手法を検討する
- 必要に応じたツール導入・人材確保を行う
- デジタル化の効果検証・改善を繰り返す
各ステップでやるべきことやポイントを整理していきましょう。
1. 経営課題・業務課題を洗い出す
デジタル化のステップは必ず経営課題または業務課題の洗い出しから始まります。「デジタル化ありき」で取り組みを進めてしまうと、現状課題を無視したデジタル化を推進してしまうリスクが高いので注意してください。
経営課題を整理する場合は経営層の感覚だけに頼るのではなく、財務計データなどを確認しながら定量的に課題を洗い出してみましょう。
たとえば「事業の収益性が下がっている」と感じていても、原因や解決に向けたアプローチは多種多様にあります。「労働生産性の低下に伴って収益性も下がっている」など隠れた原因も考えられるため、今ある情報を揃えた上で経営課題の整理を行うことが大切です。
業務課題の整理では、業務フロー図を一度作成してみると良いでしょう。業務フロー図はシステム開発の現場で、業務プロセスに即したシステムを開発(導入)するためによく用いられています。
業務フロー図の一例
出典:鈴村さんが指南する業務フロー図の上手な書き方|日経 XTECH
業務フロー図を作成してみると業務プロセスのデジタル・アナログ部分を整理でき、効率的な業務プロセスの妨げになっているボトルネックを発見しやすくなります。「既存の業務プロセスのうちデジタル化の余地があるところ」も把握できるため、今後のデジタル化をスムーズに進めることにもつながるでしょう。
2. デジタル化の必要性を検討する
経営課題・業務課題を整理できたら、続いてデジタル化の必要性を検討してみてください。「デジタル化を進めるのにデジタル化の必要性を検討するとは?」と思われるでしょう。これは経営課題・業務課題を解決するにあたって、デジタル化が正解とは限らないためです。
中小企業の例を挙げてみましょう。中小企業は経営の柔軟性を武器に、顧客の要望に臨機応変に対応することで競合優位性を保っているケースが少なくありません。同時に契約や受注、製品・サービスの提供の非効率性をどうにか改善したいという課題を持っています。
それらの課題を解決するためにデジタル化を推進した結果、従来のように顧客の要望に臨機応変に対応することが難しくなり、顧客の満足度・信用度を大きく下げるリスクがあります。市場を大きく広げられている中小企業ならリスクを許容することもできますが、限られた顧客との長期的取引によって成り立っているような中小企業の場合はリスクを許容するのは難しいでしょう。
上記の例のように、経営課題・業務課題を解決する手段はデジタル化だけとは限りません。「デジタル化に成功したが利益は下がった」では今後の経営が成り立たないので、デジタル化によってどのような影響が起きるかも想定した上で必要性をしっかり検討しましょう。
3. デジタル化の目的・目標を明確にする
続いて、一貫性のあるデジタル化を進めるために目的・目標を明確にし、関係者間で共有しましょう。デジタル化の目的・目標を決めるにあたって、「KGI」と「KPI」を整理すると関係者間で共有可能な目的・目標として機能します。
KGIとは「Key Goal Indicator」の略であり「重要業績達成指標」と訳されます。平たく言えば、デジタル化を通じて達成したいゴールのことです。たとえば、「経費処理業務にかかる時間を〇ヶ月以内に50%削減したい」といったKGIを設定します。ポイントは期限を決め、なおかつ定量的に表すことです。
次にKPIとは「Key Performance Ingicator」の略であり「重要業績評価指標」と訳されます。KPIはあらかじめ設定したKGIの進捗・達成を測るために設定する、いくつかの細かい指標です。たとえば先ほどのKGIに対しては、「経理担当者の月末の残業時間平均」や「経費申請〜処理にかかる総時間」などをKPIとして設定できます。
このようにKGI・KPIを設定し、関係者間で共有することで目的・目標のある一貫したデジタル化を推進できます。デジタル化そのものが目的になってしまったり、デジタル化戦略が想定外の方向へ進んでしまったりするリスクを軽減するためにも、目的・目標の明確化は必ず行いましょう。
4. デジタル化に向けた計画立案・実行
デジタル化の目的・目標を明確にできたら、いよいよデジタル化に向けて計画の立案とその実行のステップです。実際には、ステップ3と本ステップをほぼ同時進行することになるでしょう。
デジタル化に向けた計画立案では、次のような項目を個別具体的に決めていきます。
- どのような手法でデジタル化を推進するか
- どれくらいの期間実施するか
- デジタル化にかけられる予算はいくらか
- 導入(開発)すべきITツール・アプリは何か
- 新たなデジタル人材の確保・育成は必要か
- 人件費も含めてかかる総コストはいくらか
- 計画実行時に生じる課題・リスクは何か
計画立案を行う際は、構想を膨らませすぎて「机上の空論」にならないよう注意してください。スモールスタートを基本と考え、小さく始め、成功体験を積み上げていくのが理想的です。
ただし「スモールスタートでは経営層が納得してくれない」という課題がよく生じるので、スモールスタートがいかに効率的かつ効果的かを説明できる資料を用意すると良いでしょう。
5. デジタル化の効果検証・改善を繰り返す
デジタル化の最後のステップは、実行したデジタル化戦略の効果検証・改善を繰り返すことです。したがって「デジタル化とは実質的に終わりがないもの」だと言えます。
たとえば経費処理にかかる業務時間を削減するために、クラウド会計ソフトを導入したと仮定しましょう。ツールを導入すればデジタル化が自走し、業務時間が削減されるわけではありません。デジタル化とは言ってもあくまで「人の手によって実現するもの」であり、継続的な効果検証・改善が欠かせないのです。
「終わりがないならコスト・労力ばかりかかるのでは」と不安になるでしょう。しかし、最初は小さなデジタル化でも行き着く先はインパクトの大きなDXです。DXを実現できれば高いデジタル競争力を手に入れ、労働生産性を大きく向上できます。
データやAIがビジネスの根幹にまで入り込んだ現代ビジネスにおいて、デジタル競争力はすでに、時代を生き抜く企業に欠かせない要素となっています。その要素を生み出すためにもデジタル化を小さく終わらせず、デジタル化によって得られた新たな経営資源をさらに投資していく、という姿勢を大切にしてください。
レベル別、5つのデジタル化具体案
デジタル化のステップは理解していても、「実際にどこから手をつければ良いのかわからない」という方も多いでしょう。そこで、5つのデジタル化具体案をレベル別でご紹介します。
レベル1. ITツールを導入して脱エクセル
IT黎明期にはデジタル化の最前線だったエクセルですが、現代ビジネスにおいてはデジタル化の足かせになっているケースも少なくありません。
たとえば商品の在庫管理をエクセルで行っている企業では、在庫データのリアルタイム性やファイル共有にさまざまな問題が生じます。アクセス権限を管理するのも難しいため、「在庫データを記録したファイルが紛失・消失した」などのトラブルが絶えません。
一方で在庫管理機能を有している販売管理ソフトがあれば、バーコードリーダーと連携してリアルタイムな在庫データの記録・共有を行えます。在庫管理業務が効率化されるだけでなく、在庫を正確に追えるため商品ロスを防ぎ、需要予測も行いやすくなるでしょう。
もちろん在庫管理以外にも、エクセルで管理されているさまざまな業務がITツールの導入により、さらなるデジタル化を実現できます。
初めてのデジタル化に取り組む企業は、脱エクセルから実施を検討してみてください。
レベル2. 電子契約でペーパーレスを促進
電子契約導入によるペーパーレス化は脱エクセルのように簡単そうに見えます。しかし「顧客を巻き込んだデジタル化」を推進しなければいけないため、脱エクセルより少しレベルの高いデジタル化です。
ちなみに電子契約とは、従来は紙を用いて行われていた受注・契約業務を電子的な業務プロセスに移行することです。受注・契約にかかわる業務がシステム上で完結するため、大きな業務効率化が見込めます。また、電子契約は契約書などの印刷コストに加えて、印紙代まで削減できます(電子契約は印紙不要なため)。
顧客を巻き込んだデジタル化であるため脱エクセルよりも難度は高いですが、ITツール導入による一定のデジタル化が進んでいる企業では、次のデジタル化戦略として取り入れてみてください。
レベル3. サーバー環境をクラウドに移行
オンプレミス(物理環境)でサーバーを運用している企業は、サーバー環境のクラウド移行を検討してみましょう。クラウドサーバーには次のようなメリットがあります。
- 柔軟性・拡張性が大幅にアップする
- 保守・運用にかかる負荷を軽減できる
- セキュリティ対策・BCPになる
- 安全なリモートアクセスを実現できる
クラウドサーバーならインスタンス(仮想マシン)の立ち上げ・削除を手軽に行えるだけでなく、必要に応じて容量拡張や負荷分散なども柔軟に行えます。柔軟性・拡張子がアップすることで、オンプレミスで問題になっていたサーバーの増設・移設・構成変更にかかるコスト・労力を大幅にカットできます。
また、サーバー環境のクラウド移行は「一部を少しずつ」などさまざまなスタイルで移行できるため、企業ごとの運用実態に合わせたデジタル化を推進できるのが特徴です。
レベル4. RPAで定型業務を自動化
デジタル化のレベルをさらに上げたい方は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を検討してみてください。
RPAとはプログラムによってPC作業を自動化するツールであり、ホワイトカラーを中心とした定型業務の自動化で高い効果を発揮しています。日経グループが行った調査によれば、三井住友フィナンシャルグループは年間100万時間以上の作業時間をRPAによって削減しています(1700万時間が浮く 見えた、効率化の威力|日経クロステックより)。
実施難度は高いですが、非常に大きなインパクトをもたらすのがRAPを使ったデジタル化です。近年ではノンプログラミングで自動化ロボットを開発できる、事業部門ユーザー向けのRPAも増えています。
「大企業の半数以上が導入している」というデータもあるRPAですが、中小企業の導入率は現在も低水準のままです。しかし人材不足問題など慢性的な経営課題を解決できることから、中小企業も積極的に導入を検討すべきツールだと言えるでしょう。
レベル5. BIツールでデータ・ドリブンを実現
「ある程度のデジタル化は推進したからDXに本腰を入れたい」という企業は、BIツールの導入並びにデータ・ドリブンの実現を目指しましょう。
BIツールとは社内外で生成されるさまざまなデータを収集・解析し、データが可視化されたダッシュボードを構築するツールです。一方、データ・ドリブンとはBIツールなどを通じて得られた情報やインサイト(洞察)をもとに、「データとして根拠のある意思決定を下すこと」を意味します。
BIツールが日本市場に上陸してからすでに10年以上が経過していますが、AIやIoTと言った先進技術の進歩に伴い、BIツールの重要性が再認識されています。我々のようなデータビジネスを展開する企業からすると、「世界はデータで溢れているがデータのままではビジネスに活用できない」という基礎認識が、日本経済界にもようやく浸透してきたという印象です。
BIツールを活用したデータ・ドリブンの実現は、デジタル人材の確保・育成やPoC(導入前検証)などやるべきことが多く、難度の高いデジタル化でもあります。その一方で、RPAのように作業時間を直接的に削減するようなデジタル化ではなく、「DXやイノベーション創出の根幹になるデータ活用基盤」を作るための、非常にインパクトの大きなデジタル化です。
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デジタル化を成功させるポイント
デジタル化を推進するにあたって成功ポイントとなる、3つの要素をご紹介します。
経営層自身がデジタル化を推進する
デジタル化を成功させるためにまず欠かせない要素が、「経営層自身がデジタル化を推進する」です。大企業となるとプロフェッショナルなデジタル人材をCDO(最高データ責任者・最高デジタル責任者)として迎え、組織的にデジタル化を推進しています。
一方でCDOを設置していない企業や、デジタル人材を確保していない企業では経営者や役員クラスが自らデジタル化へ積極的に参加しなければ、ほとんどが失敗に終わります。
日本企業の多くは組織のサイロ化が進み、システム・データ・情報が部門ごとに分断されています。「部門ごとの個別最適化」が正解と考えられていた従来のデジタル化ならそれでも問題はありません。
しかし現代ビジネスで重視されているのは、部門横断的なシステム・データ・情報の共有であり、サイロ化された状況を破壊・再構築するのがデジタル化の本質です。そのため経営層自身がデジタル化を推進するか、経営層の責任を持ってプロジェクト・リーダーを任命することで、本質的なデジタル化が初めて動き出します。
従業員にデジタル化の意義を理解してもらう
デジタル化を進めるにあたって、従業員から反発が起きるのは珍しくありません。なぜなら、「レベル1. ITツールを導入して脱エクセル」のような初歩的なデジタル化であっても、業務プロセスなり企業文化なりに何らかの変化が生じるからです。
心理学において人は、「現状維持バイアス」という認識の偏りを持っています。これは、変化によって物事が好転するとわかっていても、変化を避け現状を維持してしまう心理作用のことです。
現状維持バイアスは人間の生存本能として備わっているものなので、デジタル化を推進し、変化が生じるとわかれば必ずと言って良いほど従業員からの反発が起きます(例外もありますが)。
そうした反発が本来は企業と従業員の双方にとってメリットのあるデジタル化の妨げにならないよう、デジタル化の意義を理解してもらう取り組みを行いましょう。
具体的には、なぜデジタル化を進めるのか、従業員にどのようなメリットがあるのかなど、資料も配布しながら丁寧に説明します。「デジタル化は自分たちのためでもある」と、従業員が自分ごととして考えられる環境がデジタル化推進を大きく後押しします。
デジタル化と同時に仕組み化を進める
デジタル化における「仕組み化」とは、組織の誰もが同じようにデジタル化のメリットを教授し、社内でデジタル格差を広げないためのものです。
デジタル化を推進する中で、プロジェクト・メンバーだけがデジタルスキル・ITリテラシーを高めていき、他の従業員との格差が広がってしまうケースがあります。これでは組織全体を巻き込んだデジタル化はおろか、プロジェクト・メンバーと事業部門のコミュニケーションすらままならなくなってしまいます。
また、デジタル格差が広がると従業員の不満・ストレスが増し、企業に対する満足度低下や離職率上昇など、最悪の状況の引き金になる可能性もあります。
組織全体でデジタル化を推進し、高いデジタル競争力と労働生産性を手に入れ、誰もがデジタル化のメリットを享受できる環境を理想とすることを忘れないでください。
まとめ
本記事ではデジタル化について、その意義や実施ステップ・具体例、成功のポイントなどを解説しました。最後にお伝えしたいのは、「デジタル化で何より重要なのはヒトである」ということです。
デジタル化と聞くと、高度なデジタル技術やITツールの導入によって実現するものと考えがちでしょう。それも間違いではありません。しかし、高度なデジタル技術を扱うのもITツールを導入するのもヒトであり、デジタル化を推進するのもまたヒトです。
デジタル化は組織利益のためだけでなく、経営層も含めた従業員や顧客、あるいは株主といったヒトのためでなくてはいけません。「デジタル化の中心に必ずヒトを据えた戦略」を実施している企業は必ずと言って良いほどデジタル化に成功し、その恩恵を大いに受けています。
ヒトを中心に据えた戦略をもって、理想のデジタル化を目指してみてください。
データビズラボでは多種多様な企業のデジタル化支援を通じて、豊富なノウハウ・ユースケースを保有しております。デジタル化について何かお困りの際は、データビズラボにぜひご相談ください。
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