DX推進を成功に導くための鍵と具体的なステップをわかりやすく解説

「わが社もDXを導入せにゃアカん、何を、どこまで、どのようにするか、オマエ、調べてこい」と偉い人から今まさに命ぜられている状態の人も多いでしょう。

この記事では、デジタルトランスフォーメーションに関連する講演やセミナーを200回以上させていただいてきた私が、デジタル領域にいらっしゃらない方にもできる限りわかりやすくデジタルトランスフォーメーションを解説する記事です。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を雑誌やメディアで見ない日はなくなりました。そのような時に、今更「デジタルトランスフォーメーションって何?」「推進するためにどこから始めたらいいの?」と周りに聞けない方も実際多いでしょう。

そこで、漠としたデジタルトランスフォーメションを理解いただくため、豊富な事例を入れたり、多くの側面からできる限り噛み砕きわかりやすく解説しました。最後までお読みいただくと、デジタルトランスフォーメーションの何たるかを掴め、自社のデジタルトランスフォーメーションへの行動につながるものと信じています。


1.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

デジタルトランスフォーメーションという言葉自体、まさに「デジタル(Digital)にトランスフォーム(Transform)する」ですので、「デジタルへの変換・転換」の意です。概念的な言葉であることから、デジタルトランスフォーメーションの定義は文脈や背景、組織で異なることも多く、全てに適用できる一義的な定義は実際難しいものです。しかし、実務上多く引用される経済産業省のDXレポートでは以下のように解説されています。

1-1.デジタルトランスフォーメーションとはビジネス自体をデジタル化することである

経済産業省『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』では、以下のようにデジタルトランスフォーメーションの定義がされています。幹部資料として嫌という程見てきた方も多く、目が滑るかもしれません(笑)。しかしこれが、まさに「DXって何?」という人向けの最初に理解すべき定義とも言えます。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術) を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”

ここで記載されている「競争上の優位性」とは、単なる情報のデジタル化やプロセスのデジタル化にとどまらず、ビジネスモデル自体やビジネスの前提のデジタル化をはかるということに他なりません。

しかし、「競争上の優位性」がなければデジタルトランスフォーメーションと言えない、ということではなく、現在デジタル化につながる行動に踏み出していれば、それは広義的なデジタルトランスフォーメーションの第一歩を進めていると言って良いでしょう。

小噺:デジタルトランスフォーメーションの略がDTではなくDXである理由
「デジタルトランスフォーメーション」は、英語では「Digital Transformation」と書きます。通常アルファベットの略称は頭文字をとって略称にすることが多く、この例でいくとDTになるような気もします。しかし、デジタルトランスフォーメーションは、英語の「Trans-」を「X」で略称表記されると言うことから来ています。

2.調査から見るDXの主な課題

私のコンサルティングの実務経験や、2020年のIPA情報処理推進機構のDX推進状況調査(以降、IPA調査)、同年のボストン・コンサルティング・グループ社のDX推進のグローバル調査(以降、BCG調査)の内容を合わせて日本におけるDXの主な課題は以下と考えられます。

2-1.必要な能力を持った人材の確保が出来ない

DXのためには以下のような人材が必要です。

  • 顧客を深く理解しながら商品を考えるプロダクトマネージャーやビジネスデザイナー
  • 最先端のデジタル技術に長けたテックリードやデータサイエンティスト

このような人材が必要なのは、大前提としてDX推進とは、自社の顧客のニーズに対して、デジタル技術を駆使して、新たなサービスを打ち出し、自社のビジネスモデルを変革していく取り組みであるからです。

しかし、中途採用を募る場合でも、専門性の高い人材の採用は並大抵のことではありませんし、社内で能力のあるひとを集めるにも所属部署の上司の説得が必要です。

このような人材は、人事部と連携して、専門人材に向けた採用キャンペーンを企画して、やっと採用できるかどうか、というところです。私たちのような専門の社外パートナーを使う場合でも、発注決裁には予算の確保、ROIの見立てなど、投資判断など多くの社内ステークホルダーが動かざるを得ません。

IPA調査でも、特にDX推進に成功した企業が、このような人材の確保に苦労した、と回答しています。社外パートナーや社内人材含め、「必要な能力を持った仲間を集めること」は、DX推進の難所と言えます。

2-2.異なる部門間でWin-Winの関係を維持できない

繰り返しになりますが、DX推進には優秀な専門家が必要です。

多くの場合、そのような人材は、既に社内のその他の重要な取り組みにアサインされています。彼らを、いまの業務から外して、新たなDX推進の取り組みアサインすることは、非常に難しい調整になります。
更に、そのような人材を集めてDX推進を開始し、新たな企画を立ち上げても、実際に開発を行うには、既存のシステムに大量の改修を行うことが必要になります。IT部門が既存システムに対して、潤沢な改修コストや体制を持っているケースは殆どなく、DXを推進する代わりに、既に計画していた開発を取りやめなければならないケースも多々あります。

IPA調査でも、特にDX推進に成功した企業が、Win-Win関係の維持が課題だったと回答しており、DXの難所であると言えます。

2-3.経営層がDX推進を正しく理解して、コミットしてくれない

これも繰り返しになりますが、DX推進とは、新たなサービスを打ち出し、自社のビジネスモデルを変革(Transformation)することです。それは、アナログ情報のデータ化(Digitization)、既存業務のデジタル化(Digitalization)とは異なるものです。

しかし、DX推進を始めた経営者が、その理解をしていなかったり、そこまでの覚悟ができていないケースが多くあります。それがどのような問題を引き起こすかというと、優秀層の社内再配置や中途採用への投資、既存システムの大規模な改修など、変革に伴うリスクテイクの意思決定が進まなくなってしまい、DX推進が途中で止まってしまうのです。

BCG調査では、調査対象の日本企業79社の67%(回答者の94%はCEOなど役員以上の職位)が、DXを既存業務の効率化と誤って認識している、と指摘されています。

DX推進のプロセスの中で発生する困難な調整、それに伴うリスクテイクを判断するのは経営層です。経営層のDX定義の理解、そして経営層のコミットメントは必ず獲得しなければなりません。


3.DXの推進へ向けた社内のステークホルダーを動かす4つのステップ

DXを推進するために社内のステークホルダーを動かす銀の弾丸はありません。ここからの内容は、非常に泥臭く感じられるかもしれませんが、私たちのコンサルティング経験の中で思い知ってきた間違いなく最も効率の良いステップの紹介になります。

3-1.自社の顧客のニーズに向けて新たなサービスのアイデアを考える

何らかのソリューションやプロダクトは目に見えてわかりやすいですのでそれらを起点に進めがちです。しかし、重要なのは自社の顧客を喜ばせることを第一に考え、新しいアイデアを追求することです。

上述のIPAやBCGの調査を社内に共有すると、社内のステークホルダーからDX推進に対する興味を効率良く引き出すことができるでしょう。しかし、それだけではDX推進に必要な様々な困難を打ち破るパワーを引き出すことはできません。自社の顧客に向けた新たなサービスのアイデアを全く持っていないひとに、デジタル技術を用いた自社のビジネスモデルを変革するDXのリーダーは務まりません。

後ほど紹介するいくつかの事例を参考にしながら、あなたの会社の顧客が何を求めているか、デジタル技術の進歩によって新たに提供できる価値はないか、考えてみましょう。

いきなり企画書を書き始める必要はありません。先ずは、社内の仲の良いひとに、口頭で説明できる程度の内容を目指して考えてみるのが第一歩です。

3-2.アイデアを共有・議論する 

いくつかのアイデアができたら、社内でアイデアについて議論できる仲間を探しましょう。最初から社長や役員に向けて、いきなりプレゼンを行う必要はありません。

あなたが事業部門ではなくIT部門に所属しており、サービスのアイデアを考えるよりも、デジタル技術に長けた存在であるなら、サービスのアイデアを考えた仲間の話を丁寧に聞いてあげましょう。そして、あなたの知識で、アイデアの実現に必要なデジタル技術は何か、その実現性について議論をリードしましょう。

3-3.デジタルハブの設置

デジタルハブは、まさに社内の異なる部門の専門家が集まって、新たなアイデアを作るための議論やPoCを行う場です。もし、そのような場が社内になければ、自分で場を作りましょう。これは、自社内でアイデアを出すのに必須とも言えます。

なぜなら、DX推進にはIT部門と業務部門といった異なる組織のコラボレーションが不可欠だからです。先ずはそのようなスモールなデジタルハブを有志で立ち上げましょう。おすすめは、デジタルハブで、自組織外の部門のメンバーを誘って、議論してみることです。

先のBCG調査では、日本はDXを推進するためのデジタルハブの設置が、特に世界に遅れをとっていると指摘されています。

引用:『デジタルトランスフォーメーションに関するグローバル調査』ボストンコンサルティンググループ

3-4.スモールスタート、クイックウィンを掴む

社内のステークホルダーを動かすには、自分たちのアイデアの実現性についての説得力を少しずつ上げていくしかありません。そのためには、自分(または自分のチーム)のアイデアの背景にあるたくさんの仮説について、スモールスタートとして、ひとつずつ検証していくことが一番の近道です。

例えば、ECサイトを運営しているのであれば、ユーザーの行動履歴データから、ユーザーの購買する商品を予測することが可能か、データさえ蓄積できていれば、実は簡単に実験できます。ここで高い予測精度が期待できることがわかれば、新サービスの実現性を強力に裏付けることができるでしょう。アイデアの背景にある仮説の分解、特に例示したようなデータ利活用部分の検証はメンバーの知識と経験が必要になってきます。

正しい道しるべのもとクイックウィンを掴むために私たちのような外部の専門家をチームに組み込むことも有効な手段です。こちらの記事にもDXの具体的な戦術を公開しています。

デジタルトランスフォーメーションの講演を200回以上やってきた私が受けたよくある19の質問に回答します

3-5.IT/デジタル人材の確保と育成

デジタルトランスフォーメーションは、デジタル部署を作っても実際何をどのように進めればわからない、という部分で何も出来なくなっている、ということが実は多いものです。そのためにも、これからスタートするにあたっては、プロフェッショナルの旗振り役を外部の力で借りてまず軌道にのせる、というのは良いアプローチで、うまくいっている多くの企業でこのようにされています。

一般的に、「育成」には相応の時間がかかります。かといって、外部から新たに採用しても、組織を理解するにも時間がかかり立ち上がりがスピーディに行く保証はありません。ですので、もしDXの初期フェーズでしたら、外注でスピーディにブーストをかけ、その後体制が整ってきたらうまく離陸していくというのはよくある一つの手です。今いるメンバーも育成しつつ、外から新たに採用したり、外部の力も借りるのが一般的に効率的で良い手です。


5.まとめ

 

この記事では、読者のみなさまに、デジタルフォーメーション(DX)への行動の一歩目を踏み出していただくことを目的に、DXの定義から、よくある課題、代表的な課題である社内ステークホルダーの動かし方、参考事例などを紹介しました。

わたしが、DX推進のコンサルティングをご依頼いただく際は、まず最初に、これまでのお客様が取り組まれたDX推進の内容を確認させていただいております。その経験の中で、多く出会うのが、世の中のDX事例の調査は集められたが、次に何をすればよいかわからない、というお客様です。

多くのお客様が、我々のようなコンサルティングファームも活用しながら、国内外のデジタル技術動向、DX推進の事例を収集して、経営層にプレゼンテーションを行ったが、「それで、結局は何をすればいいの?」という厳しい反応しか得られなかった、と悩んでいらっしゃいます。

そのようなとき、わたしがいつも申し上げているのは、世の中のデジタル技術や他の企業の取り組みから、自社のサービスのユーザーに、視点を切り替えましょう、ということです。

もちろん、最新のデジタル技術や競合の動きを知る、といった外部の環境分析は重要です。しかし、最も分析するべきは、現在のサービスのユーザー、あなたのお客様です。あなたのお客様をもっと喜ばせる方法を考えましょう。DX推進を行うならば、調査や分析の工数の80%は、自社のお客様についてのものに集中するべきでしょう。

また、わたしたちは、調査や分析だけでなくPoC(実証実験)もよくお手伝いさせていただきます。PoCでも、大事なのは自社のお客様を知ることです。デジタル技術を使った試作品を作る中で自社のお客様とコミュニケーションをとり、自社のお客様の反応を知る、自社のお客様をより深く理解する、という取り組みとして、PoCは仕立てるべきです。そのような活動から得られた知見を、経営層にプレゼンテーションしていけば、「今のサービスを見直す重要な知見が得られた」「このような新たなサービスがお客様には必要だ」「DX推進への投資を追加しよう」といった前向きな反応を引き出すことが可能になります。

DXの本質は、最新のデジタル技術を使ったツールやソリューションを導入することではなく、自社のお客様に新たな価値を提供することです。自社のお客様のニーズに向き合いながら、ステークホルダーをうまく動かし、DX推進の成功に向けて、着実に進んでいきましょう。

 

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