認定スクラムマスター(CSM)の研修が驚くほど良かった話

一週間のスクラムマスターの研修を受けてきたのですが、これが、すごく良かったです。

私は今、非常に仕事が忙しいタイミングで、時間を捻出するのはかなり大変だったのですが、そんな私が一週間もの時間を使ってやった価値が十分以上にあった、と思うくらい良かったです。

 

「ググれば分ること」はググればいいし、

「本を読めば分ること」は本を読めばいいです。

そのどちらでも得られないことを得るために、研修を受けに行くわけです。

そして、まさに、それが得られた感じです。

何を得られたかというと、例えば、「人間の理解は、時間をかけ対話・議論しなければ深まらない」という一行で言える、当たり前のことを、感覚的に理解したことでした。

 

人は誰でも、「そんなの知ってる」と思いますよね。

私もそんなの知ってました。頭では。

 

しかし、頭で理解しているのと、研修を通して実感するのとでは、全く異質のものでした。

人間は「自分がちゃんと理解していないことを、理解した気になる」という認知バイアスがあります。

また、ちゃんと理解するのに手間と時間がかかるようなものでも、「そんなのググれば分る」と思うし、「三行で説明して」と思ってしまう。

 

今回は、その認知バイアスを矯正するのに、とても有益でした。実際、その認知バイアスに陥っている部分を発見して矯正したい、というのが、この研修に参加した狙いでもありました。

これが一番言いたかったことですが、これだけでは、どんな研修だったかさっぱり分らないと思うので、以下、具体的に書きます。

1  アジャイルを改めて深く学ぼうとした3つの理由

認定スクラムマスターに必要な研修は連続した1週間(5日間)なのですが、非常に忙しいこのタイミングで1週間も時間を投資した理由が3つほどありました。

1-1  単にアジャイルの言葉を使って似非スクラムになっていないかの自問自答

当社はデータ分析・可視化支援を主軸としており、クライアントに伴走型でコンサルティング支援をしています。データ分析・可視化、DMPなどのデータプラットフォーム構築、各種プロジェクト・案件は基本的にアジャイルで行っています。

アジャイルには、独自の言葉があります。例えば、以下のようなものです。

  • イテレーション
  • インクリメント
  • Empirical 
  • プロダクトバックログ 
  • ベロシティ
  • スプリント
  • スプリントプランニング
  • スプリントレトロスペクティブ
  • ストーリーポイント
  • バックログリファインメント

言葉は、思考や行動を決定づける部分があるので、その領域の言葉を使って仕事を進めることでそれっぽく出来てくる、ということはもちろんあります。しかし、表面的な真似どまりになっていないかや、やっているフリになっていないかというところは常に自問自答していたいと思っており、一つの大きなきっかけになりました。

1-2  組織作りの判断のシャープ化

データ分析支援会社には、様々なタイプが存在しますが、私の中に、「強いデータ分析組織とはかくあるべし」という信念があり、それに合わせて組織を作っています。その一つのピースがアジャイル(スクラム)でした。

アジャイルに関してはこれまで書籍や単発講義、教育プラットフォームが提供するオンライン講習などで知見を得ていたものの、その思想や手法への理解の解像度をさらに上げたいという思いがありました。今後の事業経営に大きなインパクトを齎す可能性が高いためです。

1-3  思想の具現化

1-2と重複する部分ではりますが、オフィス増床を予定していることも大きなきっかけでした。

スクラムのエッセンスやアジャイル宣言の背後にあることを深く理解し、オフィス内装という物理的な形で具現化したいと思っているからです。アジャイル経営を具現化するためには、アジャイルの思想の原点や、真髄までより深く理解しておく必要があると思っていました。

例えば、レトロスペクティブをより効果的に行ったり、イテレーションを自然に誘発できるようなオフィスを考える時に、アジャイルを根源的に理解しているのとしていないのとでは、想起できるアイデア数やアイデアの質が変わると思ったためです。

2  最も大きな収穫は、わかっていた気になっていたことに気づかされたこと

認定スクラムマスターの研修では、技術的なこと、手法的な知識は勿論学ぶものの、それよりも大きな私自身の収穫は、「人間の理解は、時間をかけ対話・議論しなければ深まらない」のだという当たり前のことを深く理解し、認知バイアスの矯正がある程度出来たことです。

研修では、例えば以下のようなことを自問自答したり、議論したり、他の参加者と対話する時間をとります。

  • Empirical(経験主義)の定義は?
  • では、Empiricalの逆の定義は?
  • 局所最適化バイアスとは?
  • スクラムをやっているふりをする方法は?
  • スクラムチームの有効性に責任を持つのは誰か?なぜか?
  • アサーションをどう言語化すべきか?
  • スクラムが適切な状況は?
  • 適切なプロダクトバックログのサイズは?
  • 自己組織化したチームの振る舞いとは?

    上記のように、直球ではなかなか答えにくい質問や、唯一解がないものを時間をかけて考え、議論するという経験をしながら、理解を深めていきます。「Empiricalの逆の定義は?」など、ある事柄を理解するために、その逆の定義を考えたり、ツッコミを入れながら議論し続けていきます。

    わずか1ページのアジャイル宣言とその背後にある原則を20分ほど議論し、自分たちの言葉で書き直すという作業をしたり、たった10ページほどのスクラムガイドについてさまざまな角度から議論します。このような議論と思考、自問自答を繰り返す過程で、いかに自分が表面的な理解だったかに気付かされました。

    ▼アジャイルソフトウェア開発宣言

    引用:https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html

    ▼アジャイル宣言の背後にある原則

    引用:https://agilemanifesto.org/iso/ja/principles.html

    3  認定スクラムマスターの研修や受験に必要な準備は心身の健康

    私が受けた研修は5日間だったので、議論や強度の高い思考をし続けたこともあり、普段の仕事に単純にプラスオンになり精神的にも肉体的にも疲労感やストレスは強くなりました。

    なので、もしこれから資格取得や受講を考えている方には、せっかくの時間なので心身の健康をバッチリにし、内職せず受けられる時間的余裕・精神的余裕を作っておくことをお勧めします。

    4  研修受講前のおすすめ書籍

    認定スクラムマスター研修受講前に私が読んでいた本を紹介します。これらを読んでいたことが実質的な予習になっていたと思われます。

    SCRUM BOOT CAMP THE BOOK スクラムチームではじめるアジャイル開発

    重要点がまとまっていてとても読みやすく、エッセンシャルな本であると思います。

     

     

     

     

     

     

    スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術

    スクラムではコミットメント、意欲のあるチーム作りが非常に重要です。チーム組成やチームメンテナンスに悩んだ時の参考になりました。

    アジャイルなチームをつくるふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット

    効果的なレトロスペクティブの行い方が言語化されており、実務に有益です。

    5  研修受講後のしみじみにおすすめ書籍

    アジャイル開発の法務 スクラムでの進め方・外部委託・偽装請負防止・IPAモデル契約とカスタマイズ

    IPAモデル契約が書かれ、アジャイル開発での契約論点が多くあり参考になっています。

     

     

     

     

     

     

     

    アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き

    こちらもチームの考え方に非常に参考になる面白いストーリーが描かれています。レトロスペクティブの経験がある方で、一定の課題意識がすでにある方におすすめです。

    NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法

    こちらも実務的にはレトロスペクティブの仕方やチームの考え方について新たな考える視座をくれるものです。

    大規模スクラム Large-Scale Scrum(LeSS) アジャイルとスクラムを大規模に実装する方法

    今回、研修ではLessについても少し議論し学ぶことができたのですが、こちらの本で改めてしみじみ出来ました。

    6  まとめ

    試験自体は、スクラムの経験のある人であれば問題なく通ると思うのですが、それよりも重要なのは、行動指針や抽象度の高い本質部分を理解でき、すぐに行動や思考を変えたり、新たな視点で考えられたり、新たな発想で物事を組み立てられるようになったことでした。

    わかるということは行動が変わる、ということなので、行動を変えてくれたこの思考経験は私にとって非常に価値のあるものでした。

    もしスクラムにたずさわる方で研修受講を考えていらっしゃる方がいらしたら、ぜひ1週間集中できる贅沢な時間をとって頑張ってみてください。

    アジャイル経営という文脈では、以下ユーザベース様の取り組みやデータ活用のビジョンが、素晴らしいもので参考になりますのでぜひご覧ください。

    株式会社ユーザベース様|データ分析基盤構築とデータカルチャーの融合で更なる競争力獲得を目指す

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