セキュリティの観点で最もデータ活用が難しいと言われる金融機関のなかで、守りと攻めを両立させながら果敢にデジタル領域を進めていらっしゃる三井住友海上火災保険様。ツールやプロダクトの導入が済み、データ活用文化醸成として、データ活用社内推進をご支援させて頂いております。
▼三井住友海上火災保険様での研修(社内ユーザー会/ワークショップ)の様子
当社は継続的な社内推進や全社的なアドバイザリー、組織展開でご支援をし、下記のような成果をご実感いただきました。
どのような経緯で成果を生んだのか、デジタル戦略部の横山様にインタビューしました。社内推進や組織内でのデータ活用で成果を上げたいとお考えの方は、是非参考にしてください。
課題と背景
当社で従来から導入している分析ツールには、多くのユーザーがいました。しかし、教育体制がなく、使いこなせるユーザーはほとんどいない状態でした。このように、「ツールを入れても組織浸透の活動をやらなければデータ活用はうまくいかない」ということは、当社の実情からも、他社事例などからも明らかでした。
当初、Tableauの推進は社内のメンバーをやり繰りして進めていかざるを得ないと考えていましたが、既存のノウハウが社内に存在しないため、課題となっていました。旗振り役、組織全体を”イグナイト”(Ignite=着火、点火させるの意)させる役割をプロフェッショナルの方に支援をお願いしないと推進はうまくいかないものだと感じていました。
データビズラボと共にデータ活用の推進を始めた理由
最初のきっかけは、金融業界ユーザー会に参加させていただいた時に代表の永田様の講演をお聞きしたことでした。保険業界は会社数自体が少数であり、そのビジネスモデルも特殊な部分があるため、業界の事を知っている外部の方は希少です。
上記のご講演にて保険代理店向けのダッシュボードを構築されたご経験をお伺いし、是非、そのノウハウをご提供いただきたいと考えたのが最初でした。講演のタイミングでちょうど社内ユーザー会の立ち上げを検討しているところであることと、当時永田様が日本Tableauユーザー会の会長でいらしたこともあり、是非、ご支援をお願いしたいと考えました。
▼金融業界の方が集まる場での代表永田の講演の様子
上記の通り、こちらからご支援をお願いしましたので、そのような事はありませんでした。
また、他社と比較した訳ではありませんので、何とも申し上げにくいですが、当社にとって必要な内容を都度、コンサルティングいただき、当社が求めるコンテンツを都度ご提供いただいています。他社ではなかなかそこまでのご対応はいただけないのではないかと考えています。
データ活用・社内推進の領域で苦労したこと
やはり、新型コロナウイルスの影響で集合型のコンテンツを提供できなくなってしまったところは大きいです。
当社ではシンクライアント環境となっており、通常業務においては在宅勤務でも社内と同様に実施できますが、Tableau Desktopは当社のシンクライアント環境では動作しないため、Tableau Serverを中心とした活用にシフトする必要がありました。Tableau DesktopとTableau Serverの機能差もあり、利用環境については継続的に充実を図っているところです。
また、育成においても、ハンズオンの研修をWebで実施するには限界があり、集合型と同様の効果を出すのは難しいと考えています。
成果を出すために重要なこと
当社もまだ道半ばで、具体的な成果と言えるものはこれから出てくると思いますが、ツールの有効性を正しく伝え、継続的な教育、支援態勢を整えることが重要だと考えています。
データビズラボがご提供している内容
- データ分析基礎講座動画コンテンツ(統計基礎、相関関係、名寄せ、ツールの基礎知識等)
- 週1でのダッシュボードレビュースプリントと必要なデータの検証と評価
- Tableau基礎研修(フォローアップ研修)
- 月1での社内ユーザー会(コミュニティ)コンテンツ企画・作成・開催
今後の取り組みや課題
当社はまだスタートラインに立ったところです。
ユーザーの拡大と合わせ、個々がしっかりとデータとツールを活用しデータドリブンな施策を実行できるように組織全体を推進していくことが必要です。環境面においても分析がしやすいデータを用意する仕組みなど様々な取組を並行して進めています。
また、現在のユーザーは本社部門に限定していますが、より営業現場に近い部門にも徐々に拡大することを計画しています。
当社では、Tableau以外にも、東洋大学や京都先端科学大学と連携したリカレント教育を始めとした、デジタル人財育成に向けた様々な教育プログラムを社員に提供しています。それら活動により、データ分析を実行できる社員層の大幅な拡大を目指しています。
これから取り組む方へのアドバイス
特にTableauについては、ユーザー育成に関する他社様の事例が豊富に存在しており、それらの中には、自社の現状、目指す姿に向けて参考となる事例もきっと存在します。また、是非、社外の方々のご支援を仰いでいただきたいと思います。
おわりに
本記事では当社が提供している”続けられる仕組みと仕掛け”を意識したデータ活用・DX(デジタルトランスフォーメーション)の社内推進に関して事例とともに紹介しました。
データ分析のためのツールやシステム、ソリューションを導入した企業が、社内推進体制を構築せずその後放置され何もつかわれなくなった、というケースはとても多いです。実際、社内のユーザーに対して施策や戦略的な社内推進活動(研修、サポート、コミュニティ)をしないと、ほぼ間違いなくデータ活用が進まず、投資金額のほとんどが使われずに終わってしまいます。しかしながら、継続的にユーザーをサポートすることは自社では手が回らず現実的にはとても難しいものです。
継続的な社内推進が必要なのは、ガートナーのリサーチでも、「大多数の企業がBIツールを採用しているものの、企業内個人への浸透は道半ば」という示唆にもあらわれています。
この領域は、不可視的であるが故にこそきめ細やかな企画設計が非常に重要であり、且つ経営層・トップマネジメントのコミットメントも特に重要になる部分です。
当社は純粋なツールの一回限りの単発トレーニングもご用意はしているものの、お客様のご状況に合わせたご提案をするカスタムトレーニングの提供もしています。当社が研修企画設計・グランドデザインをするときにもっとも注意するのは、“ユーザーが自然に継続したくなる仕組みと仕掛け”です。
なお、当コンテンツの内容は、Tableau Live Japan2020(2020/11/26)において三井住友海上火災保険様の講演内でも公開されております。
“三井住友海上が展開する『RisTech』におけるTableau活用と、社内Tableauユーザーの育成”
<講演概要>
三井住友海上では、取引先企業様のデータ、当社の契約・事故データ、外部データをもとに、リスク分析や予測モデルを提供する『RisTech』というサービスを展開しています。 セッションの前半では『RisTech』 におけるTableauの活用事例をご紹介いたします。 また、三井住友海上は2019年度よりTableau を導入し、現在140名がビジネスユーザー向け分析ツールとして利用しています。 セッションの後半では、本社ビジネスユーザー向けの育成事例についてご紹介いたします。
<スピーカー>
デジタル戦略部プリンシパルデータサイエンティスト 木田 浩理 氏
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部/同大学院政策・メディア研究科卒業。 NTT東日本・SPSS/日本IBM・アマゾンジャパン・百貨店・通販企業等を経て2018年5月より現職。様々な業界で営業やデータ分析を経験。顧客視点に基づいたCRMやマーケティング分析、データを用いた新規ビジネス開発が専門。
デジタル戦略部 業務プロセス改革チーム 課長 横山 輝樹 氏
1978年生まれ。2007年三井住友海上に中途入社。地方中核都市のリテール営業を経て、2015年より営業企画部営業IT推進室にて損保代理店向けシステム活用推進、データ分析基盤構築プロジェクト、CRMシステムの開発等を担当。2018年のデジタル戦略部の新設時より現職。2020年2月にリリースしたMS1 Brainの開発および関連データ分析とともに、データ分析基盤の開発運用業務、AutoML・BIツールの社内推進を担当。
クライアント名 三井住友海上火災保険様
企業URL https://www.ms-ins.com