銀行・金融業界では、DX（デジタルトランスフォーメーション）がますます注目を集めています。時代の流れとともに変化する顧客ニーズに即座に対応するためにも、銀行DXはもはや必須といっても過言ではありません。
本記事では、銀行DXの基礎から、その重要性、具体的なメリット、成功に導くための5つのポイントを徹底解説します。銀行業務の効率化や顧客体験の向上を目指す人は、ぜひ参考にしてください。
銀行DXとは
銀行DX（デジタルトランスフォーメーション）は、銀行業務においてデジタル技術を駆使し、業務プロセスやサービスを変革することを指します。2004年にDXという概念が登場してから20年以上経った今、銀行業界でもどんどん浸透してきています。
出典：総務省『令和3年版情報通信白書（PDF版）』90ページ
実際、総務省による「 令和3年版情報通信白書（PDF版）」によると、金融業・保険業の「32.2％」が、2018年よりも以前からDXを推進していると発表がありました。
具体的には、クラウドコンピューティング、人工知能（AI）、ブロックチェーン、RPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）などの最新技術が導入されています。
銀行DXが業界で重視されている背景
銀行DXが業界で重視される背景にはいくつかの要因があります。背景を知ることで、DX推進の必要性を理解する参考にしてください。
顧客ニーズが変化している
デジタル時代において、顧客のニーズは大きく変化しています。顧客は、迅速かつ便利なサービスを求め、オンラインバンキングやモバイルアプリの利用が一般化しています。
魅力的で利便性の高いサービスを提供できなければ、お客様が競合他社を選んでしまう可能性があります。既存の顧客離れを起こさないためにも、従来のサービスから、デジタル技術を活用したサービスが必要になるでしょう。
参入企業も増え、競争が激化している
フィンテック企業や異業種からの参入が増え、銀行業界の競争は一層激化しています。技術力の高い企業が参入することで、DXの推進もより一層スピード感を持って進行しているため、今までにない銀行サービスを提供し始めています。
参入企業に対抗するためには、他社に追いつかれないように銀行独自のノウハウを活かしながらも、デジタル技術を駆使していく必要があるでしょう。デジタル技術を使用することによる、迅速なサービス提供やパーソナライズされた顧客対応が競争優位の鍵になります。
業界における規制が緩和されている
近年、銀行業界における規制が緩和され、業務領域を広げることができるようになりました。
2021年5月には銀行法が改正され、2023年にも「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」が提出されています。
規制が緩和されたため、銀行はより自由に革新的なサービスを提供できるようになり、DX推進における、新規事業創出のハードルが下がっています。規制の緩和は、銀行にとって新たなビジネスチャンスを生み出す契機となるでしょう。
コスト削減と効率化を目指す会社が増えている
銀行業界では、コスト削減と業務効率化が喫緊の課題となっています。少子高齢化の影響で銀行で働ける人材は減っていく一方です。そのため、少ない人数でたくさんの人にサービスを提供しなければいけません。
デジタル技術を活用することで、手作業の自動化やプロセスの最適化が可能となり、運営コストの削減と業務の迅速化が実現します。これにより、銀行はリソースをより戦略的な領域に集中させることができます。
銀行DXを推進する4つのメリット
銀行DXの推進が必要な背景を把握する中で、実施のメリットも把握できた方も多いかもしれません。次に、具体的なメリットについて詳細を紹介します。
＜銀行DXを推進する4つのメリット＞
- 業務効率の向上
- 顧客満足度の向上
- 新しい収益機会の創出
- リスク管理の強化
メリット1．業務効率の向上
銀行DXの最も大きなメリットのひとつに、業務効率の向上が挙げられます。デジタル技術を導入することで、手作業が自動化され、プロセスが最適化されます。これにより、ヒューマンエラーの減少や処理時間の短縮が図られ、業務全体の効率が大幅に向上します。
また、銀行DXを推進することで、働き方を改革することが可能です。リモートワークへの対応も可能になり、より多様な働き方を実現できるでしょう。
メリット2．顧客満足度の向上
銀行DXは、顧客満足度の向上にも大きく貢献します。オンラインバンキングやモバイルアプリの導入により、顧客は24時間365日、どこからでも金融サービスを利用できるようになります。デジタル化を導入することで、顧客の利便性が上がり、サービスに満足してもらえるでしょう。
メリット3．新しい収益機会の創出
デジタル技術を活用することで、銀行は新たな収益機会を創出できるようになります。例えば、データ分析により顧客のニーズを的確に把握し、新たな商品やサービスを提供できます。
ターゲットにあったサービスを提供できるようになり、収益の多様化と増加が期待されます。
メリット4．リスク管理の強化
銀行DXは、リスク管理の強化にも寄与します。
AIやビッグデータを活用することで、リアルタイムでのリスク評価や監視が可能となり、迅速な対応が実現します。なにか問題が見つかった際にすぐに対応できるようになるため、安定した運営をできるようになるでしょう。
銀行DXを推進するうえでの課題
DXを推進することは、一朝一夕で簡単にできるものではありません。既存のシステムとの統合や、銀行文化との折り合いなどさまざまな課題があります。
以下では、銀行DXを推進するうえでの課題について詳しくご紹介します。あらかじめ課題を把握することで、対策を検討したうえで実施していきましょう。
課題1．レガシーシステムとの統合
銀行DXを推進する際、レガシーシステムとの統合は大きな課題となります。銀行のシステムはそれぞれ独自で開発されているため、既存のデジタル技術との統合が難しい傾向があります。
統合がスムーズに進まないと、現場サービスの提供に時間がかかってしまい、DXの効果が十分に発揮されない可能性があります。従来のシステムと新しいデジタル技術をどのように効果的に融合させるかが、銀行DXを推進する成功の鍵です。専門家の技術を取り入れながら、確実に実行していきましょう。
課題2．データセキュリティとプライバシー
デジタル技術の導入に伴い、データセキュリティとプライバシーの保護が一層重要になります。
顧客の個人情報や取引データを安全に管理し、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐための対策が不可欠です。今までアナログで保存してきたデータとは取り扱い方が異なるため、社員へのセキュリティーに関する教育も必要となります。
課題3．銀行独自の文化と組織の変革
銀行DXを成功させるためには、銀行独自の文化と組織の変革が必要です。銀行業界は、従来の業務プロセスを大切とする、保守的な考えを持つ人も多い傾向にあるでしょう。「利便性が悪くなる」と反対されてしまうケースもあり、思ったようにデジタル化が進まないというケースも発生します。
そのため、従来の業務プロセスや価値観を見直し、デジタル時代にふさわしい柔軟で革新的な企業文化を醸成することが求められます。経営陣がリーダーシップをとり、十分なサポートを実施しながら、中長期的に社員の意識改革をすることが求められます。
課題4．銀行DXに関する人材不足
DX推進には、デジタル技術に精通した人材の確保と育成が欠かせません。
しかし、銀行業界のみならずIT関連技術を持つ人材は不足しています。デジタルスキルを持つ専門人材を確保し、さらに銀行内でも育成していく必要性があります。
銀行DX推進を成功させる5つのポイント
最後に、銀行DX推進を成功させる5つのポイントをご紹介します。
＜銀行DX推進を成功させる5つのポイント＞
- 明確な目標・ビジョンを策定する
- デジタルスキルを持つ人材を育成する
- 顧客中心のアプローチを実践する
- 自社の特性に合わせて最新の技術を導入する
- データドリブンな文化を醸成する
ポイント1．明確な目標・ビジョンを策定する
銀行DXを成功させるためには、まず明確な目標とビジョンを策定することが重要です。「DXを推進しよう」「デジタル化しよう」としたところで明確なビジョンがなければ、無駄に資金を使用するだけで頓挫してしまいます。
経営陣は、DXの推進やデジタル変革の目的と目標を明確にし、全社員と共有できる戦略を策定する必要があります。保守派・推進派ともに同じ目標を構えながら、DXを推進することで全社一丸となった推進を叶えます。
ポイント2．デジタルスキルを持つ人材を育成する
すでに解説したようにDX推進には、デジタル技術に精通した人材の育成が欠かせません。
専門知識を持つ人材を採用するだけでなく、既存社員のスキル向上を図るための研修や教育プログラムを実施することが求められます。時間は必要になりますが、会社全体のスキルを上げることで社内のデジタルリテラシーが向上し、DX推進が加速するでしょう。
ポイント3．顧客中心のアプローチを実践する
DXの推進の実施目的のひとつには、会社の売上や利益を上げることがあるでしょう。そのためには、社内の利便性の向上や業務効率化だけではなく、顧客満足度の向上も欠かせません。
デジタル化を進める際は、顧客体験を最優先に考え、顧客からのフィードバックを参考に改良していく必要があります。作業効率の上昇だけに目を取られずに、顧客体験を最優先に考えるアプローチをすることで、結果的に売上の向上にも繋がるでしょう。
ポイント4．自社の特性に合わせて最新の技術を導入する
銀行DXを成功させるためには、自社の特性に合わせた最新の技術を導入することが必要です。
クラウドコンピューティングやAI、ブロックチェーンなど、最新の技術は多数ありますが、その中でも適切な技術を選択し、自社の業務プロセスに最適化することで、効果的なDX推進が可能となります。どのような技術があるのか、また自社のオペレーションに適しているのかは、慎重に検討し、テストをしながら実施していきましょう。
ポイント5．データドリブンな文化を醸成する
データドリブンな文化を醸成することは、銀行DXの成功に不可欠です。感覚によらない、データに基づいて考え行動する、データドリブンな習慣をつけることで、より根拠を持った判断が可能になります。
デジタル化を推進することで、これまで取得できていなかったようなデータも収集できるようになるため、これらのデータを経営判断に活かせる環境を整えましょう。必要なデータを、必要な形式で得られるように、データの可視化をするところから始めることがおすすめです。
まとめ
銀行DXは、日々の業務を効率化するだけではなく、顧客に新たなサービスを提供できる機会の創出を行います。業界の中でも、DXを推進している企業も多い銀行・金融業界で、DXの波に乗り遅れてしまうと、既存の顧客離れを起こすリスクもあります。銀行DXの課題や成功させるポイントなどを理解したうえで、DX推進に乗り出しましょう。
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