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従業員ではなく組織に焦点を当て、組織のより良い姿を目指して取り組みを行う「組織開発」。抽象度が高いことが懸念点として挙げられますが、組織開発の流れや用いられる手法・フレームワークを知ることで、具体的に取り組んでいくことが可能です。
本記事では、組織開発の基本と成功事例をご紹介します。人材開発・人材育成との違いも解説するので、組織開発の取り組みを検討しているけれど、具体的なイメージを持てていない方はぜひ本記事をの内容を参考にしてみてください。
目次
組織開発とは
組織開発(Organizational Development)とは、組織で働く従業員同士の関係性を深めて組織を活性化し、組織としてのパフォーマンスを高めるための取り組みのことです。
組織の課題を洗い出し、従業員一人ひとりが当事者として主体性を持ち、解決のために考え、行動できるよう、主に行動科学の理論や手法を用いて実行していきます。
組織開発の主な手法
組織開発の手法でよく用いられるのは、以下の5つです。主な用途や利点・欠点、適用例についても解説しています。定番の手法は「ミッション・ビジョン・バリュー」や「OKR」です。自社の課題や目的に合った手法を検討する際の参考にしてみてください。
手法 | 概要 | 主な用途 | 利点 | 欠点 | 適用例 |
ミッション・ビジョン・バリュー (MVV) | 組織の目指す姿や価値観を明確にする | 組織の羅針盤として、従業員の共通認識を形成する | 組織全体の士気を高め、方向性を統一できる | 抽象的な概念であり、具体的な行動指針になりにくい | 企業理念の策定、従業員研修 |
OKR (Objectives and Key Results) | 目標設定と達成管理 | 組織・チーム・個人の目標を明確にし、進捗を管理する | 目標達成へのモチベーションを高め、進捗を可視化できる | 目標設定に時間がかかり、定期的な見直しが必要 | チーム目標の設定、個人目標の設定 |
コーチング | 個人の成長促進 | 従業員の自主性や積極性を引き出し、潜在能力を最大限に発揮させる | 個々の課題に合わせた支援が可能で、モチベーションを高められる | コーチのスキルや経験に左右される | 従業員のキャリア開発、パフォーマンス向上 |
フューチャーサーチ | 未来創造 | 組織の未来像を描き、合意に基づいた行動計画を策定する | 多様な視点を取り入れ、創造的なアイデアを生み出せる | 時間と労力がかかり、合意形成に時間がかかる | 新規事業の立ち上げ、組織改革 |
ワールドカフェ | 意見交換 | 活発な議論を促進し、新たなアイデアを生み出す | 短時間で多くの意見を集められる | 議論の内容が深まらない可能性がある | 社内コミュニケーションの活性化、問題解決 |
組織開発でよく使われるフレームワーク
組織開発でよく使われるフレームワークには7Sや、アプリシエイティブ・インクワイアリー などがあります。どちらも組織開発において定番のフレームワークですが、それぞれ特徴が異なります。メリット・デメリットを理解した上で、自社の組織開発に役立ててみてください。
フレームワーク | 概要 | 主な用途 | 利点 | 欠点 | 適用例 |
7S | 企業の経営資源を分析し、自社に適した事業戦略を考える | 事業戦略の策定、組織改革 | 自社の強みや弱みを分析できる | 分析に時間がかかり、複雑な場合がある | 企業の競争力強化、新規事業の立ち上げ |
アプリシエイティブ・インクワイアリー (AI) | 組織や従業員の強みやポジティブな面に目を向け、前向きな組織文化を醸成する | 組織開発、人材育成 | 従業員のモチベーションを高め、組織の活性化に繋げられる | 問題点や課題に目を向けにくい | 社内コミュニケーションの活性化、従業員エンゲージメントの向上 |
組織開発と似た言葉の違い
組織開発と類似する言葉として「人材育成」や「人材開発」があります。組織で働く人が関係しているという点では似ている部分もありますが、対象や考え方、アプローチ方法などが異なります。3つの言葉の違いを正しく理解しておきましょう。
企業主導で人を育てる「人材育成」
組織開発が従業員一人ひとりの主体性を高め、より良い組織運営を行うことを目的としているのに対して、「人材育成」は自社で活躍するのに必要なスキルを従業員に取得させることが目的です。
誰が施策を主導するのかにも違いがあります。組織開発は従業員が主導となり行いますが、人材育成に関する取り組みは企業側が主導します。
従業員主体で自らを育てる「人材開発」
「人材開発」は人材育成と言葉が似ていますが、意味する内容は異なります。人材開発とは、従業員一人ひとりが各自で目標を立て、その目標を達成するために必要なスキルや能力の向上を行うことを意味します。
従業員が中心となるという点では組織開発と似ていますが、人材開発は従業員一人ひとりが対象であり、従業員同士の関わりは求められていません。一方、組織開発は従業員同士の関係に着目し、その点を強化することが重要だという考えがベースにあります。
人と人の間にあるものが対象となる「組織開発」
組織開発で重要なのは人ではなく、従業員同士の関係性です。組織開発を行う際のアプローチを他の言葉と比較してみましょう。
例えば、特定の部署の離職率が上がっていることが組織の課題となっている場合、人材開発や人材育成においては「人」に着目して、対策を行います。対策としては、研修やOJTなどが一般的です。
一方、同じような課題があった場合、組織開発においては「組織の仕組み」や「組織のコミュニケーション」を原因だと考えてアプローチを行います。具体的には、業務フローの改善や、チーム内コミュニケーションの見直し、共通認識の再確認などの対応が考えられます。
組織開発が注目される背景
なぜ組織開発が注目されているのでしょうか。その背景には「組織の多様化」「人材の多様化」「働き方やコミュニケーションの多様化」が関係していると考えられます。社会が大きな変化を遂げる過渡期において企業が生き抜くための重要な取り組みとして、組織開発が注目されている理由を解説します。
組織の多様化
現代は、働き方の変化に対応するために、組織の変化が求められている時代です。組織の多様化とは、従来のトップダウン型の意思決定を行う組織ではないボトムアップ型の組織や年功序列ではない能力主義の組織など、組織のあり方が多様化していることを指します。
不確実性の高い現代を企業が生き抜くためには、柔軟かつ機能的な組織運営が求められます。組織開発はそうした時代の変化に対応する手法のひとつとして注目されています。
人材の多様化
組織開発が注目されている背景のひとつに、人材の多様化があります。現在、多くの企業では性別・年齢・国籍などの属性が異なる多様な人材が組織を構成しています。仕事に対する価値観や求めるものが違うため、協調して組織を運営していくためには相互理解が必要不可欠です。多様な人材が活躍できる組織作りの方法のひとつとして、組織開発が注目されているのです。
働き方やコミュニケーションの多様化
近年は、働き方も多様化しています。従来はオフィスワークが一般的だったのに対して、自宅で仕事をするテレワークや、在宅・出社を組み合わせたハイブリッドワークなどの働き方も見られるようになりました。フレックスタイム制やコアタイムがないフルフレックス制など、柔軟な働き方も可能になっています。
それに応じて、コミュニケーション方法も多様化しています。ITツールを活用し、社内のやりとりをチャットで行ったり、オンラインの会議ツールを導入したりと、対面以外にもさまざまなコミュニケーション方法があります。
そうした働き方そのものが変化している時代において、従来の働き方を見直す組織開発が注目されています。
組織開発を実施する3つのメリット
組織開発を実施すると、「生産性の向上」「従業員エンゲージメントの向上」「優秀な人材の確保」などのメリットがあります。これらはメリットであり、組織開発を行う目的にもなり得ます。自社で抱える課題と照らし合わせながら、組織開発が必要かどうかを改めて検討してみてください。
メリット1.生産性の向上
企業が組織開発に取り組むことで、まずは生産性の向上が期待できます。組織開発では、従業員一人ひとりが組織としての課題を見つけ、その課題を解決するために主体性を持って取り組むことを実現させます。
例えば、生産性を阻む原因が多部署とのコミュニケーションの取りにくさにある場合、組織開発によりその問題を解決すれば、チームや部署単位でのパフォーマンスの向上が期待できます。
メリット2.従業員エンゲージメントの向上
組織開発により、従業員エンゲージメントも向上する可能性があります。エンゲージメントを高める要素は大きく分けると、個人軸・組織軸の2つが存在します。組織開発では、このうち組織軸に焦点を当て、アプローチを行います。
組織開発の主な手法・フレームワークである「フューチャーサーチ」「ワールドカフェ」「7S」は、従業員同士で議論・対話することを通して組織開発を促進します。これらのアプローチにより、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。
メリット3.優秀な人材の確保
組織開発を進めることで、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。従来は、1つの企業に長く勤め、その組織の中でスキルを身につけ、キャリアを築くことが一般的でした。現代はそうした考え方は古いものとなり、働き手の多くは転職によってキャリアアップを行っています。
流動性の高い時代において優秀な人材を繋ぎ止めるには、従業員の愛社精神を育むことが大切です。組織開発によって従業員同士で対話・議論する機会を設け、自社の課題に積極的に取り組むことができれば、組織への愛着が形成されます。優秀な人材も外に流出しにくく、また外部からより良い人材が入ってくる可能性も高まります。
組織開発を実施する3つの注意点
組織開発が効果を発揮すれば、組織や従業員に大きなメリットをもたらします。一方で、メリットだけではなく実施時の注意点も存在します。組織開発の推進を阻む原因ともなり得るので、これらの点を理解し対策も考えた上で取り組みましょう。
注意点1.成果が出るまで時間がかかる
組織開発は短期間で効果を得ることが難しい取り組みです。すぐに組織に変化をもたらしたい場合には不向きであることを、まず理解しておきましょう。
取り組みを推進する前に中長期的な計画を立てる必要があります。同時に短期的な目標も決めておき、スモールステップを踏むことも大切です。最終的な目標を達成するまでに軸がブレてしまうことを防げます。
注意点2.期待する効果と現実にギャップが生まれることも
組織開発は必ずしも期待する効果が得られるとは限りません。多くの社内プロジェクトと同様に、社内に変革をもたらしたいと考える経営陣や推進チームと現場の従業員の間には、取り組みに対する熱量にギャップがあります。
改善自体が進まなかったり、思うような効果が得られなかったりすることも珍しくありません。このことを念頭に置きつつ、トライアンドエラーを繰り返して徐々に組織の改善を目指しましょう。
注意点3.組織開発が逆効果になることも
一見、組織開発がうまくいっているように見えるけれど、注意したいケースというものも存在します。従業員同士の関係性を強化した結果、仲が良くなりすぎて業務に支障が出たり、派閥ができてしまったりするなど、組織開発が逆効果になるケースです。
このような効果が現れ始めた場合には、改めて組織開発に取り組む目的や組織開発によってどのような組織への変化を期待しているのかを全社に共有しましょう。
組織開発を実施する流れ
次に、組織開発に本格的に取り組むことを検討している方に向けて、組織開発の流れを解説します。各ステップごとに実施する際のポイントをまとめているので、取り組む際の参考にしてみてください。
STEP1.目的を明確にする
実際に手法やフレームワークを用いて組織開発に取り組む前に、まずは目的を明確にしましょう。組織の理想像は企業によって異なるので、目的に正解はありません。あらかじめ自社の現状と課題を調査しておくと、目的を決めやすくなります。
例えば、部署間の連携がうまくいかないために業務のスピードが低下しているのが課題であれば、組織開発に取り組む目的は部署間の円滑な連携を実現することとなります。企業全体の目的と、部署ごとの目的とを別々に設定することも可能です。
STEP2.自社の現状を明確に把握する
次に、自社の現状をきちんと把握します。組織開発の取り組みにおいて大切なのは、従業員同士の関係です。アンケートやヒアリングを丁寧に行い、徹底した情報収集を心がけましょう。
施策の効果測定を数値の変化で確認したい場合には、アンケートの中に10段階で回答する項目を設置する方法もあります。ざっくりとした現状把握ではなく、事実に基づいた定量的な現状把握を意識してください。
STEP3.解決すべき課題を決める
従業員アンケートやヒアリングの結果から、解決すべき課題の仮説を立てます。組織開発において大切なのは、従業員の課題も組織の課題として捉えることです。
例えば、営業部門に入社以降ずっと目標を達成できていない従業員がいたとします。人材育成や人材開発であれば個人を改善するための対策を考えますが、組織開発においては営業部門全体で目標達成するための対策を考えます。組織全体をより良くするという視点で課題を設定することがポイントです。
STEP4.計画を立て小さく実践する
課題設定ができた後は、組織開発計画を立てて実践するステップに進みます。まずは、部門やチームなど小さな単位で運用してみましょう。いきなり全社で取り組むのはリスクがあります。
スモールスタートで試験的にアプローチを始め、部門・チームで効果が得られれば徐々に運用範囲を広げていきます。
STEP5.効果の検証と改善をくり返す
スモールスタートで着手した取り組みの効果検証・改善を行います。成功したポイントだけでなく、改善すべきポイントも整理して各部門・各チームにフィードバックしてください。
営業部門では効果が得られたけれど、人事部門ではあまり効果が出なかったなど、情報を整理することで、全社に展開する際に最適化した内容を反映させられます。
組織開発の成功事例
組織開発に取り組むにあたって、他社の成功事例から成功するためのポイントを掴むことは非常に大切です。
最後に、組織開発に成功した事例を3つご紹介します。自社の課題に合った手法を採用している企業があれば、ぜひ取り組みの際の参考にしてみてください。
明確なMVVを打ち出し目指す組織の姿を共有する|メルカリ
メルカリは、組織開発の手法としてミッション・ビジョン・バリューを明確に打ち出しています。それを達成するためには、従業員の協力や積極的に事業を推進する姿勢が必要であることもきちんと明記しているのが特徴です。
組織の目指す姿や価値観を明確にすることで、従業員の意識を統一し、組織全体の士気を高めることに成功している、参考となる成功事例です。
参考・画像出典:メルカリ「ミッション」
人財を軸にさまざまな手法を組み合わせる|Yahoo!Japan
Yahoo!JAPAN(現在LINEヤフー株式会社)は、人財に関する取り組みを軸にさまざまな手法を組み合わせた組織開発を行っています。従業員一人ひとりが能力を磨き、成長できる仕組みを整えており、研修制度や育成制度が充実しているのが最大の特徴です。
従業員の変化を促すことにより組織にもより良い影響をもたらすことに成功した事例です。
参考・画像出典:Yahoo!JAPAN「人材育成・支援制度」
個人のキャリアパスを軸に、チームの力を最大化|freee
Saas型クラウドサービスを展開するfreeeでは、社内のエンジニア一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮するためのチームづくりに力を入れています。
freeeが目指すのは、チーム力が最大化された「ドリームチーム」。それを実現するために、個人のキャリアパスを軸としたポジティブな開発文化の醸成に日常的に取り組んでいます。
こうした取り組みにより、フリーは自由度と裁量権の高い独自の開発文化を社内に根付かせることに成功しました。
参考・画像出典:freee「【freeeが挑む最強の組織作りとは?】freee Tech Night「進む道は自分で拓け、目指せドリームチーム」3月1日(金) 19時よりオンライン×オフライン ハイブリッド開催」
組織開発で期待した効果を得るには、目的と課題を明確にすることが大切
組織開発に取り組む際は、目的と課題の明確化が非常に重要です。目的設定は中長期的な取り組みの軸がブレてしまうことを防ぐほか、組織開発の推進に携わるチームのモチベーション維持にも繋がります。
一方、課題設定は適切な手法やフレームワークを選定する際の指標となり得ます。組織開発で期待した効果を得るために、目的と課題の明確化には時間をかけましょう。
目的と課題を明確にし、組織開発を実現していく際には、株式会社QUICKが運営するインナーブランディングツール「QUICK Smart Brain」の活用が効果的です。
QUICK Smart Brainでは、研修用の資料や、自社の日報や営業成績などの情報を読み込ませるだけで、生成AIが自動で動画を生成します。
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