仮名化とは?匿名化との違いや法的な位置づけ、活用方法をわかりやすく解説

近年、企業や自治体でのデータ利活用はますます広がっています。その一方で、個人情報をどのように扱うべきかについて、慎重な対応が求められる場面も増えてきました。「分析には使いたいけれど、生の個人情報を扱うのは少し心配」「匿名化すると活用しづらくなる」といった、バランスに悩む担当者も少なくありません。

改正個人情報保護法で新たに導入された「仮名加工情報」という仕組みは、その課題を解決するための現実的な選択肢です。本記事では、匿名化との違いや法的な位置づけ、実務での活用ポイントを整理し、企業が安全にデータを活かすための考え方を解説します。

目次

仮名化とは

仮名化とは、氏名・住所など個人を直接特定できる情報を、別の符号や記号に置き換えることで、本人がわからない状態にして扱う手法です。たとえば「田中太郎」を「A001」といったIDに変換し、元データとの対応表(キー)は厳重に分けて管理します。分析やテストなど「個人名そのものは不要だがデータは使いたい」場面で活用でき、漏えいや不正利用のリスクを抑えながら、業務改善やデータ活用を進められる点が特徴です。

改正個人情報保護法では、こうした考え方に基づくデータを「仮名加工情報」として位置づけています。完全に匿名化してしまうのとは異なり、管理者が適切な手順でキーにアクセスすれば再識別も可能なため、「保護」と「利活用」のバランスをとるための現実的な枠組みとして利用されています。

匿名化との違い

仮名化と混同されやすい概念として挙げられるのが、「匿名化」です。どちらも個人を特定できないように加工するという点では共通していますが、目的と性質には明確な違いがあります。

匿名化は、データから個人を特定できないように加工し、再識別が困難な状態にする手法です。氏名や住所、連絡先などの識別子を削除し、他の情報と照合しても本人を容易に特定できないようにします。そのため、一度匿名化された情報は、もはや個人情報としては扱われません。

一方、仮名化は本人を完全に特定できなくするわけではなく、内部で管理するキーや対応表を用いれば再識別できる状態を残します。この違いにより、仮名化されたデータは「個人情報保護法上の個人情報」に含まれます。したがって、企業や組織が仮名加工情報を扱う際には、適切な管理体制やアクセス制御が必要です。

つまり、匿名化は「再識別が不可能な完全な加工」、仮名化は「必要に応じて再識別できる限定的な加工」といえます。仮名化はデータ活用と保護を両立させるための現実的な手段であり、社内分析やAIモデルの学習など、特定目的下での運用に適しています。

秘匿化との違い

仮名化と混同されやすい概念として、実務で使われる「秘匿化(ひとくか)」という考え方があります。法令上の定義はありませんが、情報を保護するための運用上の手法として広く用いられている概念です。両者は目的と運用の範囲が異なります。

秘匿化は、特定の情報を第三者や一部の利用者から見えなくすることで、情報漏えいのリスクを防ぐ方法です。たとえば、システム画面でクレジットカード番号の一部を「****」で隠す、社内資料で個人名を伏せるといった対応が該当します。これはデータそのものを加工して特定を不可能にするのではなく、閲覧や表示を制限する「見せないための処理」です。

一方、仮名化はデータ自体を加工し、個人を直接特定できないように変換する手法です。秘匿化が「見えないようにする」のに対し、仮名化は「再識別が制御された状態で加工する」という違いがあります。そのため、仮名化されたデータはシステム外に出ても一定の安全性を保ちますが、秘匿化は設定範囲外では情報が露出する可能性があります。

つまり、秘匿化は主にアクセス制御や画面上の保護を目的とし、仮名化はデータ活用を前提としたプライバシー保護のための技術です。用途が異なるため、企業では両者を併用しながら安全なデータ管理体制を整えることが求められます。

個人情報保護法における仮名加工情報の位置づけ

2022年の改正個人情報保護法で新たに導入された「仮名加工情報」は、企業が個人データを安全に活用するための中間的な位置づけのデータです。個人情報のうち、氏名や連絡先など本人を特定できる項目を削除または置き換えることで、特定の個人を識別できないようにした情報を指します。

この仮名加工情報は、匿名加工情報のように完全に個人を特定できなくするものではありません。社内で保有するキーや対応表を用いれば、一定の条件下で再識別が可能です。そのため、法律上は引き続き「個人情報」の一種として扱われますが、利用に関しては一部の義務が緩和されています。

たとえば、本人の同意を得ずに社内で分析や検証に利用できる点が特徴です。顧客行動の傾向分析や業務改善など、内部利用に限って柔軟に活用できるようになりました。一方で、外部への提供や、他の情報と照合して本人を識別することを目的とした利用は認められていません。そのため、社内での適切な管理体制やアクセス制御が求められます。

つまり、仮名加工情報は「個人情報の保護」と「データの利活用」のバランスを取るために設けられた仕組みです。企業にとっては、プライバシーを守りながらもデータ活用を進めるための現実的な選択肢といえます。

仮名化の目的と意義

改正個人情報保護法の施行以降、データ利活用の機会が広がる中で、仮名化はリスクを最小限に抑えながら組織全体のデータ戦略を支える基盤として注目されています。ここでは、その具体的な目的と意義を整理します。

業務でのデータ活用と個人情報保護の両立

現代の企業活動では、顧客データや行動履歴などの情報を活用して、業務改善やマーケティング施策を進めることが欠かせません。しかし、個人情報を直接扱う場合、漏えいや不正利用のリスクが常に伴います。

仮名化はこの課題を解決する手段です。個人を特定できる要素を加工することで、法令を遵守しながら業務にデータを活用できるようになります。たとえば、購買履歴やアンケート結果を仮名化すれば、特定の個人を識別せずに傾向分析やサービス改善が可能です。

つまり、仮名化は「データを安全に使うための前提条件」であり、企業がプライバシーを尊重しながらDXやAI活用を進めるための基礎となります。

再識別リスクを低減し、安全な分析・共有を可能にする

仮名化のもう一つの重要な意義は、データの再識別リスクを抑えることです。生の個人情報をそのまま分析や共有に使うと、他のデータと組み合わせることで本人が特定されるかもしれません。

仮名化によって、氏名やIDなどの識別子が置き換えられるため、万が一外部への情報漏えいが起きても個人の特定につながりにくくなります。特に、AIや機械学習モデルの学習データとして活用する際には、仮名化を行うことで再識別リスクを抑え、安全なデータ処理が可能になります。ただし、外部への提供や共同研究など社外で利用する場合には、個人情報としての取り扱いに注意が必要です。

また、研究機関やグループ企業間でのデータ共有にも仮名化が有効です。共有範囲を限定し、仮名化キーを厳格に管理すれば、個人情報を開示することなく共同分析を進められます。

企業のコンプライアンス強化とリスクマネジメント

仮名化は、企業のコンプライアンス体制を強化するうえでも重要な役割を果たします。個人情報保護法やGDPRなど、国内外でデータ保護の法規制が厳格化する中、仮名化は法令遵守を実現する実践的な手段です。

仮名化を適切に運用すれば、内部不正や情報漏えいのリスクを減らし、企業としての社会的信頼を高められます。また、万が一のインシデント発生時にも、仮名化されていれば被害を最小限に抑えられる可能性が高いです。

さらに、仮名化の仕組みをガバナンス体制に組み込むことで、データ管理の透明性が向上します。これにより、企業はリスクマネジメントを強化しながら、データ活用の幅を安全に広げられるでしょう。

仮名化の具体的な方法

仮名化は、単に個人情報を削除するのではなく、技術的な手段によって識別子を加工し、本人を直接特定できないようにする仕組みです。適切な手法を選び、管理体制と組み合わせて運用することで、安全かつ実用的なデータ活用が可能です。

ここでは、代表的な仮名化の方法と、その実施に欠かせない管理のポイントを紹介します。

識別子の置換・暗号化・トークン化

仮名化の基本となるのが、識別子を別の値に置き換える方法です。たとえば氏名、社員番号、顧客IDといった特定の個人を示すデータを、別の符号やコードに変換します。これにより、データを扱う人が本人を直接特定することはできなくなります。

暗号化は、特定の鍵を使って情報を変換し、鍵がなければ内容を読み取れないようにする技術です。復号用の鍵を厳重に管理すれば、再識別を制御しながらデータの安全性を高められます。

また、トークン化は元の情報を無関係な代替値(トークン)に置き換える方法で、復号が不要な場面に適しています。トークンと実データを対応づけたテーブルを安全な環境に保管し、利用時に照合する仕組みが一般的です。

マスキングやハッシュ化の活用

マスキングは、データの一部を伏せて見えなくする方法です。たとえばクレジットカード番号や電話番号の一部を「****」で隠すことで、データを利用しながらも特定の人物を識別できないようにします。テストデータや業務研修など、部分的に情報を利用したい場面で役立ちます。

ハッシュ化は、特定のアルゴリズムでデータを一定の長さの文字列に変換する手法です。同じ入力からは常に同じ出力が得られますが、一般的には元の情報を復元することが極めて困難です。そのため、個人識別子を安全に加工し、比較や照合を行う際に利用されます。

マスキングとハッシュ化はいずれも、閲覧権限が異なる環境での情報共有や、ログデータの処理などにおいて有効な手段です。適切に組み合わせることで、実務上の利便性とセキュリティを両立できます。

仮名化キーの管理・アクセス権限の制御

仮名化では、変換前後の情報を対応づける「仮名化キー」の管理が極めて重要です。キーが漏えいすれば、仮名化されたデータでも容易に本人が再識別される恐れがあります。

そのため、仮名化キーは別の安全な環境で厳重に管理し、アクセス権限を最小限に制限することが基本です。運用担当者やシステム管理者など、限られた権限を持つ人のみがアクセスできる仕組みを設ける必要があります。

さらに、アクセスログの記録や定期的な監査を実施することで、不正利用や情報漏えいのリスクを防止できます。仮名化の安全性は技術だけでなく、管理体制と運用ルールの整備によって成り立つことを意識することが大切です。

仮名化の対象となるデータ

仮名化の対象となるのは、個人を直接または間接的に特定できる情報です。氏名や住所のような明示的な個人情報だけが仮名化の対象ではありません。システム上のIDや端末情報、行動データのように、匿名に見えても組み合わせによって本人を特定できる情報も対象です。

どの情報を仮名化すべきかは、利用目的やリスクレベルによって異なります。ここでは、一般的に仮名化の対象となる代表的なデータの種類を整理します。

氏名・住所・生年月日などの基本情報

最もわかりやすい仮名化対象は、個人を直接特定できる基本情報です。氏名、住所、生年月日、電話番号、メールアドレスなどは、単体でも本人を識別できるため、利用目的やリスクに応じて仮名化や削除を検討しなければなりません。

たとえば、氏名をコードに変換する、住所を市区町村レベルに丸める、生年月日を年代や年齢層に置き換えるといった方法が一般的です。これにより、データの分析価値を保ちながら、個人の特定を防げます。

特に、医療・教育・金融などセンシティブな情報を扱う分野では、こうした基本情報の仮名化がリスク管理の出発点となります。

ID・端末情報・行動履歴などの識別子

仮名化の対象は、直接的な個人情報に限りません。ユーザーID、会員番号、端末識別子、Cookie情報、位置情報など、他のデータと組み合わせることで個人を特定できる「識別子」も含まれます

たとえば、Webサイトの閲覧履歴やアプリの利用履歴、購買データなどは、単独では匿名性が高いように見えても、行動パターンを分析することで個人が推定される場合があります。そのため、識別子の置換やトークン化を行い、特定リスクを減らすことが重要です。

このような間接的なデータの仮名化は、AIやマーケティング分析の分野で特に役立ちます。個人を特定せずに傾向を把握することで、法令を遵守しながら高度な分析が可能です。

企業・組織における従業員・顧客データ

仮名化は、企業内部で扱う従業員情報や顧客情報にも適用されます。人事評価データ、勤怠記録、取引履歴、問い合わせ履歴など、業務上必要なデータの多くが個人情報に該当します。

これらを仮名化して扱うことで、関係者以外が閲覧する際のリスクを軽減し、情報漏えいの防止が可能です。たとえば、人事部以外の部署で従業員データを分析する場合、氏名や社員番号を仮名化して共有することで、プライバシーを守りながら業務改善に活かせます。

顧客データについても同様に、仮名化を行えば販売傾向やサービス利用状況の分析を安全に進められます。企業の規模や業種を問わず、仮名化は社内データの信頼性と安全性を高める有効な手段です。

仮名化の実施プロセス

仮名化は、単にデータを加工するだけではなく、計画から運用・改善までを一貫して行う必要があります。適切なプロセスを踏むことで、安全性と実用性の両立が可能です。

ここでは、仮名化を実施する際の基本的な流れを4つのステップに分けて整理します。

1. データ分類とリスク評価

最初のステップは、どのデータを仮名化すべきかを明確にすることです。扱う情報の中から、個人を特定できる可能性があるデータを抽出し、重要度やリスクの高いものを特定します。

そのうえで、データの利用目的や共有範囲を踏まえて、どの程度の加工が必要かを判断しましょう。たとえば、社内分析のみで使う場合と外部委託先と共有する場合では、求められる匿名性や管理レベルが異なります。リスク評価を丁寧に行うことが、仮名化全体の精度と安全性を左右します。

2. 仮名化方式の選定と実装

次に、目的とリスクレベルに応じて適切な仮名化手法を選びます。識別子の置換、暗号化、ハッシュ化、トークン化など、さまざまな手法の中から、利用環境や再識別の必要性に応じて最適な方法を組み合わせるのが一般的です。

実装段階では、データ加工のルールを明文化し、再現性のある手順を確立します。システムやツールを用いる場合には、処理結果が想定通りに機能しているかを検証し、再識別のリスクが十分に低減されているかを確認することも欠かせません。

3. 管理ルールと技術的対策の整備

仮名化を安全に運用するためには、技術的な加工だけでなく、管理体制の整備が必要です。仮名化キーの保管場所やアクセス権限を明確にし、関係者以外が扱えないようにすることが基本です。

加えて、アクセスログの記録や通信の暗号化、不正アクセス防止などのセキュリティ対策を講じます。管理ルールを文書化し、担当者への教育を行うことで、組織全体での運用レベルを維持できます。

4. 運用・監査・改善サイクルの構築

仮名化は、一度実施して終わりではありません。運用後も定期的な監査と改善を繰り返すことで、安全性と有効性を維持します。

具体的には、アクセス履歴やシステム設定を定期的に点検し、問題があれば速やかに対応します。また、法改正や業務内容の変化に応じて、仮名化の範囲や方式を見直すことも重要です。

このように、PDCAサイクルを意識した継続的な改善を行うことで、仮名化を組織のデータガバナンス体制の中に定着させることができます。

実務での仮名化の活用シーン

仮名化は、個人情報の保護を確保しながらデータを有効活用するための実践的な手段です。特に、企業や研究機関などが大量の個人データを扱う場面では、仮名化を取り入れることでリスクを抑えつつ高い分析精度を維持できます。

ここでは、仮名化が実際にどのような業務で活用されているのか、代表的なシーンを紹介します。

マーケティング分析や顧客行動の傾向把握

マーケティング分野では、仮名化された顧客データを活用することで、個人を特定せずに購買傾向や行動パターンを分析できます。たとえば、ECサイトや店舗での購買履歴を仮名化して集計すれば、年齢層や地域ごとの人気商品を把握し、販促施策の最適化につなげることが可能です。

また、仮名化を行うことで、分析担当者が直接的な個人情報に触れるリスクを避けられます。これにより、社内でのデータ共有や外部委託先との共同分析を、法令遵守のもとで安全に実施できます。

このように、仮名化はマーケティング活動を効率化し、顧客の信頼を損なうことなくデータドリブンな意思決定を支える基盤です。

AI・機械学習モデルの学習データ作成

AIや機械学習の分野では、大量のデータをモデルに学習させることが必要です。しかし、個人情報をそのまま使用すると、プライバシー侵害や法令違反につながりかねません。

仮名化を行えば、氏名やIDなどの識別子を安全に加工し、個人を特定できない形でデータを利用できます。これにより、AIモデルの開発や検証を行う際にも、個人情報保護法の範囲内で適切にデータを活用しながら、高品質な学習データを確保できます。

さらに、仮名化されたデータは、研究機関や開発パートナーとの共同利用にも最適です。データの再識別を防ぎつつ、アルゴリズムの精度向上や新技術の検証を進められます。

研究・統計目的での社外共有・連携

学術研究や統計分析の現場でも、仮名化は広く活用されています。大学や研究機関、自治体、企業などが共同でデータを扱う際、個人情報をそのまま共有すると、漏えいや不正利用のリスクが高まります。

仮名化によって個人を特定できない形に加工しておけば、外部組織と安全にデータを共有し、統計的な分析や社会調査を行うことが可能です。特に、医療・公共政策・教育などの分野では、個人データの価値を損なわずに共有・活用できる仕組みとして重視されています。

このように、仮名化は組織の枠を超えたデータ連携を実現し、社会全体の知見や技術の発展を支える役割を果たしています。

仮名化を導入する際の注意点

仮名化は、データ活用と個人情報保護を両立させる有効な手段ですが、実施や運用の過程で注意すべき点も多いです。形式的に導入するだけでは、かえって情報漏えいや再識別のリスクを高めるおそれがあります。

ここでは、仮名化を安全かつ適切に運用するために押さえておきたい代表的な注意点を紹介します。

仮名化キーの漏えい・不正利用リスク

仮名化されたデータの安全性を左右するのが、変換に使用する「仮名化キー」の管理です。キーが外部に漏えいした場合、仮名化データをもとに容易に本人を再識別できてしまいます。そのため、仮名化キーは厳重に分離・保管し、アクセスできる権限者を最小限に絞ることが重要です。

また、システム運用者による不正利用を防ぐため、アクセスログの記録や定期的な監査を実施することも欠かせません。キーの扱いを明文化し、管理体制を組織的に構築することで、情報漏えいリスクを大幅に低減できます。

形式的な仮名化による再識別の危険性

仮名化を行っていても、十分な加工が行われていなければ、他のデータと突き合わせることで個人を特定できてしまうことがあります。たとえば、氏名を削除しても、生年月日や勤務先、居住地などの情報が残っていれば、再識別の可能性は残ります。

こうした形式的な仮名化では、見かけ上は安全に見えても、実務的には不十分です。法令の趣旨を満たしていない場合もあります。データの種類や組み合わせによってどの程度の加工が必要かを検討し、リスクを定量的に評価することが求められます。

安全性を確保するためには、複数の仮名化手法を組み合わせる、または第三者による検証を行うなど、客観的な評価プロセスを取り入れることが望ましいです。

社内ルール・教育体制の整備不足

仮名化を適切に運用するためには、技術的な対策だけでなく、組織としてのルールづくりと教育が欠かせません。ルールが整備されていない状態では、担当者ごとに判断がばらつき、結果的に安全性が損なわれる可能性があります。

たとえば、「誰が仮名化を行うのか」「キーをどこで保管するのか」「利用目的をどこまで許容するのか」といった点を明確に定め、文書化しておくことが重要です。また、従業員に対して仮名化や個人情報保護に関する教育を定期的に行うことで、リスクへの意識を高められます。

制度・教育・運用を一体的に整備することが、仮名化を安全に機能させるための前提条件といえます。

仮名化を実務で活かすポイント

仮名化を導入するだけでは、データ活用と個人情報保護を両立させることはできません。実務の中で継続的かつ効果的に運用するためには、目的に合った設計と組織的な体制づくりが欠かせません。

最後に、仮名化を実際の業務やシステムに落とし込み、最大限に活用するための重要なポイントを解説します。

目的に応じた適切な加工手法の選択

仮名化の手法は、データの利用目的やリスクレベルによって選び方が変わります。すべてのデータを一律に仮名化すればよいわけではなく、どの情報をどの程度加工するかを明確にすることが重要です。

たとえば、社内で統計分析を行う場合と、外部の委託先に提供する場合では、求められる匿名性の水準が異なります。業務で再識別が必要な場面ではトークン化や暗号化を、完全に識別が不要な場面ではハッシュ化やマスキングを選択するなど、目的に応じた手法を柔軟に組み合わせることが望ましいです。

仮名化の目的を明確にし、加工後も業務に支障がない範囲で安全性を確保する。このバランス設計が実務での成功の鍵となります。

システム設計段階でのプライバシー保護

仮名化を後から付け足す形で導入すると、システムの整合性や業務効率に支障が出る場合があります。理想的なのは、システム設計の段階からプライバシー保護を前提にした仕組みを組み込むことです。

たとえば、データベースの構成段階で仮名化対象の項目を分離する、アクセス権限を明確に設定する、再識別のためのキーを別環境で管理するなどの工夫が挙げられます。これにより、仮名化がシステム全体の中で自然に機能し、管理の手間やリスクを最小限に抑えられます。

こうした考え方は「プライバシー・バイ・デザイン」と呼ばれ、国際的にも重要な原則です。初期設計の段階から仮名化を意識することで、安全で持続可能なデータ活用基盤を築けます。

データガバナンス体制と責任者(DPO等)の明確化

仮名化の効果を最大限に発揮するためには、技術面だけでなく組織体制の整備が欠かせません。仮名化の実施・管理・監査を統括する責任者を明確にし、ガバナンス体制を構築することが必要です。

具体的には、情報管理部門や個人情報保護の担当者を中心に、仮名化ルールの策定や運用状況の監視を行います。海外拠点を持つ企業やグローバルに事業を展開する場合は、GDPRで定義されるデータ保護責任者(DPO:Data Protection Officer)を設置し、統括的な管理を担わせるケースもあります。

もちろん、現場レベルでの取り組みも大切です。現場の担当者や委託先も含めた意識共有がなければ、データガバナンス体制も形骸化してしまうでしょう。仮名化を単なる技術的処理ではなく、組織全体のデータガバナンスの一環として運用することで、法令遵守と業務効率化の両立を実現できます。

まとめ:仮名化を理解しデータ活用とリスク管理に活かす

仮名化は、個人情報保護とデータ利活用を両立させるための現実的な手段です。単なるセキュリティ対策にとどまらず、組織が安心してデータを分析・共有できる環境を整えるうえで欠かせない仕組みといえます。

正しく理解し、適切なプロセスと管理体制を整えることで、仮名化は企業のデータ戦略を安全に推進するための重要な基盤の一つとなります。特に、DX推進やAI活用を進める企業にとっては、信頼性の高いデータ活用を実現するための前提条件です。

今後、データ保護規制はさらに厳格化していくと考えられます。だからこそ、今のうちから仮名化の仕組みを自社の業務やシステムに組み込み、継続的に改善していくことが重要です。安全なデータ運用を実現しながら、仮名化をビジネスの成長につなげていきましょう。

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