データ分析をしていくにあたり、どの資格を取得すれば良いか悩んでいませんか?
また、資格を取得しても、本当に業務で活かせられるのか疑問に思っていませんか?
本記事では、実業務でデータエンジニア、データアナリスト、データサイエンティストを経験してきた私が、データ分析業務で本当に役立つ資格のみ厳選してご紹介します。
また、「データ分析を始めたての方」、「ベテランの方」では役立つ資格も異なってきますので、データ分析の経験値や職種ごとに紹介する資格を分けています。
本記事を読み終えていただければ、あなたが今どの資格を取得するべきなのか明確になるはずです。
目次
1. レベルマップで見るデータ分析業務に役立つ資格
データ分析業務に役立つ資格をレベルマップでまとめました。こちらの一覧表を参考に、自身が取得すべき資格をざっくりと把握しましょう。
経験が浅い方は学習のロードマップとして活用し、将来取得を目指す資格を把握しましょう。経験がある方は基礎が抜け落ちていないかの確認にご活用ください。
もちろん、組織内において上記のような担当区分けがなかったり、定義が異なることもあるでしょう。しかし、自身のこれまでの環境や経験においてはざっくりこのような印象です。それでは、以降、それぞれのレベルごとに、詳しく説明していきます。
2. これからデータ分析を始めようとしている人に役立つ資格4選
これからデータ分析を始めようとしている方には、以下4つの資格が役に立つでしょう。
- 基本情報技術者試験(優先度:高)
- ORACLE MASTER Bronze DBA(優先度:中)
- ORACLE MASTER Silver SQL(優先度:中)
- 統計検定 4級(優先度:低)
取得順序(優先度)としては、上から順に「基本情報技術者試験 ⇒ ORACLEMASTER(2つ並行)⇒ 統計検定 4級」と取得するのがオススメです。なぜなら、分析業務に必要となる基礎知識を幅広く得た後に、専門分野の基礎知識までを抑えることができるためです。
これらの資格は、データ分析に必要な以下3要素の基礎知識を、体系的に学ぶことができます。
- ビジネス力(課題背景を理解して解決する力、社内調整・交渉力)
- データエンジニアリング力(データを分析可能な形に整備する力、データ収集・加工力)
- データサイエンス力(データを正しく解釈する力、統計・数学力)
何事にも言えることですが、応用が効くのは基礎が身についた後です。野球でホームランが打てるのも、立ち方、バットの振り方、ボールの捉え方など基礎的なスキル・知識があるからこそです。データ分析も同じです。応用的な分析を行う前にまずは基礎を身につけましょう。そうすることで、データ分析を行うための土台を作ることができます。
それでは以降、それぞれの資格について詳しく解説していきます。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、IT人材に必要となる基本的な知識から、実践的な能力までを保有していることを認定する資格です。
試験では、数学、データベース、ネットワーク、セキュリティ、プロジェクトマネジメント、経営戦略などに関する基礎的な問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、データ分析に必要な基礎知識を体系的に幅広く習得することができます。
こちらの資格は、私も学生の頃に取得しました。学生の時には就職に有利そうという理由で取得し、本当に会社で役立つのか不安でした。しかし、入社後から現在に至るまでも取得して良かったと実感しています。なぜなら、試験で学んだ用語が仕事の現場で使われていたり、データ分析業務において何らかの問題が発生した場合も、原因の切り分け(○○は問題ない。○○が怪しい)が行えるようになったためです。
データ分析業務で必ず必要となる知識を網羅的に学べるので、これからデータ分析を始めようとしている方は、まずはこちらの資格を最優先で取得し、幅広く基礎を固めましょう。
ORACLE MASTER Bronze DBA
ORACLE MASTER Bronze DBAは、データベースの基礎知識を保有していることを認定する資格です。
試験では、データベースの概念、アーキテクチャ、運用などに関する問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、データベースの内部構造や操作方法までを理解することができます。
こちらの資格は、私も新卒入社後、3ヶ月で取得しました。取得したことにより、その後の業務(システム開発やデータ分析)を行う土台となり、円滑に業務を進めることができました。
データベースは組織のデータを格納しておく場所であり、データ分析を行う場合は必ずと言っていいほど関わりが発生します。そのため、こちらの資格を取得するなどして、データベースに必要な基礎知識を体系的に習得しましょう。(ORACLE MASTER Silver SQLと並行して取得を目指すと、データベースアクセスを行うためのSQLも一緒に習得できるため効率的です)
ORACLE MASTER Silver SQL
ORACLE MASTER Silver SQLは、データベース操作を行うための言語である「SQL」のスキルがあることを認定する資格です。
試験では、SQLの習熟度を問う問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、SQLによる基本的なデータアクセススキルを身につけることができます。
現在も、世の中にあるほとんどのデータベースが、SQLを標準的なインターフェースとしています。そのため、データ整備を行うにはSQLの知識はほぼ必須と言えます。データ整備の生産性を最大限にするためにも、こちらの資格を取得するなどして、SQLを習得しておきましょう。(ORACLE MASTER Bronze DBAと並行して取得を目指すと、データベースの基礎知識も体系的に習得できるため効率的です)
統計検定 4級
統計検定 4級は、統計の基本的な用語や概念を理解していることを認定する資格です。
試験では、データ・表・グラフに関する問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、基本的な表やグラフの正しい読み取り方を身につけることができます。
データ分析において、データから正しい解釈を行うことは基本中の基本です。他の3つの資格と比べると優先度は高くはありませんが、表やグラフを誤って読み取り、組織の意思決定にマイナスな影響を与えないためにも、統計検定4級で統計の基礎知識を習得するのは有益です。
3. 基盤系を担当している方(データエンジニア)に役立つ資格2選
実業務でデータ分析基盤の構築・運用を担当している方(データエンジニア)には、以下2つの資格が役に立つでしょう。
- 組織で導入されているクラウドサービスの資格(優先度:高)
- ORACLE MASTER Gold DBA(優先度:中)
取得順序(優先度)としては、上から順に「組織で導入されているクラウドサービスの資格 ⇒ ORACLE MASTER Gold DBA」と取得するのがオススメです。なぜなら、データベースの専門的な知識があっても、組織のクラウドサービスの特性などを理解していなければ、そのクラウドサービスに適した設計を行えないためです。
基盤系の担当者には、大規模なデータ活用を支える基盤構築と運用スキルが求められます。そのため、組織で導入するサービスの理解はもちろんのこと、インフラ(サーバ・ネットワーク)、データベース周りの知識は必要不可欠となります。これらの知識がなければ組織に最適なアーキテクチャ設計や、開発・運用が行えないためです。
そこで、本章で紹介する2つの資格は、下記の知識を体系的に学べるものとしました。
- インフラの設計・運用に関する知識
- データベースの設計・運用に関する知識
以降、これらの知識を習得できる2つの資格について詳しく解説していきます。
組織で導入されているクラウドサービスの資格
クラウドサービスの資格は、対象のクラウドサービスを用いた基盤設計・開発・運用が行えることを認定する資格です。
ここ最近の組織におけるデータ分析基盤のほとんどは、クラウドサービスを用いて構築されます。そのため、以下に代表的なクラウドサービスの資格を列挙します。自身の組織で導入されている、もしくは導入するサービスの資格を参照いただければと思います。
【Google Cloud】
【AWS】
【Azure】
試験では、これらのサービスを用いて設計・開発・管理を行うための知識問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、そのサービスを用いたデータ分析基盤を構築・運用するための知識を得ることができます。
データ分析基盤の構築・運用時に不明点ばかりですと生産性が落ちてしまいます。そうならないためにも、組織に導入されている(導入する)クラウドサービスの資格は最優先で取得しておくことを推奨します。
ORACLE MASTER Gold DBA
ORACLE MASTER Gold DBAは、データベースの管理レベルが上級であることを認定する資格です。
試験では、データベースのパフォーマンス診断及びチューニング、各種リソース管理に関する問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、データベースを効率的に運用するための知識を得ることができます。
私は、“Gold”の一つ下のグレードである“Silver”を取得しています。しかし、SliverはネットワークやセキュリティなどDB運用の基礎的な部分までしか範囲に入っていません。そのため、実業務でパフォーマンスチューニングを行う際に知識が及ばない部分があり、苦労した経験があります。ですので、データ基盤構築・運用担当者にはデータベースのチューニングまで抑えられる”Gold”を取得することを推奨します。
4. BI系を担当している方(データアナリスト)に役立つ資格2選
実業務でBIを用いた分析を担当している方(データアナリスト)には、以下2つの資格が役に立つでしょう。
- 組織で導入されているBIツールの資格(優先度:高)
- 統計検定 3級(優先度:高)
取得順序(優先度)としては「組織で導入されているBIツールの資格」と、「統計検定 3級」を並行して取得するのがオススメです。なぜなら、データを可視化するためのツール活用力と、正しい可視化を行うための知識を同時に習得でき、効率が良いためです。
BI系の担当者には、膨大なデータから結論(ビジネス課題に対する解決策など)を導き出すためのスキルが求められます。そのため、正しい分析手法を選択してデータを可視化する力や、可視化されたデータを見て意味ある解釈をするための統計力は必要不可欠となります。これらの力がなければ、解決策を導き出すどころか、現状把握すら正しく行うことができないためです。
そこで、本章で紹介する2つの資格は、下記のスキルを得られるものとしました。
- クイックにデータを可視化するためのツール活用力
- データの可視化、解釈を行う上で必要となる基本的な統計力
以降、これらのスキルを習得できる2つの資格について詳しく解説していきます。
組織で導入されているBIツールの資格
BIツールの資格は、対象のBIツールを用いたレポート作成が難なく行えることを認定する資格です。
データ分析を行っている組織では、BIツールを導入していることがほとんどですので、以下に代表的なBIツールの資格を列挙します。自身の組織で導入されている、もしくは導入するBIツールの資格を参照いただければと思います。
【Power BI】
【Tableau】
【Qlik Sense】
【Looker】
試験では、これらのBIツールの仕様や、実際にツールを用いてレポート作成を行う問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、そのBIツールを使いこなすスキルを身につけることができます。
BIツールの機能を理解していなければ、単純な実装に数時間を費やしてしまうこともあります。○○するにはどうするっけ・・・、○○を出すのはどこだっけ・・・と単純なことに時間を取られないためにも、ツールの使い方は習得しておきましょう。
統計検定 3級
統計検定 3級は、データ分析に必要な基本的な統計知識を保有していることを認定する資格です。
試験では、データの種類(量的・質的)や、ばらつきの指標(分散、標準偏差)、グラフの表現方法(箱ひげ図)などに関する問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、データ分析を行う際に必要な基本的な統計知識を身につけることができます。
データの種類や、ばらつきの指標、グラフの表現方法を理解しておけば、外れ値などを除外したデータの可視化もクイックに行うことができます。そのため、BI系の担当者の方は、これらの基本的な統計知識は抑えておきましょう。
5. AI系を担当している方(データサイエンティスト)に役立つ資格3選
実業務でAIの開発や、AIを用いた分析を担当している方(データサイエンティスト)には、以下3つの資格が役に立つでしょう。
- E資格(優先度:高)
- 統計検定 準1級(優先度:中)
- Pythonエンジニア認定 データ分析試験(優先度:低)
取得順序(優先度)としては、上から順に「E資格 ⇒ 統計検定 準1級 ⇒ Pythonエンジニア認定 データ分析試験」と取得するのがオススメです。なぜなら、AI分析業務に必要となる知識・スキルを幅広く得た後に、専門分野の応用知識・スキルまでを抑えることができるためです。しかし、経験が浅く「E資格」の取得から目指すのが大変な方は、まずは「Pythonエンジニア認定 データ分析試験」を取得してAI分析業務に対する肌感を掴んでいただくのも良いかと思います。
AI系の担当者には、高度な統計知識をはじめ、データ加工・整形、プログラミングなどのエンジニアリングスキルが求められます。なぜなら、統計的なモデルの構築・評価・チューニングから、Pythonなどのプログラミング言語を用いた高度なアルゴリズム実装(AI開発など)まで幅広く担うことがあるためです。
そこで、本章で紹介する3つの資格は、下記の知識を体系的に学べるものとしました。
- AI業務で困らない統計知識
- AI理論の理解
- AIの実装ができる能力(知識)
以降、これらの知識を習得できる3つの資格について詳しく解説していきます。
E資格
E資格は、深層学習(ディープラーニング)を実装する能力があることを認定する資格です。
試験では、応用数学、機械学習、深層学習などの知識問題から、深層モデルの構築、Pythonを使ったプログラミングまでと幅広い問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、機械学習、深層学習を実装するための実践的スキルを身につけることができます。
AI分析業務を行う上では、こちらの資格が最も体系的な知識・スキルを習得できる資格になります。そのため、AI分析業務に関わる人には、こちらの資格を最優先で取得しましょう。
また、E資格に合格すると、合格者のみのコミュニティに参加することができます。コミュニティ内の勉強会を通して情報交換をしたり人脈を広げることもできるので、取得するメリットはより大きいものとなります。
統計検定 準1級
統計検定 準1級は、応用的な統計活用力があることを認定する資格です。
試験では、適切なデータ収集法と統計解析法の選択及び、その結果を正しく解釈できるかを問う問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、各種統計解析法の使い方など応用的な統計活用力を身につけることができます。
私は統計検定 2級を取得していますが、実は、実際のデータサイエンティスト業務の中で困ることはほとんどありませんでした。それにも関わらず、準1級の取得を推奨しているのには2つ理由があります。
取得を推奨する理由1
1つ目の理由は、データの扱いや手法の選択に絶対的な自信を持てることです。以前、いざ分析しようとした際にデータの扱いや手法選択に少し悩むことがありました。しかし、準1級までを取得すれば、このデータを扱う際にはこうするべきだと悩まずに断言することが可能になると思っています。なぜなら、主としている試験内容が”適切な統計手法の選択や、導出結果の正しい解釈”となっており、資格取得までのプロセスの中でデータの扱い、手法選択の経験値を多く積むことができるためです。
取得を推奨する理由2
2つ目の理由は、データ分析における言動で他者からの承認を得やすくなることです。統計の知識がない方が、分析手法はこれを使うべきだ、分析結果はこうなりましたと発言しても、本当に適切な分析手法なのか、分析結果が合っているのか疑問に思われてしまいます。しかし、統計検定 準1級取得者の発言であれば説得力が増し、分析結果や、それに至るまでの過程が認められやすくなります。(もちろん、準1級より1級のほうが認められますが、2級の知識レベルで業務に大きな支障がなかったことから、一つ上の準1級で十分と判断しました)
以上の2点を踏まえ、AI業務に携わる方には統計検定 準1級の取得を推奨します。
Pythonエンジニア認定 データ分析試験
Pythonエンジニア認定 データ分析試験は、Pythonのデータ分析スキルがあることを認定する資格です。
試験では、Pythonの環境構築からライブラリによる分析まで実践的な問題が出題されます。そのため、試験勉強から資格取得までのプロセスを経ることで、Pythonを用いたデータ分析スキルを身につけることができます。
Pythonは豊富なライブラリやフレームワークがあるため、とにかく実装が簡単です。その影響もあり、AIプログラミングやデータ分析・解析にPythonを用いることが一般的になりつつあります。そのため、他の2つの資格と比べると優先度は高くはありませんが、AI業務に携わる方はこちらの資格を取得するなどしてPythonを扱えるスキルを身につけておきましょう。
6. まとめ
今回はデータ分析業務に役立つ資格を、経験値や職種ごとに11個紹介しました。
ここ数年でデータサイエンティストなどの知名度があがったことで、データ分析資格の取得を目指す方も多いと思います。しかし、これらの資格を取得したからといって企業のデータサイエンティストになれるわけではありません。なぜなら、データ分析の資格は職種を証明するものではないからです。
そのため、データ分析の資格は取得を目的にするのではなく、知識の体系的な学びや既存の知識の網羅性を確認したりする一手段として取り組むようにしましょう。
データビズラボでは、必要なデータ活用人材を育成・確保するための研修やデータ人材戦略の支援を行っております。
データ活用人材が不足してお困りの場合はデータビズラボへお問い合わせください。
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