自治体DXとは?推進ステップと、デジタル化を成功させる7つのポイント

自治体におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、住民サービスの質の向上や業務効率の改善、コスト削減などを目指せる重要な取り組みです。総務省が推進する「自治体DX推進計画」に基づき、多くの自治体が情報システムの標準化や行政手続きのオンライン化、AIやRPAの活用を進めています。

本記事では、自治体DXの基本概念や推進状況、成功のための7つのポイントについて詳しく解説し、地域社会のデジタル化を目指す自治体に役立つ情報を解説します。

目次

自治体DXとは

自治体DXとは、自治体(市区町村や都道府県)がデジタル技術を活用して、行政サービスの向上や業務効率化、住民の利便性向上を目指す取り組みのことです。従来の紙や対面中心の行政手続きをデジタル化し、データに基づいた意思決定や住民とのコミュニケーションを促進することで、より効率的で質の高い行政サービスの実現を目指します。

たとえば、手続きのオンライン化やIoTセンサーによるデータ収集と分析、スマートフォンアプリによる情報提供や手続き案内などが挙げられます。自治体DXは住民サービスの向上はもちろん、行政手続きや業務の効率を向上させるための重要な要素となっています。

自治体DXの目的

自治体がDXを推進する目的には、住民サービスの向上、業務効率の改善、データ活用による政策立案の高度化、災害時の迅速な対応など、多岐にわたります。これにより、自治体はより迅速かつ的確に住民のニーズに応えられるようになります。

自治体のDX推進状況

自治体のDX推進状況について気になる方も多いのではないでしょうか。2024年6月時点での推進状況についてカイエsつします。

全国的な取り組み状況

出典:自治体DXの取組に関するダッシュボード|デジタル庁

全国各地の自治体では、DX推進の取り組みが進んでいます。

具体的には、オンライン行政サービスの導入、AI・RPAによる業務効率化、テレワーク環境の整備などが挙げられます。これにより、住民の利便性が向上し、行政の効率も大幅に改善されています。

各自治体のDX推進状況は、デジタル庁の「自治体DXの取組に関するダッシュボード」から確認できるので、ご参考ください。

成功事例

自治体による成功事例も多く報告されています。たとえば、ある自治体では、AIチャットボットを導入して住民からの問い合わせ対応を自動化し、業務負荷を大幅に軽減しました。

また、他の自治体では、クラウドベースのデータ分析ツールを活用して地域課題を迅速に解決する取り組みが進められています。

課題と対策

一方で、自治体DX推進にはいくつかの課題も存在します。たとえば、デジタル人材の不足や、既存システムとの統合の難しさなどが挙げられます。これらの課題に対しては、国や自治体が連携してデジタル人材の育成を進めるとともに、標準化されたシステムの導入を進めることが求められています。

自治体がDXを推進する重要性

自治体DXを進めることで、住民サービスの質や業務効率の改善、政策立案の高度化など、さまざまなメリットが得られます。人口減少や環境への配慮など、差し迫った社会問題に対応するためにも重要です。

次に、自治体がDXを推進する7つのメリットを紹介します。

1.住民サービスの質の向上

自治体がDXを推進することで、住民に提供するサービスの質を大幅に向上させられますたとえば、オンラインでの申請手続きや相談窓口の開設により、住民が役所に出向かずにサービスを受けられるようになります。これにより、住民の利便性が高まり、行政サービスに対する満足度が向上します。

2.業務効率の改善とコスト削減

DXの推進により、自治体内部の業務プロセスをデジタル化・自動化することで、業務効率の大幅な改善が見込めます紙ベースの手続きや人手による処理を減らすことで、作業時間の短縮とコスト削減が可能となります。これにより、限られた予算や人員の有効活用が叶うことは大きなメリットだといえるでしょう。

3.データ活用による政策立案の高度化

自治体がDXを推進することで、さまざまなデータを収集・分析し、効果的な政策立案を行えます。

データに基づく意思決定により、住民のニーズに即した的確な政策を実施できるため、地域の課題解決や発展に寄与します。

4.災害時の迅速な対応と情報共有

DXの推進は、災害時の迅速な対応と情報共有にも大きく寄与します。デジタル技術を活用することで、リアルタイムでの情報収集・共有が可能となり、住民への迅速な避難指示や支援活動が行えます。また、被災状況の把握や復旧計画の立案にも役立ちます。

5.人口減少社会への対応

日本では人口減少と高齢化が進行しており、自治体の人員や財政に大きな負担がかかっています。DXを推進することで、少ない人員でも効率的に業務をこなせ、住民サービスを維持・向上させることが可能となります。

また、高齢者向けのデジタルサービスを提供することで、高齢化社会に対応した支援体制を構築できます。

6.環境への配慮と持続可能な社会の実現

自治体がDXを推進することで、紙の使用量を削減し、環境への負荷を軽減できますまた、エネルギーの効率的な利用や資源の有効活用を促進することで、持続可能な社会の実現に寄与するでしょう。

自治体が環境に配慮した施策を実施することで、地域全体の環境意識を高めることも期待されます。

7.国際競争力の強化

グローバルな視点で見ても、デジタル技術の活用は各国の自治体で進んでおり、日本の自治体もこれに対応していくことが求められています。DXを推進することで、自治体が国際的な競争力を強化し、海外からの投資や観光客を呼び込めるようになるでしょう。これにより、地域経済の活性化が図れます。

総務省による「自治体DX推進計画」とは

総務省は、自治体DXを推進するための基本方針を策定し、全国の自治体に対して指針を示しています。

この計画では、自治体の情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、行政手続きのオンライン化など、具体的な施策が盛り込まれています。

参考:総務省「自治体DX推進計画概要

自治体DXで取り組みする内容

自治体DX推進計画では具体的に6つの取組みについて、目標と実施施策が明確化されています。取り組みをする6つの内容について紹介します。

1.自治体の情報システムの標準化・共通化

2025年度を目標に、国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行することが目標とされています。

自治体間で情報システムの標準化・共通化を図ることで、システムの互換性を高め、効率的な運用を実現します。これにより、異なる自治体間でのデータ連携や共有が容易になり、行政サービスの質が向上します。

2.マイナンバーカードの普及促進

マイナンバーカードの普及を促進することで、住民の利便性を向上させることも目標とされています。たとえば、カードを活用してオンラインでの行政手続きを簡便に行えるようにすることで、窓口での待ち時間を削減し、住民の負担を軽減します。

3.自治体の行政手続きのオンライン化

行政手続きをオンライン化することで、住民が24時間いつでも手続きを行えるようになります。これにより、住民の利便性が向上し、行政の効率も大幅に改善されます。

4.自治体のAI・RPAの利用促進

AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用することで、自治体の業務プロセスを自動化し、効率化を図ります。これにより、職員の負担を軽減し、より重要な業務に集中することが可能となります。

5.テレワークの推進

テレワークの導入により、職員が場所を選ばずに業務を行える環境を整備します。これにより、業務の柔軟性が高まり、災害時や緊急時にも対応しやすくなります。

6.セキュリティ対策の徹底

DX推進時には、セキュリティ対策を徹底することが重要です。自治体は、情報漏えいやサイバー攻撃に対する防御策を講じ、住民のデータを安全に保護する責任があります。

自治体DXと合わせて取り組むべき事項

自治体DXを進めるためには、地域社会のデジタル化やデジタルデバイド対策など、合わせて取り組まなければならないこともあります。これらに取り組むことは自治体DX推進の土台となります。

デジタルデバイド対策

デジタルデバイド(情報格差)を解消するためには、全ての住民がデジタル技術を利用できるような支援が求められます。具体的には、高齢者や障害者向けのデジタル教育やインフラ整備を行います。

地域社会のデジタル化

住民がデジタル技術を活用しやすい環境を整備するために、地域全体のデジタル化を推進することが重要です。誰もがより多くの、正しい情報を得られる環境をつくることで、地域経済の活性化や住民生活の質向上が期待されます。

先にあげたデジタルデバイド対策としても有効です。

自治体がDX推進するときの進め方

自治体がDX自治体はどのようにDXを推進すればいいのか、実施の流れに沿って紹介します。

STEP1.現状分析と課題把握

自治体がDXを推進する際には、まず現状の業務プロセスやシステムの状況を詳細に分析し、課題を特定することが重要です。どの業務がデジタル化の恩恵を最も受けるか、どのシステムが老朽化しているかなど、具体的な問題点を洗い出すことで、DX推進の計画を立てやすくなります。

STEP2.デジタル人材の確保・育成

自治体DXを実現するには、専門的な知識とスキルを持つデジタル人材が必要不可欠です。自治体は、内外から優れた人材を確保し、継続的に育成するための具体的な計画を策定する必要があります。

デジタル人材の確保には、自治体独自の採用キャンペーンやインセンティブ制度の導入が効果的です。たとえば、デジタルスキルを持つ職員に対する給与の見直しや、職務に応じた特別手当の支給などを検討することで、優秀な人材を惹きつけられます。また、企業や大学との連携を強化し、インターンシップや共同研究の機会を提供することも、新たな人材確保につながります。

育成に関しては、職員がデジタル技術を習得しやすい環境を整えることが重要です。研修プログラムの充実や、eラーニングを活用した自主学習の推奨、外部講師によるセミナーの開催など、多様な学習機会を提供することが求められます。また、実務を通じてスキルを向上させるためのOJTや、他の自治体や企業での研修派遣も有効な手段です。

STEP3.目標とKPIの設定

次に、DX推進のビジョンと目標を明確に設定します具体的には、住民サービスの向上、業務効率の改善、コスト削減などの達成したい成果を定義します。このビジョンと目標が組織全体で共有されることで、DX推進のモチベーションが高まり、一貫した取り組みが可能になります。

これらの目標を達成するためにはKPI(主要業績評価指標)を設定し、目標や目標達成率を数値化することも重要です。定量化されたKPIを設定し、定期的に評価・見直しを行うことで、より効果的にDXを推進していけるでしょう。

STEP4.適切な技術とツールの選定

DXを効果的に進めるためには、適切な技術とツールの選定が不可欠です。クラウドサービス、AI、IoT、ブロックチェーンなどの最新技術を活用し、具体的な業務プロセスに適用することで、効率化や精度向上を図ります。導入するツールは、自治体のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。

STEP5.PoCの実施

選定した技術やツールが実際に効果を発揮するかを確認するために、PoC(概念実証)を実施します。小規模なプロジェクトで試験的に導入し、効果や課題を見極めることで、本格導入のリスクを低減できます。

また、成功事例を積み重ねることで、全体への展開がスムーズに進みます。

STEP6.技術教育の実施

PoCの結果を踏まえ、組織的な展開を行います。新しいシステムやプロセスを導入する際には、関係者全員へのトレーニングが重要です。住民対応を行うスタッフやシステム管理者が新しい技術を使いこなせるよう、継続的な教育とサポートを提供します。

自治体DXを推進するときのポイント

自治体DXを成功させるには、トップダウンでの推進や住民ニーズの反映などが重要です。次に、自治体DXを推進するための具体的なポイントを7つ紹介します。

ポイント1.リーダーシップとコミットメント

自治体DXの成功には、意思決定層のリーダーシップと強いコミットメントが不可欠です。トップダウンでの推進が、全組織の協力を得る鍵となります。

意思決定を実施する層がDX推進の重要性を理解し、積極的に関与することで、プロジェクトの進行がスムーズになります。

ポイント2.住民のニーズを反映させる

DX推進の過程では、住民のニーズをしっかりと把握し、それを反映させることが重要です。アンケートやヒアリングを通じて住民の意見を収集し、サービス改善に役立てます。

住民にとって使いやすく、利便性の高いシステムを構築することで、満足度の向上が期待できます。

ポイント3.デジタル人材の確保と教育の実施

デジタル人材の確保と教育は、自治体DXを成功させるための鍵となります。デジタル技術の導入だけではなく、それを効果的に活用するためには、技術に精通した人材が不可欠です。デジタル人材の確保と育成に注力することで、自治体はDX推進に必要なリソースを確保し、効率的かつ効果的にDXを進められます。

自治体は、デジタルスキルを持つ新たな人材の採用を進めると同時に、現職の職員に対しても継続的な教育とトレーニングを実施することが求められます。

まず、デジタル人材の確保については、自治体は企業との連携や専門機関との協力を通じて、デジタル技術に強い人材を積極的に採用する戦略を取ることが重要です。また、職員のキャリアパスを明確にし、デジタルスキルの習得が職員のキャリアアップに直結する仕組みを整えることで、職員のモチベーションを高められます。

次に、教育の実施については、定期的なトレーニングプログラムやワークショップを開催し、職員が最新のデジタル技術やツールを学ぶ機会を提供することが必要です。eラーニングプラットフォームや外部講師を活用することで、多様な学習スタイルに対応し、全ての職員が効果的に学べる環境を整備します。また、現場での実践を通じてスキルを磨くOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)も有効です。

これらの取り組みを通じて、デジタル技術を活用した効率的な業務運営を実現し、住民サービスの質を向上していきましょう。

ポイント4.セキュリティとプライバシーの確保

DX推進に伴い、セキュリティとプライバシーの確保は非常に重要です。特に自治体では、多くの個人情報を扱うため、情報漏えいを防ぐための対策が必須です。

セキュリティポリシーの策定や定期的なセキュリティチェック、職員のセキュリティ教育を徹底することが求められます。

ポイント5.継続的な改善とフィードバック

DXは一度で完了するものではなく、継続的な改善が必要です。導入後も定期的にフィードバックを収集し、システムやプロセスを見直すことで、常に最適な状態を保てます。住民や職員からの意見を積極的に取り入れ、柔軟に対応することが重要です。

ポイント6.ガバナンスの強化

自治体のDX推進には、ガバナンスの強化も重要なポイントです。明確なガバナンス体制を構築し、責任の所在を明確にすることで、プロジェクトの透明性と信頼性が向上します。

また、定期的な監査や評価を行い、問題点を早期に発見・修正する体制を整えます。

ポイント7.他自治体との連携と情報共有

DX推進においては、他の自治体との連携や情報共有も効果的です。他の自治体の成功事例やベストプラクティスを参考にし、自分たちのプロジェクトに取り入れることで、効率的なDX推進が可能になります。

また、共同でのシステム導入やデータ連携により、コスト削減や効果の最大化が図れます。

自治体DXの事例

DXに取り組む自治体はすでに数多くあります。たとえば山口県では、「山口県デジタル・ガバナント構築連携会議」を開催し、県内でのデジタル・ガバナントの構築に向けて取り組んでいます。この会議では国の動向を確認・共有し、組織体制の強化やデジタル人材の確保など、デジタル社会を支える基盤整備のための意見交換が行われています。

参考:デジタル改革・山口県デジタル・ガバメント構築連携会議 – 山口県ホームページ

愛媛県では「愛媛県・市町DX協働宣言」が行われ、さまざまな行政課題について県内市町と積極的に連携を取り、DXを推進しています。県と20市町が協働してDXを推進する宣言をすることは、トップダウンでの取り組みが重要なDX推進において、大きな意義のあることといえます。

参考:(2021年度)愛媛県・市町DX協働宣言を行いました – 愛媛県庁公式ホームページ

自治体DXを推進するときに役立つ資料

自治体DXを推進するときには、「自治体DX推進参考事例集」が参考になります。これは総務省が、地方公共団体が重点的に取り組むべき事項や国の支援策などをまとめた資料で、体制整備や人材の育成・確保などに関する自治体DX推進の参考事例が掲載されています。

先述の山口県や愛媛県などの事例もこの資料から詳細を確認できます。他の自治体の事例を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

自治体がDXを推進することは、住民サービスの向上、業務効率の改善、政策立案の高度化など、多岐にわたるメリットをもたらします。これにより、自治体はより効率的かつ効果的に業務を遂行し、住民の生活の質を向上させられるでしょう。DXの推進は、自治体が直面するさまざまな課題に対応するための重要な手段であり、今後も積極的に取り組んでいく必要があります。

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