デジタル技術の進歩に伴い、金融業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)に注力する企業が増加しています。DXの推進は、顧客体験の向上、業務コストの削減、セキュリティ強化といった分野で効果を発揮します。
本記事では、金融DXの概要や、現状、メリット、注意点、成功させるポイントなど基礎知識について詳しく解説します。これからDXの推進を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
金融DXとは
金融DX(デジタルトランスフォーメーション)は、金融業界においてデジタル技術を活用しながら、新しい価値の創出や業務プロセスを変革することを意味します。金融DXは、具体的に、クラウドコンピューティング、AI、ブロックチェーンなどの最新技術を導入し、金融サービスの提供方法や顧客体験を革新します。
金融DXにより、業務を刷新し、効率性を向上させるとともに、新たなビジネスチャンスを創出することが可能です。
金融業界のDX推進における現状
出典:総務省『デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負』
総務省の調査によると、2020年時点で金融業・保険企業でDXに取り組む会社は4割程度ですが、コロナ禍を経てDXの推進が進んでいる傾向にあります。
特に大手銀行や保険会社は、顧客のニーズに迅速に対応するため、デジタルチャネルの強化やAIを活用したデータ分析に力を入れています。また、フィンテック企業の台頭により、従来の金融機関も積極的にデジタル化を進める必要性が高まっています。
しかし、中小の金融機関や地域金融機関においては、資金や人材不足からDX推進が遅れている現状も見受けられます。
金融DXを推進する5つのメリット
金融DXはそのメリットの多様さから、今後も積極的に推進されることが期待されます。本記事では、DXを推進する5つのメリットを紹介します。
<金融DXを推進する5つのメリット>
- 競争力の強化
- 顧客体験の向上
- オペレーション効率の最適化とコスト削減
- 新規ビジネスモデルの創出
- リスク管理の強化とセキュリティ向上
メリット1.競争力の強化
デジタル変革を推進することで、金融機関は競争力を大幅に強化できます。
例えば、AIを活用した信用評価やリスク管理の自動化により、迅速かつ正確な意思決定を叶えます。市場の変化に柔軟に対応し、他社との差別化を図ることができるでしょう。
メリット2.顧客体験の向上
金融DXは顧客体験の向上にも大きく寄与します。オンラインバンキングやモバイルアプリの導入により、顧客は24時間365日、どこからでも金融サービスを利用できるようになります。さらに、AIチャットボットやカスタマーサポートの強化により、迅速かつ的確なサポートが提供されるため、顧客満足度が向上するでしょう。
メリット3.オペレーション効率の最適化とコスト削減
デジタル技術の導入により、業務プロセスの自動化が進みます。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用したルーティン業務の自動化や、AIによるデータ分析の効率化により、業務効率が飛躍的に向上します。
人的リソースの最適化やコスト削減が実現し、経営資源をより戦略的な分野に投入可能です。
メリット4.新規ビジネスモデルの創出
金融DXは、新しいビジネスモデルの創出を可能にします。例えば、ブロックチェーン技術を活用することで、これまでよりも信頼性の高い取引を低コストで実現することも可能です。
新しい技術を活用しながら、新たな市場を生み出していくことが期待されています。
メリット5.リスク管理の強化とセキュリティ向上
デジタル技術の導入により、リスク管理の強化とセキュリティ向上も実現できます。AIやビッグデータ分析を活用することで、リアルタイムにリスクを監視し、迅速な対応が可能です。
また、サイバーセキュリティ技術の進化により、金融機関のシステムやデータの保護に役立つでしょう。
金融DXで活用されている技術
金融DXでは、RPAやAI、ブロックチェーンといった先進技術が活用されています。
RPA(Robotic Process Automation)は、普段パソコン上で行っている業務の自動化を実現し、業務効率を大幅に向上させます。設定されたプロセスを確実に実行してくれるため、時間をかけずに正確な事務作業を行うことが可能です。
AIは、データ分析や予測モデルの構築に役立ちます。リスク管理や顧客サービスの改善に貢献するでしょう。また、ブロックチェーンを活用することで、取引の透明性とセキュリティを高められます。
その他にも金融DXで活用されている技術は多々あります。自社の課題や目標にあわせて必要な技術を取り入れながらDXの推進を実施していきましょう。
金融DXを進めるうえでの5つの課題・注意点
金融DXを推進するメリットは多いものの、実際に推進していく際にはいくつかの課題があります。
以下では、金融DXを推進するうえで、知っておきたい5つの課題をご紹介します。事前に課題を把握することで、対策を講じ、よりスムーズなDX推進を実現しましょう。
<金融DXを進めるうえでの5つの課題・注意点>
- データセキュリティとプライバシーの保護
- 人材不足とスキルギャップ
- コスト管理と投資対効果の評価
- 規制対応とコンプライアンスの確保
- 企業文化の変革
課題1.データセキュリティとプライバシーの保護
どの業界でもデータセキュリティとプライバシー保護は重大ですが、金融機関では扱っている情報の性質上、特にセキュリティの重要度は高いといえます。DX推進に伴い顧客情報をデジタル化する際にトラブルが生じると、データが流失してしまう可能性があります。
顧客の個人情報や取引データを安全に管理し、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐための対策が必要不可欠です。
課題2.人材不足とスキルギャップ
デジタル技術を効果的に活用するためには、専門知識を持つ人材の確保と育成が必要です。金融業界ではデジタルスキルを持つ人材が不足しているため、積極的な採用が求められますが、デジタル人材の市場ニーズは高まっているため、採用が難しいことが課題です。
また、全社員のデジタルスキルの向上も必須です。スキルギャップを埋めるためには、継続的な教育・研修が求められます。
課題3.コスト管理と投資対効果の評価
DX推進には多大な初期投資が必要となるため、コスト管理と投資対効果の評価が重要です。適切な予算配分と投資効果の測定を行い、経営戦略と整合性の取れたDX推進を図る必要があります。
さらに、初期時点では正確なROI(投資利益率)を検討することが難しいケースも多いことも課題として挙げられます。まずは現状を定量的に把握し、DXの推進によりどの程度の改善や変化が見込まれるのかを計算しながら、予算を確保する必要があるでしょう。
課題4.規制対応とコンプライアンスの確保
金融業界は厳しい規制が課されており、DX推進に際しても規制対応とコンプライアンスの確保が求められます。新しい技術やビジネスモデルを導入する際には、法的リスクを十分に検討し、規制当局との連携を強化することが必要です。
課題5.企業文化の変革
DX推進には企業文化の変革が不可欠です。金融業界ならではの伝統を重んじる文化や、従来の業務プロセスをアップデートし、デジタル時代にふさわしい柔軟で革新的な企業文化を醸成することが求められます。
企業文化を見直すためには、経営陣のリーダーシップと社員の意識改革が必要です。会社一体となって金融DX化に取り組む必要があるといえるでしょう。
金融DX推進を成功させる5つのポイント
金融DX推進を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。最後に、金融DX推進を成功させる5つのポイントについて解説します。
<金融DX推進を成功させる5つのポイント>
- 明確なビジョンと戦略を立案する
- 適切な人材の確保・育成を行う
- 顧客中心のアプローチを忘れない
- データ管理と分析の強化の体制を整える
- セキュリティとプライバシーの確保を重視する
ポイント1.明確なビジョンと戦略を立案する
金融DXを成功させるためには、まずは明確なビジョンと戦略を立案することから始めましょう。デジタル変革の目的と目標を明確にし、全社員に提示することで全社一丸となってDX推進を進められます。特に、伝統を重んじる社風の場合や、ルーティンワークを行っているチームに対しては、どのようにポジティブな変化があるのかを示すことが重要です。
ポイント2.適切な人材の確保・育成を行う
DX推進のビジョンや目標を決めても、肝心の戦略についてどのように策定したらよいのか頭を悩ます人も多いでしょう。戦略を立案するためには、デジタル技術に精通した人材の確保が重要です。
また、専門知識を持つ人が戦略立案をし、リーダーシップを持って推進していくだけではなく、既存社員のスキル向上も重要です。研修や教育プログラムを実施しながら、全社員のスキルの底上げを実施しましょう。
ポイント3.顧客中心のアプローチを忘れない
金融DXの目的は、最終的には売上の向上、ひいては顧客満足度の向上だという企業が多いのではないでしょうか。DXの推進時においても顧客のニーズの把握やフィードバックの反映を重視し、顧客体験を最優先に考えるアプローチが重要です。
社内に対しての施策のみではなく、顧客を中心に考えてDX化することで、顧客との信頼関係を築き、長期的な関係を維持できるでしょう。
ポイント4.データ管理と分析の強化の体制を整える
DX推進には、大量のデータを適切に管理し、分析するための体制を整えることが必要です。データガバナンスを強化し、高度な分析ツールを導入することで、意思決定の質を向上させることが可能になります。
収集した大量のデータはそのままでは、ビジネスでの意思決定に使えるものではありません。データを活用する目的を明確にしたうえで可視化することが重要です。BIツールを活用しながら、必要なデータが必要な形式で見られるような環境を整えましょう。
ポイント5.セキュリティとプライバシーの確保を重視する
金融DXの進展に伴い、セキュリティとプライバシーの確保は一層重要になります。
最新のセキュリティ技術を導入し、定期的なリスク評価と対策を講じることで、顧客の信頼を確保することが必要です。また、顧客情報が入ったUSBメモリやパソコンなどのデバイスの管理に対する知識を社内教育することで、セキュリティに関する危機感を社員にもたらせるでしょう。定期的な教育やテストなどを実施しながら、少しでもセキュリティに対するリスクを下げるように心得ましょう。
まとめ
金融DXは、日常の業務を効率化するだけではなく、新規ビジネスモデルの早出や顧客体験の向上などに大きく寄与します。他業界と比べて金融業界はDX推進に興味を示している会社も多いため、乗り遅れないように今後のビジョンを明確にする必要があるでしょう。
既存の方法を再建し、効率的に物事を進めるためにも、DX推進を検討してみてはいかがでしょうか。
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