本記事は、自分がマーケティングの素人ながら、一経営者としてコンテンツマーケティングの戦略形成を行い、信頼構築と情報提供をコンテンツで行う世界を作っている話です。弊オウンドメディア「データビズラボ」は、圧倒的な質のコンテンツだけを発信することにこだわり、データ分析/視覚化/データ戦略コンサルティングファームであるデータビズラボが立ち上げました。
記事数自体は6月4日時点で20記事と少ないのですが、リリースしてわずか2ヶ月で多くの記事をトップページに入れることが出来ました。
目次
1 コンテンツマーケティングをスタートした背景
データ分析のコンサルティングファームがなぜコンテンツマーケティングをスタートしたのかについてです。
ご指名やご紹介がなくなった時を想像した
自分は昨年独立起業したばかりで、ありがたいことに独立起業する前から海外、国内からご指名のお仕事ご依頼を頂いていました。これが一つの自信になり、独立起業を決めたということも大きかったです。
しかし、ふとした時に「ご指名やご紹介がなくなったらどうなるんだろう?」と思った時がありました。
それならば、困っていない期間に積み上げられることをしようというのがありました。
最低限のSEOは現代のマナーだと思った
1年前ほど前に独立した時、とにかくコンサルティングのデリバリーとマネジメントに忙しすぎて、営業、マーケティングのことなど考える時間も精神的余裕もありませんでした。
しかし、時折、お会いした方に「ゆかりさんのページを探してもゆかりさんの会社の情報が出てこない…」と言われて、SEOもマナーレベルですら何もやっていなかったことを猛烈に反省しました。このようなことがあり、シンプルに「ちゃんとした方が良いな」というストレートな理由が最初のきっかけです。
物理的に会議に出向き提案書を作るなど、小さなコンサルティングファームには致命的だった
小さなコンサルティングファームにとって、物理的に会議に行き提案書を何度も修正するという手間は致命的で、ダメージが大きすぎます。ですので、もともと私は会議をお受けするお客様をかなり絞っていました。会議の前には事前確認シートをお渡しし、会議前にご予算感や課題を理解できるフォーマットをお渡しし、会議の生産性を上げようとしていました。
しかし、このようにもともと絞っていた会議や質疑応答にかかる時間をさらに絞ったり、さらに生産性を上げる方法はないかを考え、このコストをハックする方法が「圧倒的に良質なコンテンツ」だと考えました。これまで物理的な会議で会得してきた信頼構築と情報提供を、コンテンツで行う世界を作ろうと思いました。質の良いコンテンツは必ず質の良いサービスを連想するはずだからです。
仕事に困っていない時に腰を据えてアセットを蓄えようと思った
これはとてもありがたいポイントではあるのですが、特段仕事やキャッシュに困っていないからこそ、「効果に時間のかかること」に取り組めたということがあります。
多くの人は、「効果が出るまでに時間のかかること」はなかなかしないので、まずやるだけで上に行けると思いました。
また、「圧倒的に良質なコンテンツ」を追求するのは辛いので諦める人が多いと思います。自分自身は、コツコツ積み上げるのが比較的好きなのと、質を追求していくのが好きなので、継続できる確信がありました。
そもそも高額なBtoB商材は会議でどうこうなるものでもない
比較的高単価のコンサルティングを提供しているため、即決というのはあまりありません。
ですので会議に多くの時間を使っても、会議でどうこうできる余地は実際あまりなく、会議前に全てが決まっているといっても過言ではないでしょう。
だからこそ、会議前にできることを最大限にやろうとしました。その一つの姿がコンテンツマーケティングです。非生産的な会議を極力減らし、コンサルティングの中核であるデリバリーとマネジメントに時間をかけ、お客様に対するバリューをさらに加速して上げていこうと思いました。
2 コンテンツマーケティングの2ヵ月の効果
まだ初めて2ヶ月ではありますが、実感した効果としては主に下記です。
初めての会議でも信頼されて始まる
信頼構築のための会社説明だけで1時間かかるようでは、コンサルティングとしてバリューある仕事に投入できる時間はわずかになってしまいます。そのような信頼構築や情報提供など先方側でやっておけるものの時間を大幅に削減できました。
信頼のカスタマージャーニーを導く
当社は比較的高単価のコンサルティングを提供しているためTwitterやWEB検索で受注するような性質のビジネスではありません。しかし、当社の発信をご覧になって信頼してくださっている担当者の方が意思決定者の方へ全推しで紹介してくれたり、強く推薦、ご指名してくださることが増え、案件化が決定するということが続いて起きました。
仕事の「質」に対する信頼が築き上げられる
私のコンテンツ記事を読んでくださり、「あんなに圧倒的な解像度で考えている人に任せてダメだったら、もう誰でもダメだと思います(笑)」と言われたことはとても嬉しかったです。信頼が前提にあると、仕事の細かい部分に関して指示や確認をするということはほぼありませんので、コンサルティングという業種の人間にはとてもやりやすくなるかと思います。
“合わない顧客”に対する時間を削減できる
どのような業種もそうですが、「合わない顧客」と付き合うと、トラブルになりがちです。しかし、オウンドメディアというビークルに”世界観”をのせると、その世界観や予算感に合わない顧客はそもそも近づいてきません。それによって必然的に合わない顧客に時間コストをかけなくてすみ、総合的なリスクが低まります。
特に、小さいファームでは、一件のトラブルで社員のストレスは大変なものになります。豪華な福利厚生や食堂を充実させるより、全体的なトラブルリスクを下げモンスタークライアントがいない世界の方が社員の幸福には重要です。
社内の言語化・形式知化、ノウハウの高度化がすすむ
仕事、特にコンサルティングにおいて、言語化能力は仕事の能力と直結します。
コンテンツ記事を作る過程で、必然的に言語化スキルに磨きがかかり、社員自身にスキルが蓄積されます。また、自分の理解が曖昧だったところに気づくプロセスは、マーケテイングとはまた別の次元で組織にとって大きな価値です。
特に、下記の記事に関し、社内で伝えたりしながらこの記事を公開できたのは、対外的にも当社の仕事のクオリティの証明となったと思っています。
3 コンテンツマーケティングのスタート時の勝算
圧倒的な質でコンテンツを発信できるコンテンツチームを編成できた
当社の持っている技術や、複数のビジネス要素との融合力は業界の中でもトップクラスだと思っています。しかし、そのような力と良質なコンテンツを生み出し続ける力は異なるものと認識していました。現在、当社のコンテンツチームは4人で行なっていますが、メンバーは下記の要素全てに当てはまります。
- 言語化を怠けない
- 調べることを厭わない
- 徹底的に考える
- 質を上げようと挑戦する
すぐに結果の出ないコンテンツマーケティングにおいて、上記の要素を持つチームを構成できたのは幸運オブ幸運でした。私自身は全ての記事に編集者として入っていますが、著者である彼らがいなければ現在のような価値は生み出せませんでした。
このメンバーであれば、現在トップページに来ている記事より圧倒的に質の良いコンテンツを作れる自信がありました。継続的なコンテンツ作成は気合いと根性が中核になることは容易に想像できたので、メンバリングはとても重要です。
当社コンテンツチームは現在6名体制で、社員やアシスタントが一緒になって進めています。
4 コンテンツの戦術
ここでは、私が考えるコンテンツの戦術で特に注意しているものを紹介します。
一般の人も玄人も唸らせるコンテンツを目指す
技術系の記事やコンテンツは、よく記事を書いた初心者がバカにされたり、初心者向けに書いた記事が罵倒されたりします。当社のチームメンバーも当初、それを結構気にしていました。
しかし、「真に良い記事」は、内容自体の難易度ではなく、課題に対する光の当て方や、絞り方で一般の人も玄人をも唸らすものであるはずです。ですので、初心者向けやエントリー向けの記事もニーズを特定し、言語化し、もちろん公開しました。
内容の技術のレベルが高いかどうかよりも、ターゲットとした読者に刺さるか、感動されるかを丁寧に考えることがクリティカルに重要です。理論武装はもちろん重要ですが、理論武装をしまくって読者に離脱されるのでは本末転倒です。
例えば、この記事では、技術でドヤるのではなく、初学者の人の迷っている感情、どこを見てもピンとこずストレスがかかっている感情、学習の不安の感情に寄り添い、そこに網羅性を重視し情報をあてはめて作りました。弊オウンドメディアで最も読まれており、仮説が割とドンピシャだったかと思っています。
当社のコンテンツは、一般の人も、玄人の人をも唸らせることを目指して作っているため、バカにされたり罵倒されるというようなことはないとは思っています。しかし、何か嫌なこと、万が一罵倒されることがあった場合、全て私が責任をとるという意味も込めて、全ての記事に編集者として私のプロフィールと顔写真を掲載しています。直接的に彼らに被害が行かないようガードです。コンテンツチームメンバーには、伸び伸び書いて欲しかったからです。
ペルソナの言語化
テーマを決めたらすぐに書き出してしまうのではなく、ペルソナを徹底的にチームで議論しました。筆が止まらないようにするために割と重要なプロセスです。もちろん、最終的には著者となったメンバーに任せますが、事前にみんなで議論します。
顕在ニーズと潜在ニーズの言語化
例えば、「和菓子 カロリー」とググっている人は、本当に和菓子のカロリーを知りたいだけでしょうか。潜在ニーズとしては、「痩せたい」「ダイエットしたい」「モテたい」ということかもしれません。 そのようなニーズの議論を、コンテンツを書く前にチームで徹底的に議論しました。これは、読者に感動を与えるために重要なプロセスです。
読者が明確に意識していないゴールまで導く
読者のニーズを想像し、言語化したあとは、明確に意識していないゴールまで導きます。わかりやすい例としては、このような資格系の記事です。こういったコンテンツは、特に主張がなく、単なる解説や説明で終わりがちです。
しかし、合格までに必要となる学習コンテンツや試験前後での注意点、よくある落とし穴をなど合格するために必要になる全てのことを洗い出し、情報の適切な詳細度、網羅性に配慮しました。勉強中にこの記事に何度も立ち戻り、合格まで導けるものにするためです。また、当社のコンテンツチームでオリジナル問題集を作成しました。
ビジネス上のよく出る質問からコンテンツを創造する
当社はデータ分析、視覚化(ビジュアライゼーション)、データ戦略のコンサルティングファームです。その中で、BIコンサルティングも行なっていますが、BIツールでよく話題になるのがBIツールの比較です。
実際、BIツールなどのプロダクトは、ソフトウェア会社により思想が異なるため明確に仕様カットで論じられるものではありません。しかし、それでもなお、確認したいという強いニーズにストレートに応えるべく、実体験のあるBIエンジニアが観点の網羅性を重視して作り上げた記事がこちらです。こちらも多くの人に読まれました。
構成を白紙にすることを恐れない
自分ではうまく出来たと思っても、後日見たら「もしかしたら読まれないかも」と思うことは誰しもあります。そのような時に勇気を持って白紙にすることはかなり重要です。崩すこと自体、進んでいるのです。
ダメだと思ったら、自分のエゴを捨てて、白紙に戻る思い切りの良さはクオリティの高いコンテンツを提供する戦術として非常に重要でした。
この「思い切りの良さ」を醸成するために、当社コンテンツチームでは心理的安全性を確保し、相互に何度もコメントし合うフィードバック体制を作っています。
著者のオリジナリティを出す
コピペ記事のような薄い内容には絶対しない、ということでもあります。1記事でもそのようなものを出すと、もう見てもらえないだろうと考えたからです。思う存分に著者のオリジナリティや主観を出しながら、説得力のある根拠で論の展開を支えるよう編集しました。
主張に対する説得力ある理由と証拠を入れる
書籍と違いWEB記事は、たまたま目についたものであり、すぐに退出が可能です。また、情報自体基本的に信じてもらえません。そこで、説得力ある理由と証拠で主張を支えるように配慮しています。
5 ノウハウに対する考え方
これが無料?!ともっとも言われた記事はこちらです。
自分が記事を公開して、「これを無料で出していいの!?」と言われるのはありがたいことです。
しかし、ノウハウや知見を公開しても、正直なところ、それを活用レベルまで持っていける人は1%くらいです。そして、その1%の人はもうすでに実績があったり有名な人なはずです。なので、リスクは体感よりかなり低いのではないかと考えます。
情報として切り売りでちびちび小金を稼ぐよりも、多くの人に見られ、質の良いチャンス・機会を得られたり、凄い方に有益だとコメント頂くことの方が当社にとって価値があります。
その他、発信することで、自分自身は下記のような貴重な機会をいただけたり、良い仲間と出会えたり、素晴らしい方達と友人になることができました。
海外講演
fact.aiのCEO、香港データサイエンティスト協会VPのSamさんとの講演
ジャカルタ・スマートシティ、データアナリティクスのヘッドのJuanさんとの講演
新聞寄稿
本の出版
また、本の出版のお話も頂き、かなり時間はかかりましたが死にそうになりながらなんとか形にできました。
6 素晴らしい「コンテンツ」
自分がオウンドメディア、コンテンツマーケティングを実際真剣にやってみてどれほど大変かわかると、すごいコンテンツを作られている方たちの凄さを改めて感じます。下記に紹介するお二人は、自分が一生かかっても手が届かないお二人です。
ベイジ・枌谷さん
ベイジさんの記事の質の高さ、そしてそれを継続的に出されているのは尊敬を超えて崇拝しかありません。
特に、こちらの「最強の提案書を作る方法」の記事は情報の詳細度、アラインメント、観点に至るまで圧倒的な記事です。
SAIRU・栗原さん
コロナ問題で世の情勢が変わってから一瞬でテレワークに関するティップス記事を出されてタイムリーさが凄いと思いました。特にこちらの記事は、情報の網羅性、厳選感などに至るまで気が配られ、素晴らしいと思いました。
7 まとめ
大した経営者でもないのに、そしてマーケティングの専門家でもないのに偉そうに色々と語ってしまいました。どなたかのお役に立てれば嬉しいです。
コンテンツマーケティングを始めた当初も今も、営業人員はいないですし、広告費も全くかけていません。これからも、ただひたすらユーザーにとって圧倒的な価値を出すべく発信していこうと思います。
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