デジタル技術の進展により、医療分野でもDX（デジタルトランスフォーメーション）が急速に進んでいます。医療DXは、患者の利便性向上、業務効率化、医療の質向上を目指し、医療機関の経営難の解消にも寄与します。
本記事では、医療DXの概要や「令和ビジョン2030」の詳細、DXの具体的な施策、成功のポイントについて詳しく解説します。
目次
医療DXとは
医療DX（デジタルトランスフォーメーション）とは、医療分野においてデジタル技術を活用し、医療サービスの質と効率を向上させる取り組みのことを指します。これには、電子カルテの導入やAIを活用した診断支援システム、オンライン診療などが含まれます。
医療DXの目的は、患者の利便性を高めるだけでなく、医療従事者の負担を軽減し、医療全体の効率化を図ることです。ビッグデータの解析を通じて、予防医療や個別化医療の実現も期待されています。
医療DX令和ビジョン2030とは
「令和ビジョン2030」は、日本政府が掲げる医療DXの長期的な目標と指針を示したビジョンです。2030年までに医療サービスを高度化し、誰もが質の高い医療を受けられる社会の実現を目指します。
具体的には、遠隔医療の普及、AIを活用した診断支援システムの導入、患者データの一元管理とセキュリティ強化などの取り組みが含まれます。
画像出典：https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001140173.pdf
実際に、医療・救急・介護の情報を相互で共有し、事務コストの低減や適切な診断サポートを可能にする「全国医療情報プラットフォーム」の創設や「電子カルテ・医療情報基盤」タスクフォースの設置、診療報酬改定DXなどの取り組みが実施されています。
このビジョンは、少子高齢化社会に対応するため、医療の質と効率を向上させることを目的としています。
参考：厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表（概要）」
医療DXを導入するメリット
総務省による業種別のDX取組状況を見ると、医療機関は他業種と比較して最も導入が進んでいない業界です。
出典：IPA「DX白書2023」
しかし、医療DXを導入することには、さまざまなメリットがあります。医療従事者の業務負担を軽減する以外に、患者の利便性向上も期待できます。
次に紹介する医療DXのメリットの詳細を確認し、自院の医療DXの実施を検討してみてください。
業務効率化による人材不足・長期間労働の解消
医療DXは、医療従事者の業務を効率化することで、人材不足や長期間労働の問題を解消します。例えば、電子カルテの導入により、診療記録の管理が容易になり、事務作業の時間が大幅に短縮されます。
患者の利便性、医療体験の向上
オンライン予約やオンライン診療の普及により、患者の利便性が向上し、医療体験が改善されます。これにより、通院の手間が省けるだけでなく、待ち時間の短縮や迅速な診療が可能になります。
データ活用による医療の質向上
ビッグデータの解析を通じて、より正確な診断や治療が可能となり、医療の質が向上します。AIを活用した診断支援システムは、医師の判断をサポートし、見逃しのない診断を実現します。
生産性の向上やコスト削減による医療機関の経営難の解消
医療DXは、生産性を向上させるとともに、医療機関の運営コストを削減する効果が期待できます。効率的な業務運営と無駄のない医療資源の活用により、医療機関の経営状況が改善されます。
医療DXで実施される具体的な施策
医療DXの推進を検討する前に、実際に実施されている具体的な施策について知っておきましょう。各施策ごとに、どんな効果が期待できるのかもあわせて把握しておくことで、適切なDXを推進できます。数ある施策の中から代表的な施策をご紹介します。
オンライン予約
患者が自宅から診療予約を行える「オンライン予約システム」。予約の取り消しや変更も簡単に行えるため、予約の煩雑さが解消され、患者の利便性が向上します。
医師のスケジュールも確保しやすくなり、医師側・患者側ともにメリットがあります。
オンライン問診・診察
オンライン問診・診察により、患者は自宅から医師と相談できるようになります。特に、地方や遠隔地に住む患者にとって、移動の負担が減るので、現在より手軽に受診できるようになるでしょう。地域間の医療格差を是正する効果も期待できます。
AIや機械学習、ビッグデータの活用
AIや機械学習を活用した診断支援システムは、医師の診断をサポートし、精度を向上させます。ビッグデータ解析により、病気の予防や個別化医療の実現が期待されています。
電子カルテ
電子カルテの導入は、医療データの一元管理を可能にし、情報の共有や連携がスムーズになります。診療の質が向上する他、医療事故の防止にも寄与します。
医療ロボティクス、ウェアラブルデバイスの活用
医療ロボティクスは、手術の精度を高めるだけでなく、リハビリテーションの支援にも活用されます。研究・開発が進んでいる注目されている分野のひとつで、すでに手術支援ロボットを取り入れている医療機関もあり、手術を実施及び成功させています。
ウェアラブルデバイスは、患者の健康状態をリアルタイムでモニタリングし、迅速な対応を可能にします。
参考：国立がん研究センター「手術支援ロボット「ダビンチSP」を用いたがん手術を実施
新たな「ロボット手術・開発センター」から高難度症例に対する低侵襲治療の開発・拡大を目指す」
医療DXを成功させる3つのポイント
さまざまな施策を実施して医療DXを成功させるためには、以下の3つのポイントが重要です。全社を巻き込み、一丸となってDX推進に取り組めるよう準備を進めましょう。
ポイント1．医療従事者へのITリテラシーやデジタル教育の実施
医療DXを推進していくためには、経営層だけではなく医療従事者も含めてデジタル技術を効果的に活用できるよう、ITリテラシーやデジタル教育が不可欠です。
定期的な研修やトレーニングを通じて、最新の技術に対応できる能力を身に着けましょう。一朝一夕で身につくものではないので、継続的に教育を実施できるスケジュールを立てることが重要です。
ポイント2．セキュリティ対策の実施
医療データは非常に機密性が高いため、セキュリティ対策が重要です。データの暗号化やアクセス制限、定期的なセキュリティチェックを行い、情報漏洩を防ぎます。
技術的な内容は、外部の専門家に依頼をしながら、より強固なセキュリティ対策を実施しましょう。
ポイント3．経営層のコミットメント
医療DXを推進するには、経営層の強いコミットメントが必要です。経営層が積極的に関与し、リソースを適切に配分することで、プロジェクトの成功率が高まります。
もちろん経営層だけではなく、現場の理解と推進も欠かせません。
現場で求められている内容をヒアリングしながら実施することで、全社的に受け入れてもらいやすくなります。DX推進のためのチームや部署などを設定し、部署横断で実施することで、より全社を巻き込んだ施策が叶います。
まとめ
医療DXは、医療の質を向上させるだけでなく、患者の利便性や医療従事者の負担軽減、医療機関の経営改善にも大きく寄与します。「令和ビジョン2030」の実現に向け、具体的な施策と成功のポイントを踏まえ、今後ますます医療DXの推進が期待されます。
デジタル技術を最大限に活用し、持続可能な医療システムを構築することが求められている今、自院でできるDX推進方法を検討してみてはいかがでしょうか。
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