デジタルトランスフォーメーションとは?わかりやすく解説

今更聞けない「デジタルトランスフォーメーション」とは?

「わが社もDXを導入せにゃアカん、何を、どこまで、どのようにするか、オマエ、調べてこい」と偉い人から今まさに命ぜられている状態の人も多いでしょう。

この記事では、デジタルトランスフォーメーションに関連する講演やセミナーを200回以上させていただいてきた私が、デジタル領域にいらっしゃらない方にもできる限りわかりやすくデジタルトランスフォーメーションを解説する記事です。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を雑誌やメディアで見ない日はなくなりました。そのような時に、今更「デジタルトランスフォーメーションって何?」と周りに聞けない方も実際多いでしょう。

漠としたデジタルトランスフォーメションを理解いただくため、豊富な事例を入れたり、多くの側面からできる限り噛み砕きわかりやすく解説しました。最後までお読みいただくと、デジタルトランスフォーメーションの何たるかを掴め、自社のデジタルトランスフォーメーションへの行動につながるものと信じています。

目次

1.デジタルトランスフォーメーションとは?

デジタルトランスフォーメーションという言葉自体、まさに「デジタル(Digital)にトランスフォーム(Transform)する」ですので、「デジタルへの変換・転換」の意です。概念的な言葉であることから、デジタルトランスフォーメーションの定義は文脈や背景、組織で異なることも多く、全てに適用できる一義的な定義は実際難しいものです。しかし、実務上多く引用される経済産業省のDXレポートでは以下のように解説されています。

1-1.デジタルトランスフォーメーションとはビジネス自体をデジタル化することである

経済産業省『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』では、以下のようにデジタルトランスフォーメーションの定義がされています。幹部資料として嫌という程見てきた方も多く、目が滑るかもしれません(笑)。しかしこれが、まさに「DXって何?」という人向けの最初に理解すべき定義とも言えます。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術) を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”

ここで記載されている「競争上の優位性」とは、単なる情報のデジタル化やプロセスのデジタル化にとどまらず、ビジネスモデル自体やビジネスの前提のデジタル化をはかるということに他なりません。

しかし、「競争上の優位性」がなければデジタルトランスフォーメーションと言えない、ということではなく、現在デジタル化につながる行動に踏み出していれば、それは広義的なデジタルトランスフォーメーションの第一歩を進めていると言って良いでしょう。

小噺:デジタルトランスフォーメーションの略がDTではなくDXである理由
「デジタルトランスフォーメーション」は、英語では「Digital Transformation」と書きます。通常アルファベットの略称は頭文字をとって略称にすることが多く、この例でいくとDTになるような気もします。しかし、デジタルトランスフォーメーションは、英語の「Trans-」を「X」で略称表記されると言うことから来ています。

1-2.企業が進めるデジタルトランスフォーメーションの事例

デジタルトランスフォーメーションとは様々な定義で語られるものの、ここでは一旦イメージを掴んでいただけるような事例を挙げたいと思います。数多くの具体的な事例に触れることで、インスピレーションが湧いたり、自社に適用できるアイデアを思いつけるはずです。

Audi:伝統的なショールームのスタイルからデジタル体験の創造で売上60%以上アップ

Audiは伝統的なショールームという物理的な空間にテクノロジーを導入しました。ショールームに導入したマルチタッチテーブルやタブレットでの提案、蓄電(パワーウォール)などです。

マルチタッチテーブル

出典:Audi City

パワーウォール(システムの稼働状況や電力の状況などもアプリでモニターする)

出典:Audi City

    売上アップの背景には、こういったデジタル体験の洗練化により販売のコンサルテーションの効率化が行われ、データがたまりやすくなります。それにより必然的に、一人一人の顧客に刺さるような提案がされ、顧客への体験価値が広がったものと考えます。

    GE:リアルタイムのエネルギーマネジメントでコスト削減と電力効率アップを実現

    GEのエネルギーマネジメントは川上から川下までをカバーし、データの取得の仕方、どのようにデータをガバナンスするか、ネットワーク、アナリティクスにどう使うかまで一貫して考えられていて、デジタルトランスフォーメーションを実現している好例です。

    組織でのリアルタイムデータの全体像とその要素

    出典:Advanced Energy Management System

    ここまで川上から川下まで電力や風力などのエネルギーに関しデジタルトランスフォーメーションを推し進め、基盤からアナリティクスなどの活用まで持っていけている例はないでしょう。この全体像から、強固なデータ活用基盤を整え、リアルタイムでの分析を行うことでもっとも効率的な電力消費を実現し、最適な電力の調達、貯留の予測ができているものと考えます。

    エネルギーの効率性や効果性をモニタリングするダッシュボード

    出典:Advanced Energy Management System

    Disney:リストバンドでよりパーソナライズされた顧客体験を創出

    マジックバンドとは、ICチップが内蔵されたシリコン製のリストバンドです。ICチップには一人一人の情報が入っており、園内の様々な場所で利用するものです。ICチップの中に一人一人の情報が(マイディズニーエクスペリエンスの情報)が入っていてディズニーワールド内の様々な場所で利用します。

    MagicBand 2 Coming to Walt Disney World Resort | Disney Parks Blog

    ディズニーのマジックバンド

    出典:Disney Parks 

    ディズニーはこのリストバンドのプロジェクトに必要なインフラ構築・従業員への研修などで10億ドルの投資を行なっています。全ての行動のデジタル化で最高の顧客体験を実現させ、さらなる顧客エンゲージメントを獲得しているのでしょう。ざっくりと平均化した情報ではなく顧客一人一人のデータがとれていることは一人一人の属性や行動を分析でき、顧客体験の設計にあたりとても大きな価値を出しているはずです。

    DXの大指針となる「DXの羅針盤-よくある19の質問に回答」をダウンロードする

    2.デジタルトランスフォーメーションの実現に今すぐ踏み出すべき2つの理由

    ここまで見て、「デジタルに投資するなんて莫大な金額は自社にはない」「お金も時間もかけたくない」「今でもなんとかやっているのになぜ必要なのか?」と思われる方も多いでしょう。

    デジタルトランスフォーメションを進めていかなければ市場にも追いつけず、競合にも追い抜かされてしまうだろうと述べましたが、雲をつかむような大きな話ばかりで自分に置き換えて考えられないという方もいるでしょう。そこで、国内企業が多く向き合っている課題に焦点をあて、今すぐ踏み出すべき理由を深掘っていきましょう。

    2-1.マーケットから取り残される

    デジタルトランスフォーメーションが競争上の優位性を確立することだと言っても、「その効果はよくわからない」もしくは「どのような効果があるのかわからなければ何も始められない」という方も多いでしょう。しかし、デジタルトランスフォーメーションはROIが高いからやるというよりも、どのような場合であれ絶対にやらなければならないこと言えます。

    なぜなら、いわゆる3C分析の観点で、デジタル化されていること自体が軸・標準的なものになっていくことは不可避であるためです。

    3C分析の観点
    自社(Company) :ブランドイメージ、技術力、収益性
    市場・顧客(Customer):セグメント、ニーズ、構造変化、顧客属性
    競合(Competitor):参入難易度、製品の特徴、マーケティング戦略、市場シェア

    この、やらなければマーケットから取り残されるということは世界時価総額ランキングからも顕著に見て取れます。下図は、1992年と2019年の時価総額ランキング比較です。アップル、マイクロソフト、グーグルなどを筆頭に、情報、プロセスを超えてビジネスモデル自体がデジタル化出来ている企業が台頭しており、競合他社を出し抜いていることが明白でしょう。

    世界の時価総額ランキング(1992年と2019年)

    出典:ファイナンシャルスター

    時価総額ランキング上位企業(1992年と2019年) / 世界は大きく変化・日本の地位は低下

    もしかすると、このような世界時価総額ランキングにのるような企業は大企業だし自社には関係ない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、小さな会社こそデジタル化のインパクトは大きいものです。なぜなら小さな会社は人数が少ないため人一人の時間のインパクトや費用のインパクトが大きいためです。そのためデジタル化できることはデジタル化し日常的な仕事の効率性を上げていくことを当たり前にしないと今後生き残るのは苦しくなるでしょう。

    2-2.今コストをかけなければ更にコストがかかるようになる

    経済産業省の『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』は、今コストをかけなければさらにコストがかかるようになってしまうことを説明しているとも言えます。

    ここでは、背景として下記のような国内の問題に触れられています。

    今後DXを本格的に展開していく上では、DXによりビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定めて いくという課題もあるが、これまでの既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化する中では、➀新しいデ ジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまう といった問題が指摘されている。また、既存システムの維持、保守に資金や人材を割かれ、新たなデジタル技術 を活用するIT投資にリソースを振り向けることができないといった問題も指摘されている。

    さらに、これを放置した場合、➁今後、ますます維持・保守コストが高騰する、いわゆる技術的負債の増大とと もに、➂既存システムを維持・保守できる人材が枯渇し、セキュリティ上のリスクも高まることも懸念される。

    特に国内企業でデジタル投資を怠っていた企業にとっては、耳が痛い部分があるでしょう。当該レポートでは、これらを背景に、2025年以降、最大12兆円の経済損失が生じる可能性を見ています。

    出典:『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』

    3.デジタルトランスフォーメーションで特に効果を発揮する企業の特徴

    デジタルトランスフォーメーションを「データ活用」という文脈で考えた時、活用にレバレッジがかかりそうな領域の例は以下です。「データを見て理解できる状態にはなっていて、していないだけ」という企業であれば、本質的な課題設定と技術さえあれば今すぐにデータを見て理解することができ、真に「データを活用」する世界をスピーディに作ることが可能です。

    私の経験と見聞きした知見を基に、データはたまっていてすぐに使える状態にあるが活用しきれておらず使えば大きな効果を発揮しそうだと思う業界として、以下があります。

    3-1.金融業界

    証券・銀行・保険・カードなどの金融業界は、データを多く持っているものの活用できていないでいる業界の一つです。

    大きな理由としてセキュリティの観点で現代的なデータ活用基盤の整備がこれまで難しかったというところがあるでしょう。しかしながら、業界で台頭している企業はセキュリティを現代的なものにアップデートし、データを活用出来る整備を整えているのも事実です。

    金融業界はデータがたまっている年数としても、そして膨大な顧客のデータが蓄積されている点でも、デジタルの力で多くの示唆が出せる業界の一つでしょう。

    3-2.デジタルマーケティング

    デジタルマーケティング領域は、その名の通りデジタル前提のマーケティングなので分析対象がデジタル化されており、行動や結果がデジタルデータとして構造化されていることが多い状態です。しかし、そのデータの分析手法や表現方法、解釈方法が一辺倒になってしまっていたり、他の異種データと合わせて立体的・複合的に分析することが社内の技術的に難しい、ということも多くある領域です。広告効果のさらなるレバレッジをかけるためにデジタル化のパワーを使うと良い領域の一つです。

    3-3.製造業

    製造業も、効果が”わかりやすい”業界・領域の一つでしょう。

    -故障したときの特徴
    -異常停止するときの故障が発生しやすい部品
    -オペレーターのミス検知
    -機械の稼働時間

    など、即座に反応しなければならないオペーレションに直結する業務領域は、デジタルトランスフォーメーションのROIが十分とれる領域でしょう。

    4.デジタルトランスフォーメーションの両輪は情報のデジタル化とプロセスのデジタル化が支える

    前章ではデジタルトランスフォーメーションのなんたるかをまず理解していただくため、ざっくりとした定義や事例を挙げましたが、重要な前提・基盤が2つあります。それは、「情報のデジタル化」と「プロセスのデジタル化」です。

    情報のデジタル化とプロセスのデジタル化はデジタルトランスフォーメーションの“両輪”です。

    4-1.情報をデジタルへ変換することがデジタルトランスフォーメーションの第一歩目である

    まず最初は情報をデジタルへ変換することです。これを、「デジタイゼーション(Digitization)」と呼びます。広義的にはこのデジタイゼーション自体もデジタルトランスフォーメションに包摂されるでしょう。なぜなら、デジタルトランスフォーメーションの第一歩は、情報のデジタル化からスタートするものだからです。

    例えば、テープからmp4に変換する、などもデジタイゼーション(デジタル化)の例です。

    アナログメディアからデジタルメディアへの変換のイラスト

    紙の本のいわゆる「自炊(書籍をPDF化すること)」もデジタイゼーションの一例と言えるかもしれません。

    このように、「情報」自体をデジタルに変換することがデジタルトランスフォーメーションの第一歩であり、広義的なデジタルトランスフォーメーションです。この「情報のデジタル化」が進んでいないもしくはしようとしていない場合、デジタルトランスフォーメションはかなり難しくなります。

    4-2.プロセスをデジタルに変換するのが第二歩目である

    次に、プロセスをデジタルに変換することです。これを、「デジタライゼーション(Digitalization)」と呼びます。最近のわかりやすい例で言えば、「印鑑による承認プロセス」があるでしょう。物理的に印鑑を押印する承認プロセスをデジタル化している例として、ドキュサインやクラウドサインなどのサービスが挙げられます。

    印鑑による承認プロセスのデジタル化

    また、業務フローそのものをデジタル化するSalesforceもわかりやすい例かもしれません。以下は、Salesforceによる営業プロセスの一元化・一本化の説明資料です。

    営業プロセス(顧客管理)自体をデジタル化 by Salesforce

     

    バイモーダルITの考え方がデジタルトランスフォーメーションを推し進める

    IT調査会社のガートナーは、企業のITシステムを2つに分類して考えることを推奨しており、これをバイモーダルITといいます。ざっくり言ってしまうと安定性重視のモード1、機動性と柔軟性を意識するモード2があり、それぞれの良さを融合させるという考え方です。

    画像

    出典:バイモーダルITとは何か?企業がITの2つの流儀を使い分ける方法(ビジネス+IT)

    デジタルトランスフォーメーションの現場では、モード1の価値を重んじる方とモード2の価値を重んじる方の対立が起こることが多いです。しかし、実はこちらもまさにこちらの記事「バイモーダルITとは何か?企業がITの2つの流儀を使い分ける方法(ビジネス+IT)」に記載の通り、融合して初めて高みに上がることができます。

    バズワードとしてのデジタルトランスフォーメーションとしては、メンテナンスコスト、データガバナンスなどいわゆる「守りのIT」の議論は放置されがちで価値の創出に光が当たりがちです。しかし、その価値の創出の基盤をつくるためにも守り側を固めることが必要で、両者は切っても切れない関係であるためです。

    5.デジタルトランスフォーメーションを進めるための社内の事前準備

    言葉の意味は理解できたが、さて実際どこから始めれば良いかわからない・・という方は多いと思います。そこで、以下の4点に絞って「デジタルトランスフォーメーション」を実現するための社内の事前準備をいくつか紹介します。

    5-1.経営層のコミットメントを握る

    そもそもデータを活用することやデジタルトランスフォーメーション自体が「重要ではあるが明日どうにかなってしまう」というような緊急性の高いものではなく且つ成果がでるまでに時間がかかることであり、だからこそ後回しになりがちです。だからこそ、経営層・トップマネジメントの推進力がないと、途中でぽしゃったりしてしまう可能性が高いのです。

    データ活用は結果が出るまでに時間のかかる取り組みです。ですので、そもそも短期最適化だけを考えている会社や短期ROIを追うことに焦点のある会社は、成功はほぼ難しいです。お金が勿体無いという考え方や小さく始めて育てるところまで待てなかったりするためです。

    その他下記の観点でもコミットメントは重要になってくるでしょう。
    • 社内推進や能力開発など目に見えにくいことは支援されなければ継続しにくいから
    • データ活用は複数部署との連携が必須だから

    ですので、小さな成功を出しながら、経営層のコミットメントを得るフェーズに時間をかけるのは割に合うことが多いでしょう。経営層のコミットメントの重要性については拙著『データ視覚化のデザイン』でも強調しているところです。

    5-2.今いるメンバーも育成しつつ、外から新たに採用したり、外部の力も借りる

    デジタルトランスフォーメーションは、デジタル部署を作っても実際何をどのように進めればわからない、という部分で何も出来なくなっている、ということが実は多いものです。そのためにも、これからスタートするにあたっては、プロフェッショナルの旗振り役を外部の力で借りてまず軌道にのせる、というのは良いアプローチで、うまくいっている多くの企業でこのようにされています。

    一般的に、「育成」には相応の時間がかかります。かといって、外部から新たに採用しても、組織を理解するにも時間がかかり立ち上がりがスピーディに行く保証はありません。ですので、もしDXの初期フェーズでしたら、外注でスピーディにブーストをかけ、その後体制が整ってきたらうまく離陸していくというのはよくある一つの手です。

    5-3.小さな成功事例を作る

    具体的には、以下のようなプロセスでやります。

    1. 小さく起こせた成功を、社内に宣伝する(スモールスタート・クイックウィン
    2. そうすると、その成功事例にあやかりたい人たちが、同じパターンを完コピして成功事例を作る。
    3. 同じ成功パターンが増えていく
    4. 別のパターンのデータ活用のための算を取りやすくなる
    5. データ活用を自分の便益にしたいと考える経営層の一部が、データ活用の推進役を買って出る

    どうして、「小さな成功事例」なのでしょうか?

    社内での実績もろくにないうちから、いきなり、多額の予算と期間がかかる、大きなプロジェクトをやろうとしても、会社の上層部になかなか認めてもらいにくいからです。

    まずは小さな実績を作ると、もう少し大きなプロジェクトの承認がおりやすくなります。

    ですので、”わらしべ長者”的に、少しずつプロジェクトを成功させながら、プロジェクトのスケールを大きくしていけば、やがては会社全体を大きくDXへと舵をきるようにもっていきやすくなります。

    小さな成功の起こし方

    小さな成功を起こせといっても「その起こし方がわからない」という方もいらっしゃるでしょう。「小さな成功」それ自体は、当社のようなコンサルティングファームが行っているPoC支援がそれに当たるものである場合もありますし、部署でこれまで手元でコピペ作業していたことをリアルタイム更新してみることだったりします。企業のビジネス規模やまわりの環境に合わせて、素早く結果の出せるインパクトのある小さな成功事例を考えてみるのが良いでしょう。以下は、「小さな成功」の観点のヒントです。

    最初のきっかけを作る小さな成功のヒント
    • コピペ作業がなくなる世界を小さな規模で見せる
    • 数字の羅列など見づらいものを瞬時に理解できる世界を見せる
    • ファクトだけを羅列するのではなく、インサイトを出してみる
    • 手元で属人的に行っている仕事を、多くの人に共有できる世界を小さな規模でつくる
    • 毎日行っているコピペの仕事をなくすにはどうしたらいいか?と考えてみる

    デジタルトランスフォーメーションのその他の論点に関しても、私のコンサルティングの経験から、デジタルトランスフォーメーションの戦略構築や個別具体的なアプローチをこちらの記事に公開しています。ご参考にされてください。

    デジタルトランスフォーメーションの講演を200回以上やってきた私が受けたよくある19の質問に回答します

    6.自社だけで進められない場合の協力会社・協力パートナーの選び方

    どう頑張ってもデジタルトランスフォーメーションを自社だけで推し進めるのは難しい、もしくは難しくないけれどスピードを加速したい、という時は多いでしょう。そのような中で協力会社・協力パートナーを選ぶ時、予算や費用対効果は一番気になる部分であるはずです。

    この点は、相性の良い協力会社を選ぶことで、かえって安くスピーディに効果を上げるケースが多いことも事実です。社内の内部コストは無料と勘違いしがちですが、ことデジタルトランスフォーメーションに関しては意外と高くつくことも多いです。デジタルトランスフォーメーションにおいて外部の協力会社・協力パートナーを使った場合の成果の違いとしては以下の観点があるでしょう。

    • 自社エンジニア、分析者、企画者の能力以上の対応
    • 最新技術のキャッチアップ
    • 実現の速さ・スムーズさ

    もちろん、自社内で全てを行うことも、コミュニケーションが円滑になりますし社内ですので迅速に対応でき、キャッシュアウト自体は小さくできるという利点もあります。しかし、重要なのは目指すべきデジタルトランスフォーメーションのゴール(”To-be”)に正しく向かうことであり、そこにできる限り早く到達することです。

    以下は、これを踏まえてどのように協力会社・パートナーを選べば良いかに関してポイントをお伝えします。

    6-1.自分たちのゴール感や理想と近いものを提供しているか

    データ分析や視覚化、戦略立案と言っても、お医者さんが出す解決アプローチが一つにならないのと同様に、コンサルティング会社も様々な解決アプローチや提案の仕方があります。自社のイメージに近いゴール感の実績があると安心かと思います。

    6-2.業界の経験があるか

    同じ業界でも会社によって全く異なるデータ構造であることがほとんどではあるものの、自社と同じ業界を経験していると文化の理解という意味でも安心できるものです。また、そもそもの業界の課題の立て方に慣れているということもコンサルティングがスムーズにいく要因でしょう。

    6-3.提案書は具体的にプロセスが書かれているか

    このようなプロセスでコンサルティングを行なっていく、ということが事前にわかると、どのような思想に基づき進めていくのかがイメージできるものです。当社でも過去に大手広告代理店さまの事例でステップやアプローチなどを紹介しています。

    事例/大手広告代理店:クリエイティブ広告ダッシュボード構築支援(AWS(Redshift/S3)&Tableau Extensions API)

    事例/3ヶ月の短期集中型データ分析研修で、効率的&効果的なシステム開発に成果を出したソフトウェア会社

    7.よくある成功を妨げとなる落とし穴

    デジタルトランスフォーメーションをスタートしよう!とやる気になっても、コンサルティング会社として実際失敗事例にも多く出会っています。

    特に国内で出会った落とし穴の例をご紹介します。

    7-1.PoCが永遠に続く

    PoCとはProof of Concept/概念実証の略で、新たなアイデアや企画の実現可能性をはかる具体的な検証です。当社でもデータ分析や視覚化コンサルティングの中で多く手がけています。

    しかし、このPoCにも戦略がないと永遠とPoCを続けることになってしまいます。常にPoC状態になっていると組織的にも進んでいる実感が持てず関連部署が疲弊してしまうので注意が必要です。

    7-2.計画に時間をかけすぎてぽしゃる

    何をすべきか?の企画の議論にあまりに時間をかけすぎて熱が冷めてぽしゃることもあります。スピードの早いテクノロジーの世界であまりに時間をかけすぎるのは所与も変わってしまいますし、組織としてのパッションも下がりがちです。

    7-3.デジタル戦略がなく全ての判断に右往左往する

    一本筋の通ったデジタル戦略はデジタルトランスフォーメーションを進める過程で全てにおいての判断軸となり、非常に重要です。しかしながら国内においては、CIO/CDOが不在であることから見ても明らかなようにデジタル戦略がなく、トップダウンでの利害調整が行えず苦労していることも多いのが実情です。

    CIO・CDOの設置状況(左図:CIO、右図:CDO)

    出典:総務省CIO・CDO等の設置による組織改革の進展状況

    7-4.デジタル化自体が自己目的化してしまい顧客価値の創造を忘れてしまう

    デジタルトランスフォーメーションで最も重要なことは顧客価値を創造する能力であり、それは、実際のところデジタルの知識やスキルよりも重要です。

    しかし、デジタル化はツールやテクノロジーの議論を避けて通れないため、どうしてもデジタル化自体が自己目的化しがちです。顧客価値よりも前に「なるべくデジタル化しよう」という邪念が入ると、最も重要である顧客価値が忘れ去られます。そしてツール類のみが放置され投資金額を回収できないような誤ったデジタル化になりやすいです。

    私の経験や見聞きした知見を踏まえると、デジタルに全くこだわっていないが結果的にデジタルな手段で解決することになったケースの方が成功しています。なぜなら、そのデジタル化は必然だからです。

    8.デジタルトランスフォーメーションに関するおすすめ書籍2選

    さらにデジタルトランスフォーメーションを勉強したり勘所をつけるためにおすすめの2冊をご紹介します。

    8-1.『ワークマンはなぜ2倍売れたのか?』

    結局デジタルトランスフォーメーションはトップが推進しなければいけないと痛感させられる本です。デジタルトランスフォーメーションお手本事例としておすすめです。

    新業態には、今までの知識や経験は一切通用しない。だからデータ経営が必要だ

    以下は常務の土屋氏の発言で、まさにデータ分析への覚悟が現れていますよね。

    8-2.『ソフトウェア・ファースト』

    及川さんのソフトウェア・ファーストは、技術的、ビジネス的にも深い洞察で書かれ示唆に富みます。専門性が高い部分もあるので何らかのデジタル領域経験者におすすめです。

    9.まとめ

    デジタルトランスフォーメーションはバズワードでありますが、バズワードで終わらせないためには「覚悟」が必要です。何に対する覚悟かというと、時間とお金に対する覚悟です。本当の意味でのデジタルトランスフォーメーションを推し進めるためには単にツールを導入するのではなく組織改革やマインドチェンジが必要です。その意味で、時間もお金もかかるということです。

    DX推進で競争力を上げ、確実に成功に導きましょう。

     

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    当社では、データ分析/視覚化/データ基盤コンサルティング・PoC支援に加え、ビジュアルアナリティクス、ダッシュボードレビュー研修、役員・管理職向け研修などのトレーニングを提供しています。組織に根付くデータ活用戦略立案の伴走をしています。

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