インナーブランディングの成功事例13選から学ぶ、成功のポイントを解説

提供:株式会社QUICK

インナーブランディングは、時間やコストがかかる取り組みです。全社的なプロジェクトなので、失敗に繋がる要素はなるべく排除したいもの。では、成功させるためには何が必要なのでしょうか。

本記事では、インナーブランディングの成功事例をピックアップし、成功のポイントを解説します。

目次

インナーブランディングが成功した状態とは

インナーブランディングは抽象的な概念のため、自社における「成功」とはどのような状態なのか確認しておきましょう。

インナーブランディングが成功すると、従業員の言動の変容や、自社に積極的に関わる姿勢が見られるようになります。言動や意識、姿勢の変化は数値として把握しにくい部分ではありますが、施策実施後にはアンケートやインタビューなどを行い、現場のリアルな声や率直な意見を拾いながら、定量評価できる仕組みを作ることが重要です。

インナーブランディングの施策での変化と、自社の収益との関係性を把握することで、インナーブランディングの効果が把握できます。

インナーブランディングの成功事例13選

ここからはインナーブランディングの成功事例をピックアップしてご紹介します。

貴社と事例の企業・従業員は状況が異なりますが、「もし自社でこの施策を実施したらどのような結果になりそうなのか」とイメージしながら、手法や具体的な実施内容の参考にしてみてください。

ミッションや行動指針を明確化する|スターバックス コーヒー ジャパン

従業員が主体的に行動し、顧客に対して満足度の高いサービスを提供していることで知られる「スターバックスコーヒー」。

インナーブランディング施策のひとつに「行動指針の明確化」が挙げられます。ミッションと具体的な行動指針を掲げ、従業員一人ひとりに浸透させることで、ブランドとして一貫性のあるサービスの提供を叶えています。

スターバックスコーヒー ミッション宣言

当社の原則を一貫して守りつつ事業を拡大し、
世界の最高級コーヒーの加工から小売まで一貫して扱う
一流コーヒー専門会社としてのスターバックスを築いていく。

【行動指針】
お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる
事業運営上での不可欠な要素として多様性を受け入れる
コーヒーの調達や焙煎、新鮮なコーヒーの販売において、
常に最高級のレベルを目指す
顧客が心から満足するサービスを常に提供する
地域社会や環境保護に積極的に貢献する
将来の繁栄には利益性が不可欠であることを認識する

引用:Starbucks Coffee「スターバックスコーヒー ミッション宣言」

そうしたインナーブランディングの結果、スターバックスは飲食業態ながら勤続年数が長いことで知られています。勤続年数は1年未満の方は20%、1〜3年未満は63%、4年以上は18%です。インナーブランディングにより従業員の定着率向上に成功した事例です。

画像出典・参考:Starbucks Coffee「Our Mission, Promises and Values
参考:Starbucks Coffee「データで見るスターバックス

社員一人ひとりが「じぶん起点」で自社のMVVと向き合う|博報堂

株式会社博報堂は、企業のインナーブランディングにおいて、従業員一人ひとりが企業のパーパスやビジョンを捉え直す「じぶん起点」を重要なキーワードとしています。

自分が大切にしていることを通して自社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と向き合い、自分ごと化することで、自分が所属する組織の強みや価値観の議論が活性化し、エンゲージメント向上を促します。

参考:博報堂マガジン センタードット「社員の心を動かす、「人」起点の組織変革/原節子・栗原隆人

歴史・価値観・考え方を共有し、目線を揃える|リクルート

株式会社リクルートは複数の事業部に分かれて運営していることで、組織の分断や情報共有、事業コンテクストの理解が一致しないことから、インナーブランディングを実施。

事業の歴史や価値観、ビジョン・ミッション・バリューを伝える、ブランドビジョンムービーの作成、日常的に顧客を意識する接点作りなどの施策を行いました。

こうしたインナーブランディング活動により、勤続年数や所属部署の違いによって発生していた理解度のバラつきや情報の分断などの問題を解消。事業規模の拡大と並行して従業員が増えた際に行うインナーブランディングとして参考になる事例です。

画像出典・参考:リクルート「目線を揃えることで、ブランドが浸透する。 リクルートで社内へのブランド浸透に取り組んだ話

愛社精神を育む充実した育成制度を提供|東京ディズニーリゾート

東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドは、従業員の質を高めるため、従業員の行動指針を明確に定めると共に、従業員一人ひとりが自立的な行動ができるように充実した育成制度を用意しています。

さらに、従業員を表彰する制度や従業員同士で感謝を伝え合うサンクスカード、企業から従業員への感謝の気持ちを伝えるサンクスデーなども設けています。こうした取り組みと理念の浸透により、従業員の自社への愛着が高まり、より品質の高い接客の提供に成功しています。

画像出典・参考:株式会社オリエンタルランド「企業風土とES活動

物理的なクレドカードで、行動指針を意識|ザ・リッツ・カールトン

「ザ・リッツ・カールトン」は、従業員の行動指針となる「クレド」を徹底活用したインナーブランディングを実施しています。

サービスを提供する際の心構えが記載されたクレドカードを全従業員に配布。いつでも確認できるように常備することが必須とされています。クレドカードを徹底活用することにより、企業理念や価値観の浸透に成功させた事例です。

画像出典・参考:ザ・リッツ・カールトン

自社のアイデンティティや提供する価値観を明確にする|ライオン

2022年に創業131周年を迎えた老舗企業である株式会社ライオン。同社は2012年に新たな企業スローガン「今日を愛する。」を制定し、この企業スローガン浸透のためにインナーブランディングを実施してきました。

自社のアイデンティティや提供する価値観を明確にすることで、取り扱う製品や携わる業務内容に関係なく、一人ひとりがスローガンに基づいた行動ができるようになったといいます。中長期的に取り組むことでインナーブランディングに成功した参考となる事例です。

 

参考:ソフィア「お客様インタビューvol.4「社員の『好き』がお客様に届くまで ライオン株式会社 ブランド浸透度調査

インナーブランディング施策の実施に従業員を巻き込み当事者意識を醸成|日本航空

日本航空株式会社は、2010年の経営破綻から再生するためインナーブランディングを実施しました。

ムービーやテキストを活用したインナーブランディングは多くの企業でも実施されていますが、各部署の代表者が当事者としてセミナーを作っていくことや、ワークショップ形式にすることで従業員の当事者意識が高まり、自社の軸となる考え方の浸透に成功しました。

企業の考えを一方的に押し付けるのではなく、ともに考えていくことは、ブランド意識を浸透させやすいといえるでしょう。

参考:リンクアンドモチベーション「3万5千人のスタッフにJALブランドを浸透させ、再生へと、加速する。

毎週2~3回の社内報で理念を定着|アイワード

ブック印刷事業やシステム開発事業を展開する株式会社アイワード。同社はインナーブランディング活動の一環として、昭和58年から社内報の発行を継続して行っています

同社の社内報は、全従業員が書いた日報から情報が選定されるのが特徴従業員は社内報に掲載される可能性があることを前提に日報を書く必要があるため、企業理念や価値観を自然と意識することになります。社内報を生かしたインナーブランディングの参考例です。

参考:公益社団法人日本印刷技術協会「わが社はISO9000を通して何を目指したか

わかりやすいスローガンと動画でMVVを社内外にPR|ニッセイコム

株式会社ニッセイコムは、2015年にコーポレートブランドをリニューアル。同社が目指す企業の姿を実現するためにブランド強化が必要であるとし、同社が提供するMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や価値観を社内外に伝える方法としてインナーブランディングを実施しています。

手法としては、特設サイト・ブランド映像・ストーリー映像を制作・展開。同社のブランドメッセージを視覚的に理解できる方法により、インナーブランディングを成功させました。

画像出典・参考:Ageha「「温もり」がキーワード。新しいコミュニケーションを生み出すコーポレートブランディング。

作品制作の社内イベントを通して自社の未来を描く|ぺんてる

画材をはじめとする文具事務用品の製造販売を行うぺんてる株式会社は、自社のビジョンである「表現するよろこびをはぐくむ」を体験を通じて従業員に理解してもらうためのインナーブランディング施策「PENTEL RAKUGAKI WEEK」を実施しました。

ぺんてるの全世界の社員・従業員3,046人が参加して巨大な帆布にラクガキをしていくイベントは、コロナ禍でありながらもチームと一体となって取り組むことに重きをおき、社内から良い反応を得られたといいます。

このコンテンツは社外にも公開され、社外からも好評。社内外どちらのブランディングとしても成功した事例です。

画像出典・参考:ぺんてる RAKUGAKI WEEK
参考:クワシーノ「【キャンペーンページ制作】インナーブランディング施策を”会社の楽しさ”を伝える武器へと活用した事例

ブランドロゴ・スローガン・キービジュアル・コンセプト映像を制作|旭化成

総合化学メーカーである旭化成株式会社は、新中期経営計画における人財戦略の施策の一つとして、従業員の成長やキャリア形成を後押しする学習プラットフォーム「CLANP」を2023年に導入。そのプラットフォームの利用を促進すると共に、同社が目指す組織風土の実現のため、ンナーブランディング施策としてブランドロゴ・スローガン・キービジュアル・コンセプト映像を制作しています。

それにより、全従業員の81%がプラットフォームにログイン、64.3%が1つ以上のコンテンツの学習を完了させるなど、活用状況を高めることに成功しています。

参考:Ageha「中期経営計画実現のための重要施策。新たな学びのプラットフォームの社内浸透を支援。
参考:日本の人事部「旭化成が展開する学びのプラットフォーム「CLAP」とは
画像出典:旭化成株式会社「従業員の自律的な成長やキャリア形成を後押しする学びのプラットフォーム「CLAP」の立ち上げについて

4ヵ月かけて自社らしいMVVを定義|メフォス

給食業務の委託事業を展開する株式会社メフォスは、インナーブランディング施策としてMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定、ブランドサイトの制作、社内浸透ツールの制作を実施。社員・役員・社長へのインタビューを通して、今まで不明瞭だったブランド価値を約4ヶ月かけて言語化し、明確にしました。

企業理念やMVVを一方的に押し付けるのではなく、従業員も巻き込んで制作することで、当事者意識を持たせることに成功した事例です。

参考:Ageha「見えなかった自社らしさを顕在化。MVV策定から、これからのブランドコミュニケーション計画まで構築。
参考:株式会社メフォス ブランドサイト

創業から100年、ブランドイメージの統一を図る|ヤンマー

大手農業機械メーカーとして知られるヤンマーホールディングス株式会社は、100周年のタイミングで大規模なリブランディングを実施。新たなブランドイメージを社内で統一するインナーブランディングとして、スローガン「A SUSTAINABLE FUTURE」の浸透・理解に取り組みました。

具体的な施策としては、座談会の開催や現場とコミュニケーションを取りながらの新商品デザインの進行などがあります。従業員がリブランディングの内容を理解したことを確認しながら、丁寧かつ確実に進めていくことで社内の一体感を高めることに成功しています。

参考:広報会議「リブランディングから10年 ヤンマーが語るメリットとは?
画像出典:ヤンマー「私たちのパーパス

オンラインでもストーリーを紡いだコンテンツの発信で理解を促進|アッヴィ

アメリカのバイオ医薬品企業・AbbVieの日本法人であるアッヴィ合同会社は、インナーブランディングによって従業員エンゲージメントを高めることに成功しています。

同社は、毎年2月に開催している全社総会の場を利用して、新5カ年計画「Road to the Best」の理解を促進しました。さらに、特設ページの解説や、従業員への浸透のキーパーソンとなるマネージャー陣から部下への働きかけも並行して実施浸透・理解のフェーズで多くの施策を行うことで、従業員が新5カ年計画に進んで取り組む意識の醸成に成功しています。

参考:CAPPY「Road to the Best Communication feat. AbbVie 第1回:社員主体で創った“新5カ年計画”の幕開け(後編)
画像出典・参考:AbbVie「私たちのビジョン

事例から学ぶインナーブランディングを成功させるポイント

インナーブランディングの施策は企業により様々あるものの、成功している企業には共通点があります。これまでにご紹介した成功事例から、インナーブランディングを成功させるポイントを4つご紹介します。

ポイント1.MVVを明確にする

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が曖昧になったままインナーブランディングを推進しても、期待するような効果は得られません。MVVが定められていない企業や曖昧なままにしている企業は、まずMVVを明確にすることから始めましょう。

MVVは全社で同じ方向を向いて進むために必要な指針です。インナーブランディングを進める上でも、立ち戻れる場所として機能します。

ポイント2.従業員に価値観を押し付けず、巻き込む

従業員が企業理念や価値観を押し付けられていると感じないような伝え方も意識したいポイントのひとつです。従業員を巻き込んでインナーブランディングを推進する他、ストーリーを作って伝える方法も考えられます。

従業員が腹落ちできるように、これまでの自社の歩みや実績、目指す未来をストーリーに落とし込みましょう。

ポイント3.短期間ではなく長期のスパンで実施する

インナーブランディングは短期間では成果が見られません。長期のスパンで取り組むことを前提に、実施の計画を立てましょう。事例でご紹介した多くの企業は年単位でインナーブランディングに取り組んでおり、それでも成果は徐々にしか現れません。粘り強く企業理念や価値観の浸透・理解を推進しましょう。

ポイント4.自社に合った手法やツールを活用し、ビジュアル化する

インナーブランディングの手法は、社内報や社内SNS、ムービー制作などさまざまです。成功している企業が多い手法を選んだからと言って、その手法が自社にも適しているとは限りません。伝えたい内容や伝える目的に合った手法やツールを活用しながら、ビジュアル化することを意識しましょう。

インナーブランディングの手法一覧

インナーブランディングの実施時には、様々なツールや手法が活用されています。メリット・デメリットに加えておすすめツールもご紹介しているので、参考にしてみてください。

手法

メリット

デメリット

おすすめツール

社内報(Web)

従業員が簡単に閲覧できる
コスト低く作成しやすい

アクセスされず見てもらえない可能性がある

社内報作成ツール
オフィスサイネージ

社内報(紙)

手触りや質感で訴求力がある

Web媒体より手間やコストがかかる

社内報プラットフォームツール

社内SNS

部署や役職の垣根を超えたコミュニケーション活性化

運用に手間がかかる

社内SNSツール

サンクスカード

低コストで実施できる

作成が苦痛になる可能性がある


オフィスサイネージ

1on1

企業理念や価値観の共有に効果的

面談の準備や時間確保が必要

1on1シート

研修

企業理念や価値観を定着させやすい

研修内容の企画や運営に手間がかかる

研修資料格納・閲覧ツール

ワークショップ

従業員の積極的な姿勢を養える

オフラインの場合は外部委託で費用がかかる

ワークショップ特化ツール

社内イベント

企業理念やバリュー、ミッションを伝える場となる

イベント内容によっては効果が薄い

マネジメント・カンファレンス

経営トップと現場の意見交換の場となる

開催頻度や時間確保が必要

トップキャラバン

幹部から従業員へ直接理念やMVVを伝えられる

幹部の時間確保が必要

社内企業コンテスト

従業員の主体性を育む

運営に手間がかかる

MVV・クレドなどのメッセージ発信

企業理念や価値観に触れる機会を増やせる

メッセージの内容や発信方法に工夫が必要

クレドカード・社内SNSツール・オフィスサイネージ

 

インナーブランディングの事例から自社にあった方法を検討しよう

インナーブランディングを進めるにあたって、成功している企業の情報を集めることは大切なポイントです。自社と全く同じ状況の企業はありませんが、成功に必要なエッセンスを学ぶことができます。

本記事で紹介した事例の内容と手法を参考に、自社に合ったインナーブランディングの方法を検討してみてください。

インナーブランディングの実施時に明確にした、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や行動指針などは、一度共有して終わりにせず、常に従業員の目に入るようにし、意識させることが重要です。

株式会社QUICKが運営するインナーブランディングツール「QUICK Smart Brain」を活用すると、オフィス内に常に企業が発信したい情報を表示できます。

また、既存の資料を読み込むだけで、簡単に動画を制作可能。膨大な情報を処理して、自社向けにカスタマイズされたコンテンツを制作できます。
外国語の翻訳にも対応しているので、日本語を母国語にしていない従業員や、海外支店のナショナルスタッフにも情報を受け取ってもらいやすくなります。

「社内にインナーブランディングに関係する情報を掲載していきたい」という方は、ぜひ詳細をご確認ください。

 

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