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近年、注目されている経営手法のひとつが「人的資本経営」です。一部の企業を対象に人的資本の開示が義務化されている他、社会の急速な変化への適応力を強化する必要性が高まっていることもあり、さまざまな企業が人的資本経営を実施しています。
実際に人的資本経営を実施することは、企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか。本記事では、取り組み方や取り組む際のポイントなどもわかりやすく解説します。
人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材を資本として捉えてその価値を最大限高めることで企業の中長期的価値を向上する経営手法のことです。2020年に経済産業省が人材戦略に関する内容をまとめた「人材版伊藤レポート」を公開したことで、その考え方が注目されるようになりました。
参考:経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~」
人的資本可視化指針に基づく開示項目
ステークホルダーに人的資本経営に取り組んでいることを示すため、日本では2023年から企業の人的資本の開示を義務付けています。対象となるのは、金融商品取引法第24条で有価証券報告書を発行している大手企業4000社です。
開示項目は7分野・19項目です。ただし、開示が必須とされているのはそのうちの一部です。
分野 | 開示項目 |
人材育成 | 研修時間 |
従業員エンゲージメント | 従業員エンゲージメント |
流動性 | 離職率 |
ダイバーシティ | 属性別従業員・経営層比率 |
コンプライアンス・労働慣行 | 人権レビュー対象事業数 |
健康・安全 | 労働災害発生件数 |
参考:非財務情報可視化研究会「人的資本可視化指針」
人的資本を構成する要素
人的資本とは、従業員が持つ能力を資本として捉える考え方のことです。投資により身につく「知識」「能力」「経験」「意欲」の4つが人的資本と考えられています。
参考:国際連合欧州経済委員会「人的資本の測定に関する指針(仮訳)」P11
人的基本経営が注目される背景
2023年に人的資本開示が一部の企業で義務付けられた以外に、人的資本経営が注目されている背景にはどんな理由があるのでしょうか。日本国内の話に限定し、企業の成長という観点からその背景を説明します。
人材の多様化
少子高齢化により労働人口が減少し続けている日本では、シニア世代や外国人労働者など働く人材が多様化しています。従来の人材管理は、多様な人材の管理には向いていません。
こうした社会の変化を受けて、バックグラウンドが異なる人材の一人ひとりが個性を最大限発揮するための人的資本経営が、持続的な企業経営を実現するために必要だとされています。
働き方の多様化
人材の多様化だけでなく、働き方の多様化も起きています。現代では、働く人の状況に合わせて、時短勤務やリモートワーク、ジョブ型雇用など柔軟な働き方ができる社会が求められています。
多様な働き方に対応しながら人材がパフォーマンスを最大化し、それを持続的な経営に繋がる方法として人的資本経営が注目されています。
市場の成熟
第四次産業革命の影響により、日本の市場は成熟期を迎えています。ITツールを導入することでどの企業もサービスにおいて一定の品質を保てるようになったため、競合との差別化が難しくなっています。
競合とは異なる企業価値を創造するには、人の力が欠かせません。市場が成熟した今だからこそ、人材への投資が必要と言う意味で人的資本経営に注目が集まっています。
人的資本経営を実施するメリット
人的資本経営は実施するのに時間と費用がかかります。注目されているからと言う理由で取り入れるだけでは、コストだけがかかり効果の最大化ができません。
実施した際に得られるメリットを知り、そのメリットを最大化するための取り組み内容を考えることが重要です。次に、人的資本経営を実施するメリットについて解説します。
人材活用の最大化
人的資本経営では、人材教育を実施する過程で従業員一人ひとりのスキルや個性を把握します。特性に合わせて人員配置や社員教育などの人材への適切な投資を行うことにより、人材のパフォーマンスの最大化および人材活用の最大化が実現できます。
人的投資の最適化
人的資本経営では、タレントマネジメントシステムなどを用いて従業員一人ひとりのスキルや人事評価をデータ化します。
経験やカンだけに頼って人材配置をするのではなく、可視化データを元に投資を行うので、人的投資の内容を最適化できます。
企業のイメージアップ
人材育成に力を入れている企業であることは、外部の人に好印象を与えます。人材を資源ではなく資本として考えていることが伝わるため、この企業で働きたいと思う人材も増えるでしょう。そのため、優秀な人材の獲得もしやすくなります。
従業員エンゲージメントの向上
人的資本経営によって研修やセミナーなど育成制度が充実し、成長やスキルアップに投資されている、期待されていると感じられると組織への愛着心が高まります。
自社に貢献したいという意欲も沸き、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。
投資家からの評価アップ
多くの投資家は企業を判断する基準のひとつとして、人的資本への積極的投資を重視しています。なぜなら投資家は、無形資産のひとつである人材が企業の競争優位性を高め、企業価値向上に直結することを知っているからです。
人的資本経営を実施することでそうした投資家からの評価が向上します。投資額が増えればさらに人材に投資でき、人材と企業が互いに成長し続ける好循環が生まれます。
人的資本経営の取り組み方
人的資本経営に取り組む目的が把握できたら、実際に人的資本経営に取り組んでみましょう。ステップは大きく5つに分けられます。
人的資本経営は全社的なプロジェクトであり企業の持続的な成長に関わるため、経営陣の積極的な協力が必要です。以下の5つのステップを社内を巻き込みながら実施していきましょう。
STEP1.経営戦略と人材戦略の紐づけ
まずは経営戦略と人材戦略を紐付けします。
経済産業省の「人材版伊藤レポート」にも記載があるように、企業の持続的な価値向上のためには経営戦略と人材戦略を連動させる必要があります。経営陣が中心となって経営戦略を明確にし、その上で人材戦略を紐付けます。
参考:経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~」P10
STEP2.人的資本経営の目的の明確化
次に、人的資本経営の目的を明確にします。
人材活用の最大化や人的投資の最適化など、目的は企業によってさまざまです。経営戦略と人材戦略の紐付けと同様に、経営陣が中心となって目的および目標を明確にします。
STEP3.KPIの設定
次に、目的に対するKPIを設定します。
KPIは定量で設定しましょう。例えば、「◯年までに経営戦略に必要なデジタル人材を◯万人に増やす」「従業員エンゲージメントを◯%上昇させる」などが考えられます。
現状と目標が共に定量化されていることで、そのギャップを埋める適切な施策を立案・実施できるようになります。
STEP4.施策の立案・実施
前のステップで明確にした定量的な数値を用いて、現状と目標とのギャップを埋めるための施策を立案・実施します。
施策を実施する際は、時間軸も明確にしましょう。ゴールから逆算して、適切な施策を実行します。
STEP5.結果の集計・分析と改善
施策を実施した後は必ず結果の集計と分析を行い、より良い人的資本経営の実現のための改善に繋げましょう。
タレントマネジメントシステムやエンゲージメントサーベイなどを活用して、定期的にデータを集計し、効果測定を行います。
人的資本経営を実施する際の3つのポイント
適切な施策やKPIの設定ができたからと言って、人的資本経営が必ずしも成功するとは限りません。実施する際には注意したい点が3つあります。
時間をかけて取り組んだけれど効果があまり出なかったという結果に終わらないように、以下のポイントに注意してください。
情報開示ではなく組織の強化を目的に取り組む
一部の企業を対象に人的開示が義務化されたことにより、情報開示が目的となっている企業は多くあります。人的資本経営は組織の強化という目的を達成するための手段に過ぎません。
なぜ人的資本経営に取り組むのか、経営戦略とはどのように連動するべきなのか、自社ならではの意味付けをしてから、人的資本経営を実施しましょう。
自社の目指す姿・在り方を軸に進める
人的資本経営を実施する上で、自社の戦略やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との一貫性があることも大切なポイントです。
目指す姿やあり方とは別の軸で進めてしまうと、優先順位が付けられず全ての物事に同時に取り組んでしまうようなことにもなりかねません。
自社の経営戦略や経営理念が言語化されていない場合は、そちらを明確にすることから始めるのも一案です。
関連記事:【事例あり】MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?必要性や構成要素、作り方、浸透させる方法を解説
戦略と部門間の連携を意識する
人的資本経営は全社的な取り組みであり、人事部や経営層だけが関われば良いというものではありません。目標達成に向けて全社で足並みを揃えて取り組むことが成功のポイントです。
特に、戦略と各部門間の連携は重要です。こまめな情報共有を怠らないようにしましょう。
まとめ
社会的な背景から取り組んでいる企業も多い人的資本経営。今後も激しく変化し続けるビジネス環境に適応していくには、人的投資を行い人材の能力を高めることが必要不可欠です。
これを機に自社の課題を踏まえて人的資本経営について取り組んでみてはいかがでしょうか。
人的資本経営を実施していく際には、社内への情報共有が欠かせません。
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