見える化とは、仕事の状態や進捗状況、実績といった各種情報を常に把握できるようにする取り組みのことです。見える化が実現することで、問題の早期発見や属人化の解消、リソースの最適化などが可能となります。この記事では、見える化の概要について解説します。また、混同しやすい可視化との違いや企業における具体的な見える化施策の事例などについても取り上げているため、ぜひ参考にしてください。
目次
1見える化とは何か
見える化とは、仕事の状態や進捗状況、実績といった各種情報を常に把握できるようにすることで問題やトラブルが発生したとしてもすぐに対応できる環境を構築し、同時に問題が発生しにくい環境を実現するための取り組みです。
企業が見える化を実現することで、品質管理の質向上、業務の最適化などにも繋がるため、結果的に会社としての競争力を高めることもできるでしょう。
見える化は、もともとは、トヨタ自動車株式会社における生産方式が始まりとされています。
ただし現在では、自動車をはじめとした製造業だけでなく、人事や営業、企画・経営管理など幅広い分野で見える化の概念が用いられています。
見える化が求められる背景
見える化は、企業において近年ますます求められているといえます。その背景には、生産年齢人口の減少に伴う人出不足の深刻化や働き方改革の普及に伴う企業経営における透明性重要度の増加といった社会情勢の影響が考えられるでしょう。
このような社会情勢のもとで、企業の状態や実績、仕事の状況などが見えない状態となることは、企業にとって大きなリスクを伴うこととなります。見える化を実現することで、企業としての透明性を高め、生産性を向上させることができれば、より健全な経営が可能となるでしょう。
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見える化のメリット
見える化に取り組むことで得られる主なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
・問題の早期発見・改善
・属人化の解消
・無駄の削減
・組織の活性化
ここでは、これらのメリットについて解説します。見える化に取り組む意義がいまいちわからない、といった方はぜひチェックしてみてください。
問題の早期発見・改善
企業におけるさまざまな情報を見える化することにより、潜在的な問題や課題の早期発見が可能となり、早い段階で改善策を立てることができるようになります。
例えば、製造現場で異常が発生したとき、その情報がすぐに把握できる状態、つまり見える化されていれば、速やかに状況をトレースすることで原因の発見、被害拡大防止が可能となるでしょう。
属人化の解消
見える化は属人化の解消にも貢献するものです。例えば、業務プロセスを見える化する場合、全ての業務を棚卸する必要があるため、属人化している業務や暗黙知によって進められている業務などを明確にすることができます。洗い出した業務プロセスを標準化することで、業務の再現性を確保することができ、属人化解消につなげられるでしょう。
無駄の削減
企業活動においては、さまざまな無駄が発生しているケースもありますが、見える化を実現することで無駄を削減することができます。例えば、作業の進捗状況を見える化することで、ボトルネックの解消に取り組むことができ、結果的に作業における無駄を取り除くことができるでしょう。また、見える化されたデータを分析し、無駄を明らかにすることでより生産性を高めることができるため、結果的にリソースの最適な活用も可能となります。
組織のさらなる活性化
見える化は、組織の活性化につなげることも可能です。例えば、社員の評価制度を誰でも把握できるようなわかりやすいものにすることで社員のモチベーションを高めることができるかもしれません。見える化による透明性の高い人事制度に加え、納得感のある人事処遇を行うことで、仕事に対するエンゲージメントを高めることができるでしょう。
見える化と可視化との違い
見える化と混同してしまいやすい言葉に可視化がありますが、両者は厳密には異なるものです。
確かに、見える化も可視化も仕事において見えないものを見えるようにするという点では共通していますが、そこに意志を伴うかどうかという点で違いがあります。
見える化は、情報を見ようとする意志の有無に関係なく情報が見える状態です。見える化された情報に対する判断基準も関係者間で共有されています。そのため、適切な行動につなげることができるでしょう。
一方の可視化は、情報を見ようとする意志を持っている人が見るものです。可視化された情報をどのように活用するかは、一人ひとりによって異なります。
このように、見える化と可視化は情報を見る際に意志を伴うかどうか、確認した情報をどのように判断し、活用するかという点で異なるものです。
ただし、企業によってはこのような厳密な使い分けをしておらず、同じ意味の言葉として扱うケースもあるため注意してください。
事例とケーススタディ
ここでは、見える化の事例やケーススタディを紹介します。自社で見える化に取り組む場合、どのようなことができるのか参考にしてみてください。
実際の事業、ビジネスにおいて見える化がどのように活用されているかの具体例
ここでは企業の各事業でどういった取り組みができるのか紹介します。
業務プロセスの見える化
業務の標準化をはかるために、業務プロセスを見える化することができます。具体的には、業務を全て洗い出したうえでフローチャートに落とし込むことで見えるかを実現します。フローチャートに落とし込む中で属人化している業務などを把握し、RPAの導入やマニュアルの見直しといった解決策を検討することもできるでしょう。
製造現場の見える化
先ほども説明しているように、もともと見える化はトヨタ自動車から始まったものであるため、製造現場との相性は非常にいいといえます。製造現場でできる見える化の例としては、IoTやAIの導入が挙げられます。例えば、IoTを活用して一連の製造業務にかかるリードタイムを見える化すれば、無駄を省き、生産性向上につなげることができるでしょう。また、生産ラインにセンサデバイスを設置することで稼働状況の見える化が実現し、一元管理による効率化を実現することができます。そのほかにも、AIによる不良品判定なども製造現場における見える化に貢献してくれるでしょう。
物流の見える化
見える化は、物流業においても導入できるものです。例えば、トラックにGPSを搭載することで、トラックがどこにいるのかを把握できるため、輸送・配送の管理を効率よく行うことができます。また、倉庫管理システムを導入することで、入出荷の際の検品やピッキング状況が見えるかされ、どこにどの商品があるのか、どこに入荷した商品を保管するのかといった管理も行いやすくなるでしょう。
人事業務の見える化
働き方改革に取り組む企業が多い中では、人事業務の見える化は欠かせないものです。具体的には、社員の勤務状況の見える化や人事処遇の見える化が挙げられます。昨今ではテレワークが一般的なものとなったこともあり、社員の勤務状況の見える化は企業にとっても大きな課題となります。
また、社員の健康状態を把握することも大切です。近年では、業務システムにメンタルヘルスケアサービスが付いているものもあり、社員の健康状態を見える化することで、早い段階で対策を立てることが可能となっています。
営業の見える化
営業の社員がどのような活動をしているのか、進捗状況はどうなっているのか、といったことを把握したい企業は多いでしょう。営業の見える化の例としては、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)といった各種システムの導入が挙げられます。システム上で進捗状況や予実状況、顧客情報などが見える化されることで、さらなる業務効率化や問題の早期発見、適切なサポートなどが可能となるでしょう。
成功事例
ここでは見える化に取り組んだ結果成功を収めた企業の事例を紹介します。
マルハニチロ
マルハニチロでは、2013年に「スマートファクトリー構想」をスタートしました。同社の定義では、スマートファクトリーは「システムと人・機械の力を融合させ、高度な品質と生産管理を継続できる工場」とされています。
マルハニチロでは、まず半年という長い時間をかけて、データの分析や現場で働く従業員へのヒアリングなど全国各地の工場の現状把握に取り組みました。その結果、業務におけるデジタル化が進んでいないこと、工場によって業務プロセスが異なるという2つの課題が明らかになります。
そこからスマートファクトリー実現に向けて、システムの機能要件を整理し、システムの設計・開発・テストを経て実際にシステムを工場に導入します。導入後は、ペーパーレス化による記録管理業務の効率化や業務の標準化による人的ミスの防止など、課題解消を実現しました。またシステムを導入しスマートファクトリー化を果たしたことで、社員一人ひとりの取り組みも見える化され、業務に前向きに取り組める環境を作ることができたそうです。
参考
https://www.maruha-nichiro.co.jp/contents/more/story004.html
富士電機
受配電機器などの生産を行う富士電機では、以前から工場内においてIoT技術を活用していましたが、ただ単にシステムを導入するのではなく、導入したうえでどうやって生産性向上につなげるのかが課題となっていました。
そのような中で、同社では生産ラインや工場全体の生産情報などあらゆる情報を一元化して見える化するシステムである「ダッシュボード」を導入します。ダッシュボードを導入したことで、品質や進捗状況、稼働率といった情報をリアルタイムで把握できるようになり、トラブルが発生した時でもスムーズに対応できるようになりました。富士電機は、ダッシュボードの導入に伴う情報の見える化により、課題の把握と改善策の実施というサイクルを繰り返し行えるようになり、生産性を5%高めることができたそうです。
参考
https://www.fujielectric.co.jp/products/solution/case-studies/dashbord_otawara.html
分析結果をどのように事業戦略に反映できるか
見える化は企業の各部門で実現できるものであり、実際に見える化に取り組んだ結果成功を収めている企業も少なくありません。一方で、見える化施策に取り組む際には、何を目的として何を見える化するのかを明確にする必要があります。
そのためには、ヒアリングを入念に行うことが大切です。現場の課題はなんなのか、生産性を高めるために優先すべき課題はなんなのかといったことを見極めることで、何を見える化するべきなのかが明確になるでしょう。
成功事例からもわかるように、マルハニチロはヒアリングを行うなど時間をかけて入念に現状把握に取り組んでいます。また、富士電機はただシステムを導入するのではなく、見える化されたうえでそれをどう生かすのかという部分にまで考えることができています。
一方で、見える化の失敗例としてありがちなのが、見える化することをゴールとしてしまうケースです。見える化された情報は、その後の戦略に反映されなければ意味がありません。新たに得た情報をもとに、課題発見に取り組み、解決策を検討・実施するという仕組みを作り上げることが大切だといえるでしょう。
まとめ
今回は、見える化の概要やメリット、可視化との違い、具体的な事例などについて解説しました。見える化とは、仕事の状態や進捗状況、実績といった各種情報を常に把握できるようにする取り組みのことです。もともとは製造業で使われていた言葉ですが、昨今ではさまざまな業界、事業で用いられています。見える化に取り組むにあたっては、まず現状把握に努め、何を見える化する必要があるのか明確にすることが大切です。また、見える化された情報をどのように活用するのかという部分についても合わせて考えるようにしてください。
見える化への取り組みを検討している。または、見える化への取り組みのためのサポートが必要な場合はぜひ弊社データビズラボへご相談ください。
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