デジタル化を進めていく中で、データベースやETLツール、BIツールなどの選定・議論に際して「Alteryx」の名前が挙がる企業は多いです。当社でもAlteryxの使用に関するアドバイザリーやAlteryxを使ったコンサルティングを行っておりますが、その過程でよく頂く質問もございます。
そこで本記事では、Alteryxとはどういった製品なのか、使い方含め包括的に解説することでAlteryxを使ったデータ活用環境構築の有益な材料となることを目指します。
データ可視化そのものについて知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
目次
1.Alteryxとは?
Alteryxは直感的な画面操作で分析が可能な分析ツールの一つです。Alteryxのようなノンコード、ノンプログラミング、直感的な画面であるツールを称して「セルフサービス型」と呼ばれています。また、AlteryxはいわゆるETLツールと呼ばれます。ETLは、 「Extract(データを抽出)、Transform(変換・加工)、Load(ロード)」の略であり、多くの様々なデータから言葉通り「ETL」することをその使命とします。
多種多様なデータソースに繋げることができ、Excelだけでは太刀打ちができなかった予測や空間分析(地図等)、統計的な分析など、複雑性の高い分析までもユーザー自身が行うことが可能にしたツールです。
これまでExcelでしかデータ分析を行なってこなかった人からすると、自在にデータの粒度を変えることができ、まるで魔法のようだという感覚もあるかもしれません。例えば、データを扱う現場でよく頭を悩ませるデータ粒度を揃えるなど、データの加工の時間を大幅に削減してくれるものです。
その意味で、下記のような課題にストレートに応えてくれるツールと考えます。
- データが散在していて必要な分析ができない
- 毎回ワンショットの分析になってしまっている
- データ加工に時間がかかりすぎる
1-1.基本的にノーコーディングでデータ準備や加工が行える
1-2.他ツールやデータとの強い親和性でデータ活用に拍車をかける
1-3.構造化データも非構造化データも分析の幅を広げてくれる
構造化データとはExcelやSQLなどのことです。非構造化データはJSON、HTML、APIなどのことです。
1-4.PDFやパワーポイントなどにエクスポート可能で共有も楽チンである
Alteryxで分析を行なっても、レポートはPDFなどでという場面もあるでしょう。AlteryxからPDF、パワーポイント、ワード、エクセルのフォーマットでエクスポートが可能です。
1-5. 作ったワークフローは何度でも使えて徹底的に時短可能
Alteryxで一度作ったワークフローは何度でも使えて、他者にも共有可能です。ゼロから同じワークフローを作る必要はありません。
1-6.圧倒的なハイパフォーマンスで高速処理
Alteryxはオンメモリ処理と呼ばれる高速の処理で、圧倒的なパフォーマンスの強みがあります。特にデータの規模が大きくなってきた場合にはAltereyxの活用がおすすめです。
「データ視覚化/ダッシュボードデザインを成功させる95のチェックリスト」をダウンロードする
2.AlteryxとTableauはどう違うのか
ざっくり言ってしまうと、Tableauは視覚化(データビジュアライゼーション)に強く、Alteryxはデータクレンジング(分析前の前処理)に強みがあります。ちょうど下記のようなイメージです。
デジタル化やデータ活用基盤を考える文脈でツールの選定をしている段階の企業は、ツールを一つに絞ろうとする方も多いでしょう。
もちろん、一つにした方が安上がりですし、管理しやすいのでそのお気持ちは理解できます。しかし、両者は同じ機能や強みを持っているものではありません。ですのでどちらか一つにしようとするのではなく、どちらの強みも補完しあうことで両方使うとデータからさらに良いインサイトが得られます。
とはいえ、Tableauとの比較は導入時によくご相談を受けるところです。ここではAlteryxとTableauはどちらになんの力点を置けば活用の価値が上がるのかに触れます。
2-1.Alteryxの得意とするところ
前述の通り、AlteryxはETLツールですので、AlteryxはこのETLのワークフローがスムーズに行われることが価値の中核であり、その意味で、手作業になりがちであるこのフローに費やしていた時間を大幅に削減します。
TableauやQlikなどを使っている場合、Altexyxを直接繋げることが可能です。
2-2.Tableauの得意とするところ
Tableauはグラフやチャートをドラッグ&ドロップで簡単に描画出来るビジュアライゼーションに強みのあるソフトウェアです。BI領域では最も視覚化にエッジがあると考えます。
TableauでAlteryxっぽいことをしたいときに補完するのがTableau Prepです。Tableau Prepで可能なことはこちらの記事に掘り下げて書いています。
2-3.AlteryxとTableauを組み合わせてフルパワーに
AlteryxとTableauはどちらにすべきなのか、というのはよく頂く質問の一つです。しかし、実際は両者のエッジの効いた部分をうまく引き出せるようにAlteryxとTableauは組み合わせて使うとさらにデータの力をフルパワーに引き出すことができます。大きなポイントとして、具体的には、以下の2点があるでしょう。
Tableauの抽出ファイルの生成
Alteryxの大きな価値として、データセットをtdeファイル(Tableauにおける抽出ファイル)に変換することが出来るということがあります。データを圧縮できて利便性が高まり、且つTableauでの視覚化にとっても最適化された形になります。
この形式によりパフォーマンスのスピードも上がり、共有やコラボレーションも加速します。
より深い洞察を得られる視覚化を実現するためのデータクリーニング
AlteryxをTableauを一緒に使うメリットはデータ視覚化を簡単にするという点だけではありません。Alteryxでデータをクリーニングしデータを純化させることによりさらに「価値あるデータ」にしておくことが可能です。例えば、値が抜けていたりエラーがあったり、その他様々な不純物が混ざっているのといないのとではデータの価値が全く違うものです。そして、そのデータから生み出される判断や示唆の質も変わってくるものです。
Tableauは視覚化においてとても便利なツールであるため、Tableauにデータを入れる前にAlteryxでクレンジングをするというステップにしておくと、時間削減もでき、コストも節約出来るでしょう。
3.Alteryxの価格(年間5,195USD/約60-65万円)
「Alteryx」という時、多くが下記の製品「Alteryx Designer」を指します。Alteryx Designerは年間5,195USD、日本円でおよそ60−65万円です。
デジタル化やデータ活用の文脈で登場する他のツールと比較するとかなり高額ではあります。しかしその機能の豊富さやソフトウェアとしてのパワーで十分正当化出来る金額と感じます。Alteryxへの投資を無駄にしないためには、以下のポイントが重要になると思います。
- データ活用がある程度進んでいること
- データがある程度揃っていること
- データに深い理解がある人がチームをリードしていること
- Alteryxでなくとも分析ツールに慣れている人がリードしていること
Alteryxはその他比較して比べられるツール類の中では遥かに高額であり、これが国内企業での導入ハードルになっていることもあるでしょう。
しかし、上記のような条件を満たせば、Alteryxをその価格分以上のリターンがあるものと思います。
4.ExcelでしていることをAlteryxに移管出来るのか?
Excelで行なっていることをAlteryxに全て移管出来るのかという質問もよくいただきます。一言で言えばExcelとAlteryxは生い立ちが異なるソフトウェアであり、一つに集約するというよりも適材適所で使っていくのがおトクかと考えます。
Excelは極めて便利なツールですので何でもExcelでやってしまいがちですが、分析には分析専用のものを使った方がストレスがありません。ストレスを最低限にすると、継続的に分析できますので、これは非常に大事なポイントです。
特にポイントは下記の点での違いでしょう。
4-1.それぞれの生い立ちと目的
Excelはデータを操作するスプレッドシートです。Alteryxはデータクレンジング、ブレンディングを目的としたETLなツールです。
4-2.主な使いどころ
Excelは構造化データ(列と行の概念を持つデータ)を使った分析に 使うのが良いです。Alteryxはビッグデータを素早く簡単に目に見える形に表現し、人が理解することに寄与します。
4-3.パフォーマンスチューニング
Excelとしての処理を高速化させる術はないですが、Alteryxは際立ったパフォーマンスレスポンスがあります。
4-5.インターフェース(UI画面)
Excelのパワーを最大限引き出すためにはマクロやVBAの知識は必須になります。Alteryxは基礎的なUIの操作をする分にはコーディング知識は不要です。
4-6.データ量
Excelは100万行程度で限界が来ると言われますが、100万行までいかなくともある程度の量になると、開くだけで数分ということはざらにあります。Alteryxは数千万行でも数秒のレスポンスが実現できます。データ量が多くなるとExcelでは現実的・物理的に太刀打ちできなくなります。
4-7.データ探索
Excelの場合、データの探索段階で「すでに自分で何らかの考えを持っている」必要があります。ピボットテーブルなどでも、「このような切り口で分析したい」、と決めてから自分の頭でまず考えますよね。
Alteryxの場合、自分自身が欲しい答えを明確に認識できていない段階から探索することが可能であり、このポイントが製品の思想としての大きな違いとも言えます。データを深掘りし、パターン、トレンド等を探索・把握することが簡単です。また、これを支えるのが、上記の秒速のトライアンドエラーができるUI設計です。
5.Alteryxを使いこなせる企業や人
Alteryxはセルフサービスといえど習熟までにはある程度の時間がかかります。仕事はAlteryxだけではありませんから、最初の頃は時間をとられてしまうことで負荷はかかるでしょう。
使い始めのスタートの時期は、使い慣れている方が社内にいらっしゃったり、コンサルティングリードのもとセットアップをしていくことがおすすめです。右も左もわからない状態ですと、細かな設定に躓き放置、挫折、となってしまいます。
どのような業界・領域であれデータさえあればAlteryxの力を活用することはもちろん可能です。データの収集と分析・解析をする人ならばどのような人にとっても価値があるでしょう。しかし、Alteryxを入れて即座にそのツールの価値以上に活用できる企業/領域を強いて挙げるならば、主に以下があります。
5-1.分析チームや専門部署、体制がある企業
「簡単に分析」と言えど、それは知識がなくても出来る、ということではありません。
「結合ってなんだっけ?」「信頼区間ってなんだっけ?」「標準偏差ってなんだっけ?」という状態ではAlteryxを活用することは出来ません。
その意味で、分析チームがある程度企業の中で確立していたり、既に体制が作られている、もしくは事業部の中に詳しい人がいてデータ分析が業務プロセスとしてまわっている状態の企業や部署で使えるとその価値を発揮しやすいものと思います。
5-2.調査・リサーチ
アンケートデータなど大量のテキストデータを扱っている企業や部署はそのデータ処理の簡単さでさらに分析の時短ができるものと思います。通常テキストマイニングのサービスを使うことが多いですが、Alteryxを使えば単語の出現頻度、単語の組み合わせの集計や視覚化(ビジュアライゼーション)などアンケートデータで必ず行う分析過程の生産性を上げることができるでしょう。
5-3.金融業界
証券・銀行・保険・カードなどの金融業界は、データを多く持っているものの活用できていないでいる業界の一つです。
金融業界はデータがたまっている年数としても、そして膨大な顧客のデータが蓄積されている点でも、Alteryxの力で多くの示唆が出せる業界の一つでしょう。
5-4.デジタルマーケティング
デジタルマーケティング領域は、その名の通りデジタル前提のマーケティングなので分析対象がデジタル化されており、行動や結果がデジタルデータとして構造化されていることが多い状態です。しかし、そのデータの分析手法や表現方法、解釈方法が一辺倒になってしまっていたり、他の異種データと合わせて立体的・複合的に見ていくことは可能ではあるものの、社内の技術的に難しい、ということもよく認識される課題です。広告効果のさらなるレバレッジをかけるためにAlteryxのパワーを使うと良い領域の一つです。
5-5.小売業
主成分分析、クラスタリング、バスケット分析などが標準装備されておりストレスなく出来るので、商品データを扱う小売業も導入すると生産性が特に上がるでしょう。
6.まとめ
Alteryxは非常にパワーのあるツールです。
人は、新たなものを使うとき、経済的コストだけではなく精神的にも時間的にもコストがかかります。そして、面倒くさいと感じてしまうものです。しかし、その中で客観的に真の生産性を見つめ直したり、自分がしたいことに適したもの選択できるようになると、あなたのデータ分析/視覚化ライフがもっと楽しくなることは間違いありません。一緒に頑張りましょう!
BIツール導入をご検討中であればぜひ一度データビズラボへお問い合わせください。
状況やニーズに合わせ様々なサービスをご提供しております。
コメント